西松建設技報

U.
D.
C,53,
9.
4.
012
西松 建設 享
支孝
EV
OL5/1
9
8
2
限界状態設計法
Li
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斉藤
正忠 *
Ma
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o
要
約
本報文は, 近 い将来我国 において も構造物設計法の主体 になろ うとしている限界状態設
計法 の基本理念 について述べた ものであ る。
内容 f
和 二は, まず構造物の安全性 を検証す ることの意味 を述べ,次 に安全性検証のため
の確率論的 な強度,荷重の評価 について述べている。最後 に,安全性照査の方法 としての
限界状態 設計法 につ いて,従来の許容応力度法 との対比の もとに, その基本準壬
!
_
念 を述べで
いる。
成果 を踏 えで制定 された ものであ るため,かな りの相違
§1. まえが さ
が生 じてい る。我国 において も,近 く, この限界状 態設
§2.安 全性の検証
計法への移行が予定 されている。
§3.確率論的手法 による安全性の評価
3-1
確率論的手法 とその限界
Tabl
e-1諸外聞の限界状態設計法の導入状態
App
l
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no
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3-2 強度の評 価
3- 3 荷重の評価
§4.安全性 ・
.
後脚 生照査の方法
4- 1 照査方法の分類 と限界状態
4- 2 許容応 力度設計法
4-3 部分安全係数法
§5.あ とが き
§ 1 まえが さ
許容応 力度設別法 は,構 造物の設計法 として長年使用
され,工学的判断 を加味 した伝統的手法であ った。 しか
し, この手法 に内在す る欠点 を除去す るため,宰確率論
的アプ ローチを加味 した限界状態設計法が提案 さ恥
1
9
§2 安全性の検証
5
0
年 ころか らヨー ロ ッパ を中心 に研究が進 め られて きた。
あ らゆ る構造物 において,機能性,緩さ
資性 とな らんで
9
5
5
年 にすで に実用 に伏せ
この方法 は, ソ連 においては1
安全性 が重要 とな る。土木構造物 は,∵敗 に公共的かつ
られ, また,酉 ヨー ロ ッパ においては1
9
6
4
年 に CEB/
FI
大規模であ り, その破壊 は社会的影響が大 きい。 したが
Pの勧告 とな り, これを契機 とLて本格的 な研究が開始
って,機能性,経済性 をふ まえた安全性 は, とりわけ注
9
73年 にはI
SOで採択 された。
され,1
意 を払 うこ とが要求 され る。
Li
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e
これ までの欧米諸国の限界状態設計 法 (
De
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h
o
d) の導入状態 はTabkrlの ようであ る。
上記各回の基本理念,設計法 は, それぞれ独 自の研究L
,
∵娘 に,構造物 またはその構成要素は,建設中お よび
使用中に予想 され るすべ ての外的作用 に対 して,所要の
安全性 を保持 しなければな らない。 また正常 に使用 され
る間は,十分 な機能 を発揮す る とともに, その耐用期 間
*
土木設計部設計課課長
中を通 じて十分 な耐久性 を もつ ように設計されなければ
1
限界状態設計法
否々
公建設 言
文孝
琵VOL5
ならない 。具体的には,見積 られた強度 と荷重応答 との
る。 そこで,安全性 を客観的尺度で表わそうとして導入
f
粧二
,ある "
距離〟をおいて設計を行 っているO この算
されたのが,確率,統計的手法である。すなわち,
安全
t
安全率〟 と呼んでいる。 性 に関与するすべての不確定性要因は,確率法則に従 う
定強度 と荷重応答 との比を通 常 t
Lか L,土1車齢封勿は, 自然環境に建設され,他の構
という前提の もとで 左全性を評価する,いわゆる信頼性
0
年以上 卜一
般的に
造物に比べて使用期間が少な くとも2
は5
0年程度) という長い年月を期
待するものであるか ら,
理論 と呼ばれるものである。話をわか りやす くするため
その間にはさまざまな種類の荷重を受け, その変動 も激
え, その差を確率変数Z-R-Sとおき
には,部材強度 Rと荷重作用Sの 2つの確率的変数を考
しい。 また構造物 紺本の強度に関 して も,土をはじめ力
Z>0-I
--安全
学的特 性 ・強度のよくわか らない材料を用いるので,多
Z≦0--・
・
-破壊
くの変動を考えざるを得ず,十分な安全性を確保するた
めには,構造設計の全般に対 して,いろいろな形で関与
と定義 した とき,
Z>0なる確率 --・
・
信頼度P
l
I
ように分3
謀
i
で きる。
Z≦0なる確率--・
破壊確率 pF(ト pH)
と呼び, このP
R
あるいはpFを安全性の尺度 とす るのが信
頼 性理 論の基本的な考 え方である。
このプ
T
法は,理論的にはきわめて明快であるが,大 き
(
1) 強度に関するもの
な問題点が二つある。一
一
つ は荷重や強度の分布形の選び
して くる不確定要因をで きるだけ明確にする必要がある。
更には人為的に住み出された り,技術の未熟によって生
じる誤差 もある。 これ らの不確定要因の主なものは次の
1)使用構造材料の強度の統計的変動
方により算出される音
線封確率が大 きくなることがある
2)品質管理,施工の良否 に起因する強度の人為的変
即ち通常の土木構造物の推定破壊確率はpF-10こ
し1
0
動
(
2) 荷重に関するもの
。
(
)
と非常に小さく, このようなpFは不確定要素の確率分布
形の選び方により大 きく異なって くる。 しか も,通常入
1)荷重の統計的変動
手で きるデータ数は,強度,荷重 ともに限 られてお り,
2日 肘 亡の変化に伴 う変動
その分布形
を信頼をもって必ず しも決定で きない。いま
(
3) 設計に関するもの
設
r
i
鱗研ヒに伴 う誤差
1) 計荷重の埋悪化, :
積分によらなければならず,繁雑な計算が要求されるこ
2) 角
押i
L
手法による誤差
とになるO そのため,今の ところ実際-の適用は-一
般に
3)
行われていない。叢 も簡潔であ り,実際への適用 という
したが って, 単純に荷重作用 S,部材強度 Rとおいた
面か らの柔軟性を有す る手法は,確率変数の最 も代表的
場合, 設計はR>Sを確保することであるが,上 記の不
な統計値である平均値 と,ば らつきの大 きさを示す分散
確定要図が介在するために,確定的に安全性を照査する
値のみを用いる二次モーメン ト法 (β法)であるといわ
設
計作業中に介在する人為的誤差
れている。 この方法は,破壊確率の代わ りに安全性指標
統計 確率的な手法で司頚髄完要因の定量評価を行 うことで
(
β)を用いて間接的に安全性を評価 しようとするもので
あ り,現在行われている多 くの研究は,確率的な考 え方
ある。構造物の安全性が確保されるのはM-R-S>0
に基づ く合哩的な設計法の相泣 をめざしているO
なる安全性の余裕が与 えられるときであるとして,
§3
確率論的手法 による安全性の評価
3- 1 確率論的手法 とその限界
安全率は,過去の経験に基づいて決められている場合
がほとんどで,構造物の事 故,災害が隻ずると原図究明
が行われ,必要があれば安全率の値は変 えられてきた。
p、
F
=β・C
T
u
を基本 としている。
:Mの平均値
o・
.
.:Mの標準偏差
ただ し,帆
S>1とすれば
また,安全性O
)余裕をM-R/
このような状 況を-て現在に至 っている安全率の値が的
外れになっているとは考 えにくい。 また,経験的に決め
られてきた安全率が通用するのが工学の世界であると割
り切 ることも可能であるが, その数値の根拠-例 えば,
なぜ 1
.
5であ って 1.
3ではいけないか等-を解 明 Lよう
と考えるの もまた工学技術者 としてごく自然なことであ
2
P
帥
、
1-β ・
0 紬
1
,
を基本 とす ることもで きる。
ただ し,拓
.
",:E
nMの平均値
Mの標準偏差
6紬V:色n
ここにβが大 きな値ほど構造物の安全性の余裕が得 られ
西松 建 設 言
支孝
琵VOL5
限界状態設計法
るこ とにな る。 また,部材強度 Rと荷重作用 Sが正規確
どの値 は, その守一
均値 を とるか,i
討氏保証値 とLでの規
率分布 に従 うときには,破 壊確率 pFと安全性指標 βは理
格値 を とるか, これ :
上 下回 るこ とが考 えられない身 氏
論的 にその対応が定 まる。 この ように安全性 に関す る理
値 を とるかのいずれかが考 えられ る。 また,同 じく現在
論が発展 して きたのは,安創 生と対立関係 にあ る経済性
の設封凝
が一段 と重視 され るようにな って きた こ とと, もう-つ
体的 な形 としては,構造物の強度が対象 となる場合は少
は構造角糊刃文術の急速 な発展の中に安全性だ けが取 り残
な く,構造物 を構成す る部材 の断面 力 または応 力等が選
されてい るように思 われ るこ ととによる と思 われ る。 そ
ばれ るのが普通であ る。
もそ も信頼性埋諭 と云 うのは,構造物の強度 ・荷重が統
3-3
L
)
ら
の概念の もとで は,設計強度 と設計荷重 の具
荷重の言
判西
計的 にば らつ くとい うところに碁盤 を置いてい るもので
構造物 に変形,応 力を生 じさせ る原因 となる作用 を荷
あ る。 しか し, それが全て と考 えるのは誤 りであ る。即
重 と総称す るO卑トー
の構造物 を とって も, これに作用す
ち,構 造物 とい うのは,設計
・施工 とい うきわめて人間
る荷重の種類 は多い。 しか も, これ らの荷重 は,方向性
的な行為 を経 て建設 され るので,予期 しない構造物の破
や時間的 ・空 間 的変重婚 性が一
般 に異 な っている。時間
壊 は, む しろ,技術の未熟 さによる要因や制御 し難い人
的変垂妹押目二着目 して も,Ta
bl
e-2の よ うにさまざまな
為的 ミスによって生ず る場合が多 く,単な る強度 ・荷重
ものがあ る。
の変動の結果,生ず るこ とは少 ない と考 えるべ きであ る。
それで は,構造物の英の安全性 を求 め るの に,上 にあげ
た二つの安国を含めた形で倍索
郎三
解析 を行 えば よいわけ
Ta
bl
e-2荷重の時間的変動 による分類
Cl
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n
で あ るが,実際 には, これ らの統計的ば らつ きを調べ る
に常時 作
のは, きわめで国難であ った り,事 実上不可能な場合 も
あ るO従 って, われわれが通常入手 しうる上
班女的正常 な
状況で得 られ る強度および荷重データに基づ いて算出さ
れ る破 射確率 pFあ るいは安全肘 旨標βは,安全性の一つ
の側面 を映 し出 しているにす ぎな く,構 造物の兵の安全
性 レベルを示す もので はない とい う言
葉私を もつ必要があ
2警
謂
喜
芸
わ め て小
用 して, しか も
さい永 久荷 重
が,その大きさの変動が ≡
去る
≦3 再也
的であるが,構造物の安全性をおびやか
衣や衝突荷重のように,ほとんど瞬 間 …
-
4 架設時荷重のように,ある特定の比較的
る。
3-2
強度の言
判面
一定の安全性 を確保 した うえで構 造物 を設計す るため
即断二
評価
には,構造物の強度 を統計的な特性 を含 めてi
す るこ とが,荷重 と並 んで重要 なこ とはい うまで もないO
構造物の強度 は,本来の意味か ら言え闇 華造物 自身の
強度であ り,構成物 を構成す る各種部材の強度で はない。
ここで い う強度 とは,構造物あ るいは部材の耐荷 力のほ
か,変位,変形 (
コンクリー ト構造物の場合は更 にひび
われが加 わ る) な どに対す る抵抗 を含む ものであ り,I
したが って,構造物の安全性 ・使用性の照査 にあた っ
て, これ らの荷重が 同時 に作用す る可能性,す なわち,
荷重の組合 わせ をいかに規定す るかが重要 な問題であ る0
敗 に,設計 において使用 され る組合わせのパ ター ン
は,Ta
b一
e3に示す 3種類が基本 になるo
Tabl
e-3荷重組合せの基本パ ター ン
Fo
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「
「 「(
支配的な変動荷重)+(
永久的な荷亜「
般 に次の要素 によ り支配 され るO
①
構造物 を構成す る部材 および接合部の強度
②
構造物の不静定度
構造物あ るいは部材の強度 は,-璃箕に材料の力学的性
(
支配的な偶発荷盛)+(
永久的な荷薮)+
(
組合わせが必要 と考えられる他の荷蚤)
構 造物の耐用期間中に生ず る荷重の最大値が,通常構
質および構 造物,部材の形状寸法 によ って規定 され る。
造物の安全性に重要 な意味 を持 つ。 したが って, 設蕪澗 :
したが って,強度の評価 にあた っては,次の ような不確
重 も耐用期間中に予想 され る荷重の最大値 を念頭 におい
定要素が存在す る。
て決 めるのが合理的であ る。ただ し, この荷重 は,安全
①
材料の力学的 性質のば らつ き
性 ・健脚 生の水準 と関連 す るので,社会 ・経済的影響 に
②
製作あ るいは施工精度のば らつ き
も配慮 されなければな らないのは当然の こ とであ る。
(
勤 強度解J
J
l
・
上の仮定,近似
この うち,設計規準 に規定 され る材料の力学的性質 な
想定耐田期間は,特 に重要 な構 造物や仮設構造物 な ど
特殊 な場合 を除 き5
0
年程度であ る場合が多い。5
0
年 とい
3
限界状態設計法
西孝
公主
筆設 技 菩
提VOL5
〔
Ⅰ
〕
う長い期間中に生ず る荷重の最大値 を推定す ることは,
ある。 また,後述のように,〔
Ⅰ
王
〕
,l
mjも規準様式
きわめて錐 しい。構造物の強度を調べ る場合には, その
の安全係数を評価す る過程 において利用される概念で
気になれば,数多 くの実験 を行い,かな り短期間の うち
あるo
にその相 生を調べ ることがで きる。
0
年間の最大値を予測するた
ところが荷蚤の場合は,5
〔
Ⅰ
〕の規
ここで在来の設計規準 を含め,上述の
準 様
式を分類すればTa
bt
e5のようになるo
めには,少 くとも数 十年 という歳月をかけて測定す ると
いう地道な努力が必要である。地震 ・強風等の環境荷重
をはじめ として種々の荷重は発生頻度,発生 翫 l
.
7
:
,紺競
時間,大 きさなどの面で不確定性が高い。 しか し, それ
Tab一
e-5水準〔I〕の規準様式の分類
Cl
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o
Le
ve
l[Ⅰ]
で も, これまでの調査結果 によれば 確率的に取 り扱 う
ことの妥当性 は確められているし, また荷重を確率論的
手法で処理す ることに対す る合意 もあると考 えられてい
る。
強度の場合は疲労などを除いて,頼 嗣的変化を考 えな
くてすむか らわか り易いが,刻々 と変動す るもの もある
荷重を確率論的に扱 うのは烏投に理解 しに くい面がある。
また,現在, ま描 f
童を邦
雄昌す る根拠 となる統計的資料
したが って,当面は部分安全係数方式による限界状
が必ず しも十分でな く,今後の研究が またれるというの
態i
j設計法が,
最 も普遍的かつ∵級 的な規準体系 とな り
がモ
尉犬である。
うるものである。従来の構造設計規準の主流 を占めて
§4 安全性 ・使用性照査の方法
式 ということがで きる。
4- 1 照査方法の分類 と限界状態
(
2) 限界状態 許
きた許容応力度方式は部分安全係数方式の特殊な山形
(
1
)照査方法の分類
構造物の安全性 ・使用性の照査方法 を規準様式の上
か ら分類す ると,Ta
bl
e4のように大別される。
構造物は, その強度が十分でなければ使用 中に破壊
す る恐れがあ り危険である。 また,剛性が十分でなけ
れ主
f,通常の使用状態において,荷重作用によるたわ
使
み, その他の変形が過大 とな り, 用上不便や不都合
Tab一
e-4安全性・
健脚 生照査方法の規準株式による分類
Cl
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が生ず る。 このように,構造物は,使用馴 勺を安全に
かつ経済的に達す ることがで きるため, その強度,剛
性,耐久性などについて, それぞれの所要の条件を満
足す るものであることが必要である。
構造物 または部材が.破壊 その他 によって荷重作用
に耐 えるという本来の機能 をまった く失お うとす る状
態,荷重作月引こよる変形 (
コンクリー ト構造物の場合
は更 にひびわれが加わる)が過大 とな り,通常の使用
に対 して不都合を生 じようとす る状態などを構造設計
における限界状態 という。限界状態は小娘 に終局限界
状態 と使用限界状態 とに大別され, 両状態はTa
bl
e6
に示すように多 くの限界状態に分類 される。
これ らの規準様式は,いずれ も先に述べた安全性の
使
通常,構造物の安全 性 ・ 矧 生の照査の対象 とす る
検証 という目的を達成す ることをめざ している点では,
限界状態は複数個存在す る。 しか し,実際には,主要
共通 しているが,照査の表現方法が異なる。〔
Ⅰ
Ⅰ
〕
,〔
Ⅰ
Ⅰ
り
な少数の限界状態に対 して設計を行 えば,他の限界状
の規当欄を
式は,∵娘の構造物に対 Lてはまだ実用の段
態については確かめず ともおのづか ら達 しないことが
階に至 っていない。 したが って,特殊 な場合を除 き,
明 らかである場合が多い。
設計規準 として採用されるのは当面 〔
I
〕の規準様式で
あるが, これは従来の規範 を も包含す る幅広い もので
4
※限界状態 :4- 1
(
2)
参照
限界状態設計法
西松建設 枝 幸
転VOL5
Tab一
e-6限界状態
Li
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s
(
2) 特徴
コンク リー トは本質的 に非輔 集で, 引張 りに対 Lて
強度が小 さ く, ひびわれが出やす い材料であ る。更 に
鉄筋 コンク リー トは鋼材 とコンクリー トを組み合わせ
て得 られ る複合材料で , その力学的な機構が複雑であ
るため, コンク リー ト構造物 における応力や変形の状
態 を理論計算 によ って解 くこ とは事実上困難であ るO
そのため,設計計算の理論 は, コンク リー ト構 造物や
・
耐久性 に関す る実験 ・研究 を基礎 として,
設封計 算の誤差,簡便 さ,構造物の経済性 と安全性 な
部材の強度
どに関す る実際的 な判 折の もとに, その体系が構成 さ
れている。 したが って,設計 にあた っては,理論計算
に基づ く計算結果のほかに,実験,研究お よび施工,
その他の実際上の配慮 によ り定め られた構造上の条件
4-2
許容応力度設計法
本節で は,理解 を容易 にす るため鉄筋 コンク リー トを
対象 とした説明 とす る。
(
1) 概説
鉄筋 コンク リー トの許容応 力度設計法 は,部棚断面
に関す る基準 に従 うこ とが必要であ る。
この設計法で は,各種の限界状態 に対す る安全性を
直接明 らかにす ることはで きないが, 設封計 算 に用 い
るコンク リ- ト,鉄 筋の許容応力度 を適 当に定 め,か
つ構 造上 の細 目に対 して必要 な措置 を講ずれも
幻 蛸郊勺
の平面保持の法則 を仮定 し, コンク リー トの引張強度
簡単な設封音卜
算で,一般 に各種の限界状態 に対 して十
を享
棚
分安全な構 造物 を設計す るこ とがで きる。
(
この仮定はせん断 力の照査 につ いては通用 さ
れない) し, コンク リー トお よび鉄筋のヤ ング係数が
(
3) 問題点
一定であ る として,鉄筋お よびコンク リー トの応 力度
部材の設計 を行 うには,本来, その断面の破壊 に至
を計算で求 め, それ らの値が,あ らか じめ定め られた
るまでの各段階で示す力学的 な性状 を実験 ・研究 によ
それぞれの限界値,すなわち許容応力度 を越 えないよ
って十分明 らかに し,終局強度 を算定 し, これが予想
うにそれぞれの断面形状 寸法,鉄筋の配置 な どを定 め
され る荷重 に対 して十分余裕 を有す るか どうか検証す
る設計方法であ る。 この設封音卜
算の方法 は,鉄筋およ
るこ とが必要で あ る。
びコンク リー トのヤ ング係数が, それぞれ一定であ る
従来の許容応 力度法 においでは,部材 に生ず る応 力
とす る仮定 を月串、
て計算 を行 うこ とか ら,-一
般 に弓
削生
度 は,死 荷重, 活荷重等の組合 わせ荷重 による合成応
設計法 とも呼ばれている。 この設計 計算で は,荊述の
力 として求 め られ,Oyを部材 の降伏強度 とすれば,許
よ うに,部材断面 における鉄筋 とコンク リー トの応力
容応力度設計法 は次式で表 わす こ とがで きる。
度が, それぞれの許容応 力度 を越 えないことを確 め る
こ とによ って その安全性 を確認す るのであ るが, この
C
a=些Z(
OD
+ U
I
,
)
i
/
ような設計計算を行 う目的は,荷重 による部材断面の
応力度 を求 め るこ とにあ るので はな く,部材断面が破
上式か ら推察で きるように,死 荷重, 活荷重の ように
壊 に対 して十分 に安全であ るこ とを硝認 す るこ とにあ
異 なる荷重 による部材応 力度 Jか
,仇 は,左辺の部材強
るのであ る。
度 に対 し同一の安全係数 L
fを用いてお り,個 々の荷重
この設計方法で は部材断面の破壊 に対す る安全は材
に対 Lどの輩度 の安全率が付与 されているか不明であ
料の破 壊強度 と許容応 力度 との比 に相 当す る安全率 そ
る。 しか し,事実上死荷重の変動 は活荷重 よ り小 さい
の他 によ って, これを保証 しようとしている。 また許
ため, それによ る応力度の安全係数 も当然異 な ってよ
容応力度の大 きさを適 当に定 めるこ とによって, コン
いはずで あ る。 た とえ
ク リー トのひびわれ幅や部材の変形が過大 とな らない
床版の設計の場合,断面 力 としては活荷重であ るT荷
よ うに配慮 して,構造物が耐久性 を損 ねた り,使用上
重の完
拶欝が死荷重の紗 欝に比べて圧倒的 に大 きいため,
の不都合 を生 じた りす るこ とに対す る安全を確保す る
許容値 と降伏点 との比が その ままT荷重 に対す る安全
と同時 に,構 造物の櫛 創生を保証 しよ うとしている.
率 となる。 そのため死荷重の影響の大 きい∵ 娘の鉄筋
を
£過 洛橋の鉄筋 コンク 1
)- 卜
5
西 松建 設技 毒
EVOL 5
限界状態設計法
コンクリー ト部材 に比べて活荷重に対す る安全度が過
コンクリー ト構造物の部分安全係数法 においでは,
小になる。 これがつ の原因 とな って全国的な退路橋
設計計算 に用いるコンクリー トの圧縮強度および鉄筋
鉄筋コンクリー ト床版の路傍 に結び付 き, その結果 と
I
,
a.
,
の降伏点 とLて,つぎの式で表わされる粋 旧 劇麦R
して鉄筋コンクリー ト床版の鉄筋の許容応力度を大幅
を定めている。
に低減 したことは記憶 に新 しい。
"
/
.
,
=1
L
J
l(1
-A・V)
このように許容応力度設計法は,部材断面が どの程
1L
度 まで 安全の余裕をもっているか明 らかでな く,所要
-R"
1(
ト k意
-R"
I
-1
.
6
5(
ア
の安全度を直
接 的に保証す ることがで きない。
4-3 部分安全係数法
)-R"
I
-克・6
R)
〟:コンクリー トの)
:
J
l
r
J
i
紹射空または鉄筋の降
ここに
伏点の平均値
構造物 に作用す る荷重作用 と各部材の断面強度 とは,
前述のように,各種の原因によって変動 してお り,ある
Ⅴ-意 ∴ コンクリー トの圧縮強度 または鉄
筋の降伏点の変動係数
確率分布をな していると考 えられる。 これ らの変動の う
ち,調査,試験によって推定で きるものについては,構
k=k-1・
6
5(
po-志 に対応す る確率偏差)
♂:
標準偏差
造物の安全に及ぼすその危険側の影響 を十分確実に排除
す るため,荷重 と材料凝度 についてそれぞれ陣財 政が定
義 されている。 しか し荷重作用の変動 と断面強度の変動
には,調査,盃偶鋸こよって推定す ることが困難な変動が
あ り, またまれには異常な変動 もおこi
)うると考 えられ
る。 そこで, これ らの倖 性値 を設封計算 に用いることに
して も,構造物の安全性 を確保す るには不十分である。
したが って,部分安全係数法では,材料強 度の牲性値 を
さらに低減係数 γ
mによって除 して小さい値 とし,荷重作
1
1
L R
l
h
m
I
i
.
n
Fi
g」(
a) 材料強度の分布 Fi
g-1
(
b
) 材料強度の特性値
Di
s
t
r
i
but
i
ono
f
Rk
mat
e
r
i
als
t
r
e
ngt
h
Cha
r
ac
t
e
r
i
s
t
i
cval
ue
o
fma
t
e
r
i
als
t
r
e
ngt
h
用の鞘堂値 に割増係数γ
′
を乗 じて大 きい値 とす るなどの
方法 によって設計計算に用いる材料強度および荷重作用
(
読) 守一
均値 m,標準偏差値 o
・
の分布をLている晶質
の値 を定義 している。
雷だけ小さい品質
において,平均値 よ り標準偏差の kl
(
1) 材料強度の特性値R7,I,I,
材準悌渡 は, その値が小さ くなる方が構造物 に危険
側 となることが普通であるか ら,試料か ら推定で きる
をx
o-m-kCとす るoxo未満の晶質が集ず る確率 po
は品質の分布が正規分布をしている場合には,累積正
規分布 とな りpoとkは次表の関係になるO
材料強 度の変動の中か らなるべ く小さい値 を選び, こ
7
4
A 0.
6
れを設釘亨卜
算において材料強 度 として用いるのが安全
1
1.
6
4
5
3
"
である。材料強 度の分布は,-薄皮に, その平均値 RI
と変動の大 きさを表わす標準偏差 げによってこれを表
〝
Zより小
わす ことがで きるので,材軒は動麦の平均値 R
さい任意の強度 Rj
Iは,一
般 に次のように表わされるo
bl
e7
参考迄に鉄筋 と板材 について統計値の例 をTa
に示す。
Ri
I
-R〟
/
-k・q
ここに R
I
":材料強 度の母
平均
R/
.
,:
R"
Iよ り小さい任意の材料強度
k:材料強度RがR〝
Zよ り小 さ くな る確率
Tabl
e-7鉄筋及び板材の統計値の例
Exampl
eo
fs
t
at
i
s
t
i
c
sf
o
rs
t
e
e
l
r
e
i
nf
or
cl
ngbarandpl
a
t
e
に関す る係数
♂:
材料強度の標準偏差
Fi
gr1のようにRんの値 を小 さく選ぶほど,材料強
度Rが R/
I
,よ り小さ くなる確率 poは小さ くなるのでt
,
Rkを設計計算に用いる材料強 度 とす ると,材料強度の
変動が構造物の安全に及ぼす危険側 の;
;
牌
は,
R/
Vを小
さい値 に選ぶほど確実にこれを排除す ることがで きる。
6
TL 涼
Rm kgf
/mm2
喜
6
鉄筋 (SD30)
板材 (
SS41
)
D1
6 D25 D32
i-9-1
6m
m
5
5
40
44
40,
3 39.
2 36.
8
2.
44 0,
98 1.
37
※7
1
:
母 集 団 か らの標 本数
(
抽拍数)
41
0
33.
3
3.
5
西松建設 技 寺
EVOL5
限界状態設計法
J
I
S規格値 を粕 L
f
l
=
胞 とすれば 十分安全である。
安全である。
(
2) 荷 鼠作用の特 性値
(
3
)材料強度を低減する部分安全係数 (
材料強度の低
Q
k
活荷重は一般 にその値が大 きい方が構造物 に危険側
の去
拶聾を与 える(
時 とLて逆の場合 もある)0 Lたが っ
て,変動する積載荷重については,一
般 に構造物に最
減係数)
材料強度の設封計算値 [
{
[はつぎの式によって表わさ
れる。
も危険側の呈
;
輝,
l
i
を与える荷重の大 きさとして,なるべ
-
く大 きい値を考える必要がある。
漉き
澱 荷重の陣性値は, そ
ある構造物に作用す る変垂
の構造物の耐用命数の期間に作用する最大荷重の分布
ここに P
Z:材料強度の粕L
l
J
i
良
7㍍:材料強度を低減する部分安全係数
か ら,なるべ く大きい値を選び, その値によってこれ
係数 r"
I〔は,コンクリー トの強度の安全係数 γ,
,
鋼
を定義する。 この最大値は,一つの構造物について,
材の降伏点の安全係数 7
:
SなどがあるOこの場合,部材
持定の変動積載荷重ごとに,-一
つずつ対応するもので
断面強度の設計計算値は f
dの函数で表わされる。係数
l
勺で使用される同 じ形式の
あるか ら,か りに,同 じHf
r"
)
は次項を考慮するものである。
数多 くの構造物について, その翁
を入植の全体か らなる
① 材料強度 または部材の強度が定義された相生値
)危圃 鮎ノ
)
仙 となる1
亜紺ミ
よj
集合を考 えると, この集合はある分布をなす。
この分布について, その平均値Q"
)
を考えると,Q
〝′
(
む 構造物の中にある材料 または部材の強度 と供試
は, その形式の構造物の耐用命数の期間中に, その変
体によって求めた強度 との問に差がある可能性
垂
埴享
載荷重が 1度だけこれを越 える確率が1
/
2で あ る
③ 構造物の中の材料 または部材の強度が,施工方
,
ような大 きさの値であるO この場合 同 じ使用銅 勺を
法や建造方法などにより局部的 に低下する可能性
もつ同 じ形式の構造物の集合ご とに定義され,ある変
④ 施コ
二
の不確実さなどのため材料強度か ら部材の
動積載荷重の粕 ,
生1
1
≠
7
J
.
Q/
L
Jま,最大荷重の分布によって,
強度を求める場合に不明確 さがある可能性
e8にCEB/FI
P に定めている鋼
参考 として,Tabl
次のように表わされる。
+
材 とコンクリー トの部分安全係数を示す。
Q/
t-Q
"
1(
1+kn -Q"
)(
1
-Q"
I
+kq
ここに,Q"
I:構造物の耐用命数の期間に作用する
変動柵 荷重の最大値 が 与 の確率で,
これを越 えて大きくな る値
Ⅴ:
構造物の耐用命数の期間に作用する変
Tabl
e-8CEB/
FI
Pの鋼材、コンクリー トに対する部分
安全係数
Par
t
i
als
a
f
e
t
yf
ac
t
o
ro
fs
t
e
e
la
ndco
nc
r
e
t
eby
CEB/
FI
P
書
喜 鋼 材
1
5
簿 局限界状態
1.
コンクリ- ト
1
.
5
動積載荷重の最大値の分布 における
変動係数 (
-義 )
♂:
標準偏差
k:k-1
.
6
5(po-1
/2
0 に対応 す る確率
偏差)
従来か ら構造物の設計において用いられてきた,い
わゆる設計荷重は構造物の設計計算に用いる荷重で,
鉄道橋などの構造物にたいしては, それぞれ
道路橋 ・
の設封示芳書や法規類で定められている。 それ らは,
必 らず Lも上で述べた統計的な方法で定義された もの
ではないが,実際上の判
断か ら,構造物が十分に安全
(
4)荷重作用を割 り増す部分安全係数 (
荷重作用の割
り増 し係数)
荷重作用の設封音卜
算値 Fdは,荷重作用の特性値FL
・
と,荷重作用の安全係数 7
(
/とによってつぎのように表
わされる。
Fd-Er
r・FL
.または-S (7
T
f
,
F/
1)
ここに,7
:
[:荷重作用を割 り増す部分安全係数
Fl
I:荷重作用の特性値
7
(
f2,
7
13
(
Tabl
el
9
参照)
この場合, rfは三つの係数桝 ,
の関数 と考えられる。
に設計されるような相当に大 きい値が定められている。
それで,十分な統計資料によって荷重の相 知 鑑が定義
されるまでは,法規や基当機 i
で定められた設計荷重 を
荷重の相生値 とLで取 り扱 えほi
l
'
,普通の場合,十分に
※これまでの説明で使用 した 1Ln
kをここではf
kt
ニ置 き変
えている。
7
限界状態設計法
西キ
公建 設 才
支祇 VOL5
Tabl
e-9荷重作用を割 り増す部分安全係数
I
nc
r
e
a
s
l
n
gPa
r
t
i
a
ls
a
f
e
t
yf
a
c
t
o
ru
nd
e
rl
oa
di
n
g
Tabl
e-10終 局 限界状態に対する荷重の割 り増 し係数
I
n
c
r
e
a
s
l
n
gl
oa
di
n
gf
a
c
t
o
ru
nd
e
rul
t
i
ma
t
e
s
t
a
t
e
sc
o
n
di
t
i
o
n
1,
3×(
死荷重)
+2.
5×
1.
0×(
死荷重)
十2.
5×(
活荷重十衝撃)
1.
7×(
死荷重+活荷盛+衝撃)
(
彰喜1.
3×(
死称薮+地震の影響)
3×(
地震の影響)
通 路橋示万苦 ・同解説 「
コンクリ- 卜橋編」 (
鋤く
路協会) によれば,終局限界状態における荷重の組
e-1
0の ように
合せおよび 荷重の割 り噌 L係数を Tab暮
道
定めている。
§5 あ とが き
以上,限界状態設計法の基本哩念について, 浅学をか
えりみず紹介 したが, これは参考文献の関係部分を若干
わか り易 く単にまとめ直 した ものである。
現場技術者が, この限界状態設計法について詳 しい知
識をもつ必要はないと思われるが,近い将来,現在の許
容応力度法にとって変ることが予想される限界状態設計
法 について, その哩念程度は知 ってお くの も必要なこと
と思われる。
本文が, このことに少 しで も助けになれば幸いである。
参考文献
1)不確実性の定式化 と分析 ① 構造設計 星谷勝,林
園安
土木学会誌
1
9
8
0
9
2) 不確定性 における評価の問題 ②安全率の考え方
藤野揚三
長谷川彰夫
土木学会誌
1
9
8
0
9
3)安全闇 弔資のための構造設計去珂f
j
. 構造」二
学委員会
構 造物安全性小委員会
土木学 会誌
1
9
8
0
9
4)コンクリー ト工学(
Ⅰ
Ⅰ
)設計 後藤事正 , 尾 坂 芳 夫 ,
三浦尚 彰国社