[特集]2 0 1 6 年 市 場 予 測 ① 経営/運営企業に聞く: 2016年の注力ポイント 都心での展開よりも 地方郊外・低迷店舗の 取得・改装・再生に注力 初心にかえり 清潔・快適・楽しさを 再度、徹底追求する ㈱安心オペレーションズ ㈱E.MIRAI 代表取締役 田中政美 ◆関東圏で「HOTEL Hibiscus」ブランドを中心 に 13 店舗を運営管理。 代表取締役CEO 門倉直行 ◆関東・東北・東海・中国エリアで 11 店舗を運 営管理。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 2015 年、利用者の動向に大きな変化はなかったと思います。 地域によって市況はかなり異なったといえます。さらに同一 相変わらずレジャー・ラブホテルでのお金の使い方はシビアで エリア内でも交通や人の流れのわずかな変化が集客に大きく影 す。宿泊稼動の厳しさも続いています。当社の既存店舗の売上 響する状況になってきていると感じます。当社店舗は、都心部 は各店舗とも微増。また4店舗を改装し、それぞれ改装前比で の店舗は堅調ながら、地方は苦戦。地方では消費マインドは上 20 ~ 30%の売上増加を実現。従来に比べて改装後の想定売上に 向いておらず、 依然として財布の紐が固い状況が続いています。 達するまでの時間がかかるだけに、看板やファサード、HP な とはいえ、地方でも改装を施し前年比 20%以上の売上増加を どでいかに改装を認知させるか、その見せ方がより重要になっ 示した店舗もあり、全店トータルでは前年比減の状況でした。 ています。さらに投資額に比例して売上が増加する時代ではあ ■ 2016 年の市場動向予測 りません。商圏の状況、店舗の現状等を総合的に判断して投資 昨年より市況は上向くと思います。株価下落など経済的な不 額を決定して臨むことも重要です。 安要素はありますが、ガソリン価格の低下などは地方の店舗に また 2015 年は、総合的な視点からの収益向上を目的に店舗 とって集客上プラスの要因といえます。売買も昨年同様に動く の取得・売却に取組み、3店舗を取得し2店舗を売却。今後も でしょう、しかし、物件価格が上昇しており、店舗取得で事業 効率的な収益向上を重視して店舗数増加を図っていく考えです。 拡大を進めるには、攻めと守りのバランス感覚がより重要にな ■ 2016 年の市場動向予測 ってくると思います。 改装を実施できた店舗が売上を伸ばし、二極化がさらに進む ■ 2016 年の注力ポイント でしょう。その結果、改装できず売上低下が進む店舗の売却が 今年の注力ポイントは「初心にかえる」ことです。ルームメ 増加し、売買の活発な動きは継続すると思います。ただ、都心 イクのクオリティアップにより一層力を注いで、徹底的に清潔 部は物件価格が上昇しており、改装費も考えるとリスクが大き さと快適さのレベルアップを図っていきます。大規模改装をせ い。地方郊外の低迷店舗でも再生可能な店舗はまだまだ多い。 ずとも丁寧で誠実な運営の取組みは、確実に利用者に伝わりま 取得・改装コストが抑えられることで、低回転でも適正単価を す。それがレジャー・ラブホテルのイメージアップにもつなが 得られれば十分な収益確保は可能です。当社では、そういった ると思っています。同時に、清潔さと快適さをわかりやすく利 物件の取得・再生に積極的に取組んでいきます。 用者に伝えるために、肌に触れる要素の見直しを進め、ベッド ■ 2016 年の注力ポイント や寝具等の入れ替えも進めていく考えです。 供給過剰の地域では、一般カップル客を適正単価でどれだけ シティ・ビジネスホテルの新規開業が相次いでいるなか、利 取込めるかがカギを握ります。そのために、レジャー・ラブホ 用者の流出を防ぐためにも基本の再徹底が必要です。また、シ テルの魅力の基本を再整備していきます。宿泊や長時間休憩の ティ・ビジネスホテルとの明確な差別化を進め告知していくこ ためには、やはり一般家庭にはない楽しさと快適さの提供が不 とも必要。カラオケや VOD 等の遊びの要素、4号営業であれ 可欠。VOD、充実した浴室、各種レンタル品(とくに美容系) 、 ばコスプレ等の充実を進めていきます。一方、都心部の店舗で 飲食(季節メニュー等)がポイントです。さらに、4号営業で は外国人の利用も増えており、現在、外国語の POP や翻訳ア は刺激的な演出や設備も、一般カップルが楽めるという視点で プリの活用などで対応していますが、今後、外国人への対応の 強化を図っていく考えです。 充実をさらに進めていく考えです。同時に、都内ではビジネス また、予約による観光客等の集客にも取組みたい。ただ、言 ユースなどの1人客も取り込んでいきたいと思っています。 葉・文化の違う外国人利用者に対してはホテル側が対応できる 2016 年は、初心にかえり基本の充実で顧客満足を高めるとと のかどうか、人命を預かる宿泊施設として、安全確保を最優先 もに、一部店舗での改装も予定しており、既存店舗売上は前年 させるべきだと思います。 比 110%を目指します。 LH-NEXT 2016 ● vol.27 25 [2016年 市場予測] マイナスイメージを払拭し 時代の先端施設へ 再生・復活を強力に推進 デザイン性と4号の強みを 強化し、既存客の確保と 新客層の拡大に力を注ぐ 内宮商事㈱ AtoZグループ(富岡開発㈱) 代表取締役 内宮則一 ◆関東圏で「HOTEL 555」ブランド 12 店舗を経 営し、他にリゾートホテルや温浴施設等も展開。 代表取締役 松本 暢 ◆長野県内を中心に「HOTEL AtoZ」ブランドな どで全 11 店舗を経営。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 2015 年は、当社ホテルは苦戦を強いられた1年。郊外は価 2015 年の既存店舗売上は、エリアによって苦戦した店舗も 格競争、都市部では近隣の改装が相次ぎ、そのなかで各店舗は ありますが、全店トータルでは前年比 110%と好調な結果でし 安値誘導を行なわず、売上実績を前年並みもしくは微減にとど た。また1店舗を取得・改装オープンし順調な立ち上がりです。 めました。常に新しさを感じさせる各種サービス等の刷新を続 地方は苦戦が指摘されていますが、そのなかでも二極化が進 けるなど、現場スタッフは非常に健闘したと思っています。 行。経営企業の取組み姿勢の差が集客力に現れ、改装や運営面 ■ 2016 年の市場動向予測 でやるべきことを実行している店舗は順調な売上状況を実現で 当社店舗は、1ホテル6社員体制で宿泊業の基本「快適・清 きているといえます。また、長野県内もインバウンド増加の影 潔・安全・安心」実現の努力を続けてきましたが、一般消費者 響から一般ホテルが高稼動・高料金となったことも、集客の追 には「休憩はラブホテルでいいが宿泊するならシティ・ビジネ い風になったといえます。実際に、当社店舗も県外からの観光 スホテル」という価値観・イメージが定着。この業態の集客力 旅行カップルの利用も目立ちました。 回復には、このマイナスイメージの払拭が必要。2016 年はそ ■ 2016 年の市場動向予測 のための具体的な動きをはじめなければならない年です。 各種業界が、増加するインバウンドの対応に向かうと思われ ■ 2016 年の注力ポイント ます。しかし、地方のレジャー・ラブホテルは、その前に従来 毎年9月1日、新期の始まりに各店舗に録音 CD とテキスト からのカップル客を確実に掴み、そのうえでラブユース以外の を配布して社長訓示を行なっています。今回は 90 分、32 頁。 日本人客を新しい客層として獲得していくことが重要だと考え 2016 年度は「菜根譚の年」として自分磨きを訓示。当社の最 ています。そのためには、一般ホテルにはないレジャー・ラブ 大の強みは"人"であり、それをさらに推し進めようというこ ホテルならではの魅力を外部に向けてどれだけ発信できるか。 とです。さらに、前年の改装および今後の改装計画等について、 それが、2016 年の業績を左右すると思っています。 商圏分析等も踏まえ改装実施の理由と内容をすべて明確に示し ■ 2016 年の注力ポイント ました。全社員が会社の方向に納得・共感することがモチベー これまで、全面改装ではなく数室ずつの改装を年間5~6店 ション向上には不可欠と考えています。同時に「THINK HOTEL 舗に施してきましたが、この手法を継続していきます。地方で THINK」というスローガンを打ち出し、とことんホテルについ は地場の工務店等による改装も多く、業界専門の設計デザイナ て考え抜き行動に移す年としました。 ーを起用した空間はやはり訴求力があります。また、飲食サー このような方向性のもと、今年、改装を計画している店舗に ビスは集客・客単価の両面に貢献する要素なので、今年もさら は、 「知性」(知= intelligence、性= sex)の要素を打ち出し、 に充実させていきます。同時に、4号店舗ではラブユースカッ 洗練された宿泊施設として、近年のマイナスイメージ払拭を図 プルの利用者目線でアダルトグッズやコスプレをさらに強化し、 っていきます。そして、改装後のホテルの価値を高めるカギは 一般ホテルや自宅にはない楽しさをアピールしていきます。一 やはり"人"です。雇用・就労に関するコンプライアンスを重 方、女子会や観光旅行客、ビジネス客の獲得にも積極的に取り 視し、従来から実施している年1回の社員の集合研修等で経営 組んでいきます。この分野は、お得感につながる特典内容と 者と社員の意識共有を進め、さらに、今回の社長訓示では有給 Web による告知・予約がカギを握ると思っています。 休暇の連続取得の促進も強く打ち出しました。旅行をして他の 2016 年は、既存店舗売上は前年比微増が目標、新規取得にも 宿泊施設のホスピタリティを体験させることが目的です。 前向きに取組み、事業拡大を進めていきます。その他、昨夏に 2016 年は、都市立地・郊外立地ともに、レジャー・ラブホ 伊豆にゴルフ場(フジ天城ゴルフ倶楽部)を取得し、ホテルの テルを洗練された時代の先端施設に再生・復活させるべく全力 ノウハウを活かした浴室やアメニティなども好評。今後もホテ で取り組んでいきます。 ルの各種ノウハウを加えて付加価値を高めていく考えです。 26 LH-NEXT 2016 ● vol.27 [特集]2 0 1 6 年 市 場 予 測 ① 経営/運営企業に聞く: 2016年の注力ポイント 実需とイメージの両面から 高単価の集客を促進し 観光客対応も進めたい 利用者は細部に敏感、 運営と低額の追加投資で 売上増加を目指す ㈲エリスエンタープライズ ㈱カイリゾート 代表取締役 高崎次郎 経営企画室 松長一志 ◆福岡県で「HOTEL ERIS」を2店舗経営。九州 ◆ 10 年 前 に 業 界 に 参 入。 「Bali Thai Hotel & ホテル協会会長。 Resort」ブランド等で関東を中心に9店舗を運営 ■ 2015 年の総括 管理。 2015 年は、景気回復感から消費が上向きホテル事業にも追 ■ 2015 年の総括 い風になったと思います。ただし、都市部と郊外の格差は拡大 2015 年の当社の運営管理店舗は、全体では前年比2~3% しています。当社も、都市部の店舗は前年比 10%以上の伸び の売上増加という結果でした。地域の違いというよりも運営と を示しましたが郊外店舗は数%の減少でした。都市部店舗では、 ハードの両面で"手を掛けた"店舗が売上を伸ばすという状況。 一昨年の消費増税時に 100 ~ 200 円の値上げを実施しましたが、 これは業界全体の傾向といえると思います。 利用組数も増加傾向です。改装等は行なっていませんが、清掃 現在、大きく売上を低下させてしまった店舗は運営の変更だ と接客の重視、備品等も品質にこだわった選定、ロビー等にお けで売上を回復させるのは難しい。当社では、自社グループ企 ける季節感のある装飾など、細部に手をかけ続けていることが 業を活用した当社費用負担の改装・修繕により再生を図る手法 奏功していると思っています。現在の市場環境では回転数より で臨んでいることもあり、運営委託の相談が増えています。た も客単価が重要。高単価でも利用者が満足するホテルづくりが だ、同時に売却希望者も増えている印象です。追加投資や運営 必要だと考えています。 強化ができずに老朽化・陳腐化が進んでしまった単独店舗と、 ■ 2016 年の市場動向予測 スケールメリットを活かし戦略的に取組むチェーン店舗との格 消費動向は、景況感のイメージに左右されるのでまだまだ不 差がさらに拡大した1年だったともいえます。 透明です。インバウンドは福岡でも増加していますが、大型客 ■ 2016 年の市場動向予測 船で来日し船内泊というケースも多く宿泊業への経済効果はあ チェーン店舗はさらに店舗数を拡大していくでしょう。とく まり期待できない状況です。ただ、福岡は大型イベントも多く、 に関東圏は 2020 年の東京五輪に向けて、この業界に限らず事 その参加者や観光客に対応するレジャー・ラブホテルも増えて 業拡大の機運が高まっています。ただし、現実と期待を見誤る くると思われます。当社店舗でも、すでに市外や県外の観光客 と危険です。また、売却、取得、運営委託、それぞれ希望者は の利用は見られます。 多いのですが、物件の質と価格・委託料の折合いが難しい状況 ■ 2016 年の注力ポイント になってきており、実際の売買や運営委託の動きは 2015 年よ 高単価でも満足し再来店していただける店舗づくり・運営を りも落ち着くのではないでしょうか。一方、都市部ではインバ 重視していきます。ロビー等で高級感の印象を与えるイメージ ウンドや一般観光客の取込みを進める店舗も増えると思われま を構築するとともに、とくに身体に直接触れる要素を重視し、 すが、中途半端な取組み方では、レジャー・ラブホテルとして 高品質のアメニティ等の充実を進めます。郊外店舗では、旅行 の魅力が失われる危険性もあります。当社は、当面、カップル 代理店との提携などでのインバウンド団体客の誘客も検討した のラブユース重視で臨みます。 いと思っています。また、マイナンバー制の実施によりさらに ■ 2016 年の注力ポイント 人手不足の進行が予測されるなかでスタッフのレベルアップを 現在の利用者は、清掃の仕上がりや用品備品等のクオリティ 図らなければなりません。レジャー・ラブホテルのスタッフ育 など細部の善し悪しにとても敏感です。従来以上に細部におけ 成には経営者自身の直接的な指導が必要だと思っており、より る運営・サービスの強化を図ります。また、売上が大幅に下が コミュニケーションを取って育成に臨んでいきます。とにかく、 ってから回復を図るには大きな投資が必要。その前の段階で、 来店した利用者に満足してもらうことが第一。それが利用者の 低予算でできる限りの魅力の追加を行なっていく取組み方をし 増加につながっていくと思っています。そのうえで、観光客等 ていきたい。改装に関しては、これまでアジアンテイストを打 のラブユース以外の新しい客層の取込みも進めたい。そのため ち出してきましたが、今後は和モダンを採り入れていきたいと のイメージアップ戦略は、業界団体として取り組まなければな 考えています。既存店舗の売上は、細部の運営・サービスの見 らないと思っています。 直しと低予算の魅力の追加で前年比微増を見込んでいます。 LH-NEXT 2016 ● vol.27 27 [2016年 市場予測] コミュニケーションを深化、 企画力・実行力を強化し サプライズの提供を継続 宿泊業の原点回帰 スタッフの再教育と 運営の再構築を進める ㈲久保田商会 ㈱グランクール 代表取締役 久保田正義 代表取締役 吉田 健 ◆福島・会津若松で「HOTEL deQ」等3店舗を ◆㈱グランクールは 2014 年に設立。現在、関東 経営。コンサルティングも手掛ける。福島県レ 圏で5店舗を運営管理(直営1店舗)、7社をコ ジャーホテル協会副会長。 ンサルティング。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 会津エリアでは、景気回復感はみられなくインバウンドの増 2015 年は、業界全体では"横バイ"状況だったといえると 加による経済効果もありません。一部の店舗が前年並みを維持 思います。とはいえ、好調な都市部でも老朽化が進み一般カッ し売上低下が続く店舗も少なくない状況が続いています。 プルの宿泊客が減少しているホテルは売上を低下させ、厳しい 当社の3店舗も、前年比1~2%増で、この数年は安定した 環境が続く郊外立地でも需給バランスが取れている地域では売 状況で推移。大きな追加投資がなくても他ホテルにないデザイ 上を維持しているホテルもあるなど、立地・店舗により状況が ン性の高い客室と独自性重視のサービス継続により、ブランド 異なり、低迷脱却の対策が講じられないホテルの廃業も続いた が定着しロイヤルカスタマーが着実に増えています。その結果、 1年でした。当社は一昨年に設立し、実質スタートが昨年1月 とくに地域上位の2店舗に関しては、人口 12 万人の地方都市 ですが、運営店舗に関しては、大規模改装はせず、細部の不備 ながら、客単価 8,000 円以上、1室売上 60 万円/ 80 万円の高 の解消や運営の改善、HP や予約サイトの活用などで、順調に 成績が持続できています。 売上を伸ばすことができました。 ■ 2016 年の市場動向予測 ■ 2016 年の市場動向予測 福島県内においては大きな変化はないと思われます。ただマ 融資環境が好転しているとはいえ、資金調達できるホテルと イナンバー制による人手不足の加速が懸念されます。制度実行 できないホテルに分かれ、その結果、売買の動きもさらに進む の状況等を各スタッフに明確に伝え、企業とスタッフの双方に と思われます。また、この数年は追加投資ができるか否かが売 メリットがあるように対応していきたいと思っています。 上増減を決定づける要因でしたが、今後は、新たな利用者を開 ■ 2016 年の注力ポイント 拓・獲得するための運営面の再構築ができるか否かが大きなポ 2016 年は、前年比 102%が目標。VOD 導入とプチリニュー イントになると思います。旧態然としたラブホテル営業から脱 アルを予定しており、同時に備品用品、飲食、各種サービスな 却し、インバウンドや観光客も受け入れることができるような ど、細部における最新トレンドの発信とサプライズの提供をさ "業態の変革"もはじまると思います。 らに強化していきます。昨年末に、客室内でのバスソルトバイ ■ 2016 年の注力ポイント キングを開始し、今年は帰りの車の中で飲んでもらうアフター 都市部では、インバウンドや観光客などの新しい客層を獲得 ドリンクを実施予定です。現在の利用者にサプライズを提供す しながら、休憩稼動というラブホテルならではの収益特性を活 るには、「突拍子もない」「ここまでやるか」と思われるレベル かせるホテルづくりを進めたい。現在、都市部では海外予約サ が求められます。さらに単発ではなく継続が重要。そのために イトを活用すればインバウンド予約は獲れます。この新しい宿 は幹部スタッフの企画力と一般スタッフの実行力がカギを握り 泊客層の獲得は、 安定稼動と単価の確保に貢献します。しかし、 ます。経営者として 2016 年のテーマは「コミュニケーション 受入れ態勢ができていなければ混乱を招くだけ。スタッフの再 の深化」 。ミーティングや個別面談を通して、経営者の"熱 教育と運営体制の再構築が必要です。当社運営ホテルでは、30 意"を全スタッフにより深く浸透させ、同時に幹部スタッフへ 代女性店長を核にしたスタッフ体制で、 "宿泊業としての原点 の権限移譲も進めます。スタッフのモチベーション向上が、店 回帰"を進めていきます。 舗の魅力維持に不可欠です。 一方、地方郊外立地でも、新しいスタイルへの変換により苦 また、業界団体の活動も重視。現状、大きな問題に直面して 境脱却が図れるケースもあると思います。観光客の獲得が可能 いないとはいえ行政への働きかけを続け、行政および世間一般 な立地では、気軽に立ち寄れるカフェのようなイメージのホテ に認めてもらえる団体、業界にしていく。それが将来に向けた ルづくりにチャレンジしたい。これらの取組み方で、既存店は 事業の発展につながっていくと思っています。 前年比 10 ~ 20%の売上増を目指します。 28 LH-NEXT 2016 ● vol.27 [特集]2 0 1 6 年 市 場 予 測 ① 経営/運営企業に聞く: 2016年の注力ポイント 二極化が進行するなかで 高単価層を集客できる 店舗再生を推進する 予約機能を活用し インバウンドや女子会など 新たな客層開拓に臨む ㈱ケイエスジャパン K’sグループ 代表取締役 金沢伸吉 ◆「HOTEL ZEN」「L’HOTEL」 等、 大 阪、 京 都、 岡山で5店舗を展開。 代表取締役 近藤政人 ◆愛知県下で「K’s DANDY」など 11 店舗を経営。 愛知県ホテル協同組合理事長。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 2015 年は、前年に引き続き二極化がさらに進行。前向きに 2015 年は、業界全体としては若干の上向きという印象です。 事業に取組む企業の店舗が積極的な改装で売上を伸ばす一方で、 ただ、当社の既存店舗は苦戦、売上は前年比微減の状況でした。 売却店舗も増加し、売買や改装の動きが激しい1年だったとい 各店舗とも改装後5年以上を経過しており、宿泊は堅調ながら えます。当社も、前年に取得した2店舗を春に改装オープン、 休憩の減少が売上に影響。これは商圏内での低価格ショートタ 春に取得の1店舗を秋に改装オープンさせ、秋に1店舗を売却 イムの増加などが要因です。その一方、一昨年に取得し昨年4 し1店舗を取得(今年改装の予定)と、大きく動いた1年でし 月に改装オープンした店舗は好調。地方郊外立地ながら事業計 た。改装オープンの店舗はそれぞれ好調な立上がりを示し、改 画の売上を大きく上回る1室 50 万~ 60 万円で推移しました。 装前の1室売上 50 万円から 90 万円へと大幅な売上増加を実現 地方郊外でも再生可能な店舗はあるといえます。 した店舗もあります。 ■ 2016 年の市場動向予測 ■ 2016 年の市場動向予測 上向き傾向が続くと思いますが、株価の動きなど経済的な不 金融機関の融資状況、海外資本の流入などを背景に、昨年以 安材料もあります。また、通常のカップルユースだけではなく 上に売買・改装の動きが加速すると思われます。一方、昨年に インバウンドや一般観光客を取込む動きが進むと思います。 改装オープンした店舗では、インバウンドや一般観光客の取込 ■ 2016 年の注力ポイント み、予約による集客なども順調に進んでおり、立地や店舗によ 当社店舗でも、昨秋から海外サイトを利用したインバウンド っては、従来のラブユースカップルだけではなく新たな客層の の予約を開始し、地方郊外ながらアジア圏・欧州圏からの利用 開拓も進むと思います。 を得ています。スタッフにとってもモチベーションアップにつ ■ 2016 年の注力ポイント ながる刺激になっており、 今年は積極的に取り組んでいきます。 当社の企業規模での対応力を重視し、店舗数の増加ではなく また、女子会プランも好評、さらに力を入れます。こういった 5、6店舗の規模で長期所有および取得・改装・売却を進めて 新しい需要の獲得に加え従来客にとっても予約機能は重要です。 いく考えです。近年、売上低下に伴い改装費抑制の傾向が続き 昨年、自社 HP の Web 予約でのクレジット決算を可能にしま ましたが、適正な改装費投入で高単価層を集客し1室1か月売 した。これを中心に各種予約サイトも活用して取り組んでいき 上 70 万~ 80 万円を目指すことができる改装を目指したいと考 ます。その他、コスプレ写真を投稿するイベントも好評。既成 えています。それが中長期的な収益確保につながります。その 概念に捉われない発想で楽しい企画の実施にも注力します。 ためには就労環境の向上も必要であり、バックヤードの整備も また、清潔さと接客は集客力の基本。4号店舗の非対面営業 重視して取り組んでいます。現在の市場環境下では、現状維持 でも電話応対の善し悪しが利用者の評価を大きく左右します。 でよいという発想では衰退に向かいます。利用者減少が指摘さ この2つの基本はさらにブラッシュアップしていきます。この れていますが、ホテルを訪れて感動があれば利用者は再来店し 他、5年前から店長クラスを対象に年1回、話題のホテル等に 利用者増加につながっていくはずです。 宿泊しそのホスピタリティを体験する研修も実施。意識向上に また、立地環境や建物状況によって、さまざまな方向での再 加え各店舗の細部の改善にもつながっており今後も継続してい 生の可能性があります。ビジネスホテルへの業態転換、4号営 きます。2016 年は、既存店舗では休憩利用の強化などで前年 業の特性重視型、インバウンド主体型等々。テナントビルから 比 103 ~ 105%を目指します。一方、愛知県ホテル協同組合 ホテルへの業態転換も計画中です。新しい客層の開拓や従来の としては、民泊解禁に対し提携団体の日本中小ホテル旅館協同 ラブユース客の高単価での集客は、ホテルの内容によって可能 組合と連携しながら行政に働きかけていきたい。同時に、レ です。2016 年も、収益力のある店舗への再生も含め、業界の ジャー・ラブホテルの安心・安全や魅力を、一般消費者に向け 活性化につながる事業展開に前向きに取り組んでいきます。 て強くアピールしていくことも必要だと考えています。 LH-NEXT 2016 ● vol.27 29 [2016年 市場予測] 看板規制の影響が拡大 商圏内で常連を創出する 新たな告知手法が必要 今後の事業継続のために 収益構造と経営の考え方の 根本からの見直しが必要 三光開発㈱ サン産業㈱ 代表取締役 加藤 透 ◆京都市で「SAKURA HOTEL LEGEND」を経営。 京都ホテル協会会長。 専務取締役 山本正博 ◆大阪・奈良で「Le TESSIA」名で3店舗を経営。 日本レジャーホテル協会・西日本ブロック長。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 京都市では、一昨年夏に施行された市の景観条例による看板 関西地区も他地区と同様に、都市部では前年比増の店舗がみ 撤去の影響が大きくなってきました。当社ホテルも中高年の常 られるものの、郊外では健闘している店舗で前年並み、多くの 連客が主体で当初は影響が小さかったのですが、昨年は組数が 店舗は減少が続いた状況。数年前に比べて売上が大きく低下し 低下。レジャー・ラブホテルは常連客とはいえ期間が限られ、 ているだけに、現状が前年並みや微増でも、経費上昇によりキ 常に新規客を取込み常連客化していかなければ安定集客は維持 ャッシュフローは厳しくなっています。当社3店舗も同様の状 できません。その入口が失われたのは大きな痛手です。当社店 況で、2015 年の売上は前年並みもしくは微増の状況でした。 舗の売上も前年比で数%減を余儀なくされました。 ■ 2016 年の市場動向予測 一方、京都は、インバウンドも日本人観光客も増加しており、 大阪市内では、インバウンドへの対応店舗が増えると思われ 大幅な集客増を見せる一般旅館も少なくありません。しかし、 ます。しかし、中途半端な取組み方で既存の常連客を失うケー 残念ながらこれらの客層を取り込めることができるレジャー・ スも懸念されます。当社にも団体客受入れのオファーもありま ラブホテルは一部店舗に限られているのが現状です。 すが、月に数日の高稼動より、小さな単価でも将来にわたり続 ■ 2016 年の市場動向予測 く常連客の確保のほうが重要と判断しています。ただ、立地に 京都でも、ホテル集積地では昨年から売買・改装の動きがみ よっては、旅行代理店との提携などでインバウンド中心の店舗 られましたが、市内に点在する店舗では大きな動きはありませ も現れてくるのではないでしょうか。 んでした。改装をしても投資回収が難しく、売上低下のなかで ■ 2016 年の注力ポイント 改装して売上回復を図るよりも、廃業して別の施設に変更とい 今後のレジャー・ラブホテル事業では、どのような改装をす う動きも見られはじめています。 べきか等々を考える前に、この業態の収益構造や経営の考え方 ■ 2016 年の注力ポイント 自体を根本的に見直さなければ、長期的な事業継続は難しくな 現状のままでは、利用者数も売上も減少傾向が続き、さらに、 ると思います。毎年、建物は減価償却していきます。その分を 民泊が解禁になれば、都市部店舗では影響を免れないといえま 仕入れ(=修繕費)で補わなければ、その分だけ店舗の価値は す。このような市場環境下で、やはり一般観光客の集客も考え 低下し売上も低下します。 "仕入れなしに販売する"という考 なければならない状況といえます。とはいえ、4号店舗では え方を改めなければなりません。そのためには借入の完済を目 18 歳未満が入店できず家族連れを集客できないこともネック 指すのではなく、いかに継続するか。借換えも含め長期返済へ です。また、4号を廃するとなると、設備変更等にコストがか の組替えも必要だと思います。今後、利用者数は確実に減少し かるだけではなく、現状の顔を指すことを嫌う中高年の常連客 ていきます。そのなかで、仕入れで補わず店舗の価値低下に料 を失うリスクが大きすぎるといえます。一方、インバウンドに 金値下げで対応していたのでは、利用者からは「ラブホってこ 対しては、小規模単独店では予約や接客に対応する人材の問題 んなものか」と見限られ、利用者減少が加速してしまいます。 もあり、現状では対応しきれないといえます。今後、協会とし また、米屋や酒屋を見れば明らかなように、既得権に頼った て共同の通訳サービス等を採用するなどの方策も検討しなけれ 業種は廃れていきます。4号営業への過剰な固執は不要だと思 ばならないと思っています。 います。対面接客が本当に不利なのか、思い込みを排して利用 当社店舗も含め、市内の店舗においては、看板撤去による認 者の実需を見直すべき時期にあると思います。一方、人手不足 知低下の対策が急務です。看板に変わる新しい告知手法が必要。 と人件費の上昇は続きます。現在の募集と応募の需給バランス ネットや雑誌等での誘客も必要ですが、遠隔地からの一見客で をみると、女性よりも男性の方が優秀な人材を獲得しやすい状 はなく、半径 5 ~ 10 キロの商圏内で常連客になりえる新規客を 況です。男性従業員の採用・活用を進め、そこから幹部社員を 誘客するような告知手法を考え出さなければなりません。 育てていく取組みも必要だと考えています。 30 LH-NEXT 2016 ● vol.27 [特集]2 0 1 6 年 市 場 予 測 ① 経営/運営企業に聞く: 2016年の注力ポイント 鴬谷地区の市況は 上昇から低下に変化、 民泊の動向にも注意 日本一のホスピタリティと 非日常性を追求し 新規客層の開拓にも力を注ぐ サンモリッツグループ ㈱ GHP 代表取締役 山岸栄一 ◆東京・鴬谷で「St.Moritz」等の4店舗を経営。 東京都ホテル旅館生活衛生同業組合青年部部長。 代表取締役社長兼CEO 宮田啓光 ◆「クラブチャペルホテルズ」ブランドで、全国 に 83 店舗を展開。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 鴬谷地区は、この数年、宿泊減少・休憩増加の方向ながら全 2015 年の実績は増収・増益でした。宿泊増加による単価向 体的に売上は上昇傾向にあったのですが、昨夏以降、休憩が増 上が大きく貢献しました。その要因の1つは、年初から本格的 加から減少に転じ、売上も上昇から低下に市況が変化したよう に取組み始めたインバウンド対応です。複数言語のインフォメ に思われます。当社4店舗も、前半は堅調ながら後半は前年同 ーションを制作・設置したり対応にも手間はかかりますが、数 月比で数%のマイナスで推移しました。一昨年以降、数店舗が 年前から実施してきたフロントのトーキング研修も奏功し、都 大規模改装を施し、ビジネスホテルがデイユースを促進。その 市部店舗が中心ながら総宿泊組数の 7 ~ 8%を獲得できた店舗 影響もあり、比較的に価格が維持されてきた地域だったのです もあります。もう1つが飲食の充実。アワビやフォアグラを使 が、値下げや低価格ショートタイムの採用なども増え、市場環 ったシーズンメニューなどレストランと同等以上の内容にチャ 境は再び厳しくなったという印象です。 レンジし、ハーゲンダッツとタイアップしたアイスクリームス ■ 2016 年の市場動向予測 イーツなども提供。飲食の充実は、ディナータイムからの宿泊 鴬谷地区は、昨年後半の前年比数%低下の状況が基準になる 獲得と単価アップの両方に貢献しました。 ように思われます。集客増加につながる大きな要因は見あたら ■ 2016 年の市場動向予測 ず、高単価での集客維持が重要になると考えています。 市場がどう動くかの前に、人手不足の問題が深刻化していく ■ 2016 年の注力ポイント でしょう。業界全体に雇用・就労のコンプライアンス、労働環 人手不足と人件費上昇の状況を考えれば、低料金・高稼動の 境の改善が求められます。一方、現場の支配人にはスタッフと 戦略は自らの首をさらに絞めることになり、避けなければなら コミュニケーションをとりながら柔軟にシフトコントロールす ないと思っています。単価確保のために宿泊の促進が求められ る能力が要求されます。募集広告の内容やキャッチコピーも他 ますが即効性のある対策は難しい。地道ながら堅実な修繕とメ 業界を参考にしながら応募を促すような工夫が必要です。 ンテナンスを続け、人手不足での人数確保優先から人材確保に ■ 2016 年の注力ポイント 変更して筋肉質の組織に変えていく。このような取組みを続け 昨年の最重視テーマが「ホスピタリティ日本一」。ホテル側 ていきます。 の"当たり前"がレジャー・ラブホテル初心者には伝わってい 将来的にはインバウンドを取込める可能性のある立地だとは ないことが少なくないので、数多くの心温かいメッセージカー 思いますが、その前に日本人の宿泊客の取込みが急務です。し ドをつくり対応しました。シティ・ビジネスホテルにはない魅 かし、地域的にどうしても休憩・回転を重視する傾向が強い。 力や便利さを理解してもらうことが、初来店者の再来店につな 昨年末に、当社の最も高単価の店舗を改装しており、その集客 がるはずです。この取組みは 2016 年もさらに追求します。同 状況をみながら市況の変化に対応していく考えです。 時に多彩な設備の魅力を訴求するには不具合いのない状態が前 また、民泊解禁は、レジャー・ラブホテルの集客にも大きく 提、完璧なメンテナンスを目指します。そのうえで、従来の非 関わってくる問題です。昨年末に制定された大田区の条例がベ 日常的空間が規制で不可能なら、新しい非日常性を創出してい ースになるのであれば各種規制もあり大きな問題はないと思わ くホテルづくりにチャレンジしていきます。これらが新規の若 れますが、官邸主導で強引に進められていることから最終的に 年層開拓につながると思います。同時に、インバウンドや一般 どうなるのか予断を許さない状況です。さらに、民泊解禁と海 観光客等の取込みもさらに進めます。ショートタイムの回転依 外ネットサイトの宿泊施設以外への宿泊誘導は別問題。後者は 存ではなく、 レジャー・ラブホテルの本来の魅力を初心にかえっ 明らかに旅館業法違反です。この2つの問題を一緒くたにする て 追 求 す る こ と で 利 用 者 の 増 加 を 図 っ て い き ま す。 ま た、 とさらなる混乱に陥る恐れがあります。宿泊事業者として民泊 2016 年は店舗数増加にも積極的に取組みたいので、新規オー 問題は注視していかなければなりません。 プンを計画しています。 LH-NEXT 2016 ● vol.27 31 [2016年 市場予測] インバウンド対策と 予約による集客が 今後の成長のカギ 情報発信力と 市場開拓のチャレンジで 新しい需要を拡大 JHTホテルグループ(宝基商事㈱) ㈱J-needz 専務取締役 柳川博一 ◆東京・歌舞伎町で「H OTEL PA S H A 」等の7 店舗を経営。 代表取締役 大福地元仁 ◆ 2011 年に設立。関西圏を中心に直営1店舗、 運営管理・コンサルティング 15 店舗を展開。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 歌舞伎町エリアでは、大規模ビジネスホテルの開業が相次ぎ、 2015 年は、関西地域も一言でいえば"明るいイメージ"。都 この1、2年で 1,500 室以上が増加。デイユースも実施されレ 市部や都市周辺の店舗では、手を掛ければ売上上昇が見込める ジャー・ラブホテルへの影響が懸念されましたが、利用者層は ようになってきたといえます。さらに、インバウンド客や一般 当初予測ほど重ならず、前年比増の売上を示す店舗が多かった 観光客など、新しい需要の獲得が見えてきたことが大きい。当 のではないかと見ています。新規開業ホテル、インバウンド客 社店舗でも、1年間で約 2,000 組のインバウンド客を獲得しま の増加、関東最大級のシネコンオープン等で歌舞伎町のマイナ した。業界外の予約サイトなどからの新しい誘客が実績となっ スイメージが払拭され、若者層の来街者が増加しエリア自体が て現れはじめ、 業界の閉塞状況が打破されはじめたといえます。 活性化したことが追い風になったといえます。 当社店舗の売上状況は、運営管理が1、2年の店舗は前年比で 当社7店舗も、この3年間は売上微増が続いており、2015 10%以上、3年以上の店舗は5%程度の伸びを示しました。 年もトータルで前年比 103%の結果。とくに休憩が増加してお ■ 2016 年の市場動向予測 り、利用時間の短縮化を図り回転数を伸ばしました。 市場開拓能力が問われる年になると思います。周辺店舗の動 ■ 2016 年の市場動向予測 向を気にして対応していくのではなく、自らチャレンジして市 2016 年は、都市部での売上回復傾向が上げ止まりになるの 場を開拓していく。その気合いが必要だと思います。インバウ ではないかとみています。景気回復という追い風が期待できな ンド客の取込みや予約対応は、もちろん手間がかかり対応でき いなかで、若者人口の減少とセックスレス化の進行という逆風 る従業員も必要です。自社ホテルの内部でできないから諦める 要素が続きます。今後も売上向上を続けるには、インバウンド のではなく、どうすればできるのかを考えてチャレンジする。 をいかに取込むかがカギを握ると思います。 当社グループでも別動部隊をつくって対応しています。新たな ■ 2016 年の注力ポイント 市場開拓のチャンスを掴めるかどうか、大きな分岐点の1年に インバウンド増加は 2020 年の東京五輪に向けた一過性の動 なると思います。 向ではなく、アジア各国の経済水準の上昇、日本の観光資源を ■ 2016 年の注力ポイント 考えれば、長期的に続くでしょう。この大きな流れにレジャ 既存店舗の売上はもちろん前年比増を見込んでいます。また、 ー・ラブホテルも対応すべきだと考えています。 昨年に自社物件1店舗を取得。今年は所有店舗を4、5店舗に 2016 年は、当社店舗も平日の宿泊稼動が低い店舗から、イ 増やし受託・コンサル店舗との2本立てで事業展開を進めます。 ンバウンド対応に本格的に取り組んでいく考えです。インバウ 集客力のカギは、情報発信力です。利用者が知りたい情報を ンドのなかでも、低料金の団体客ではなく高単価層を狙います。 いかに提供するか。この業界は、キャッチコピー1つをとって 長期的視点から見れば、都内繁華街立地とはいえ、現状のまま も他業種に比べて訴求力が弱く、HP をつくってもその多くは では確実に利用者数は減少していきます。新しい客層の開拓が スマホに対応していない。すでに、目の前の利用者だけを集客 必要。インバウンド対応にはハード・ソフト両面で改善が求め して成立する事業ではないと思います。予約サイトの活用やネ られますから、2、3年後を見据えてその対策をスタートさせ ットの情報発信にさらに力を注いでいきます。ネット上であれ なければならない時期に来ています。また、日本人客のネット ば、デートスポット、アミューズメント施設、ファッション 予約による集客も2年前から開始しましたが、今年は積極的に 等々とレジャー・ラブホテルを紐付けすることも可能で、各分 取り組んでいきます。これも新しい客層の獲得と単価の確保に 野にいる潜在顧客を開拓できます。ネットを活用し、商圏拡大、 有効です。今年は大規模改装の計画はありませんが、これらの 認知拡大、単価向上を図りながら、高稼働させるというこの業 集客によって前年比 103%を目指します。また、高売上が可能 態の高収益特性をいかに構築していくか。今後のレジャー・ラ な立地で新規物件も取得したいと思っています。 ブホテル市場は、間違いなく面白くなると思っています。 32 LH-NEXT 2016 ● vol.27 [特集]2 0 1 6 年 市 場 予 測 ① 経営/運営企業に聞く: 2016年の注力ポイント 改装と従業員意識向上の バリューアップが完了、 新しい需要獲得を進める 活発な売買は続く 地方郊外・閉鎖店舗にも 再生可能物件はある SULATAグループ 成和サービス㈱ 代表取締役 堀 雅彦 ◆「SULATA」ブランドで、中部、関東、東北、 北海道に 12 店舗を直営展開。 代表取締役会長 濱本元弘 ◆「おとぼけビーバー」ブランド等で、直営・賃 貸・運営受託を含め全国に多店舗展開。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 当社グループは、2013 年から「SULATA」ブランドへの切 都市部は現状維持、地方は地盤沈下がさらに進んだ1年とい 替えによる各店舗のバリューアップを推し進めてきました。こ えます。ただ、東京都区内からも売却や委託の案件が出てくる れが 2015 年で完了。ホテル全体の方向性を示すコンセプト など、都心部でも営業継続が難しい店舗が出始めたように思わ 「SULATA」 (大いなる喜び)はホテル全体のコンセプトであ れます。一方、地方では何店舗かの閉鎖があっても供給過剰が り、改装と同時に従業員の意識・スキルの向上にも取組み、両 解消されないような地域も見られました。このようななかで、 方とも求める水準に達したと思っています。つまり、2015 年 売買の動きはさらに活発化しました。その背景には、当業界へ は、ハードとオペレーションの両面から将来に向けての事業推 の融資に新規参入する金融機関も出てくるなど、良好な融資環 進の準備が完了した年と捉えています。すでにその効果は現れ 境が続いていることがあげられます。 ており、売上状況は、全面改装した店舗では改装前比で 1.5 ~ 当社は、この1年で5店舗売却・10 店舗取得し、財務強化 2.5 倍、部分改装の店舗も 10 ~ 20%の増加を示しました。 を図りながら所有店舗の増加を進めました。運営委託・賃貸の ■ 2016 年の市場動向予測 相談も多く、管理店舗も増加。既存店舗の売上は、前年比増が 業界全体では、売買や改装の動きが続くと思います。ただ、 約3割、維持が約3割。地方郊外の供給過剰地域や料金低下の 今後は、最低賃金の上昇や、マイナンバー制度もあり就労条件 進む地域の店舗は前年比減の状況でした。 の整備等による人件費の増加もあり、従来の経営では高収益を ■ 2016 年の市場動向予測 確保するのが難しい時代になっていくと思います。 売買の活発な動きはまだ続くでしょう。新規参入希望者も増 ■ 2016 年の注力ポイント えています。ただ、適正価格で取得できる物件が少ない。高値 まず、組織のあり方を再構築していきます。30 代の意欲的 で取得し大型改装をして採算が難しくなるケースも出てくると な社員に完全独立のチャンスを与え、自らリスクを背負いなが 思います。やはり、ホテルのプロが市場を見極めて取得費・改 ら将来の可能性にトライできる体制を目指します。これが今後 装費を判断することが必要です。また、運営委託・賃貸の要望 のこの業界に求められる組織構造ではないかと思います。 も増えるでしょう。しかし、再生が難しく運営企業が受けられ 一方、この数年、シティ・ビジネスホテルがレジャー・ラブ ず、廃業に至るケースも多くなると思われます。 ホテルのノウハウを採り入れカップルユースを取り込んできま ■ 2016 年の注力ポイント した。2016 年からは、当社グループではシティ・ビジネスホ 店舗により状況はさまざまですが、共通して言えるのは、工 テルを利用していた宿泊客を本格的に集客していきます。その 夫して実施した料金システムやサービスの効果を発揮する期間 ために必要となるハードと従業員の準備は昨年で完了していま が短くなっていること。スピードのある対応が求められます。 す。一部店舗では、昨年からテレビ電話による通訳サービスも 店舗展開に関しては、数店舗の取得を予定。昨年は安定性・ 採用しました。さらに、2016 年には都内で2店舗のビジネス 確実性を重視しましたが、今年は、取得費が高くても高売上が ホテルの開設を予定しています。レジャー・ラブホテルとビジ 見込める物件も取得したい。また、地方の閉鎖店舗でも低額取 ネスホテル、両者のノウハウを相互活用していく考えです。も 得で収益を生み出す物件に再生可能な物件がまだあります。そ う1つ、すでにシティホテル等では始まっている。「LGBT」 ういった店舗も探していきたい。その一方、借入のない店舗を (レズ・ゲイ・バイ・トランスジェンダー)を歓迎する意思表 つくり収益の柱にする取組みも進めていきます。 示もしていきます。 インバウンドに対しては、一般ホテルの急増状況も鑑みなが 店舗の取得と一部売却を行ないながら、収益力と発展性のあ ら、都市部の一部店舗で対応をしていきたいと思っています。 る組織体制をつくり、新しい客層開拓を進めることにより、将 ただ、アジア圏からの団体客受入れについては、決裁権のない 来の可能性が広がる売上構築を目指していきます。 交渉者が多いので注意が必要です。 LH-NEXT 2016 ● vol.27 33 [2016年 市場予測] お客様とともに成長すべく 調査・研究・分析を徹底し 絶対的な差別化を推進 人手・人材不足は 事業存続の危機 経営感覚の変革が必要 ㈱竹梅 東京ホテルマネジメントシステム㈱ 代表取締役 清水祐侍 ◆東京、神奈川で「WATER-HOTEL S」等の3店 舗を経営。日本レジャーホテル協会会長。 代表取締役 黒田 治 ◆ 2014 年に運営管理・コンサルティング企業と して設立。現在、北関東で7店舗を運営管理。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 2015 年は、当社3店舗ともに前年比微増の結果でした。 北関東エリアは、大きな変化はなく前年とほぼ同じような動 昨年は、私自身が業界に参入して 20 年目。当時はバブル崩 向で推移したといえます。当社店舗の売上も全店トータルで前 壊後の大不況期。しかし「こんな楽しいコト・モノ」があると 年なみ。好立地店舗やイベント・サービスを徹底的に実施でき 提案し成功する事業者が各業界に存在し、それが商人の真髄だ ている店舗などは前年比微増、人口の少ない郊外立地店舗は微 と思った。この初心を忘れてはいけないと思っています。現在 減の状況が続きました。 は、ネットで膨大な情報の取得が可能。それゆえ何か大掛かり 業界全体で下止まり感があり"ほっとひと息"のイメージも なことをしなければ成功しないのではないか。できないなら動 ありますが、人手・人材不足、若者層のホテル離れ、等々、業 かないほうが無難……。でも、お客様が「これはいいよね」と 界が抱える大きな問題は解決に向かってはいません。とくに人 いう小さな感動を地道に積み重ねる努力の継続こそが、絶対的 の問題に関しては、他業種と比べるとブラック業種と見られて な差別化をつくり成功につながるとの考えで臨んでいます。 も仕方がない就労環境の改善が急務。人手・人材不足がさらに 以前から飲食を重視し、今冬のシーズンメニューは生オマー 進めば、新たな営業戦略も実施できず、稼動もできない状況に ルエビ1匹を使った 3,000 円のパスタ。これが1日に数食注文 陥ってしまう。最低賃金のクリアだけで解決できる問題ではな されています。これはまさに現場スタッフの努力継続の結果で く、売上低下のなかで、いかに雇用条件・環境を向上させるこ す。コストを掛けてプロを雇って実行しても現場の"命"は入 とができるか。従来の経営感覚を変革して取り組まなければな らない。それでは継続的な評価を得ることはできません。 らない時期にきていると感じています。 ■ 2016 年の市場動向予測 ■ 2016 年の市場動向予測 売上が上昇傾向の店舗はさらに伸び、低下傾向の店舗はさら まだまだ不透明感が続くと思います。追い風となる明確な社 に下がり、店舗格差が拡大していくと思います。 会的・経済的な要因は見当たらない。老朽化、売上低下、経費 ■ 2016 年の注力ポイント 削減、さらに集客力低下という悪循環から脱却できない店舗も 時代の変化のスピードが速まっています。次の大きな変化は、 多い。そのなかで、資金調達力があり適正な改装を実施でき、 2020 年の東京五輪の後ではなく、その2年前には変化が始ま 経営者が求める新たな営業戦略を実行できる人材を確保できて るという指摘もあります。環境の変化の波に飲み込まれず、乗 いる店舗が売上を伸ばしていく、という状況だと思います。 り越えて次のステージに進むための準備をスタートさせなけれ ■ 2016 年の注力ポイント ばなりません。従来の常識や経験則を柔軟な思考で見直すこと 当社としては、従来同様、ホテルとして当たり前の状態を確 が必要です。お客様の動向を再度、徹底的に調査・研究・分析 実に維持するために、清掃・メンテ・修繕を丁寧にコツコツと する。これが 2016 年のテーマです。 一生懸命にやり続ける。これが基本です。同時に、ホテルの認 ホテル事業は 20 ~ 30 年にわたる長期的な勝負。そのために 知拡大、集客には、やはり Web の活用しかないと思います。 は、お客様とともに成長するホテルでなければなりません。そ ツイッターの自動発信なども効果があります。Web 予約の活用 のための顧客満足を実現するのが従業員満足。これは金銭や就 にもさらに力を入れていきます。ユーチューブの動画発信は思 労環境だけではなく"評価される"ことが必要。能力発揮の環 ったほどのアクセスがない。内容の問題か視聴者層がホテル利 境をつくり、売上という評価を出し、それがやりがいにつなが 用者とは異なるのか、検証が必要です。ただ、地方郊外の中高 り、やりがいが継続につながります。 年層にはスタンプカードなどのベタなサービスが受けます。地 また、業界団体の活動においては、時代の変化のなかで勝ち 域、客層に合った手法で臨みます。2016 年は、既存店舗売上 残るホテルとするための情報を共有できるネットワークづくり は前年比 2 ~ 3%増を目指し、同時に運営管理店舗の増加も進 を積極的に推し進めていきます。 めていきます。 34 LH-NEXT 2016 ● vol.27 [特集]2 0 1 6 年 市 場 予 測 ① 経営/運営企業に聞く: 2016年の注力ポイント 後継者世代の成長、 人材確保、民泊解禁…… 業界の抱える課題は多い 状況分析、適正人件費、 共用部演出、女性活用で 売上上昇の継続を図る ㈱トータルプランニング ㈱トラスター 代表取締役 脇田克廣 ◆「HOTEL MYTH」等のブランドで関西を中心 に多店舗展開。大阪府ホテル協同組合理事長。 代表取締役 嶋野宏見 ◆関東を中心に 30 店舗を運営管理しコンサルテ ィングにも対応。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 都市部では、金融緩和やインバウンド増加が影響。売買価格 昨年は、業界全体が上向きに推移した印象です。当社の運営 が上昇する一方、インバウンドの消費による経済活性化もみら 管理店舗も9割以上が組数・売上ともに前年比増の結果でした。 れ一部店舗ではその受入れもはじまりました。一方、地方郊外 また、昨年は新規参入を希望する企業からの相談・問合せも増 では、売上低下が続き後継者難もあり事業継続が難しくなる店 加。投資家が一般不動産からホテルに目が向き、さらにレジャ 舗も増加。都市部と地方郊外の格差拡大が進んだといえます。 ー・ラブホテルへの関心が高まったといえます。 当社店舗も同じ傾向で、メンテナンスや営業企画に力を注い ■ 2016 年の市場動向予測 だものの都市部では前年比微増、地方郊外は微減の結果でした。 市場環境が上向きとはいえ、 昨年に売上が伸びたホテルでも、 ■ 2016 年の市場動向予測 昨年と同様の取組み方で今年も売上が伸びるような甘い市場環 市場動向を見極め対策を考える前に、いま最も求められるの 境ではありません。なぜ売上が伸びたのか、その分析が重要で が、後継者世代の事業者としての成長だと思います。どうして す。相次ぎ新規開業が続くシティ・ビジネスホテルは確実に進 もレジャー・ラブホテルを単なる"金の成る木"とみてしまい 化しています。私たちも的確な状況分析に基づき進化を続けな がち。しかし、創業者が苦労して築きあげてきたように、手塩 ければ、売上上昇は継続しないと思います。 に掛けて育てなければ、実が成らないどころか簡単に枯れてし ■ 2016 年の注力ポイント まいます。現場から信頼される経営者となり、時代の変化に対 大型投資の改装ではなく、現状の的確な分析をもとに必要な 応し事業を継続していくために、自ら学びのネットワークをつ 経費を効果的にかけることで集客・売上向上の継続を図ってい くり切磋琢磨していくことが求められます。 きます。イベント企画が有効なホテルではイベント予算を 10 今年も業界はさまざまな問題を抱えています。民泊問題も経 万円から 20 万円に強化することでコスト増加分以上の売上増 済効果優先で解禁に動くことは間違いなく、風俗利用者の流出 加を実現する。稼動状況と人件費を見直し人件費が増加しても など当業界も確実に影響を受けますから、その動向を注視しな 機会損失を防ぎ売上増加につなげる。とくにこの数年の売上低 ければなりません。また、人手不足の問題もマイナンバー制度 下のなかで人件費削減を進めたことにより機会損失が増加し、 の影響からさらに加速すると思われます。高齢者やダブルワー さらに売上を低下させているホテルが少なくありません。 クの従業員など、その実情を踏まえた柔軟性のある法の運用を 施設面では、エレベーターホールや廊下などの共有部の見直 望みたいところですが、難しい問題です。 しを進めたい。魅力的な客室を備えていても、エレベーターを ■ 2016 年の注力ポイント 降りたら薄暗い廊下……。これでは利用者の期待感は高まりま 現在の多店舗展開企業は、経営者一人で事業を牽引すること せん。共有部の空間演出は低コストでも可能です。 は不可能です。的確な経営判断に加えて、有能なオペレーショ また、当社としては女性がさらに活躍できる組織体制づくり ン責任者や施設管理責任者が求められ、さらに施設面、雇用面 を進めます。これまでも女性の感性を活かしたイベント企画等 のコンプライアンスも必要。人材育成と組織力強化が求められ を重視してきましたが、さらに強く打ち出し、現在の利用者に ます。また、レジャー・ラブホテルは単なる金融商品ではあり 訴求力のある運営力の強化を進めていきます。一方、都市部で ません。そこには一生懸命にホテルを育て上げてきた従業員た はインバウンド対応のレジャー・ラブホテルも増えるでしょう。 ちの想いも込められています。経営企業の利潤追求のみで売買 しかし、2020 年以降はインバウンドの増加は続かないと思い に動くべきではないと思っています。 ます。インバウンド集客が可能な店舗では、対応のために新た 2016 年の既存店舗の売上は前年比横ばいを見込んでいます。 に大きなコストをかけることはさけ、高料金で臨みます。浴室 商圏の状況を慎重に分析したうえで、適切な追加投資や営業企 も設備もビジネスホテルより格段に充実していることを考慮し 画を判断し実行することを重視して取り組んでいきます。 た料金設定をすべきだと思っています。 LH-NEXT 2016 ● vol.27 35 [2016年 市場予測] 店舗数の拡大から “ビジ・ラブ”の新業態へ 新方向の取組みを開始 女子会利用の促進等で イメージアップを図り 着実な単価向上策も進める HAYAMA HOTELSグループ プラザアンジェログループ 代表取締役 土井文博 代表取締役 矢部嘉宏 ◆九州・福岡を拠点に西日本で 38 店舗(一部 FC、 ◆ 関 西、 関 東 で「J A G U A R H O T E L 」 「H OT E L 運営管理含む)を展開。 TH E L E O 」 等 の ブ ラ ン ド で、 運 営 管 理 も 含 め ■ 2015 年の総括 28 店舗を展開。 2015 年は、6 店舗増加(2店舗取得、4店舗運営管理)し、 ■ 2015 年の総括 既存店舗売上は全体で前年比 109%の実績。良好な状況で推移 2015 年は、前半は好調、後半は停滞、通年で既存店の実績 した1年でした。この1、2年で数店舗を改装し、それらが着 は前年並みあるいは微増という状況でした。一部大手企業の会 実に売上を伸ばしたことが売上増につながりました。とくに、 社員等を除けば一般消費者の所得は増えておらず、レジャー・ 改装店舗で強気の料金値上げを行ない、全体で組数は2、3% ラブホテル分野における消費は上向いていないと思います。一 の増加ながら客単価が約 400 円上昇し、売上・収益に大きく貢 昨年の消費税増税で値上げした店舗が再び値下げに動くケース 献しました。 も少なくないというのが実情です。 この数年、価格競争が続きましたが、改装等で店舗の価値を 当社店舗では、女子会利用の促進に注力。店舗によっては1 高めれば、料金を値上げしても利用者は納得して来店する状況 か月 10 ~ 15 組の獲得実績を示しました。お得感のあるプラン になってきているといえます。 設定で収益幅は小さくてもレジャー・ラブホテルのイメージア ■ 2016 年の市場動向予測 ップを第一目的とした取組みです。このイメージアップが、今 この数年、当社では既存店舗の売上増、店舗数の拡大を続け 後の集客力と単価の向上に重要だと考えています。 てきましたが、売上増は頭打ちになってくるとみています。一 ■ 2016 年の市場動向予測 方、店舗取得に関しても、売買価格の上昇に加え、改装・増築 消費・経済の動向をみても大きく売上増加につながる空気感 が繰り返されたことで取得後の改装に費用がかかる物件も多く、 はなく、 前年とほぼ同様の状況が続くのではないかと思います。 今後の経済状況の変化を考えると、これまで以上に慎重な選択 また、金融機関の融資状況は良好ながら、優良な売却物件が少 が求められる状況になっています。 なく売却価格も上昇しており、店舗取得には従来以上に物件の 現在、2020 年の東京五輪に向けて不動産分野など活況を呈 精査が求められる状況になるといえます。 していますが、この状況は 2020 年まで続かないと思います。 ■ 2016 年の注力ポイント とくに不動産分野のバブル崩壊を知らない世代の動きは危険。 客単価を少しずつ上昇させる取組みを行なっていきます。仕 当社では、店舗取得による事業拡大よりも財務面の体質強化を 入れや人件費など経費額の上昇が続くなかで、単価アップは収 重視して事業に臨む考えです。 益確保のために不可欠な要素。現在の利用者ニーズを捉えるコ ■ 2016 年の注力ポイント ンセプトルームを設けて料金アップを実施、メンバー特典を料 宿泊業態のボーダレス化とインバウンド増加の流れにいかに 金ではなく利用時間延長などで強化する等々の施策を着実に実 対応するか。相次ぎ開業する大規模ビジネスホテルに、既存の 行していきます。また、女子会利用の促進はさらに進めます。 中小規模のレジャー・ラブホテルが対抗するのは今後さらに難 ベッドを脇役にしたパーティスペースタイプの客室も設けてい しくなっていくと思われます。今後、ビジネスとラブの両要素 きたい。同時に、当社店舗の特徴でもある多彩なイベント・サ を有する 200 ~ 300 室規模の"ビジ・ラブ"業態が求められる ービスは利用者からの支持も高く引き続き注力していきます。 と考えています。今年は、その方向に向けた第1歩として中規 将来に向けて、風俗施設的なマイナスイメージを払拭し若い女 模での"ビジ・ラブ"業態の開発にチャレンジします。 性層に受け入れられるイメージの構築とアピールをしていく考 一方、既存店舗については、改装は3店舗を予定しておりま えです。そのための YouTube の CM も現在制作中です。 すが、プライスリーダーとしての責任を果たすため、料金値上 大阪エリアはインバウンドの増加が著しいのですが、予約サ げ等で地域の市場に対しプラスになる方向で臨みます。2016 イト等での積極的な集客は当面行なわない考えです。準備不足 年の既存店舗売上目標は、店舗により前年並み~ 108%を見込 での取組みはリスクが大きい。それよりカプセルホテルや民泊 んでおり、前年比平均 105%を目指します。 施設事業として臨む可能性を検討していきたいと思っています。 36 LH-NEXT 2016 ● vol.27 [特集]2 0 1 6 年 市 場 予 測 ① 経営/運営企業に聞く: 2016年の注力ポイント 細部の魅力充実と ネット・予約の活用を進め 宿泊強化・単価向上を狙う 社員の成長をベースに 情熱的なサービスを実行し 離れた利用者を取り戻す プランタンホテルグループ ㈱マークス 代表取締役 森藤紳介 ◆福岡市内および県下で「HOTEL NEST」など6 店舗を経営。 代表取締役 氏家正裕 ◆ 2001 年に運営管理会社として設立。現在、東 京・北関東・東北で9店舗を運営管理。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 福岡県は、福岡市内の繁華街立地店舗は好調、郊外立地店舗 昨年の当社店舗は、業界全体の前半好調・後半やや失速とい は前年並みといった状況。市内では近年の改装店舗も多く、活 う状況とは反対に、前半苦戦・後半好調で、通年ではほぼ前年 性化につながっている印象があります。当社店舗も、福岡市内 並みの結果でした。市況が悪化している商圏でなおかつ周辺で の3年前に全面改装した店舗は、昨年も売上増加を持続。郊外 改装があった店舗は 10%前後の減少、この1、2年で改装し 店舗は苦戦ながら、表装をリフレッシュした店舗は売上低下傾 た店舗は前年比 10%以上の伸び。地域差よりも店舗の商品力、 向から上昇に転じました。既存店舗の売上はトータルで前年比 営業力の差が売上に大きく現れた状況でした。 プラス2%の結果でした。また、当社店舗のなかでも、この2、 ■ 2016 年の市場動向予測 3年は高単価・高グレード店舗が好調な傾向を示しています。 昨年と比べて大きく市況が変化する要素は現状ではみられな この他に、昨年は市内で1店舗を取得し、全6店舗体制となり く、前半は昨年と同様の傾向で推移すると思います。ただ、さ ました。 まざまな要素で市況は変化するので、後半はまだ不透明です。 ■ 2016 年の市場動向予測 ■ 2016 年の注力ポイント 市況は、昨年の傾向が続くと思います。ただ、福岡市内では 当社が拠点とする仙台市ではインバウンドの増加は見られず、 今後、シティ・ビジネスホテルの相次ぐ開業が控えており、一 カップルニーズに応える内容のシティ・ビジネスホテルも驚く 般ホテルの増加に対して、レジャー・ラブホテルではさらなる ほど安い料金。車で郊外のレジャー・ラブホテルに行くよりも 集客力の強化が求められるといえます。 市内で食事をしてシティ・ビジネスホテルに宿泊というデート ■ 2016 年の注力ポイント プランを選択するケースが少なくないと思われます。 昨年取得した店舗の売上増が今年の第1の注力点です。昨年 今年、力を注ぎたいのは、そういったレジャー・ラブホテル はいわばオペレーションの調整期間として従来同様の営業を行 から離れて行った利用者を取り戻すこと。非日常性を集客力と ないましたが、今年は攻めに転じ、サービス強化や料金システ してきた業態ながら、現在ではシティ・ビジネスホテルの方が ム変更などで集客・単価向上に取り組みます。 非日常性の高い状況になってしまっています。この状況を打破 昨年から宿泊強化と単価向上をテーマとしながら、昨年は攻 したい。近年の厳しい市場環境のなかで、当社も含め多くの経 めきれず、市内店舗は宿泊が伸びたものの郊外は苦戦傾向が続 営・運営企業は、低売上でも利益を出せる仕組みをつくってき きました。今年は継続してこのテーマに取り組みます。これま ました。しかし、その反面、利用者をワクワクドキドキさせる でも重視してきた飲食サービスは、さらにメニュー構成の工夫 情熱的なサービスや空間づくりが失われたといえます。今年は、 やトレンドを掴んだメニューの採用などを進めたい。また、今 その情熱的なサービス・空間づくりに力を注ぎます。 後はネット予約による集客も宿泊強化のポイントになると思っ 当社では、幹部・中堅社員が成長し店舗管理能力が向上して ています。スマホで手軽に予約できる状況は、従来の利用者に きたことで、コスト抑制のなかで本来あるべき魅力づくりがで とって利便性向上につながり、観光客等の新しい客層開拓にも きる状況になってきています。当社の幹部・中堅社員は、現場 つながると思っています。 のパートスタッフから育ってきた人材。2年前からはパートス また、アメニティや美容家電等のレンタル品はさらに充実さ タッフへのキャリアパスシステムを採用し、スキルと意識を向 せ細部の魅力強化を図っていきます。アメニティは経費は増加 上させるとともに、将来の管理職養成の仕組みとして活用して しても品質にこだわり流行を捉えた商品でラインナップを拡充。 います。さらにパートスタッフの成長は幹部・中堅社員の刺激 コスプレは、店舗ごとに異なるラインナップでLサイズも備え、 になり、その成長も促します。2016 年は、情熱的なサービ 忍者服や巫女衣装などでセクシー路線に加えエンターテイメン ス・空間づくりとマンパワーの企画力と実行力で、レジャー・ ト性も高めていきたいと思っています。 ラブホテルから離れた客を取り戻し、売上アップに臨みます。 LH-NEXT 2016 ● vol.27 37 [2016年 市場予測] 激戦エリアのなかで “ハレ”の日に選ばれる 地域から愛される店舗に 客室空間、運営の両面で 単価につながる差別化を 推し進める ㈲館 ルナパークグループ 代表取締役 武田 茂 ◆神奈川・厚木エリアで「HOTEL Verace」等の 3店舗を経営。 代表取締役 庄司乃由 ◆東北から中部にかけて「LUNA PARK」ブラン ドを中心に 27 店舗を運営管理。 ■ 2015 年の総括 ■ 2015 年の総括 厚木エリアは、高速道路インフラの整備や近隣における大規 金融機関の融資状況が良好で、売買および改装の動きが活発 模商業施設の開設などの追い風はあるものの、供給過剰の状況 化。その結果、とくに都市部においては新しい店舗が増加。改 に加え、2015 年はチェーン店舗の進出・改装オープンもあり、 装店舗は、単価向上を狙い差別化を図ってはいますが、客室内 消費税増税を機に値上げ・デフレ脱却の方向に向かった流れが、 容・雰囲気が似通ってしまっていることは否めず、改装したか 再び価格競争の方向に向かい始めるなど、激戦状況が続いてい らといって急速な売上回復につながらないケースも見受けられ ます。私自身、ホテル事業をはじめて 30 年。さらに今後、10 ます。訴求力のある運営・サービスが伴った改装でなければ想 年、20 年と継続していかなければならない。供給過剰のなか 定通りの売上向上は難しい状況になっています。 で生き残っていくためには、地域上位のポジションに位置し続 当社店舗は、この1、2年で改装した店舗が多く、それらが けることが必要です。そのためには高単価・高価値の方向しか 順調に売上を伸ばし、未改装店舗もほぼ前年並みを維持したこ ないと思っています。昨年も当社3店舗は客単価 7,000 円台~ とで、既存店舗トータルでは前年比 112%の結果を示しました。 9,000 円台を維持しながら、単価に見合う価値のブラッシュア ■ 2016 年の市場動向予測 ップを続け、既存2店舗が前年比で数%の売上増加、一昨年改 売買および改装の動きはさらに加速すると思われます。ただ、 装オープン店舗は改装前比 200%以上で推移しました。 都市部ではシティ・ビジネスホテルの新規開発も続きます。お ■ 2016 年の市場動向予測 洒落で綺麗なだけでは、それらとの競合になる。同じ土俵での 2016 年は、年初から株価の下落など経済の雲行きは怪しく、 戦いを避けるためにも、ラブホテルとしての魅力強化が必要で 世界規模の不安材料も多い滑り出しです。市場環境も、まだま しょう。一方、都心部の物件価格の上昇により、取得希望者の だ供給過剰の状況。厚木エリアに限らず各地で、生き残りをか 目はより広範囲に向きはじめており。地方郊外も売買・改装で けた厳しい状況が続くと思います。 活性化が進むと思います。ただし、地方郊外は、追加投資に見 ■ 2016 年の注力ポイント 合った単価・集客が見込めるか否か、目利がカギを握ります。 長期的にレジャー・ラブホテルを存続させるには、週末や特 ■ 2016 年の注力ポイント 別な日など利用者にとっての"ハレ"の日に選ばれる店舗でな 一昨年からナチュラル系デザインの「星・星・星(キラキラ ければならない。そのためには、何か1つの特徴ではなくトー 星) 」ブランドをスタートさせ、昨年は、手作り感の可愛らし タルバランスが重要です。店構えから各種サービス、清掃レベ さを打ち出した「チャーミーズ」をオープンし、ともに好評で ルまで、総合的に利用者から信頼されるホテルづくりが求めら す。従来の煌びやか豪華系の「LUNA PARK」も含め、地域・ れます。2016 年は、各部のさらなるブラッシュアップに取り 物件の状況に合わせて客室空間の明確な差別化を進めたい。横 組みます。また、厚木エリアではインバウンド需要は期待でき 並びを脱し、料金競争に巻き込まれず、適正単価で選んでもら ません。それよりも幹線道路沿いのファミレス利用のカップル える、他店舗にはない特徴的なホテルづくりを重視します。 を誘導したい。飲食サービスをさらに重視し、流行を捉えたメ 現在、高単価の優良客層は 40 歳以上の世代。バブル経験層 ニュー開発にも注力します。当社は同一エリアでの展開ですが であり、値引きよりも高価値のほうが訴求力があります。その それぞれの店舗でポテンシャルが違います。それを見極め、最 ためには運営・サービス面のクオリティも必要。店舗責任者が 大限に引き出すことが重要。それには弱点の改善だけではなく、 現場で顧客満足、売上構築のための動きに専念できるように、 強さを再確認して伸ばすことも大切です。そのカギを握るのは 事務作業や POP 制作等を本社に移行する体制で臨みます。売 現場スタッフ。利用者と従業員の両方から魅力あるホテルを目 上目標は、例年同様、既存店トータルで前年比 110%。インバ 指し、 地域で一番愛されるホテルづくりをモットーにレジャー・ ウンドに対しては、日本風にアレンジしたドミトリーなど新業 ラブホテルのよさをさらに広げていきたいと思います。 態開発も視野に入れて検討していきたいと思っています。 38 LH-NEXT 2016 ● vol.27 [特集]2 0 1 6 年 市 場 予 測 ① 経営/運営企業に聞く: 2016年の注力ポイント 新規客層の開拓元年 企業理念と行動指針を明確化し 考えるスタッフを育成する ㈱Re・stay (レステイ) 代表取締役 宮原 眞 ◆㈱ Re・stay は 2003 年に設立し、現在、全国に 44 店舗(直営 34、運営受託・賃貸 10)を展開。 ■ 2015 年の総括 2015 年は、消費がもう少し上向きに推移するのではないか と期待していたのですが、まだまだ消費の現実は厳しく、業界 の市場環境も全体的に上昇傾向とは言えない状況だったと思い ます。利用人口自体が減少していることは間違いなく、商圏内 で改装店舗があると利用者が増加するのではなく、商圏内の他 店舗から移動するという状況が続いています。 当社の既存店舗の売上は、前年比増のホテルが約半数で全体 では前年なみ。利用動向は、中高年が中心の昼の休憩利用は堅 調ながら、20 ~ 30 代が中心となる平日夜の休憩利用が苦戦。 宿泊は、2012 年から開始した飲食等を関連させ+ 1,000 ~ 3,000 円ながら割安感を訴求する「お泊りパック」が奏功し、 組数確保と単価アップが図れました。 ■ 2016 年の市場動向予測 利用人口の減少が続くなかで、今後の集客を維持・向上させ るにはインバウンドや女性1人客、観光グループ客など新規客 層を開拓し取込んでいくことが求められます。これができたホ LH n e x t 2016年 市場予測 テルは売上を伸ばすと思います。一方、金融機関の融資状況は 良好とはいえ、融資を受けられるのは堅実性や成長性が評価さ れる企業であり、それら企業は追加投資で既存店の売上を伸ば し事業拡大も進むでしょう。その結果、二極化がさらに拡大し ていくと思われます。 ■ 2016 年の注力ポイント 2016 年は、当社では"新規客層の開拓元年"と位置付けて います。都市部や観光地の約 15 店舗でインバウンドや観光客 の集客をスタートさせます。これら新しい客層を獲得するとと もに従来客の顧客満足を高めるためには、"対面しないことが サービス"という従来の意識を転換することが必要。対面接客 で自ら考えて行動するフロントが求められます。そのため、昨 年に企業理念(おふたりの時間が「特別な時間」になるお手伝 いをします)と行動指針を明確化し、権限委譲の幅も拡大しま した。同時に、フロントの負担軽減を図るために VOD のオー ダリングシステムの活用なども工夫していきます。 昨年は、大規模改装を3店舗行なったこともあって取得は1 店舗にとどまりました。今年は、数店舗の取得を計画していま す。既存店の売上目標は全体で前年比 102%です。 LH-NEXT 2016 ● vol.27 39
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