光で なおす。

難病に苦しんでいる人がいる。
検査すら受けられない人がいる。
ウシオが光で、できることは何だろう。
光で なおす。
医
療
先進医療を支える光技術
キーワードはQOL
(クオリティ・オブ・ライフ)
波長が長く、物質の中まで透過する性質を持つ
「赤外線」は、患部を温めて治療や症状の緩和を行う
19世紀末。年間の日照時間が少なく、
くる病に悩む人
にもかかわらず、医療現場では紫外線の弊害を懸念
光治療は、従来の手術や投薬に比べて痛みや副作
が大勢いた北欧で、街灯の下で暮らしていたホームレ
し、その利用は敬遠されがちだったのです。それなら
用が少なく、身体へのダメージも抑えられます。
そのた
スが自然治癒したことがきっかけでした。
その後、
デン
ば、弊害のある波長をカットし、効果の高い波長のみ
温熱療法や皮膚の再生治療などに、波長が短い「紫
め、患者さんの生活に大きな影響を与えることが少
マークのN.フィンゼンが、
カーボンアーク灯を使って
を照射すればいいと考えたんです」。
外線」
は、強いエネルギーによる化学反応を利用した
なく、いわゆる充実した質の高い生活:クオリティ・オ
結核性の皮膚病を治療し、
ノーベル医学生理学賞を
ウシオは、アトピー性皮膚炎や乾癬(カンセン)、
皮膚疾患の治療や殺菌などで大きな効果をあげて
ブ・ライフ(QOL)
を実現する治療として注目を集め
受賞したことで光線治療は世界的に広まりました。
白斑(ハクハン)
といった皮膚科領域の自己免疫疾患
います。さらに最近では、
“ 切らずに”ガン細胞を死
ています。また、
“ 病気にならないため”の健康管理
「しかし、紫外線に効果があることは周知の事実
を対象に、
「 治療効果が高く、副作用を低減した光」
滅させる光線力学治療(PDT)や、病巣に光をあて、
や予防に活用する研究も進められています。
の開発に着手しました。
薬と反応したガン細胞のみを発見・診断する光線力
「2000年頃からウシオは医療分野に本格的に
「この光線療法とは、紫外線の免疫抑制作用を利
学診断(PDD)の研究も進んでいます。
参入しました」
と、開発担当者は振り返ります。
「 それ
用し、過剰反応を起こしている皮膚の症状を鎮静化
紫外線は人体に弊害がある一方で、精神安定に欠
まで内視鏡や顕微鏡のランプなどを通じて医療分
させるというもので、1970年代にハーバード大学で
かせない体内 物 質メラトニンの生成を促進させた
野とのかかわりがありましたが、最先端の光技術を
乾癬治療における紫外線の有効性が発見されて以
り、
カルシウムの吸収をよくするビタミンDをつくりだ
活かした新しい医療・検査機器の開発により、さら
すなど、私たちにとって有用な光でもあります。光に
にこの分野で貢献したいと考えたのです」。
よる治療・検査は、人体に影響を及ぼさず、治療に
効果のある光のみをつくりだす光技術があってはじ
治療効果が高く、副作用を低減した光を
めて可能になるのです。
ランプの光を使った医療の研究がはじまったのは
来、311nm付近の紫外線が主に使用されてきまし
エキシマライト光線療法機器
セラビーム®UV308
緻密な細胞実験と臨床評価を
経て新開発した
「エキシマフィル
タ」が効果と安全性を最大限引
き出します。
た。でも実は、
どの波長がどの程度の効果と副作用を
もたらしているのか厳密にはわからないままで、
さら
に効果の高い波長の存在も指摘されていましたが、
解明には至っていなかったんです」。
医
療
研究者と技術者の熱意が生んだ
世界初「エキシマフィルタ」
「犬や猫をはじめとしたペットの飼育数が世界的に
でも扱え、結果も安定しており、
しかも安価なポイント
増加しています。さらに、ペットの位置づけが家族と
リーダー®が普及することで、早期発見による治療や
そこでウシオは、大学と共同で波長を細かく分析
同等になり、人と同じように高齢化も進み、動物病院
予防はもちろん、医療水準の向上や経済的負担の軽
し、その結果、治療効果は308nmをピークとしつつ、
にかかる機会が増えています。
しかし、ペットは病状
減にも貢献できる可能性があるんです」。
肌が赤くなるなどの副作用が生じる297nm以下の
や症状を自身で説明できないため、人以上に血液検
波長をカットした光が、最も効果的であると導き出し
査を中心とした臨床検査による治療方針の決定が重
光を通じて健康と喜びを
ました。従来治療に用いられていた波長311nmよ
要なんです。動物病院からの『迅速・手軽に検査でき
セラビーム®UV308もポイントリーダー®も、医療
り、わずか3nm短くするだけで、
より高い治療効果が
る測定器があれば』
という要望に、
ウシオは光の技術
という新たな分野への挑戦によって生まれました。
な
期待できるようになったのです。
で応えたかったのです」。
ぜウシオが医療に取り組むのか? その答えの一端
「ウシオにはすでに、世界で初めて製品化に成功し
そこでウシオは、小型・簡便・迅速に定評がある検
は、セラビーム®UV308の営業担当者のエピソード
た エ キシ マランプ がありました 。そ れを応 用し 、
査方法であるイムノクロマト法 ※を採用した装置の開
からうかがえます。
1970年代当時の技術では発光できなかった波長
発に着手。含有量を測るのではなく
「あるか、
ないか」
「先生がおっしゃったんですよ
『医者になってよかっ
308nmをピークに持つエキシマランプを開発し、
さ
という定性の検査結果しか示せなかった従来のイム
た』
って。
『あの子、病気が治ってやっと笑ったんです
らに、副作用が大きい297nm以下の短波長域を取
ノクロマト法に対し、独自のLEDを使った測定技術
よ。ウシオさんの装置があったから、私も治療するこ
り除くエキシマフィルタの開発に成功したことで、道
で、色の濃度を特殊なアルゴリズムで解析。それによ
とができたんです。
ありがとう』
って。胸が熱くなりまし
が大きく拓けました」。
り、臨床現場での定量分析を可能にし、動物医療従
た。医療はこれまでの業界とはまったく異なる分野で
そして2008年、独自の光技術が搭載されたエキ
事者の負担軽減も実現しました。今後、専用試薬「ポ
すが、本当にやりがいのある仕事です」。
シマランプによる光線治療器を実用化し、安全で治
イントストリップ ®」の種類を増やしていくことで、
さま
光には無限の可能性があり、その光を待っている
療効果の高い光線療法機器を完成させました。世界
ざまな検査項目にも対応することができます。
初の308nmエキシマライトおよびエキシマフィルタ
を搭載した皮膚科用「セラビーム® UV308」の誕生
光による予防医療も
です。
さらに
「操作や構造をできるだけシンプルにしたの
「治療を意味するTherapy(セラピー)
と、光をあ
は、医療体制がまだ十分ではない東南アジアやアフ
らわすBeam(ビーム)の合成語であり、
『 治療する
リカなどの国々で利用してもらうためです」
と開発担
光』
という意味を持つセラビーム。
この名前には光の
当者は語ります。
「先進医療が受けられる国は世界の
プロフェッショナルとして、医療に貢献するという強
中でごくわずか。満足な治療や検査を受けられない
い意志が込められています。困っている患者さんは
人々は大勢います。衛生状態や医療水準の低さに起
日本だけではありません。病気で苦しむ世界中の患
因するC型肝炎や、風土病であるサラセミアなど、そ
者さんを、私たちの光で笑顔にしたいんです。光で私
の国や地域の事情にあった検査項目に特化し、簡便
たちができることはまだまだたくさんある、そう信じ
で安価な検査が求められているのです。手軽で誰に
ています」。
独自の技術で血液の定量分析を可能に
検査の分野でもウシオは新たな製品を生み出して
います。それが血液分析装置「ポイントリーダー® 」
と
専用試薬「ポイントストリップ®」
です。開発に携わった
担当者は、開発の背景を次のように説明します。
人たちがいる。ウシオの医療分野へのチャレンジは
はじまったばかりです。
血液分析装置
ポイントリーダー®
イムノクロマト法による定量
分析を実現した血液分析装
置。専用試薬であるポイント
ストリップ ®の種類を変えれ
ば、
これ1台でさまざまな項目
の検査が可能に。
※ イムノクロマト法:抗体抗原反応を利用した測定法。検体に
含まれている抗原が試薬の抗体に反応して発色する。インフ
ルエンザや妊娠の検査に使われている。
インプラント用紫外線照射装置
セラビーム® スーパーオッセオ
世界初、紫外線でインプラントの接合能力向上と
治療期間短縮を実現する紫外線照射装置(この製
品は欧州でのみ販売しています)
。
体内可視化装置 VeinViewer®
近赤外線と画像処理技術により、皮下の血管
構造や血流パターンをリアルタイムのデジタル
画像として、
皮膚表面上に直接投影できる。
内視鏡・顕微鏡用ランプ
反射鏡一体型のコンパクトタイプ。
病変部分の微妙な変化を読み取るため、演色性に優
れたクセノンランプが採用されている。