水土里ネット鹿妻

【大
賞】
岩手県 「水土里ネット鹿妻」 地域協働プロモーター
1.水土里ネットの概要
かづま
・水土里ネット名:水土里ネット鹿妻
・役職員数:役員
13 名、
職員:常勤 13 名
非常勤 1 名
・組合員数:4,609 名
・受益面積:4,622ha (水田 4,388ha・畑 234ha)
・水土里ネット設立の経緯:昭和 26 年 3 月に鹿妻穴堰普通水利組合から鹿妻穴堰土地改
良区に組織変更した後、昭和 46 年に煙山土地改良区、昭和
50 年に不動土地改良区を吸収合併して現在に至る。
2.地域の特徴
本地域は、岩手県中央部の北上平野に位置する豊かな都市近郊型の農村地域である。
盛岡市とその近郊に位置する本地域は、第 2 次・第 3 次産業の成長が著しい地域では
あるが、中核農家を中心とした地域農業の活性化のために、生産コスト削減と農地集積
を進めている。地域の基幹作物である水稲については、生産体制を整備し、消費者の多
様なニーズに対応できる流通体制の確立を図り、本地域で生産される良質米のブランド
化に取り組んでいる。
16 世紀末には南部藩により現在の盛岡市上太田穴口地内に開鑿された鹿妻穴堰によ
って水田面積が拡大され、今では県内屈指の生産量を誇る良質米生産地帯となった。
雫石川が北上川に合流する平坦な扇状台地にある肥沃な水田地帯は、冬には非常に寒
冷な気象に見舞われるものの、夏期は比較的温暖な天候に恵まれる緑豊かな稲作地帯で
ある。都市化・混住化が進展しているが自然環境にも恵まれており、水と緑が織りなす
風景は多くの人々の心を癒やしている。
3.運動の背景
当地域は県内屈指の都市化・混住化の進展地域であり、生活排水の流入による水質の
悪化や、非農家が多い地域で施設の維持管理が難しくなるなどの問題が増加することが
予想された。このため、市町村の関係機関は勿論、NPO、農協等の当水土里ネットと
つながりが薄かった団体も含め、21 世紀土地改良区創造運動(以下「21 創造運動」と
いう。)を通じて水土里ネットの役割、土地改良施設の持つ多面的機能等について理解
の推進を深め、土地改良施設が地域の共有財産であることについて意識の醸成を図る必
要があった。
また、長年にわたり水源涵養林を保育管理している意味や、森林の持つ機能等につい
て幅広い年齢層に周知したいという思いから運動に取り組み始めた。
4.運動の基本理念・目標
現在まで水土里ネットが果たしてきた役割を認識すると共に、多面的機能の発揮等、
農家のみならず非農家を含めた一般住民からも期待される役割の実現に向けて、地域住
民と一緒に継続できる「身の丈に合った運動」を基本理念として、身近で親しみやすい
組織となること目指す。
5.21 創造運動の活動
■広報「鹿妻穴堰」発行、ホームページ開設
《活動内容》
毎年、4 月と 11 月の年 2 回、組合員や関係機関を対象に広報誌を発行している。
水土里ネットの運営状況、水管理体制、21 創造運動の状況を主な内容とし、各号 5,500
部を作成し、現在までに延べ 86 号を発行している。また、平成 17 年度にはホームペー
ジを開設し、21 創造運動の活動状況をいち早く発信している。
《活動状況写真》
広報「鹿妻穴堰」第86号
ホームページでの創造運動の紹介
■鹿妻穴堰頭首工見学、生きもの調査
《活動内容》
頭首工見学では盛岡市内外の小学校等を対象に、鹿妻穴堰頭首工の歴史や施設の機能
について紙芝居の上演を加え、わかりやすく説明するほか、土地改良施設の多面的機能
の啓発と水源涵養林の機能や管理の重要性を、水土里ネットで作成したパンフレットを
用いて説明。さらに隣接する鹿妻神社を見学し、先人達の偉業、地域に与えてきた恩恵
を教えている。
また、鹿妻本堰調整池、幹線用水路、西部揚水機場、鹿妻本堰排水路、鴨助堰などに
おいて生き物調査を行い、土地改良施設の持つ多面的機能について理解を深め、地域の
自然環境やその大切さを教えている。
《活動状況写真》
鹿妻穴堰頭首工見学の様子
生きもの調査の様子
■アドプト活動
《活動内容》
鹿妻穴堰頭首工周辺水辺公園、鹿妻本堰等の土地改良施設における公園整備や刈払等
の協働奉仕活動であるアドプト協定を、小学校、PTA、地域団体、企業と締結して実
施している。
当初は 8 団体からスタートしたが、現在では 17 団体と協定を締結している。
《活動状況写真》
鹿
妻穴堰頭首工周辺水辺公園花壇の植栽
鹿妻本堰排水路の桜の手入れ
■枝打ち・植樹体験学習会、矢巾町産業まつりへの出展
《活動内容》
水源涵養林の機能や保育作業の重要性について、杉の枝打ち体験を通じて理解を深め
る学習会を実施している。また、平成 22 年度からはアオダモやカラマツの植樹体験学
習会を加えて活動内容を充実させている。また、矢巾町産業祭りにおいても水土里ネッ
トのブースを設け、間伐材を利用した箸やコースター作り、オガクズ粘土の製作体験を
通じて広く一般住民に水源涵養の重要性をPRしている。
《活動状況写真》
枝打ち・植樹体験学習会
矢巾町産業祭り
6.運動全体の成果と今後の展望
当初、水土里ネットでは、維持管理業務は自分たちで行っていかなければならないと
いう使命感で日々努力してきたが、様々な分野における活動に取り組んだ結果、地域住
民との連携が構築され、自分たちの存在・役割を深く理解してもらえるようになった。
一番有効であったアドプト活動は、管内の複数の施設で実施され、非農家、自治会、小
学校、企業を巻き込んだ活動として、年々締結団体が増加し活動が広がっている。
また、土地改良施設の役割や多面的機能、水源涵養林の役割や機能の紹介を各種イベ
ントを通して継続的に周知しており、参加者からの「来年も楽しみにしているよ」など
の声は、運動を継続する活力にもなっている。
職員だけでなく、役員も体験学習会等に参加することにより、その意識に積極性が芽
生え、活動内容や範囲に広がりがみられる。
組合員以外の一般住民への水土里ネットの存在・役割は、21 創造運動を通じて十分
に周知されており、「身の丈に合った運動」を今後も継続していく必要があると考える。