インダストリアルICTソリューション

インダストリアル ICT ソリューション Industrial ICT Solutions
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インダストリアル ICT ソリューション社/東芝ソリューション(株)
あらゆる“モノ”がインターネットに接続されるIoT(Internet of Things)の時代を迎え,情報通信技術(ICT)を活用する
ことによって,世界中で様々な社会的課題の解決が図られるなど,大きな変革が起きています。
東芝グループは,モノとモノをつなげるだけでなく,人の想(おも)いまでを捉え,人とモノの全てをつなぐ「人を想うIoT」の実現
に向けて,人々の生活やビジネス活動を安心,安全かつ快適に支えるための技術,ソリューション,及びサービスを提供しています。
2015 年は,IoTを実現するための共通基盤として,東芝独自の IoT アーキテクチャを整備しました。IoTのサービスを実現す
インダストリアルICTソリューション
るアプリケーション開発基盤を構築するとともに,ビッグデータ処理を高速に実行できるフレームワークを開発しました。これ
に加えて,
“新たなビジネス価値をお客様と共創する場”
としてeXtreme Design Studio を開設し,UXD(User Experience
Design)を活用したアジャイル開発を通じて,顧客ビジネスのリーンスタートアップをサポートしています。また,ドイツの
Industrie 4.0 などの動きを捉えて,バリューチェーン全体の最適化と高度 ICT化を実現する“次世代ものづくりソリューション”
を開発しました。更に,長年培ってきたメディアインテリジェンス技術を音声・映像活用のクラウドサービス“RECAIUS”と
して商品化し,順次ラインアップを強化しています。この他,電力小売りの全面自由化に対応した顧客情報・料金計算管理
▼
ソリューションや,知財管理クラウドサービスなどを開発しました。
ハイライト編の p.2−5 に関連記事掲載。
統括技師長 山口 晶嗣
● Industrie 4.0 化を実現するPLMソリューション“Meister PLM”
セールス
コンフィグレータ
仕様決定
CRM
エンジニアリング
コンフィグレータ
標準品とオプション品の
パラメトリック自動設計
CAE,3D プリンタ,
3D CAD
仮想試作
各種解析・試作
カスタム設計
3D モデル生成
3D モデル設計
製品仕様書
ユーザー
営業/
代理店
3D ビュー
概算見積り
コンフィグレーション
エンジン
標準製品
仕様選択 3D モデル
ルール定義
ルール
メンテナンス
担当者
製品バリエーション
オプション品
仕様値候補
・仕様選択結果
・見積り ・変更履歴
・仕様選択
結果
販売システム
製品構成
テンプレート
受注製品
3D モデル
カスタム設計分 BOM
受注製品 3D モデル
Meister PLM
受注製品
バッチ
BOM
標準化された
設計ユニット
・部品群
オプション品
CAD
CAD
カスタム設計品 生産
を組み込んだ
システム
受注 E-BOM
E-BOM
↓
CAD
CAD
Industrie 4.0 で要求される具体的な機能に,製造業に
おける全てのプロセスの連携・統合化及び自動化がある。
また,テーラーメイドと言われる個々のニーズに応じた“少
量多品種”のモノづくりも掲げられている。多様化する
ユーザーや市場のニーズにすばやく適応するため,仕様決
定,見積,設計,生産計画と実行,物流と在庫,販売,及
びカスタマーサービスといった業務の水平統合を支援する
役割が,PLM(Product Lifecycle Management)ソリュー
ションに期待されるようになってきた。従来これらの業務
パーソナライズドオーダーソリューション
は個別のパッケージで実現されており,シームレスな業務
継続が実現できていなかった。
Meister PLMはエンジニアリングコンフィグレータ及び
PDM(Product Data Management)を連携することで,
仕様決定から設計までのプロセスを統合し,少量多品種
Overview of "Meister PLM" personalized order solution
を可能にする設計業務の効率化を実現した。
カスタム品
M-BOM
CAD
カスタム設計品のない受注 E-BOM は自動連携
新製品の開発業務
パーソナライズドオーダーソリューションサポート範囲
コンフィグレータサポート範囲
CRM:Customer Relationship Management 3D:3 次元 CAE:Computer Aided Engineering
BOM:部品表 E-BOM:設計 BOM M-BOM:製造 BOM
● 複雑化する知財管理システムの運用負荷を軽減する知財管理クラウドサービス
知財管理クラウドサービス
特許管理
実用新案
管理
意匠管理
商標管理
契約管理
経費管理
他社特許
案件管理
特許年金
管理
特許情報検索
国 内
海 外
インターネット
特許事務所
2 軸マップ
機能
インターネット
知財管理
部門
知財管理クラウドサービスの概要
Overview of intellectual property management cloud service
願手続管理,評価情報管理などを支援する,知財管理ク
ラウドサービスを商品化した。
このサービスは,グローバル対応やそれに伴う案件増加で
複雑化する知財管理システムの運用をクラウドサービスによ
りアウトソーシングでき,システム全体の運用負荷を軽減でき
る。ユーザーは,システムの規模に関わらず早期の利用開始
も可能である。また,特許や実用新案などの出願管理情報を
文書分類,分析 EiplazaTM/DA
自動分類
企業内の知的財産(以下,知財と略記)管理部門や,研
究開発部門,特許事務所などにおける発明提案管理や,出
研究開発
部門
クラウドシステム上に一元管理できるので,特許事務所との
情報共有も同じクラウドシステム上で容易にできる。更に,特
許情報検索サービスとの連携や,当社の日本語解析技術を
ベースとした自動分類,分析のクラウドサービス“Eiplaza TM /
DA”との組合せで,公知例や先行技術の検索と分析,出願
手続や権利維持での評価と判断を的確に実施できる。
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東芝レビュー Vol.71 No.3(2016)
● 震災の教訓を生かした新たなアウトソーシングサービス“サプライチェーン見守りサービス for BCP”
当社は,東日本大震災やタイの洪水被害による部品供給
の停滞,及びそれに伴う生産への影響を経験した。この
経験を糧として,サプライチェーンの可視化とBCP(事業継
活用イメージ(平常時)
定期的にサプライヤー情報,サプライチェーン情報の調査を行う
顧客
(委託元)
Meister SRM
続計画)対策を推進している。そこで培った知験と実績を
検索 / 参照 / ダウンロード
(リアルタイム)
集約することで,製造・販売会社向けに“サプライチェーン
このサービスは,取引先基本情報と合わせてサプライ
チェーン情報を管理,及び可視化するシステムを,クラウド
サービスにより提供する。取引先との窓口業務を代行し,
平常時には定期的に情報更新依頼や問合せ対応を行う。
また,気象庁や国内外のニュースなどから災害情報(天災
サプライヤー X
TM
取引先情報
サプライチェーン
情報
サプライヤー Y
定期的に取引先情報,
サプライチェーン情報を調査
インダストリアルICTソリューション
見守りサービスfor BCP”
を商品化した。
サプライチェーン見守りサービス
for BCP
レポート提出
(月/回)
活用イメージ(災害発生時)
24 時間 365 日体制でグローバルに災害状況の監視を行い,災害時には調査対象
サプライヤーに一斉調査を行う
サプライチェーン見守りサービス
for BCP
災害発生
災害監視
24 時間 365 日
気象庁
国内・海外
ニュース
顧客
(委託元)
や人災など)を24 時間 365日監視し,災害発生時には影響
3
1
4
4
地震,台風,工場火災・爆発,
火災,津波,大雪,洪水,
浸水,竜巻,崩壊,デモ,など
※拠点フィルタリング
レポート提出
(災害の都度)
検索 / 参照 / ダウンロード
(リアルタイム)
度調査を行って顧客に調査結果を迅速に報告する。この
4
Meister SRM
4
3
4
(一次取引先)
サプライヤー X
TM
災害影響度調査情報
災害時影響調査
サプライヤー Y
サービスにより,災害発生時に早期の影響度把握,取引先
サプライチェーン見守りサービス for BCP の概要
やサプライチェーンのリスク管理を可視化できる。
Overview of supply chain monitoring service for business continuity
planning (BCP)
● アジャイル開発を支えるPaaS 基盤の構築
ビジネス価値の創出を支援するアジャイル開発のための
PaaS(Platform as a Service)基盤を構築した。
継続的インテグレーション環境
ビルド実行
自動配置
この開発基盤は Cloud Foundry(†)を用いて構築された
PaaS であり,アプリケーション開発者はミドルウェアを払い
Cloud Foundry(†)PaaS 基盤
テスト実行
コード
アプリケーション
配置
検査用
アプリケーション
出して活用することで,コード開発に専念できる。また様々
なツールと連携させることで,継続的なアプリケーションの
開発者
更新が可能になる。
コード
統合開発環境
このPaaSを,
“お客様との共創の場”として都内に開設
したeXtreme Design Studio(XDS)から利用できるよう
にして,不確実性の高い領域でビジネス機会を捉えるPoC
(Proof of Concept)のタイムリーな実施を可能にした。
関係論文:東芝レビュー.70,10,2015,p.48−51.
手動配置
提供ミドルウェア
利用
安定版
アプリケーション
データベース
メッセージキューイング
オブジェクトストレージ
デバッグ用
アプリケーション
XDS などの開発拠点
:
データセンター
Cloud Foundry(†)を用いたアジャイル開発の概要
Overview of agile development using Cloud Foundry (†) platform as a service (PaaS)
● ビッグデータ技術を活用した高速分散処理基盤
従来の分散処理技術
大量データを短時間で処理するために,分散処理フレー
(†)
ムワークであるHadoop を利用するケースは多い。しかし,
Map フェーズ
DB
(†)
Hadoop は HDFS(Hadoop Distributed File System)
インポート
HDFS
上のデータしか扱えないため,DB(データベース)上のデー
タをHDFS に転送し,処理終了後にDB に戻す必要があ
Reduce フェーズ
DB
(データの分解,抽出)(データの集約,計算)
Map
Reduce
Map
Reduce
HDFS
エクスポート
Hadoop(†)
RDB
RDB
る。大量データの場合,この転送時間が長くなり,分散並
列処理による高速化のメリットが打ち消されてしまうという
課題がある。
高速バッチ処理フレームワーク
DB
Map フェーズ
Reduce フェーズ
(データの分解,抽出)(データの集約,計算)
この課題を解決するため,GridDBとGridDataを組み合
Map
Reduce
わせ,HDFSを介さずにデータを処理できる高速分散処理
Map
Reduce
基盤を開発した。これにより,DBとHDFS の間のデータ
GridDB
転送処理が不要になり,従来に比べて処理時間を大幅に
RDB:Relational Database
短縮できた。
高速分散処理基盤の処理方式
GridData
DB
GridDB
Configuration of high-speed distributed processing platform
東芝レビュー Vol.71 No.3(2016)
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