Weekly Outlook

投資情報部
2016 年 4 月 7 日(木)
Weekly Outlook
週刊投資情報
CONTENTS
1. 日本株見通しとポイント~揺らぐ日銀に対する信認 .............................................2
2. 米国株見通しとポイント~決算発表が目先の上げ材料に ....................................3
3. 円相場見通しとポイント~一段のドル下振れに注意 ............................................4
4. 国内経済動向~企業の景況感は現状悪化、先行きも悪化見通し ........................6
5. 新興国市場・経済動向 ........................................................................................8
6. ホテルの容積率が緩和か .................................................................................12
7. 待機児童問題の実態 .......................................................................................13
8. 米国先物~投機筋によるポジション動向 (3 月 29 日集計分) ..........................14
9. 2016 年 1-3 月期米国企業決算発表スケジュール ............................................15
10. インド~市場予想通り昨年 9 月以来の利下げを決定 ........................................16
11. 消費増税の先送りだけでなく所得税減税も視野に .............................................17
12. 主な国内株価指数とテクニカル指標の推移 .......................................................20
13. 来週・再来週の主なスケジュール ......................................................................21
1
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
No.249
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
1.日本株見通しとポイント~揺らぐ日銀に対する信認
日本株担当: 横山 敦史
日銀短観の下振れや為替が1ドル=109円台まで円高が進行したことなどから、日経平均は16,000円を割
り込んだ。円高の進行は日米金融政策の微妙な変化によるところが大きいとみられるが、特に足元では日
銀に対する信認の低下が主要因となりつつある。日本株市場は為替動向に大きく左右される相場が続いて
いるだけに、信認回復の一手が早期に打たれることを期待したい。
 円高進行で日経平均16,000円割れ
図表1. 日米独の主要株価指数の推移
先週末以降の日本株市場は、4月1日発表の日銀短
観の下振れや、1ドル=109円台に円高が進行したこと
から、改めて企業業績の先行き不透明感が広がり、幅
広い銘柄が売られる展開となった。日経平均は6日まで
7日続落となり、16,000円を割り込んだ。3月以降はグロ
ーバル比較でも日本株の下落が目立っており、昨年軟
調だったNYダウにも足元で大きく見劣りする状況となっ
ている(図表1)。
130
(2014年末を100として指数化)
ドイツDAX指数
120
110
日経平均
100
米NYダウ
90
80
15/1
 揺らぐ日銀に対する信認
2016年に入ってからの円高は主に日米金融政策の
微妙な変化によるところが大きい。年初は金融市場の
混乱などを受け、米国の早期追加利上げ観測が後退し、
ドル安円高が進行した。2月中旬以降は、米連銀総裁
のタカ派発言が相次いだものの、ドル円の上値は重く、
足元ではさらに円高が進行している(図表2)。
15/4
15/7
15/10
16/1
16/4
(年/月)
出所: QUICKよりSMBC日興証券作成
図表2. ドル円とFF先物金利の推移
(円/ドル)
(%)
FF先物金利(2017年1月限月、左軸)
1.1
126
124
年内利上げ2回
0.9
122
日銀の金融政策はマイナス金利の導入など、緩和策
を強化する方向にあり、理論的にはむしろ円安が進行
してもおかしくない状況にある。しかし、一部では異次元
緩和策の限界論やマイナス金利政策の負の側面がクロ
ーズアップされるなど、日銀に対する信認が揺らぎ始め
ており、結果として円高株安となっているとも捉えられる。
もし、こうした日銀への信認低下が円高の主要因だとす
れば、政治的な判断により為替介入などを行ったとして
も一時的な効果に留まる可能性があろう。
注: 現在の政策金利を0.375%(0.25~0.50%の中間値)、利上げを
0.25%pt毎と仮定して推計
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
 今後の注目スケジュール
図表3. 今後の注目スケジュール
為替動向を見極める上では、まずはG20財務相・中
央銀行総裁会議やFOMC(連邦準備制度理事会)、そ
して日銀金融政策決定会合に注目が集まろう(図表3)。
日銀は足元の為替、国内経済環境を踏まえて、物価見
通しの引き下げとともに、追加緩和策の必要性を検討
することにもなろう。緩和策が打ち出されてもその内容
次第では円高株安の流れが強まる恐れもあり、4月の日
銀会合は従来以上に関心が集まろう。
日本株市場は為替動向に大きく左右される相場が続
いているだけに、信認回復の一手が早期に打たれること
を期待したい。
118
年内利上げ1回
116
ドル円(右軸)
114
112
0.3
110
0.1
8/3
9/3
2015年
10/3
11/3
日程
12/3
1/3
2/3
2016年
3/3
108
4/3
(月/日)
今後の注目スケジュール
4月14~15日 G20財務相・中央銀行総裁会議
4月15~17日 IMF・世銀春季総会
4月17日
OPEC加盟国・非加盟国による原油増産凍結を巡る会合
4月21日
ECB理事会
4月24日
衆院補選投開票(北海道5区、京都3区)
4月26~27日 FOMC
4月27~28日 日銀金融政策決定会合
4月下旬
16/3期決算発表本格化
5月18日
1-3月期GDP(1次速報)発表
5月26~27日 G7伊勢志摩サミット
注: スケジュールは予告なく変更される場合がある
出所: 各種報道よりSMBC日興証券作成
2
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
120
0.7
0.5
128
2016 年 4 月 7 日(木)
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2.米国株見通しとポイント~決算発表が目先の上げ材料に
米国株担当: 河田 剛
3月31日以降の米国株は、地区連銀総裁の発言やFOMC議事録の内容などに神経質に反応し、揉み合い
となった。1-3月期決算発表が本格化するが、アナリスト予想のハードルが下がっているため、実績EPSが
事前予想を上回る可能性は高いとみられる。これは目先の株価の上げ材料となろう。上昇トレンドが定着す
るためには、企業側の見通しが好転し、アナリスト予想の上方修正が増加することが必要とみられる。
 先週、今週のレビュー~金融政策を睨み揉み合い
+18.2万人→+15.5万人に修正)と、事前予想を上回っ
た。失業率は2月4.9%→3月5.0%と上昇したが、労働参
加率が2月62.9%→3月63.0%に上昇した影響とみられる。
FRB(連邦準備制度理事会)が重視する全人口に占め
る雇用者数比率は2月59.8%→3月59.9%と上昇した。
27週以上の長期失業者、経済的理由でのパートタイマ
ーは増加した。時間当たり賃金は前月比+0.3%と事前
予想(+0.2%)を上回った。全般に雇用市場の改善が持
続していると考えられる。
3月31日の米国株市場は、3月のシカゴ購買部協会
景気指数が事前予想を上回ったものの、シカゴ連銀の
エバンス総裁が年内2回の利上げを示唆したことなどで
ダウ工業株指数(NYダウ)は前日比▲31ドルとなった。
4月1日は、サウジアラビアの副皇太子が、増産凍結にイ
ランが参加しない場合にはサウジも加わらないと発言し
たことで原油価格が下落したものの、3月の雇用統計の
非農業部門雇用者数、3月のISM製造業景況指数が事
前予想を上回ったことなどから、NYダウは、+107ドルと
なった。週明け4日は、ボストン連銀のローゼングレン総
裁が市場の利上げの織り込み度合いは悲観的過ぎると
指摘したことや、原油価格の下落、高値警戒感などから
NYダウは▲55ドルとなった。5日は、IMF(国際通貨基
金)のラガルド専務理事が世界経済の下振れリスクに言
及したことや、米財務省が米国企業の課税回避を抑制
する措置を発表したことなどから、NYダウは▲133ドルと
なった。6日は、原油価格が大幅に上昇したことや、3月
のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録の内容がハト
派的であったことなどから、NYダウは+112ドルとなった。
 当面の見通し~決算発表が目先の上げ材料に
経済指標では4月13日発表予定の3月の小売売上高
(事 前予 想:前月 比 +0.2%)などが注 目される。また、
2016年1-3月期決算発表が4月11日のアルコアを皮切り
に 本 格 化 す る 。 1-3 月 期 の S&P500 の 1 株 当 た り 利 益
(EPS)は前年同期比▲9.5%の減益が予想されている
(4月1日時点のBloomberg集計)。また、2月26日時点の
予想▲8.0%から下方修正されている。このため予想の
ハードルは低くなっており、実績EPSが事前予想を上回
る可能性は高いとみられる。これは目先の株価の上げ
材料となろう。ただ、上昇トレンドが定着するためには、
ドル高、原油安が一時より和らいでいることを受けて、企
業側の4-6月期以降の見通し(4-6月期のS&P500のEPS
は4月1日時点で▲2.7%)が好転し、アナリスト予想の上
方修正が増加することが必要とみられる。
 3月のISM製造業景況指数
4月1日に発表された3月のISM製造業景況指数は、
前月比+2.3の51.8と、事前予想(51.0)を上回り、景気の
分かれ目である50を6ヵ月ぶりに上回った。内訳では新
規受注が2月の51.5から58.3に、生産が2月の52.8から
55.3に、輸出が2月の46.5から52.0に改善した。一方、雇
用は2月の48.5から48.1とやや悪化した。支払価格は2
月の38.5から51.5と大幅に上昇した。原油、銅、鉄鋼な
どの価格上昇が影響しているとみられる。3月の各地区
連銀の製造業景況指数も概ね改善しており、製造業の
景況が底入れした兆しが出てきている。
事前予想は Bloomberg、2016 年 4 月 7 日 10 時時点のもの
図表1. 非農業部門雇用者数(前月比)の推移
(千人)
600
非農業部門雇用者数
(前月比)
400
200
 3月の雇用統計
0
4月1日に発表された3月の雇用統計では、非農業部
門雇用者数が前月比+21.5万人(事前予想:+20.5万人、
2月は+24.2万人→+24.5万人、1月は+17.2人→+16.8万
人に修正)、民間部門雇用者数が同+19.5万人(事前予
想:+19.0万人、2月は+23.0万人→+23.6万人、1月は
3ヵ月平均
-200
-400
11/5
11/11
12/5
12/11
13/5
13/11
14/5
出所: DatastreamよりSMBC日興証券作成
3
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
14/11
15/5
15/11 (年/月)
2016 年 4 月 7 日(木)
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3.円相場見通しとポイント~一段のドル下振れに注意
欧米・為替担当: 本間 英至
ドル円相場はドル安円高が止まらず、政策催促相場の様相を呈している模様である。ドル安に歯止めがか
かるには日米の金融政策がカギを握るとみているが、チャートの形も相場の地合いも依然として芳しくなく、
来週にかけてもドルの下値模索が続く可能性があろう。来週にかけてはFRB関係者の発言が相次ぐ他、
14~15日のG20財務相・中央銀行総裁会議前後の日本の政策当局者の発言が注目される。
 この1週間(3/31~)のレビュー
と2014年10月以来の安値まで下落している。2月以降の
ドル安局面で110円台に突入した際に日銀のレートチェ
ックが入り、ドルが買い戻される場面が散見されたことも
あり、市場では足元で介入に対して一定の警戒感も窺
える。また政治的にも、5月に伊勢志摩サミット、7月に参
院選というビッグイベントを控えて一段のドル安円高放
置は考え難く、積極的な政策対応も期待されよう。
ドル円は31日に112円台半ば前後でスタート後、同日
は小動きで推移したが、翌1日以降はドル安円高が進
行。1日に発表された米経済指標は良好な結果だった
ものの、FRB(連邦準備制度理事会)に早期利上げを
促すほどではないとの見方からドルが売られると、週明
け後もドル売り円買いは止まらず、7日東京時間には
109.11円まで下落した。ドル以外の通貨も、円が全面高
商状となる中で水準を切り下げ、ユーロ円は124.38円、
NZドル円は74.36円まで下落した他、豪ドル円は83円を
一時割り込んだ。(東京時間4/7午後1時時点)
チャート的に一段のドル下振れに注意が必要
しかし、ドルの戻り高値が徐々に切り下がり、節目とさ
れた110.67円(3/17安値)、110.00円を下抜けするなど
チャートの形は悪く、地合いも依然として芳しくない。チ
ャート的には一段のドル下振れに注意を要すべきと判
断される。その際のメドとしては、108.60円(昨年8/24安
値の116.18円から昨年11/18高値の123.76円までの値
幅の倍返し)あたりが指摘されるが、その水準も割り込む
 ドル円相場の見通しと来週にかけての注目材料
経済指標は米景気の好調推移を示唆
1日に米国で3月の雇用統計とISM製造業景況指数
が発表された。雇用統計については、非農業部門雇用
者 数 が 前 月 比 +21.5 万 人 と 市 場 予 想 ( +20.5 万 人 、
Bloomberg調査)を上回り、2ヵ月連続で20万人超の増
加幅を記録。失業率は5.0%と前月(4.9%)から小幅上
昇したが、労働参加率も改善しており悪い失業率上昇
ではない。また、平均時給も前月比+0.3%と市場予想
(+0.2%)以上の伸びとなるなど、総じて雇用市場の堅
調推移が再確認される結果となった。
図表1. 米雇用統計とISM製造業景況指数の推移
800
(千人)
ISM製造業景況指数(右軸)
60
700
600
55
500
400
50
300
200
一方、ISM製造業景況指数は51.8と市場予想(51.0)
を上回って3ヵ月連続で上昇し、好不調の目安となる50
を半年ぶりに上回った。内訳をみても、先行指数として
注目される新規受注指数が58.3(前月:51.5)と大きく上
昇するなど内容も良好だ。製造業はこれまで、力強さを
欠く海外経済やドルの全般的な上昇、原油価格の下落
といった逆風を受けて停滞が続いてきたが、単月ながら
も50を超えてきたことで、米国景気の先行きに安心感を
もたらす材料といえる。加えて、5日に発表されたISM非
製造業景況指数も54.5と市場予想(54.2)を上回って5ヵ
月ぶりに上昇するなど、経済指標は米国景気が好調に
推移していることを示す格好となっている(図表1)。
45
100
0
非農業部門雇用者数・前月比(左軸)
-100
12
13
14
16
(年)
出所:BloombergよりSMBC日興証券作成
図表2. 年初以降のドル円相場の推移
122 (円/米ドル)
120
(円/米ドル)
122
※直近は東京時間4/7午後1時まで
120
118
118
116
116
114
114
112
112
110
しかしドル安は止まらず110円割れ
108
しかし、ドル円はこれら良好な米経済指標をほぼ無視。
ドル安円高は止まらず、本日の正午過ぎには109.11円
106
110
108.60円
106.56円
1/1
1/15
1/29
108
106
2/12
2/26
出所:BloombergよりSMBC日興証券作成
4
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
40
15
3/11
3/25
(月/日)
2016 年 4 月 7 日(木)
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Weekly Outlook No.249
ようだと、106.56円(2011年10/31安値の75.35円から昨
年6/5高値の125.86円までの値幅の0.382倍戻し)が意
識される恐れがあろう(図表2)。
相次ぐFRB関係者の講演、G20も重要イベントに
注目材料としては、米国で3月小売売上高(4/13)や3
月鉱工業生産(4/15)といった注目度の高い経済指標
が発表される他、FRBが足元で物価動向への関心を強
めているため3月消費者物価(4/14)も注目したい。金融
政策関連では、イエレンFRB議長(4/7)、ダドリーNY連
銀総裁(4/8)といったFOMC中核メンバーの発言が予定
されている他、タカ派ハト派双方の地区連銀総裁の講
演も相次ぐ。米金融政策はドル円相場のカギを握るだ
けに要注目である。また、13日にはベージュブック(地区
連銀経済報告)が公表される。
ドル安に歯止めをかけるカギ①米金融政策
政策催促相場の様相を呈している感のあるドル円相
場だが、ドル安円高の背景として、まずは米国の早期利
上げ期待の後退が挙げられる。米国のインフレ期待の
推移をみると(図表3)、2月上旬にかけて低下傾向を辿
った局面で利上げ後ずれ観測が台頭し、ドル円はドル
安が進行したが、その後は原油価格の反発を機にイン
フレ期待も改善。足元では、複数のハト派寄りの FRB
(連邦準備制度理事会)関係者から利上げに前向きな
発言も聞かれており、利上げ期待の浮上がドル押し上
げに寄与しても不思議ではないのだが、そうした動きは
みられていない。その理由として、3月29日のイエレン
FRB議長による利上げに慎重な発言を依然引きずって
いる可能性が考えられよう。特に、同議長講演の直前ま
で、4月を意識した早期利上げ期待が一部で浮上して
いただけに、その反動も加わっていると推測される。だと
すれば、「4月会合後」が視野に入ってくれば、米国景
気が好調推移を辿るに連れてイエレン議長の発言効果
も徐々に低減していくことが期待されよう。
ドル円にとって、4月14~15日のG20財務相・中央銀行
総裁会議は重要イベントとなりそうだ。2月のG20の共同
声明では通貨切り下げ競争の回避が謳われ、これによ
り日本はドル買い介入ができなくなったとの見方も聞か
れる。一方、声明では為替市場について「過度な変動
や無秩序な動きは経済および金融の安定化に悪影響
を与えうる」とも明記している。G20で日本が円相場の過
度な変動への対応策発動に理解を求める可能性があり、
会議前後の日本の政策当局者の発言が注目される。
ドル安に歯止めをかけるカギ②日銀金融政策
ドル安円高の背景として、日銀の信認低下の可能性
も指摘されよう。昨年12月の補完措置発表が緩和策の
弾切れを連想させ、1月に導入を決定したマイナス金利
政策にメディア等から批判を浴びる中、4年目に突入し
た異次元緩和もインフレの十分な押し上げを実現でき
ずにいるのが現状である。日本のインフレ期待は2月上
旬に底打ちしたものの戻りは緩慢であり、インフレ引き上
げに向けた日銀の緩和期待が円安材料になってもおか
しくない。しかし、日銀の信認低下が妨げとなり、インフ
レ期待の緩慢な動きは逆に円高要因となっている可能
性がある(図表4)。だとすれば、ドル安円高を止めるに
は、日銀の信認回復を伴う積極的な追加緩和が必要と
なろう。次回4月27~28日の金融政策決定会合に向けて、
政府の景気刺激策策定の動きに加えて日銀関係者の
発言が注目される。
来週にかけてもドル下値模索の可能性
130
(円/ドル)
(%)
2.0
米期待インフレ率(10年、右軸)
1.8
125
1.6
120
1.4
115
1.2
ドル円(左軸)
110
1.0
105
0.8
15/8
15/10
15/12
16/2
16/4
(年/月)
出所:BloombergよりSMBC日興証券作成
図表4. ドル円と日インフレ期待の推移
130
(円/ドル)
日期待インフレ率(10年、右軸)
(%) 1.2
1.0
125
0.8
この1週間、日本の政策当局からの円高牽制発言を
受けてドル円は一時的に反発するものの、程なく収束し
てドル売りが再開するといった展開を繰り返しており、発
言ではなく実際の行動、すなわち政策催促相場の様相
を強めている可能性が窺える。上述の通りチャートの形
も相場の地合いも芳しくなく、来週にかけてもドルの上
値は重く、むしろ下値を試す可能性があろう。
120
0.6
0.4
115
ドル円(左軸)
0.2
110
0.0
105
15/8
15/10
15/12
出所:BloombergよりSMBC日興証券作成
5
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
図表3. ドル円と米インフレ期待の推移
16/2
-0.2
16/4
(年/月)
2016 年 4 月 7 日(木)
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4.国内経済動向~企業の景況感は現状悪化、先行きも悪化見通し
日本経済・金利担当: 野村 真司
3月の日銀短観では、大企業製造業、非製造業の業況判断DIが現状、先行き見通し共に悪化。特に製造業
の現状は円高等から+6と2013年6月調査以来の低水準となった。先行き見通しは製造業、非製造業共にプ
ラス圏を維持していることから過度に悲観する必要はない。しかし、景況感の悪化が漠然とした先行き不透
明感によるものとすれば、当面は政府の追加経済対策の規模・内容が景況感浮揚のカギを握ろう。
 3月日銀短観:景況感は現状悪化、先行きも悪化
図表1. 業況判断DIの推移
市場で最も注目される大企業・製造業の業況判断DI
は現状が+6と12月調査比6ポイントの悪化で、2013年6
月調査(+4)以来の低水準。中国等、新興国経済の減
速、年初来の金融市場混乱に起因する円高の影響で
素材業種・加工業種共に景況感が悪化した。また、大
企業・非製造業も現状が+22と製造業に比べて高水準
ながら、12月調査比3ポイントの悪化。弱含みが続く個
人消費を背景に対個人サービス、宿泊・飲食サービス
等が悪化した。先行き判断DIはプラス圏ながら大企業・
製造業で3ポイント、大企業・非製造業で5ポイント悪化
する見通し(図表1)。業況判断の選択肢は「良い」、「さ
ほど良くない」、「悪い」の3つ。「さほど良くない」が多数
派で「悪い」が急増しているわけではないことから、過度
に悲観する必要はない。しかし、景況感の悪化が漠然と
した先行き不透明感によるものとすれば、当面は評価の
分かれる日銀のマイナス金利政策よりも、政府の追加経
済対策(財政出動含む)の規模・内容が景況感浮揚の
カギを握ろう。
大企業・非製造業
30
20
見通し
大企業・製造業
10
0
-10
-20
-30
中小企業・非製造業
-40
中小企業・製造業
-50
(シャドウ部分は景気後退期)
-60
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
(年)
出所: 日本銀行「企業短期経済観測調査」よりSMBC日興証券作成
図表2. 設備投資計画の推移
10
(前年度比、%)
12年度
8.1
8.3
13年度
7.1
全規模・全産業ベース
5.6
5
14年度
0
2016年度の経常利益計画(全規模・全産業)は同▲
2.2%と減益見通し。2016年度の想定為替レート(大企
業・製造業)は117.46円/ドルと、2015年度の想定為替レ
ート(119.80円/ドル)に比べ円高水準に修正された。し
かし、市場実勢が大きく円高方向に乖離していることも
先行きの景況感悪化につながった公算が大きい。また、
2016年度の設備投資計画(全規模・全産業、ソフトウェ
アを含み、土地投資額を除く)は前年度比▲0.9%と、3
月調査として遡及可能な2004年度以降でリーマンショッ
ク後の2009年度を除く平均値(0.0%)を下回る(図表2)。
年初の金融市場混乱で2015年度から2016年度への先
送りが想定されたが、結果は先行き慎重なスタンスを示
した。短観の調査結果から設備や人手の先行き不足感
は変わっていない。また、潤沢なキャシュフローや低金
利等、資金面のハードルは低く、足元の景況感悪化に
伴う投資マインド低下が慎重な結果の主因であろう。
 2月毎月勤労統計:実質賃金は4ヵ月ぶりの増加
-5
-0.9
11年度
-2.4
10年度
15年度
16年度
-10
08年度
-15
09年度
*ソフトウェアを含み、土地投資額を除く
-20
3月調査
6月調査
9月調査
12月調査
実績見込
実績
出所: 日本銀行「企業短期経済観測調査」よりSMBC日興証券作成
図表3. 雇用者所得の推移
(前年同月比、寄与度、%)
6
3.9
4
3.6
2.8
2
0
-2
特別給与(賞与)
所定外給与(残業代)
所定内給与
常用雇用指数
雇用者所得(=雇用指数×給・賞与計)
-4
-6
-8
(注)事業所規模5人以上
2007
賃金の動向を示す2月の毎月勤労統計(速報、事業
所規模5人以上)によれば、従業員1人当たり平均の現
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
(年)
出所: 厚生労働省「毎月勤労統計」よりSMBC日興証券作成
6
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
(「良い」-「悪い」、%ポイント)
40
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
金給与総額は前年同月比+0.9%と0.0%が3ヵ月続いた
後、4ヵ月ぶりのプラスとなった。背景の1つとして基本給
や家族手当にあたる所定内給与が底堅く推移している
ことがあり、伸び率は同+0.6%と2014年、2015年と2年連
続のベースアップ(ベア)効果から昨年来のプラス基調
を維持している。また、賞与等の特別給与が同+25.7%
と大幅増加したことも現金給与総額押し上げに大いに
貢献した。以上から、賃金は引き続き緩やかに改善して
いるとの評価が妥当であろう。また、現金給与総額から
物価変動の影響を除いた実質賃金指数は同+0.4%と1
月の横ばいを挟み4ヵ月ぶりのプラスに転じている。
季節調整値では前月比+0.3%の32.9万台とほぼ横ば
いで伸び悩んでいる。当面も30万台前半と横ばい圏で
の動きを見込む。自動車市場は2014年4月の消費増税、
2015年4月の軽自動車税引き上げの影響で縮小の一
途をたどっている。自動車の購買意欲向上につながる
はずだった2016年春闘では、大企業中心にベアは期
待外れに終わった。業界では今年度の販売増のため、
来年度の反動減につながる消費再増税(2017年4月実
施予定)前の駆け込み需要に期待するという皮肉な見
方も台頭している。
常用雇用(一般労働者+パートタイム労働者)は、同
+1.9%と引き続き堅調な伸びを維持し、名目雇用者所
得も同+2.8%と8ヵ月連続のプラス(図表3)。足元の雇
用・所得環境の改善、マイルドな物価動向を勘案すれ
ば、名実共に雇用者所得の改善が見込まれ、個人消
費の下支えに寄与しよう。
図表4. 新車販売台数の推移
50
(万台)
(季節調整値)
新車販売台数
(軽自動車を含む乗用車)
エコカー補助金終了
(2012/9/21) 1月
2010年8月
45.2
45
44.7
東日本大震災
(2011/3/11)
40
37.6
35
なお、3月16日に大手企業の一斉回答を迎えた2016
年春闘では、ベアが2015年対比で鈍化する公算が大き
い。連合によれば、3月30日集計分で0.45%と2015年実
績(0.69%)を下回っている。個人消費を押し上げる効
果は限定的と言えよう。ただ、従来と異なる新しい動きも
みられた。2016年春闘はベアの大きさも然ることながら
全体の底上げが最大のテーマ。2014年、2015年とベア
に取り組んできたものの、大手企業の賃上げペースに
中小企業が追随できず賃金格差は逆に広がった。しか
し、今回主要な製造業の労働組合で構成する金属労
協の集計(3月末時点)によれば、ベアに相当する賃金
改 善 の 月 額 平 均 で 、 組 合 員 299 人 以 下 の 労 組 が 同
1,000人以上の労組を上回った。逆転は1995年の調査
開始以来初めてとなる。2016年春闘においてベアの大
きさは期待外れだったものの、底上げという観点からは
現時点で一定の効果が出たといえよう。ただ、連合によ
れば3月30日時点で労働組合の6割強が未妥結。より規
模の小さい企業の賃上げ交渉はこれからであり、最終
的に底上げが達成できるかどうかは残る6割強の今後の
労使交渉にかかっている。
30
消費増税実施
(2014/4/1)
エコカー補助金終了
(2010/9/7)
25
3月
エコカー補助金復活
(2011/12/20)
20
4月
(注)季節調整は弊社試算
15
08
09
10
11
12
13
14
15
出所: 日本自動車販売協会連合会よりSMBC日興証券作成
 3月新車販売台数:30万台前半で伸び悩み
3月の新車販売台数(軽自動車含む)は前年同月比
▲8.6%の63.6万台と15ヵ月連続のマイナスとなった。車
種別では、昨年4月に実施された軽自動車税引き上げ
前の駆け込み需要の反動が継続したことから、軽自動
車が同▲16.7%と大幅なマイナス。また、排気量660cc
超の登録車は、鋼材メーカーの事故に伴う大手自動車
メーカーの2月の全生産ライン停止(6日間)の影響が残
り、同▲3.2%と2ヵ月連続のマイナスとなった。
7
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
3月
32.9
16 (年)
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
5.新興国市場・経済動向
新興国担当: 山本 正樹 / 白岩 千幸 / 武田 泰典 / 前田 佑太
新興国株式市場は、イエレン発言(3/29)を好感した上昇の後、4月に入り原油価格の反落を受けて軟化。
新興国通貨対ドル相場も同様となったが、急速な円高ドル安から対円では軒並み下落した。産油国の会合
(4/17)を前に原油相場は神経質な展開が予想され、新興国資産もこれに振らされようが、イエレン発言の
効果もあり底堅さは維持しよう。個別では、トルコ中銀総裁の後任問題やブラジルの政局等が注目される。
 最近の新興国市場の動向
新興国株式市場は、3月29日にイエレンFRB(連邦準
備制度理事会)議長が早期利上げに慎重な姿勢を示し
たこと等を背景に上昇したが、4月に入ると総じて軟化し
た。主要産油国間の増産凍結に対する期待が後退し、
原油価格が下落したことが嫌気された。もっとも、6日の
米国時間に原油価格が反発すると、新興国株も総じて
値を戻す展開となっている。過去1週間の株価騰落率
(図表1、6日時点)では、ブラジル株(▲6.2%)が大幅安。
ルセフ大統領に対する弾劾が成立するとの期待により、
ブラジル株は1月下旬頃から大幅に上昇していたが、足
元でそうした期待がやや後退し(後述)、利益確定の売
りに押される展開となった。
新興国通貨対ドル相場は、イエレンFRB議長発言を
受けた全般的なドル安の流れから先週末にかけて上昇
したものの、その後は原油安によるリスクオフの流れから、
総じて軟調となった。一方、この間に急速に円高ドル安
が進行した結果、新興国通貨の対円相場は軒並み下
落した。過去1週間の新興国通貨対円騰落率(図表1、
6日時点)をみると、メキシコペソ(▲4.7%)が大幅に下落。
原油安に加え、米格付け大手による格付け見通し引き
下げ等が売り材料となった(後述)。ブラジルレアル(▲
3.5%)は、大統領の弾劾成立への期待が後退したこと
から、株式と同様に売られた。(前田)
図表1. 主な新興国市場の動向
直近値
騰 落 率 (% )
4月 6日
2016年 初 来 2015年 年 間 過 去 1週 間 過 去 30日 間 過 去 90日 間 過 去 1年 間
株価指数
中国
インド
韓 国
インドネシア
タイ
マレーシア
フィリピン
ロシア
トルコ
南アフリカ
ブラジル
メキシコ
為替
上海総合指数
香港ハンセン指数
SENSEX30種指数
韓国総合指数
ジャカルタ総合指数
SET指数
FBM KLCI総合指数
フィリピン総合指数
MICEX指数
イスタンブール100種指数
JSE全株指数
ボベスパ指数
ボルサ指数
3,050.59
20,206.67
24,900.63
1,971.32
4,868.23
1,373.59
1,717.01
7,180.55
1,860.17
81,511.27
51,184.32
48,096.24
45,281.97
▲13.8
▲7.8
▲4.7
0.5
6.0
6.6
1.4
3.3
5.6
13.6
1.0
10.9
5.4
9.4
▲7.2
▲5.0
2.4
▲12.1
▲14.0
▲3.9
▲3.9
26.1
▲16.3
1.9
▲13.3
▲0.4
1.7
▲2.9
▲1.7
▲1.5
1.1
▲2.6
▲0.0
▲1.6
▲0.4
▲1.7
▲2.5
▲6.2
▲2.0
5.3
0.2
1.0
0.7
0.8
▲1.6
1.1
4.2
▲2.6
5.2
▲2.8
▲2.3
0.7
▲2.4
▲0.6
0.2
3.5
7.5
12.1
3.7
8.5
6.4
14.0
6.5
18.2
11.4
▲23.0
▲20.1
▲12.7
▲3.7
▲11.9
▲11.4
▲7.5
▲11.3
9.7
▲1.2
▲2.7
▲10.5
0.7
▲8.4
▲9.4
▲7.1
▲4.9
▲6.6
0.5
▲7.1
▲1.6
▲6.1
▲6.3
▲0.7
▲11.0
▲4.0
▲4.2
▲6.6
▲9.7
▲8.3
▲18.0
▲4.0
▲20.1
▲19.7
▲24.9
▲32.6
▲13.8
▲2.5
▲2.8
▲3.4
▲2.2
▲2.3
▲1.2
▲2.3
▲1.5
▲2.5
▲3.3
▲3.5
▲4.7
▲2.7
▲2.7
0.5
▲4.4
▲2.8
1.6
▲1.4
2.1
▲0.6
▲2.1
0.5
▲2.7
▲4.9
▲6.3
▲3.3
▲1.9
▲4.0
5.5
▲4.5
3.1
▲1.4
▲0.5
3.6
▲5.6
▲12.6
▲14.7
▲13.5
▲10.5
▲15.6
▲14.6
▲11.5
▲25.8
▲16.4
▲28.1
▲21.5
▲22.8
※プラスは外貨高・円安、マイナスは外貨安・円高
中 国
インド
韓 国
インドネシア
タイ
マレーシア
フィリピン
ロシア
トルコ
南アフリカ
ブラジル
メキシコ
円/人民元
円/インドルピー
円/韓国ウォン(x100)
円/ルピア(x100)
円/バーツ
円/リンギ
円/フィリピンペソ
円/ルーブル
円/トルコリラ
円/ランド
円/レアル
円/メキシコペソ
16.96
1.64
9.49
0.82
3.11
28.17
2.38
1.62
38.65
7.27
30.15
6.22
注: 「直近値」については、当該日付が休場となっている場合は、その前営業日の値を掲載
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
8
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
 新興国市場関連トピック
図表3. インドネシアの消費者物価指数
中国~3月PMIは製造業、非製造業とも上昇
9
(前年比、%)
燃料
1日に発表された3月の製造業購買担当者指数(PMI)
値上げの影響
8
は 、 中 国 物 流 購 入 連 合 会 ( CFLP ) の PMI が 前 月 比
総合
7
+1.2ptの50.2、財新のPMIが+1.7ptの49.7と、いずれも
大幅に上昇した。CFLPの製造業PMIが景況感の分岐
6
点となる50を上回ったのは昨年7月以来。また、CFLPの
5
非 製 造 業 PMI(1 日 発 表 ) は53.8 、財 新 のサ ービ ス業
コア
4
PMI(6日発表)は52.2と、ともに前月比+1pt以上の上昇
となった。財新のコンポジット(複合)PMI(6日発表)も前
3
14/1
14/4
14/7 14/10 15/1
15/4
15/7 15/10 16/1
月比+0.9ptの51.3と、昨年4月以来の高水準となった。コ
(年/月)
ンポジットPMIは製造業とサービス業のPMIを合成した
出所: インドネシア中央統計局よりSMBC日興証券作成
指数で実質GDP成長率のトレンドと似た動きもみられる。
金融緩和やインフラ投資の拡大、輸出改善等を受け、
景気は上向いているとみられ、15日発表の1-3月実質 インド~製造業の景況感は改善傾向が継続
GDP成長率が予想外に堅調な結果になるとの見方も浮
4日に発表された3月の日経製造業PMIは52.4と2月
上している。(白岩)
の51.1から上昇した。同PMIは昨年12月まで5ヵ月連続
で低下し、12月には景況感の分岐点となる50を下回っ
図表2. 中国の財新コンポジット(複合)PMIと実質GDP
たが、年明け以降は急回復している。PMIを構成する各
前年比(% )
60
14
指数をみると、主要項目の「新規受注」や「生産」で回復
13
が顕著となっている。不振が続いていた鉱工業生産(現
58
12
時点で1月分まで判明)も今後は持ち直しに向かうとみ
56
11
られる。
10
54
複合PMI(左軸)
9
52
インド経済は7%台の成長を続けるなど総じて堅調に
推移しているが、民間設備投資など一部に弱さがみら
れる。もっとも、モディ政権による積極的な誘致策が奏
功し、海外からの対印直接投資(FDI)が堅調となって
おり、金融緩和効果の浸透も相まって、今後は民間設
備投資も徐々に持ち直してこよう。(山本)
8
50
7
6
実質GDP成長率
(右軸)
48
46
5
4
44
09
10
11
12
13
14
15
3
16 (年 )
出所: Bloomberg、Markit、中国国家統計局よりSMBC日興証券作成
図表4. インドの日経製造業PMI及び鉱工業生産
インドネシア~消費者物価は先行き鈍化の公算
60
1日に発表された3月消費者物価指数(CPI)の前年
比は+4.45%(2月:+4.42%)と僅かながら3ヵ月連続で前
月を上回った。一方、食品や管理価格(エネルギー等)
を除いたコアCPIは+3.50%と6ヵ月連続で鈍化した。
58
10
日経製造業PMI(左軸)
2014年11月に実施された燃料大幅値上げの影響剥
落により、2015年11月以降のCPI前年比は急低下して
おり、足元はやや上振れているものの、インフレターゲッ
ト内(+4±1%)に収束している。なお、政府が管理し四
半期ごとに見直されるガソリン価格が4月1日から引き下
げられており、これに伴う公共交通運賃の引き下げ等も
相まって、4月以降のCPI前年比は再度低下に転じると
みられる。インドネシア銀行(中央銀行)は、今年に入り3
月まで3ヵ月連続で利下げを実施しているが、インフレ鈍
化で追加利下げによる景気支援の余地も生じよう。(山本)
8
鉱工業生産(右軸)
56
6
54
4
52
2
50
0
48
-2
46
-4
12/1
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
(年/月)
出所: CEIC、Markit、インド中央統計局よりSMBC日興証券作成
9
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
(前年比、%)
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
トルコ~3月の消費者物価指数は大幅に鈍化
ブラジル~大統領弾劾を巡る不透明感が強まる
与党第1党だったブラジル民主運動党(PMDB)の連
立離脱(3月29日)を受けて、ルセフ大統領弾劾の可能
性が一段と高まったとみられたが、ここにきて再び不透
明感が強まっている。大統領側は残る与党各党に対し
閣僚ポストと引き換えに連立を離脱しないよう説得して
いる模様であり、これまでPMDBに追随する動きは出て
いない。一方、最高裁のメロ判事は4月5日、与党内の
CPIの大幅鈍化を受け、トルコ中銀は4月20日の定例
親大統領派議員によるテメル副大統領(=PMDB党首)
会合で小幅な追加利下げを決定する可能性が高まった
の弾劾手続き開始請求を認める判決を下した(弾劾手
と言えよう。一方、コアCPIの改善は限定的であり、引き
続き開始には今後他のすべての判事による承認が必
続き大幅な利下げに踏み切る可能性は低いとみられる。
要)。これまで下院議長に提出された副大統領に対する
ただし、4月は新中銀総裁の就任後、初めての金融政
弾劾請求はいずれも却下されてきたため、これを不服と
策決定となるだけに、エルドアン大統領に近い人物が
する親大統領派が最高裁に訴えていた。今後の展開次
総裁となり、0.5%pt以上の大幅利下げを決定した場合、
第では大統領弾劾を目指す反大統領派に打撃となる
リラ安に振れるリスクに留意が必要だろう。(前田)
可能性があろう。(武田)
4日に発表された3月の消費者物価指数(CPI)は前
年比+7.46%と市場予想(Bloomberg、+8.20%)および前
月(+8.78%)を大幅に下回った。通貨安の一服や食品
の上昇率が大幅に鈍化(+8.83%→+4.58%)したことが
主因。一方、コアCPIは+9.51%と前月(+9.72%)からや
や鈍化したものの、依然として高水準に留まった。
図表5. トルコの消費者物価指数(CPI)
12
(前年比、%)
 来週にかけてのスケジュールと見通し
CPI
コアCPI
11
注目された月初の米経済指標(3月雇用統計、ISM
製造業景況指数等)は米景気の堅調を示す結果となっ
たが、3月29日のイエレンFRB議長発言の直後であった
だけに、米早期利上げ観測の再燃を招くことなく、概ね
無難に通過した。一方で、ここにきて再び原油相場の動
向が焦点となりつつある。原油増産凍結を協議する産
油国の会合(4月17日)を前に、原油相場はその結果を
巡る思惑が交錯して神経質な展開が予想される。来週
にかけての新興国資産もこれに振らされる展開が予想
されるが、イエレン議長発言の効果もあり、底堅さは維
持しよう。
10
9
8
7
6
5
インフレターゲット
(+5%±2%)
4
3
2
12/1
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
(年/月)
注: コアCPIは食品、飲料、エネルギー、タバコ、金を除いたもの
出所: CEIC、トルコ統計機構よりSMBC日興証券作成
メキシコ~ムーディーズが格付け見通しを引き下げ
なお、後述の通り、トルコやブラジルでは、来週にか
けて固有の材料で市場が大きく動く可能性がある。各
主要新興国の注目ポイントは以下の通り。
格付け大手ムーディーズは3月31日、メキシコの長期
国債格付け見通しを「安定的*」から「ネガティブ*」に引
き下げた(格付けは「A3*」)。引き下げの理由として、低
調な国内景気や海外環境の悪化、国営石油会社の収
益悪化を挙げている。一方、メキシコ政府は4月1日、来
年度(1月~)の予算編成指針案を議会に提出し、引き
続き緊縮的な財政政策を維持する方針を示した。石油
関連収入(歳入の約2割)の減少に対応して、政府は2
月17日に今年度予算のうち1,323億ペソ(GDP比0.7%)
の歳出削減を発表しており、来年度予算では更に1,750
億ペソの歳出を削減する計画。原油安を受けて財政収
支は悪化(2013年:GDP比▲2.3%→2015年:▲3.5%)し
ているが、原油価格の下げ止まりや緊縮的な財政運営
により、来年には悪化に歯止めがかかろう。(武田)
中国では、15日に鉱工業生産など3月分の主要経済
指標および1-3月の実質GDP成長率が発表される。1-3
月実質GDP成長率は10-12月の前年比+6.8%を下回る
との見方がこれまで有力となっていたが、前述の通り、3
月のPMIが急回復していることから、予想外に堅調な結
果になるとの見方も浮上している。PMIに続いてこれら
の経済指標も景気の持ち直しを示す結果となれば、株
価も引き続き堅調となろう。
インドネシアでは、15日に3月の貿易統計が発表され
る。昨年は輸出入ともに大幅な前年比マイナスが続い
ていたが、足元ではマイナス幅が縮小傾向にある。なお、
国内景気の持ち直しに伴い、輸出よりも輸入の回復が
先行し、黒字基調が続いた貿易収支が小幅な赤字に
(*)日本では無登録の格付機関による格付け及び見通し
10
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
転じる可能性もあろう。もっとも、景気に過熱感はなく、
赤字が急拡大することは考えにくいため、当面は対外
収支に起因する通貨安圧力は限定的とみている。
インドでは、12日に2月の鉱工業生産および3月の消
費者物価指数(CPI)が発表される。鉱工業生産は、1月
まで3ヵ月連続で前年比マイナスと不振が続いたが、年
明け以降の製造業景況感の急回復もあり、持ち直すと
みている。また、3月に前年比+5.18%と7ヵ月ぶりに鈍化
したCPIがさらに鈍化すれば、市場でも好感されよう。予
算案発表(2月29日)、金融政策決定(4月5日)等のイベ
ントを手掛かりにインド資産は堅調に推移していただけ
に、利益確定売りに押されやすい展開も想定されるが、
経済指標の結果が下支え要因となることも考えられる。
トルコでは、8日に2月鉱工業生産、11日に2月経常
収支の発表等が予定されている。良好な結果となれば
市場はポジティブに反応する可能性もあろうが、最大の
焦点は中銀総裁の後任人事とみられる。バシュチュ総
裁の任期満了(4月19日)が迫る中、後任を巡る観測報
道等に市場が大きく反応する可能性もあろう。市場では、
現総裁の留任や現金融政策委員からの登用が好まし
いとみられている一方、大幅な利下げを求めるエルドア
ン大統領に近い人物の就任が警戒されている。中銀総
裁人事は中長期的な影響も大きいだけに注目される。
ブラジルでは、引き続き大統領弾劾案を巡る動向が
注目される。今週に入って以降、市場の弾劾への期待
はやや後退し、株式・通貨は上昇一服となっているが、
弾劾案は早ければ来週中にも下院で採決される見通し
で、政局は大きなヤマ場を迎える。弾劾案が可決されれ
ば、株式・通貨は再び上昇しようが、逆に否決された場
合は大幅な下落も予想される。
(山本、白岩、武田、前田)
11
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2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
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6.ホテルの容積率が緩和か
日本株担当: 母良田 剛
読売新聞が4月4日付けの朝刊で、『ホテル容積率、緩和へ…訪日外国人急増に対応』と報じている。3月30
日に政府より発表された新たな観光戦略では、訪日外国人数を2020年に現在の2倍の4,000万人、30年に
は同3倍の6,000万人に増やす計画となっている。日本のホテル需給はひっ迫する方向にあり、客室単価は
上昇している。容積率緩和により、より大きなホテルが建てられれば、ホテル業界への追い風となる。
 「ホテル容積率、緩和へ」との報道
図表1. 宿泊者数に占める外国人の割合
読売新聞が4月4日付けの朝刊で、『ホテル容積率、
緩和へ…訪日外国人急増に対応』と報じている。ホテル
の新築や建て替えをする際、同じ敷地面積でもこれまで
より大きなホテルを建てられるよう、建物の容積率を緩
和する方針を国土交通省が固めており、今夏にも自治
体に通知する方針とのことである。外国人観光客の急
増で東京や大阪などの大都市のホテル不足が深刻化
している一方で、3月30日には訪日外国人旅行者増加
などに向けた新たな観光戦略も政府より発表された。新
目 標 で は 、 訪 日 外 国 人 数 を 2020 年 に 現 在 の 2 倍 の
4,000万人、30年には同3倍の6,000万人に増やす計画
となっている。
18%
16%
14%
12%
10%
8%
6%
14/1
14/7
14/10
15/1
15/4
15/7
15/10
16/1
(年/月)
出所: 観光庁「宿泊旅行統計調査」よりSMBC日興証券作成
図表2. 主なホテル関連銘柄
コード
 ホテル業界は成長セクター
図表1で示すように、日本の宿泊客に占める外国人
の割合は着実に上昇しており、現在(2016年2月時点)
では約17%になっている。日本人の宿泊者数はほぼ横
ばいで推移しており、ホテル需給はひっ迫する方向にあ
る。これに伴い、「ホテル単価の上昇⇒好業績」という図
式が直近のホテル関連企業の決算からもうかがえる。民
泊の解禁は、ホテル業界にとってはリスク要因であるも
のの、(1)市場全体が拡大している、(2)民泊の規制緩
和のスピードは今のところ緩やか、(3)日本流「おもてな
し」を宿泊に求める外国人は少なくない、(4)通常、ビジ
ネス客は民泊を利用しない、などを考えれば、ホテル業
界の繁忙は当面続きそうである。
また、米国では「シェラトン」や「ウェスティン」ブランド
で有名なスターウッドホテル&リゾート ワールドワイド社
の買収合戦が足元で報じられている。世界のホテル業
界の規模拡大合戦は長年にわたって起きており、日本
に波及してくれば新たな手掛かり材料になりえる。
図表2では主なホテル関連銘柄をとりまとめた。投資
の参考にされたい。
銘柄名
3258
ユニゾHD
3287
星野リゾート・R
6097
株価(円)
事業内容
「ホテルユニゾ」名でビジネスホテルを大都市
4,725.0
圏にチェーン展開
1,399,000.0
「星のや」、「界」、「チサンイン」などへの投資
を行うJ-REIT
日本ビューホテル
1,692.0
浅草、成田、伊良湖などで「ビューホテル」ブ
ランドのホテルを運営
8179
ロイヤルHD
2,197.0
「リッチモンドホテル」などのホテル事業は、
利益の面では外食に次ぐ柱
8985
ジャパン・ホテル・R
102,500.0
「オリエンタルホテル東京ベイ」、「ホテル日
航アリビラ」などに投資するJ-REIT
9003
相鉄HD
9010
富士急行
1,451.0
富士山周辺エリアで鉄道、遊園地、ホテルな
どを手掛ける
9024
西武HD
2,276.0
国内最大級のホテルチェーン「プリンスホテ
ル」などを運営
9616
共立メンテナンス
9,390.0
独立系の寮運営会社だが、「ドーミーイン」な
どホテル比重が増加中
9708
帝国ホテル
2,360.0
高級ホテルの代表格。大阪や上高地でもホ
テル展開
9713
ロイヤルホテル
218.0
大阪・中之島の「リーガロイヤルホテル」が主
力。京都や東京などにも展開
9722
藤田観光
552.0
「ワシントンホテル」、「椿山荘」、「箱根小涌
園」などを経営
9723
京都ホテル
784.0
「京都ホテルオークラ」と「からすま京都ホテ
ル」の2拠点
679.0
14年9月に「サンルート」を買収。横浜ベイ
シェラトンなども運営
注: 4月6日終値ベース
出所: Bloomberg、東洋経済などよりSMBC日興証券作成
12
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
14/4
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
7.待機児童問題の実態
日本株担当: 石田 卓也
待機児童が問題となっている背景には、保育所や保育士の数が不足しているということがある。安倍政権が
掲げる一億総活躍社会の実現に向け、女性が継続して働ける環境を整備することは重要な課題である。目
先では5月に取りまとめられる「ニッポン一億総活躍プラン」に向けてさらなる追加対策が出されると思われ、
保育関連銘柄には注目が集まろう。
 待機児童の背景
図表1. 現状では保育所は足りていない
最近、話題となっている待機児童問題。安倍政権が
掲げる一億総活躍社会の実現に向け、女性の活躍は
重要事項だ。実際に新規登用管理職に占める女性の
割合が上昇したこともあり、出産・育児後も女性が継続
して働ける環境を整備しようという機運は高まっている。
また、経済産業省が女性活躍に優れた上場企業を「な
でしこ銘柄」として選定するなど、投資家の関心を高め
各社の取り組みに注目が集まっている。
0~5歳の人口 約625万人
保育施設
に入所して
いる子ども
の人数
約270万人
育児中の女性が仕事をするためには保育所など仕
事の間に子どもを預ける場所が必要となる。しかし、この
保育所の数が不足しているため待機児童が社会問題
化している(図表1)。待機児童の数は定義によりバラつ
きがあり、6万とも、潜在的な数も含め100万人以上いる
とも指摘されている。ただ、一貫して言えることは保育所
や保育士の数が足りないということであろう。これらの数
は徐々に増加してはいるが、認可保育所は常に定員オ
ーバーの状況となっているなど不足状態は続いている。
保育所の増設や保育士の確保が喫緊の課題となって
いる。
幼稚園
在学者数
約140万人
約215万人
は自宅等
での保育
平成27年3月時点
出所: 厚生労働省、文部科学省よりSMBC日興証券作成
図表2. 主な保育関連銘柄一覧
 注目度が高まる保育関連銘柄
政府はこの待機児童問題について、3月28日に緊急
対策を打ち出すなど改善に取り組んでいる。また、5月
にとりまとめられる「ニッポン一億総活躍プラン」に向け、
さらなる追加対策が出されることも予想され、関連銘柄
への注目度は高まろう。
主な関連銘柄としては、保育施設の運営や人材派遣
などを中心事業としている企業の他に、鉄道会社もあげ
られる。鉄道各社は沿線に住みやすい環境を整えるこ
とにより、若い子育て世代の人口流入を促すことを狙っ
ている。ただし、収益面での影響は各社で差があるので、
本業などのファンダメンタルズも考え合わせて投資され
たい。
4月6日
終値(円)
銘柄コード
銘柄略称
保育関連事業の内容
2168
パソナ
738.0
保育園・企業内保育施設の運営。
保育士の派遣サービス
2749
JPHD
423.0
認可・認証保育園の運営の他、
学童クラブなど子育て支援事業
6189
グローバルG
3,285.0
認可・認証保育園の運営の他、
学童クラブなど子育て支援事業
7956
ピジョン
2,712.0
認可・認証保育園、
企業内保育施設の運営・受託
8750
第一生命
1,248.5 保有ビルへの認可保育所の誘致
8850
スターツ
2,411.0 認可保育園の運営
9001
東 武
540.0 駅チカに保育園・学童保育所を誘致
9005
東 急
918.0 学童保育事業
9006
京 急
952.0 認可保育園の運営
9007
小田急
1,162.0 駅チカ保育園の運営
9008
京 王
9470
学研HD
9783
ベネッセHD
936.0 認可・認証保育所の運営
244.0
保育士向け情報サイトの運営や
保育所の受託運営
3,075.0 公立保育園の受託運営や認可園の運営
出所: QUICK、各社HPなどよりSMBC日興証券作成
13
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
8.米国先物~投機筋によるポジション動向 (3月29日集計分)
日本株担当: 母良田 剛
米商品先物取引委員会(CFTC)が4月1日に発表した建玉明細報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引
所(CME)の通貨先物市場で投機筋による円の対ドルでの持ち高は、買い越し幅が2週連続で拡大した。原
油先物の買い越し幅は6週ぶりに縮小し、原油価格の先高観が薄れていることを示唆している。また、金の
買い越しは約3年4ヵ月ぶりの高水準となり、投機筋は世界経済の成長減速の見方を変えていないようだ。
 円の買い越し幅は2週連続で拡大
は、会議での実効性を疑問視する見方が高まっている
ことを示唆している可能性がある。4月1日にはサウジア
ラビアのムハンマド副皇太子が、主要産油国が計画す
る増産凍結にイランが参加しない場合、サウジも加わら
ない考えを示した。
米商品先物取引委員会(CFTC)が4月1日に発表し
た建玉明細報告(3月29日集計分)によると、シカゴ・マ
ーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で投機筋
(非商業部門)による円の対ドルでの持ち高は、買い越
し幅が2週連続で拡大した(図表1)。なお、イエレンFRB
(連邦準備制度理事会)議長は29日にニューヨークで
講演を行い、追加利上げは慎重に進めるのが適切との
見解を改めて表明したことから、足元ではドル安円高の
流れとなっている。
 金の買い越しは約3年4ヵ月ぶりの高水準
ニューヨーク商品取引所(COMEX)で投機筋による
金先物の買い越し幅は2週連続で拡大した(図表3)。
2012年11月下旬以来の高水準となっている。金融市場
の混乱と世界の経済成長減速で資産の逃避需要が高
まり、金先物相場は1-3月に過去30年で最大の上昇を
示した。
一方で、ニューヨーク・マーカンタイル取引所
(NYMEX)で投機筋による原油先物の買い越し幅は6
週ぶりに縮小した(図表2)。OPEC(石油輸出国機構)
加盟国と非加盟国が生産水準維持に関する協議を4月
17日に再開すると報じられていたが、買い越し幅の縮小
図表1. 円先物ポジション
一方で銅の売り越し幅は急速に縮小後、買い越しに
転じていたが、2週ぶりに再び売り越しとなった(図表
4)。
図表2. WTI原油先物ポジション
(枚)
(円/ドル)
(枚)
(ドル/バレル)
90
500,000
120
95
450,000
110
400,000
100
350,000
90
円ポジション(左軸)
50,000
ドル円(右軸、逆目盛)
100
0
買い残高ー売り残高
-50,000
105
300,000
110
250,000
80
70
買い残高 ― 売り残高
200,000
115
60
150,000
120
-100,000
-150,000
13/4
13/10
14/4
14/10
15/4
15/10
125
50,000
130
0
(ドル/TOZ)
200,000
160,000
金価格(右軸)
20
13/10
14/4
14/10
15/4
15/10
(枚)
(年/月)
(ドル/ポンド)
20,000
1,700
金ポジション(左軸)
30
図表4. 銅先物ポジション
(枚)
180,000
40
原油価格(右軸)
13/4
(年/月)
図表3. 金先物ポジション
50
原油ポジション(左軸)
100,000
360
買い残高ー売り残高
340
1,600
10,000
1,500
0
1,400
-10,000
280
1,300
-20,000
260
1,200
-30,000
1,100
-40,000
1,000
-50,000
320
140,000
120,000
300
100,000
80,000
60,000
240
220
40,000
20,000
買い残高ー売り残高
13/10
14/4
14/10
200
銅価格(右軸)
0
13/4
銅ポジション(左軸)
15/4
15/10
180
13/4
(年/月)
出所: 図表1~4ともにCFTC(米商品先物取引委員会)、BloombergよりSMBC日興証券作成
14
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(年/月)
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
9. 2016年1-3月期米国企業決算発表スケジュール
米国株担当: 河田 剛
来週から米国企業の2016年1-3月期決算発表が本格化する。2016年1-3月期EPSは、全産業は前年比▲
9.5%、非金融は▲8.6%と、4四半期連続で減益になる見込み。エネルギーを除いたベースでも▲4.7%の
減益が予想されている。セクター別では、耐久消費財、ヘルスケア、通信、などが増益予想になっているの
に対し、非耐久消費財、エネルギー、金融、工業、情報テクノロジー、素材などは減益が予想されている。
 4四半期連続で減益見込み
図表2. 米国主要企業決算発表スケジュール(予定)
来週から米国企業の2016年1-3月期決算発表が本
格化する(図表2、4月5日時点の予定)。S&P500ベース
の四半期EPS(1株当たり純利益)は、2015年10-12月期
に3四半期連続で減益となった(図表1)。
発表予定日
4月11日
4月13日
4月14日
4月14日
4月15日
4月15日
4月18日
4月18日
4月19日
4月19日
4月19日
4月19日
4月19日
4月20日
4月20日
4月20日
4月21日
4月21日
4月21日
4月21日
4月21日
4月21日
4月22日
4月22日
4月22日
4月25日
4月25日
4月26日
4月26日
4月26日
4月26日
4月26日
4月26日
4月26日
4月26日
4月27日
4月27日
4月27日
4月27日
4月28日
4月28日
4月28日
4月28日
4月29日
4月29日
5月2日
5月3日
5月3日
5月13日
2016年1-3月期EPSは、全産業は前年比▲9.5%、非
金融 は▲8.6%と、4四半 期連 続で減 益になる見込 み
(Bloomberg集計、4月1日時点)。セクター別では、耐久
消費財、ヘルスケア、通信、などが増益予想になってい
るのに対し、非耐久消費財、エネルギー、金融、工業、
情報テクノロジー、素材などは減益が予想されている。
金融では銀行、工業では資本財、情報テクノロジーで
は半導体、ハードウェアが足を引っ張る形になっている。
なお、S&P500からエネルギーを除 いたベースでも▲
4.7%の減益が予想されている。個別では4月13日から
19日にかけての大手金融、21日のアマゾン・ドット・コム、
25日のアップル、29日のエクソン・モービルなどの決算
発表が注目される。
図表1. S&P500 EPSの推移 (四半期、前年同期比)
(%)
80
60
実績
40
直前予想
20
0
-20
予想
-40
-60
-80
07/3
08/3
09/3
10/3
11/3
12/3
13/3
14/3
15/3
16/3
(年/月)
業種
非鉄金属
金融
金融
金融
金融
半導体
コンピューター
金融
金融
航空
医薬品/ヘルスケア
インターネット
半導体
カード
通信機器
ソフトドリンク
通信
インターネット
ソフトウェア
ネット販売
ITサービス
自動車
総合電機
ファーストフード
建機
パソコン/ソフト
OA機器
宇宙/航空機
通信
日用品/ヘルスケア
日用品
化学
医薬品
医薬品
インターネット
半導体
鉄鋼
航空機
インターネット
自動車
化学
バイオテクノロジー
美容関連製品
石油
石油
保険
医薬品
メディア
ネットワーク機器
注1: 4月5日時点のデータであり、今後変更の可能性がある
注2: シスコシステムズは2-4月期決算
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
15
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
企業名
アルコア
JPモルガン・チェース
ウェールズ・ファーゴ
バンク・オブ・アメリカ
シティグループ
アドバンスト・マイクロデバイシス
IBM
モルガン・スタンレー
ゴールドマン・サックス
ユナイテッド・テクノロジーズ
ジョンソン・エンド・ジョンソン
ヤフー
インテル
アメリカン・エキスプレス
クアルコム
コカ・コーラ
ベライゾン・コミュニケーションズ
アルファベット
マイクロソフト
アマゾン・ドット・コム
ビザ
ゼネラルモーターズ
ゼネラル・エレクトリック
マクドナルド
キャタピラー
アップル
ゼロックス
ロッキード・マーチン
AT&T
スリーエム
プロクター&ギャンブル
デュポン
イーライリリー
メルク
ツイッター
テキサス・インスツルメンツ
USスチール
ボーイング
フェイスブック
フォード・モーター
ダウ・ケミカル
ギリアド・サイエンシズ
エイボン・プロダクツ
シェブロン
エクソンモービル
アメリカン・インターナショナル・グループ
ファイザー
ウォルト・ディズニー
シスコシステムズ
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
10.インド~市場予想通り昨年9月以来の利下げを決定
新興国・インド・ASEAN 担当: 山本 正樹
インド準備銀行は5日、市場予想通り約6ヵ月ぶりに0.25%ptの利下げを決定した。インド市場では、2月末に
発表された政府予算案が好感され、直近では利下げ期待も相まって、株式、債券、通貨がいずれも上昇基
調となっており、目先は材料出尽くしによる利益確定の売りに押される可能性もあろう。もっとも、外国人投
資家の投資ポジション等を考慮すると、改革期待の再燃等を機に買い戻しの動きが出ることが考えられる。
 市場予想通り0.25%ptの利下げを決定
で期待のあった0.5%ptの大幅利下げが見送られたこと
や、声明文が予想ほどハト派的ではなかったと受け止め
た向きもあったと考えられる。インド市場では、2月末に
発表された政府予算案が好感され、直近では利下げ期
待も相まって、株式、債券、通貨がいずれも上昇基調と
なっており、短期的にはいったん材料出尽くしによる利
益確定の売りに押される可能性もあろう。
インド準備銀行(中央銀行、以下RBI)は4月5日、市
場予想通り、主要政策金利のレポレートを0.25%pt引き
下げ、6.5%とすることを決 定した。また、レポレート±
1%ptとしてきた金利コリドー(翌日物市中金利の事実上
の変動範囲)を±0.5%ptに縮小することも決定し、金利
コリドーの上限に相当するMSFレートおよび下限に相当
するリバースレポレートを変更した。RBIは昨年1~9月に
4回、累計で1.25%ptの利下げを実施してきたが、その
後は様子見スタンスを続けていた。一方、今年2月末に
発表された2016年度(16年4月~17年3月)政府予算案
で財政規律が維持されたことや、インフレや生産など直
近の経済指標も利下げを後押しする内容であったこと
から、市場では今回利下げ予想が有力となっていた。
 改革期待の再燃等が買い戻しのきっかけに
次の焦点としては、4月25日に再開される予算国会の
動向が注目される。野党の反対で先送りが続く物品サ
ービス税(GST)関連法案については、水面下の与野党
協議が進展している模様。州毎に異なる複雑な間接税
の一本化を図るGST導入に道が開ければ、市場でもポ
ジティブに受け止められよう。一方、過去1年間を累計し
た外国人投資家によるインド株式売買動向の推移をみ
 追加緩和にも含み
声明文では、2016年度のインフレ率(消費者物価指 ると、足元では2012年1月以来となる売り越しとなってお
数の前年比、直近の16年2月は+5.18%)が+5%前後で り、投資ポジションの調整が相当程度進んだことも窺え
推移するとし、インフレターゲット (注) の達成に自信を示 る。また、今年も+7%台の高成長が予想される(IMF経
した。その上で、今回の利下げ決定の理由として、イン 済見通し)他、インフレや対外赤字も抑制されるなど、新
フレターゲット達成の見通しが強まったことや、2016年 興国の中でもインドのファンダメンタルズは概して良好
度政府予算案で示された財政再建路線の維持が将来 である。過去の金融緩和効果が今後一段と浸透し、足
のインフレ抑制に寄与すること、インフラ整備や投資環 元で弱含んでいる民間設備投資等を後押しすることも
境の整備等の政府の取り組みが効率性や生産性の向 期待される。改革期待の再燃など何らかのきっかけで株
上につながること、民間投資の弱さ等を理由に挙げた。 式等の買い戻しの動きが出ることが考えられ、下値では
一方、先行きの金融政策は緩和スタンスを継続するとし、 押し目買いスタンスが有効であろう。
追加利下げにも含みを残した。
注:インフレターゲットは 2016 年 4 月以降+4.0%±2.0%となっ
ているが、2017 年 3 月時点で+5.0%、2018 年 3 月時点でター
ゲットの中央値にあたる+4.0%を目指す方針が示されている。
図表1. インドの政策金利
11
このように、インフレターゲットの達成には自信を示し
つつも、一方でアップサイドのリスク要因として、天候や
原油等の国際市況上昇、特定のサービス価格の高止ま
り、公務員の賃上げ等を挙げている。
10
9
MSFレート
8
レポレート
7
 目先は利益確定売りも
リバースレポ
レート
6
5日のインド金融市場は、株式(SENSEX指数)、債券
(10年国債)、通貨(ルピー)がトリプル安で終了した。5
日は原油安等を背景に全般的にリスクオフの流れとな
っており、その影響を大きく受けたと考えられるが、一部
5
13/1
13/7
14/1
14/7
15/1
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
16
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(%)
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(年/月)
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
11.消費増税の先送りだけでなく所得税減税も視野に
日本政治・政策担当: 司
淳
消費増税の先送りが「既定路線」になりつつある。解散権行使のタイミングなどでフリーハンドを握る政権運
営上のメリットを考えると、消費増税は先送りされよう。衆参同日選を占う上では、4月下旬の衆院補選結果
が注目される。サミットで打ち出す新たな経済戦略は、アベノミクス新3本の矢を強化したものとなりそうで、
消費増税の先送りだけでなく、所得税減税も視野に入れて検討される見通しだ。
 「既定路線」となりつつある消費増税の先送り
し、衆院解散時期については、まだ不明だ。少なくとも2
つの条件を揃えてからだろう。①消費増税を予定通り実
施すれば、その後は景気が下振れするため、しばらくは
衆院を解散しにくい。2018年9月が自民党総裁としての
任期末であることを考慮すれば、消去法的に今年中に
衆院を解散することになろう。このため、少なくとも政権
運営上のフリーハンドを握るためには、ここで消費増税
を先送りしておく必要がある。②また民進党ら野党の協
調体制の度合いなど、準備がどの程度進んでいるのか、
確認しておく必要がある。衆院補選(4月24日投開票:
北海道5区、京都3区)で、与野党対決型の北海道5区
での選挙結果は、野党共闘の進展度合いや現在の与
党への風当たりなどを占う試金石になろう。
3月の国際金融経済分析会合(第1~3回)で、スティグ
リッツ米コロンビア大教授やクルーグマン米プリンストン
大名誉教授らノーベル経済学賞受賞者など国際的な
経済学者は消費増税の先送りを提言した。安倍総理は
3月末からの訪米で、グリーンスパン元FRB(連邦準備
制度理事会)議長やルービン元財務長官ら米国の元政
策責任者らとの会合で、世界経済の減速を食い止める
ため、日米をはじめとする主要国にどんな施策が必要
かをめぐって意見交換した。夕食会では、新興国の経
済状況や原油市場の動向など、今後の世界経済の見
通しのほか、消費税率の引き上げの是非についても意
見が交わされた。おそらく、そこでも世界経済の先行き
不透明感などを理由に消費増税に消極的な提言を受
けたとみられる。
 衆院補選(4/24)で与党が負けると衆参同日選の
可能性が低下
報道によると、前原誠治・元民主党政調会長は「解散
してほしい」と述べ(4月3日)、自信をにじませた。民進
党の岡田克也代表は、衆院解散について「五分五分だ
ろう。つまり、解散が行われるという前提で準備する」(同
日)と述べており、野党側の方も臨戦態勢に入っている。
最近の与党議員における不祥事や不規則発言などへ
の批判票に期待する面もあろう。また、共産党の志井委
員長は「参院の1人区だけでなく、衆院小選挙区でも、
場合によっては候補者調整があり得る」(同日)と述べて
おり、野党内で選挙協力がさらに進展すれば、独自候
補の擁立を断念することも辞さない覚悟を示した。この
ように、野党共闘の度合いは現状では流動的であるが、
先行きについては、選挙協力が進展する可能性があ
る。
2014年11月18日、消費税率10%への引き上げ1年半
延期と衆院解散を表明した際に、安倍総理は「再び延
期することはない。はっきりと断言します。景気判断条項
も付すことなく確実に実施します。3年間3本の矢をさら
に前に進めることにより、必ずやその経済状況を作り出
すことができる」と自信を見せた。延期の是非を問うとし
て臨んだ衆院選では、自民党の公約に「17年4月に消
費税率を10%にする」と明記した。
そして今回、安倍総理は、米ワシントンで「市場や国
際社会からの信認維持のためリーマン・ショックや大震
災のような重大な事態が発生しない限り、予定通り引き
上げる。重大な事態があれば、引き上げ延期は専門的
見地からの分析も踏まえ、その時の政治判断で決定す
べきだ。延期には法改正が必要だが、適時適切に判断
する」(日本時間4月2日)と述べた。
以上を整理すると、補選で与党が勝てば、消費増税
は解散権のフリーハンドを握れるという点で政権運営上
得策なので先送りすることになり、衆参同日選の可能性
は高まろう。一方、補選で与党が負ければ、解散権のフ
リーハンドを握っておく必要性が一段と高まるため、消
費増税はますます先送りの方向になり、衆参同日選の
可能性は低くなろう。どちらにしても消費増税は先送り
で、補選の結果次第では衆参同日選の可能性があると
いうことになろう。
安倍総理としては、消費増税を先送りしたい。そこで
国際的な信認を損なう恐れに対して、米国の元政策責
任者らからも、世界経済の先行き不透明感などを理由
に消費増税の先送りはやむをえないとの「お墨付き」を
もらいたかったところだろう。
これまでの経緯を踏まえると、おそらく安倍総理はす
でに消費増税の先送りを決断していると思われる。ただ
17
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
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Weekly Outlook No.249
もっとも同日選で必ずしも衆参とも3分の2以上の議席
を獲得するとは限らない。むしろ「お灸をすえる」投票が
参院だけでなく衆院にも波及し、与党の議席が衆院で3
分の2を下回る可能性もある。それでも衆院議員の任期
が2020年まで伸びるメリットはある。安倍総理が目指す
憲法改正には十分な国民の理解が必要であり、時間が
かかるためである。
す方針である。サミットと連動する格好で安倍総理は新
たな経済戦略としてアベノミクス新3本の矢の強化版を
新成長戦略として打ち出す見込みである。
経済財政諮問会議(4月4日)では、民間議員が「経
済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の策定
に向けた提言を示した。そこでは次の 3つの観点から
「成長と分配の好循環」に資する政策に重点化すべきと
した。
 消費喚起策では所得税減税も視野に検討
政治だけでなく政策面でも動き出している。安倍総理
は4月5日、2016年度予算の前倒し執行に関する具体
的な指示を出した。公共事業を中心とする約12兆円を
対象に今年9月末までに全体の8割程度(約10兆円規
模)が契約済みとなるよう目標を定めた。GDP統計にカ
ウントされる「着工」ベースでどの程度の前倒しになるか
は未定だが、少なくとも6~7割前後は前期(4~9月)に集
中することになろう。その反動として後期に下ブレ圧力
が出てくるため、並行して16年度補正予算案の検討も
本格化させよう。
 国民一人ひとりの希望の実現を支える施策を推進
する。
 人材やR&Dへの投資、規制改革等を通じてイノベ
ーションを創出し、生産性を高め、供給力・地域力
を強化する。
 実質賃金・可処分所得を引き上げるとともに、国民
が生活の質の改善を実感できる消費喚起に取り組
む。
具体策としては、増えた税収などアベノミクスの成果
の活用を明確にするよう求めたほか、予算や税制による
消費喚起策などが必要との考えを示した。この点につ
いて、記者から「減税に関する議論があったのか?」と
の質問があったが、石原経済再生担当相は、国会答弁
のため会議に参加していなかったため、議論があったか
どうかは不明とされた。ただし、複数で報じられたところ
によると、所得税減税を想定していると見られる。最終
的に盛り込まれるかどうか未定の段階とはいえ、消費喚
起策として、消費増税の先送りだけではなく、所得税減
税まで視野に入れている可能性があるという点は、少な
からずサプライズであろう。主な具体策の柱は、①子育
て支援等、②成長戦略加速、③個人消費の喚起、④ア
ベノミクスの成果活用等、となっている(図表2)。
図表1. 参院選までに想定される経済対策への動き
•2016年度予算成立を受けて予算の執行前倒しを指示(4月5日)
4月上 •教育や社会保障見直しなど参院選公約策定作業を加速(自民党は4月にとり
まとめ)
旬
4月24
日
•衆院北海道5区、京都3区補選(参院選の前哨戦。野党間の選挙協力の試金
石に)
•【規制改革・新成長戦略】個人消費の喚起、技術革新の後押し、TPP対策の
農産物輸出促進、観光振興策など
5月上 •【ニッポン一億総活躍プラン】非正規雇用の待遇改善、高齢者雇用の促進、長
中旬
時間労働是正など(緊急性が高いものは経済対策として打ち出す見通し)
•G7伊勢志摩サミット(外交で成果出せば内閣支持率に好材料)
5月26 •同サミット前後で消費増税の是非や衆院解散を判断(発表はG7後か)
~27日
5月内
5月末~
6月初旬
夏
•公職選挙法改正案などが成立(「1票の格差」是正の道筋がつき、衆院解散の
環境整う)
•経済財政運営の基本方針(骨太の方針)・・・緊急経済対策は秋の臨時国会に
2016年度補正予算案として提出見込み
(以上)
•参院選(衆院選とダブル選となる可能性、来年の消費再増税の再延期や憲法
改正が焦点か)
出所: 各種報道よりSMBC日興証券作成
5月下旬の伊勢志摩サミットで安倍総理は、アベノミク
ス新3本の矢を強化した新たな経済戦略を打ち出すと
報じられた。サミット議長の安倍総理は、世界経済の先
行きに不透明感が増していることから、先進7ヵ国(G7)
による経済対策と政策協調を最重要議題に位置づけて
いる。新興国の景気減速や原油価格の低迷など負の
連鎖が世界規模に広がらないよう先手を打つ構えであ
る。これまでに比べるとマクロ経済政策は金融政策から
財政政策に重心をシフトするが、構造改革も協調を促
18
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
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Weekly Outlook No.249
図表2. 経済財政諮問会議での民間議員の提言
Ⅰ.結婚・出産・子育ての希望、働く希望、学ぶ希望の実現
(1)結婚・出産の支援(第2子、第3子への支援の拡充)
(2)子ども・子育て支援の質・量の早期充実、子供の貧困対策等(待機児童解消、保育士賃上げ、給食費免除など)
(3)就業を希望する女性・高齢者等の就業促進、非正規の待遇改善(「130万円」の壁の克服、同一労働同一賃金等)
(4)女性の活躍推進
Ⅱ.成長戦略の加速等
(1)生産性革命に向けた取り組みの加速(中小企業の生産性向上支援、産業の新陳代謝促進等)
(2)新たな有望成長市場の創出・拡大(外国人患者受け入れ機関増加等)
(3)TPP等に対応した海外の成長市場との連携強化(「日本ブランド」を活かす等)
(4)地方創生、中小企業支援(日本中のトイレの快適化等)
(5)防災・国土強靭化、成長力を強化する公的投資への重点化
(6)経済統計の改善(ビッグデータ等の民間情報の活用等)
Ⅲ.個人消費の喚起
(1)賃金・可処分所得の引き上げ等(最低賃金の引き上げ等)
(2)潜在的な消費需要の実現(健康長寿分野での新社会システムの構築、日本中のトイレの快適化等)
(3)ストックを活用した消費・投資喚起(中古住宅の品質評価強化、NISAの利便性向上等)
(4)消費マインドの喚起(プレミアム付商品券・旅行券等の発行、日本版ブラック・フライデー(注1)の実施等)
Ⅳ.成長と分配をつなぐ経済財政システムの構築
(1)行政手続きの簡素化・効率化・オンライン化(1年以内に2割効率化目標等)
(2)歳出効率化の成果等を現役世代や地域に還元する仕組みの構築
(3)資源配分の効率化(「見える化」などを通じたワイズ・スペンディング(注2)の推進等)
注1:「日本版ブラック・フライデー」とは全国の百貨店や商店街による大規模セール
注2:「ワイズ・スペンディング」とは単なるバラマキではなく効率性や利便性を生み出す財政支出
出所: 内閣府「経済財政諮問会議」資料よりSMBC日興証券作成
19
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12.主な国内株価指数とテクニカル指標の推移
日本株担当: 溝渕 彩乃
米国の早期利上げ期待後退や日銀への信認低下などから円高が進行し、日経平均は4月6日まで7日続落。
6日の25日移動平均乖離率は2月13日以降で最大のマイナス幅となった。日本株は当面、金融政策や財政
政策の催促相場が続こう。一方、東証REIT指数は4月4日に1,900pt台を回復した。マイナス金利の導入を
受けた運用方針変更などに伴う金融機関の需要増加などが期待でき、今後も堅調に推移しよう。
図表1. 主な国内株価指数とテクニカル指標の推移
【国内主要株価指数】
150
140
1,900
130
1,850
120
110
100
90
日経平均
日経JASDAQ指数
80
70
8/25
9/24
10/24 11/23 12/23
2015年
2/21
0.5
1,800
0.4
1,750
0.3
1,700
0.2
1,650
0.1
1,600
0
1,550
-0.1
東証REIT指数(左軸)
3/22 (月/日)
8/25
9/24 10/24 11/23 12/23 1/22
2015年
【日経平均と25日移動平均・乖離率】
(%)
15
日経平均株価(左軸)
10
20,000
(円)
20
25日移動平均(左軸)
22,000
2/21
-0.2
3/22 (月/日)
2016年
【日経平均と100日移動平均・乖離率】
(%)
10
100日移動平均(左軸)
20,000
0
-5
16,000
25日移動平均乖離率
(右軸)
5
8/25
9/24 10/24 11/23 12/23 1/22
2015年
(円)
2/21
-5
16,000
(円)
300
250
-20
3/22(月/日)
2016年
【日経平均 ストキャスティクス(9日)】
300
250
20,000
200
18,000
16,000
2/21
日経平均株価(左軸)
%D(右軸)
Slow %D(右軸)
22,000
20,000
-15
9/24 10/24 11/23 12/23 1/22
2015年
【日経平均と東証一部25日騰落レシオ】
-10
100日移動平均乖離率
(右軸)
-15 14,000
3/22 (月/日)
8/25
2016年
日経平均株価(左軸)
東証一部25日騰落レシオ(右軸)
22,000
0
18,000
-10
14,000
(%)
150
120%ライン
14,000
2015年
150
(%)
16,000
100
100 14,000
50
20%ライン
12,000
8/25
200
18,000
80%ライン
70%ライン
20
15
日経平均株価(左軸)
5
18,000
0.7
0.6
1,500
1/22
(%)
日本10年物国債利回り(右軸)
2016年
(円)
22,000
東証マザーズ指数
【東証REIT指数と日本10年物国債利回り】
(pt)
1,950
(150日前を100として指数化)
9/24 10/24 11/23 12/23 1/22
2016年
2/21
50
12,000
3/22 (月/日)
8/25
2015年
9/24 10/24 11/23 12/23 1/22
2016年
2/21
0
3/22 (月/日)
注: データは2016年4月6日まで
出所: 各図表ともQUICKよりSMBC日興証券作成
テクニカル指標の見方
 騰落レシオ(25 日):過去 25 日間の値下がり銘柄数に対する値上がり銘柄数の割合。一般的に、120%以上で買
われ過ぎを、70%以下で売られ過ぎを表す。
 ストキャスティクス(9 日):直近の終値が過去のレンジで相対的にどのレベルに位置するのかを見るための指標。
%D=(直近終値と直近 9 日間の安値の乖離の 3 日移動平均)÷(直近 9 日間の高値と安値の乖離の 3 日移動平均)
Slow%D は%D の 3 日移動平均。一般的に%D が 80%以上で買われ過ぎ、20%以下で売られ過ぎを表す。
20
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Weekly Outlook No.249
13.来週・再来週の主なスケジュール
<来週のスケジュール>
発表日
国・ 地域
4月 11日 (月 )
日本
米国
中国
トルコ
日本
4月 12日 (火 )
英国
インド
ブラジル
日本
米国
4月 13日 (水 )
ユーロ圏
中国
ブラジル
-
米国
4月 14日 (木 )
ユーロ圏
英国
豪州
-
-
米国
4月 15日 (金 )
ユーロ圏
中国
4月 16日 (土 )
4月 17日 (日 )
週内
インドネシア
ロシア
-
-
-
市場予想 前月・ 前期・ 前年
2月
1-3月期
3月
2月
12-2月期
-
3月
2月
3月
2月
-
-
3月
3月
3月
1-3月期
2月
3月
3月
3月
2月
-
3月
1-3月期
3月
-
3月
3月
-
-
3月
4月
4月
1-3月期
2月
1-3月
1-3月期
3月
3月
3月
3月
-
-
-
機械受注( 船舶・ 電力除く 民需、 前月比)
ア ルコア 決算
消費者物価指数( 前年比)
経常収支
良品計画決算
衆院補選告示(北海道5区、京都3区)
消費者物価指数(前年比)
鉱工業生産(前年比)
消費者物価指数(前年比)
小売売上高指数(前月比)
第5回国際金融経済分析会合
地区連銀経済報告( ベージ ュ ブッ ク)
生産者物価指数(前月比)
小売売上高( 前月比)
小売売上高( 除自動車、 前月比)
JPモルガン・チェース決算
鉱工業生産(前月比)
輸入( 前年比)
輸出( 前年比)
貿易収支
経済活動指数(前月比)
G20財務大臣・ 中央銀行総裁会議( 米ワシ ントン、 ~ 15日)
消費者物価指数(除食品&エネルギー、前年比)
バンク・オブ・アメリカ決算
消費者物価指数(前年比、確報、前回値は速報値)
政策金利
新規雇用者数(前月比)
失業率
IMF(国際通貨基金)・世銀春季総会(~17日)
第33回国際通貨金融委員会(IMFC、~16日)
鉱工業生産指数( 前月比)
ミシ ガン大学消費者信頼感指数( 速報)
ニュ ーヨーク連銀製造業景況指数
シティグループ決算
貿易収支(季調済)
固定資産投資( 都市部、 年初来、 前年比)
実質GDP( 前年比)
小売売上高( 前年比)
鉱工業生産( 前年比)
貿易収支
鉱工業生産(前年比、発表日未定、~18日)
第93回世銀・IMF合同開発委員会
OPECと非加盟国による原油増産凍結をめぐる会合( カタール・ ドーハ)
IMF世界経済見通し
-
-
2.5%
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
0.2%
0.4%
-
-
▲10.0%
9.7%
332.0億 ド ル
-
-
2.2%
-
-
0.50%
-
-
-
-
▲0.1%
92.0
1.00
-
-
10.4%
6.7%
10.4%
6.0%
-
▲0.9%
-
-
-
15.0%
-
2.3%
▲22.3億ドル
-
-
0.3%
▲1.5%
5.18%
▲1.5%
-
-
▲0.2%
▲0.1%
▲0.1%
-
2.1%
▲13.8%
▲25.4%
325.9億 ド ル
▲0.61%
-
2.3%
-
▲0.1%
0.50%
300人
5.8%
-
-
▲0.5%
91.0
0.62
-
212億ユーロ
10.2%
6.8%
10.2%
5.4%
11.36億ドル
1.0%
-
-
-
注: 発表日は現地時間。市場予想と実績は2016年4月7日12時時点のBloombergの値を表示。スケジュールは予告なしに変更されることがあります
出所: Bloombergおよび各種報道などよりSMBC日興証券作成
21
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投資情報部
Weekly Outlook No.249
<再来週のスケジュール>
発表日
国・ 地域
4月 18日 (月 )
日本
米国
NZ
インド
米国
4月 19日 (火 )
独
韓国
ロシア
トルコ
日本
4月 20日 (水 )
米国
英国
マレーシア
トルコ
南ア
米国
4月 21日 (木 )
ユーロ圏
4月 22日 (金 )
インドネシア
-
-
米国
ユーロ圏
4月 23日 (土 )
4月 24日 (日 )
-
-
市場予想 前月・ 前期・ 前年
3月
1-3月期
1-3月期
3月
3月
3月
3月
3月
1-3月期
4月
-
3月
-
3月
3月
3月
3月
3月
3月
3月
1-3月期
3月
12-2月
3月
3月
-
3月
-
2月
4月
1-3月期
-
-
-
-
-
1-3月期
4月
4月
-
-
全国百貨店売上高(前年比、発表日未定、~20日)
モルガン・スタンレー決算
消費者物価指数(前期比)
卸売物価指数(前年比)
住宅着工許可件数( 前月比)
住宅着工件数( 前月比)
住宅着工許可件数(年率換算)
住宅着工件数(年率換算)
ゴールドマン・サックス、インテル、フィリップ モリス インターナショナル決算
ZEW景気期待指数
政策金利
実質小売売上高(前年比)
バシュチュ中央銀行総裁の任期満了
JNTO訪日外客数
全国スーパー売上高(前年比、発表日未定、~25日)
全国コンビニエンスストア売上高(前年比)
輸入( 前年比)
輸出( 前年比)
貿易収支( 季調済)
貿易収支
U・S・バンコープ決算
中古住宅販売件数( 前月比)
ILO失業率
失業保険申請件数
消費者物価指数(前年比)
政策金利
消費者物価指数(前年比)
オバマ大統領がサウジアラビア訪問
FHFA住宅価格指数(前月比)
フィラデルフィア連銀製造業景況指数
アルファベット、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、スターバックス決算
ECB( 欧州中央銀行) 理事会
政策金利
政策金利
G7首脳会議の関連行事「ジュニアサミット」(三重県桑名市ほか、~28日)
地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」の署名式典(ニューヨーク)
キャタピラー、ゼネラル・エレクトリック決算
製造業PMI(速報)
サービス業PMI(速報)
G7農相会合(新潟市、~24日)
衆院補選投開票(北海道5区、京都3区)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
▲5.3%
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
0.2%
-
▲0.5%
▲0.91%
▲2.2%
5.2%
117.7万戸
117.8万戸
-
4.3
1.50%
▲5.9%
-
189.1万人
3.4%
1.6%
▲14.2%
▲4.0%
1,661億 円
2,422億 円
-
▲7.1%
5.1%
▲18,000人
4.2%
7.50%
7.0%
-
0.5%
12.4
-
-
0.00%
6.75%
-
-
-
51.6
53.1
-
-
注: 発表日は現地時間。市場予想と実績は2016年4月7日12時時点のBloombergの値を表示。スケジュールは予告なしに変更されることがあります
出所: Bloombergおよび各種報道などよりSMBC日興証券作成
22
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【随時発行レポート】
<Spot Report >
2016/04/07
日本株式
2016 年度日本株見通しと物色動向
2016/04/06
インド
市場予想通り昨年 9 月以来の利下げを決定
2016/04/05
日本政治
消費増税の先送りだけでなく所得税減税も視野に
2016/04/01
日本株式
日銀短観下振れで日経平均は大幅続落
2016/03/25
トルコ
予想外の利下げ実施により中銀は金融政策の簡素化に着手
2016/03/18
豪ドル
輸出商品価格下げ止まりの持続がカギ
2016/03/18
中国経済
全人代~改革への意欲は高いものの最重要目標は成長か~
2016/03/17
NZ ドル
利下げ観測の後退とともに上向く時期は後ずれ
2016/03/17
ブラジル経済
大統領退陣の可能性が徐々に高まる
2016/03/16
日銀金融政策
4 月にも追加緩和の可能性
<カントリー・レポート>
2016/04/06
トルコ共和国概観
2016/01/18
南アフリカ共和国概観
<注目の投資テーマ&業界ナビ>
2016/04/06
4 月・5 月・6 月の株主優待銘柄のご紹介
2016/03/31
注目の投資テーマ ~2016 年 4 月~
2016/03/25
国内消費関連データ集(更新版)
<プレゼン資料ほか>
2016/04/01
日経平均株価・ドル円の推移と主な出来事
2016/04/01
日銀の金融緩和策(ETF・REIT)
2016/04/01
海外・個人投資家・事業法人売買動向
2016/03/23
日本株式は依然として割安ゾーン
2016/03/23
米国ストラテジー・セレクション『ナイキ』
2016/03/17
マイナス金利導入が日本株に与える影響(更新版)
2016/03/16
下げ止まりの兆しを見せる原油価格
* 上記レポートをご希望の方は、最寄りの支店までお問い合わせください。
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本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
無登録格付に関する説明書
格付会社に対しては、市場の公正性・透明性の確保の観点から、金融商品取引法に基づく信用格付業者の登録制が導入されてお
ります。
これに伴い、金融商品取引業者等は、無登録格付業者が付与した格付を利用して勧誘を行う場合には、金融商品取引法により、
無登録格付である旨及び登録の意義等を顧客に告げなければならないこととされております。
つきましては、格付会社(ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク、スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ、フィ
ッチ・レーティングス)の「無登録格付に関する説明書」を下記の通りお知らせ致します。
<無登録格付に関する説明書(ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対
象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を
受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、これらの規制・
監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等について
格付会社グループの呼称:ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:ムーディーズ・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第2号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要 に関する情報の入手方法について
ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページ(ムーディーズ日本語ホームページ(http://www.moodys.co.jp)の「信用格付事業」をク
リックした後に表示されるページ)にある「無登録業者の格付の利用」欄の「無登録格付説明関連」に掲載されております。
○信用格付の前提、意義 及 び限界について
ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク(以下、「ムーディーズ」という。)の信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似
証券の将来の相対的信用リスクについての、現時点の意見です。ムーディーズは、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期
日に履行できないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用格付は、
流動性リスク、市場リスク、価格変動性及びその他のリスクについて言及するものではありません。また、信用格付は、投資又は財務に
関する助言を構成するものではなく、特定の証券の購入、売却、又は保有を推奨するものではありません。ムーディーズは、いかなる形
式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性
について、明示的、黙示的を問わず、いかなる保証も行っていません。
ムーディーズは、信用格付に関する信用評価を、発行体から取得した情報、公表情報を基礎として行っております。ムーディーズは、こ
れらの情報が十分な品質を有し、またその情報源がムーディーズにとって信頼できると考えられるものであることを確保するため、全て
の必要な措置を講じています。しかし、ムーディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で受領した情報の正確性及び有効性について
常に独自の検証を行うことはできません。
この情報は、平成26年2月18日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するもの
ではありません。詳しくは上記ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
24
2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
<無登録格付に関する説明書(スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対
象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を
受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、これらの規制・
監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等について
格付会社グループの呼称:スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第5号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要 に関する情報の入手方法について
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.standardandpoors.co.jp)の「ライブラリ・規制関
連」の「無登録格付け情報」(http://www.standardandpoors.co.jp/unregistered)に掲載されております。
○信用格付の前提、意義 及 び限界について
スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「レーティングズ・サービシズ」)の信用格付は、発行体または特定の債務の将
来の信用力に関する現時点における意見であり、発行体または特定の債務が債務不履行に陥る確率を示した指標ではなく、信用力を
保証するものでもありません。また、信用格付は、証券の購入、売却または保有を推奨するものでなく、債務の市場流動性や流通市場
での価格を示すものでもありません。
信用格付は、業績や外部環境の変化、裏付け資産のパフォーマンスやカウンターパーティの信用力変化など、さまざまな要因により変
動する可能性があります。
レーティングズ・サービシズは、信頼しうると判断した情報源から提供された情報を利用して格付分析を行っており、格付意見に達するこ
とができるだけの十分な品質および量の情報が備わっていると考えられる場合にのみ信用格付を付与します。しかしながら、レーティン
グズ・サービシズは、発行体やその他の第三者から提供された情報について、監査・デュー・デリジュエンスまたは独自の検証を行って
おらず、また、格付付与に利用した情報や、かかる情報の利用により得られた結果の正確性、完全性、適時性を保証するものではあり
ません。さらに、信用格付によっては、利用可能なヒストリカルデータが限定的であることに起因する潜在的なリスクが存在する場合もあ
ることに留意する必要があります。
この情報は、平成26年2月18日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するもの
ではありません。詳しくは上記スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
<無登録格付に関する説明書(フィッチ・レーティングス)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対
象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を
受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、これらの規制・
監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等について
格付会社グループの呼称:フィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」と称します。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社 (金融庁長官(格付)第7号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要 に関する情報の入手方法について
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.fitchratings.co.jp)の「規制関連」セクションにある「格付方針等
の概要」に掲載されております。
○信用格付の前提、意義 及 び限界について
フィッチの格付は、所定の格付基準・手法に基づく意見です。格付はそれ自体が事実を表すものではなく、正確又は不正確であると表現
し得ません。信用格付は、信用リスク以外のリスクを直接の対象とはせず、格付対象証券の市場価格の妥当性又は市場流動性につい
て意見を述べるものではありません。格付はリスクの相対的評価であるため、同一カテゴリーの格付が付与されたとしても、リスクの微
妙な差異は必ずしも十分に反映されない場合もあります。信用格付はデフォルトする蓋然性の相対的序列に関する意見であり、特定の
デフォルト確率を予測する指標ではありません。
フィッチは、格付の付与・維持において、発行体等信頼に足ると判断する情報源から入手する事実情報に依拠しており、所定の格付方
法に則り、かかる情報に関する調査及び当該証券について又は当該法域において利用できる場合は独立した情報源による検証を、合
理的な範囲で行いますが、格付に関して依拠する全情報又はその使用結果に対する正確性、完全性、適時性が保証されるものではあ
りません。ある情報が虚偽又は不当表示を含むことが判明した場合、当該情報に関連した格付は適切でない場合があります。また、格
付は、現時点の事実の検証にもかかわらず、格付付与又は据置時に予想されない将来の事象や状況に影響されることがあります。
信用格付の前提、意義及び限界の詳細にわたる説明については、フィッチの日本語ウェブサイト上の「格付及びその他の形態の意見に
関する定義」をご参照ください。
この情報は、平成26年2月18日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するもの
ではありません。詳しくは上記フィッチのホームページをご覧ください。
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2016 年 4 月 7 日(木)
投資情報部
Weekly Outlook No.249
本資料について
【免責事項】
本資料は証券その他の投資対象の売買の勧誘ではなく、SMBC日興証券株式会社(以下「弊社」といいます)が投資情報の提供を目
的に作成したものです。本資料は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成していますが、これらの情報
が完全、正確であるとの保証はいたしかねます。情報が不完全または要約されている場合もあります。本資料に記載する価格、数値等
は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。かかる価格、数値等は予告なしに変更する
ことがありますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。本資料は将来の結果をお約束するものでもありませんし、本資料に
ある情報をいかなる目的で使用される場合におきましても、お客様の判断と責任において使用されるものであり、本資料にある情報の
使用による結果について、弊社及び弊社の関連会社が責任を負うものではありません。本資料は、本資料を受領される特定のお客様
の財務状況、ニーズ又は投資目的を考慮して作成されているものではありません。本資料はお客様に対して税金・法律・投資上のアド
バイスを提供する目的で作成されたものではありません。投資に関する最終決定は、契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目
論見書、お客様向け資料等をよくお読みになり、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。
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または転送等を行わないようにお願いいたします。本資料に関するお問い合わせは、弊社の営業担当者までお願いいたします。
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【金融商品取引法第 37 条(広告等の規制)にかかる留意事項 】
手数料等について
弊社がご案内する商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等をご負担いただく場合があります。例えば、店舗における国内
の金融商品取引所に上場する株式等(売買単位未満株式を除く。)の場合は約定代金に対して最大 1.242%(ただし、最低手数料 5,400
円)の委託手数料をお支払いいただきます。投資信託の場合は銘柄ごとに設定された各種手数料等(直接的費用として、最大 4.32%の
申込手数料、最大 4.5%の換金手数料又は信託財産留保額、間接的費用として、最大年率 5.61%の信託報酬(又は運用管理費用)及
びその他の費用等)をお支払いいただきます。債券、株式等を募集、売出し等又は相対取引により購入する場合は、購入対価のみをお
支払いいただきます(債券の場合、購入対価に別途、経過利息をお支払いいただく場合があります。)。また、外貨建ての商品の場合、
円貨と外貨を交換、又は異なる外貨間での交換をする際には外国為替市場の動向に応じて弊社が決定した為替レートによるものとしま
す。上記手数料等のうち、消費税が課せられるものについては、消費税分を含む料率又は金額を記載しております。
リスク等について
各商品等には株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等及び有価証券の発行者等の信用状況(財
務・経営状況を含む。)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)、又は元
本を超過する損失を生ずるおそれ(元本超過損リスク)があります。
なお、信用取引又はデリバティブ取引等(以下「デリバティブ取引等」といいます。)を行う場合は、デリバティブ取引等の額が当該デリバ
ティブ取引等についてお客様の差入れた委託保証金又は証拠金の額(以下「委託保証金等の額」といいます。)を上回る場合があると共
に、対象となる有価証券の価格又は指標等の変動により損失の額がお客様の差入れた委託保証金等の額を上回るおそれ(元本超過
損リスク)があります。
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上記の手数料等及びリスク等は商品毎に異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料等をよ
くお読みください。なお、目論見書等のお問い合わせは弊社各部店までお願いいたします。
商 号 等 SMBC日興証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2251 号
加入協会 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商
品取引業協会
(2015/04/09 版)
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