まずはオランダの国民投票でノー ~反EUの

EU Trends
まずはオランダの国民投票でノー
発表日:2016年4月7日(木)
~反EUのリトマス試験紙~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ EUとウクライナの関係強化を定めた連合協定を巡って、オランダで行われた国民投票は反対票が賛
成票を大幅に上回った。難民危機の混迷以降、オランダでは移民排斥を訴える極右政党が躍進。ウク
ライナ東部の民間機撃墜事件で多くの犠牲者を出した国民感情や難民流入への不安を利用し、国民投
票をEUの信任投票に仕立てあげた。投票結果を受け、オランダ以外の国でもEU懐疑論者を勢いづ
かせる恐れがある。なかでもEU残留/離脱を問う6月の英国民投票に影響しないかが懸念される。
2014年にEUとウクライナが結んだ「連合協定」の是非を問う国民投票が6日にオランダで行われた。
経済・貿易・政治・司法分野などでの関係強化を定めた同協定は、将来のウクライナのEU加盟に向けた
準備作業の一環として位置づけられる重要な条約。新欧州派が同協定の締結を目指したことが、欧州接近
を警戒する親ロシア派との対立に発展し、ウクライナ危機の発端となった。同協定の発効には全てのEU
加盟国による批准が必要となり、既にオランダを除く27ヶ国が批准し、オランダ議会でも承認されており、
暫定的な形で発効している。投票結果は反対票が61.6%と賛成票の38.4%を大きく上回った。国民投票に
政府の協定批准を妨げる法的拘束力はないが、投票の有効性を判断する投票率が30%を上回ったことで、
オランダ政府も国民の声を無視することは難しい。多くの国民は投票を棄権し、投票当日はオランダ各地
で降雨と強風が吹き荒れる寒い1日だった模様だが、投票率は辛うじて30%を超えた。
昨年秋に欧州で難民危機の混迷が深まって以降、同国では移民排斥を訴える欧州懐疑政党「自由党
(PVV)」への支持が急伸し、ルッテ首相が率いる「自由民主国民党(VVD)」に肉薄、連立政権に加わる
「労働党(PvdA)」を大きく引き離している(図表1)。2014年に親ロシア派が実効支配するウクライナ
東部で民間航空機が墜落した事件で、オランダは最多の犠牲者を出した(298人のうち194人)。オランダ
国民の間ではウクライナの欧州接近を手放しで歓迎できない思いもある。今回の国民投票は投票を求める
欧州懐疑論者の署名運動を受けて自由党が発案したもので、こうした複雑な国民感情や難民流入への不安
を利用し、国民投票をEUに対する信任投票に仕立て上げた。また、3月にブリュッセルで起きた同時爆
破テロの実行犯の1人が、過去にトルコからオランダに強制送還されていたことが発覚し、ルッテ政権が
テロ発生を防ぐ努力を怠っていたとの批判も一部にあり、投票行動に一定の影響を与えた可能性がある。
今回の投票結果がすぐさまウクライナの欧州接近にブレーキをかけたり、欧州の統合プロジェクトを崩
壊に導くものではない。だが、6月に控える英国のEU残留/離脱の国民投票や、来年に予定されるフラン
スやドイツの総選挙を控え、欧州懐疑派を勢いづけることが懸念される。残留支持/離脱支持が拮抗する英
国の国民投票では態度保留者の投票行動が結果を左右すると言われている。最終的な英国からの離脱を回
避した2014年のスコットランドの住民投票では、態度保留者の多くが無難な現状維持(=残留)という選
択をした。だが、英国の有権者で投票率が低いのは一般に年齢別には若年者層、社会階層別には労働者層
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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とされる。若年者層は残留支持の割合が多く、労働者層は離脱支持の割合が多い(図表2)。英国の国民
投票の場合、投票率が上がれば残留の確率が高まるとは一概に言えない。
(図表1)オランダ支持率調査に基づく政党別予想獲得議席
(議席)
40
自由民主国民党(VVD)
35
労働党(PvdA)
30
25
自由党(PVV)
20
キリスト教民主アピール(CDA)
15
社会党(SP)
10
民主66(D66)
現有議席
2016/3/31
2016/3/18
2016/3/3
2016/2/18
2016/2/4
2016/1/21
2015/12/17
2015/12/3
2015/11/19
2015/11/5
2015/10/22
2015/10/8
2015/9/24
2015/9/10
2015/8/27
2015/7/30
キリスト教連合(CU)
2015/7/2
緑左党(GL)
0
2015/6/18
5
政治改革党(SGP)
出所:IPSOS資料より第一生命経済研究所が作成
(図表2)属性別にみた英国のEU残留/離脱の回答割合
残留
(%)
社会階層
上級管理・専門職
管理・専門職
中間層
中小企業・自営業
監督・技術職
準ルーティン業務
ルーティン業務
教育(最終就学年齢)
16歳以下
17-18歳
19歳以上
性別
男
女
年齢
18-34歳
35-54歳
55歳以上
イデオロギー
左派
中道
右派
全体
離脱
(%)
残-離
(ppt)
67.9
63.8
55.1
54.7
48.5
48.5
41.4
32.1
36.2
44.9
45.3
51.5
51.5
58.6
35.8
27.6
10.2
9.5
-3.1
-3.1
-17.3
41.4
56.4
72.4
58.6
43.6
27.6
-17.3
12.8
44.9
59.9
57.0
40.1
43.0
19.8
14.0
73.3
56.3
49.2
26.7
43.7
50.8
46.6
12.5
-1.5
80.5
59.8
36.5
58.5
19.5
40.2
63.5
41.5
61.0
19.6
-26.9
17.0
出所:王立国際問題研究所資料より第一生命経済研究所が作成
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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