4.3 分析考察 4.3.1 地域課題の把握と解決方針の提案 「本章 3.7 地域の課題の把握等」で示した通り、マリンピア沖洲地区での地域課題は、防犯、 防災、環境、運輸、省エネ、自然エネルギー及びスマート社会づくりに分類され、一部を除いて、 そのほとんどはエネルギーに関連する課題・期待であった。表 2.4.27 に地域課題に対する解決方針 の提案を示す。 自然エネルギーの導入については、収益確保や安全面のリスク管理で不安視する意見も見られる ものの、近年普及の進んでいる太陽光発電及び風力発電に期待感が大きく、一部では導入に前向き な意見も見られる。これらの発電で得られた電力を街路灯(LED)や、非常用電源に利用することで、 防犯、防災の地域課題への対応にも繋がるものと考えられる。さらに、燃料電池車(FCV)等のエコカ ーに対して、導入コストや長距離走行等に課題があるものの、マリンピア沖洲内での水素ステーシ ョンの整備を推進することで、FCV の導入拡大が期待できる。ここでの水素を地域で発電した電力 で製造出来れば、エネルギーの地産地消にも貢献出来る。 自然エネルギーの特定目的会社(SPC)について、長期展望、コストとリスク管理に課題がある一方 で、雇用拡大に期待する意見もあり、採算性を含めたビジョンを示すことで、地域企業間の連携運 営が期待出来る。さらに、参画企業によるエネルギー消費を促すことで、このこともエネルギーの 地産地消に繋がるものと考えられる。 昼夜の人口差の大きい特徴から、沖洲地区全体で地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS)に よる管理を行い、個別にビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)、家庭エネルギーマネジメン トシステム(HEMS)を導入し、マリンピア地区では一部工場にエネルギーマネジメントシステム (FEMS)を導入することで、最適なエネルギー利用が期待できる。 以上のような解決方針は、企業誘致のアピールとしても活用でき、雇用の促進や経済波及にも効 果を及ぼすものと考えられる。 表 2.4.27 地域課題に対する解決方針の提案 項目 防犯・安全 防災 省エネ 再生可能 エネルギー スマート社会 づくり 解決方針 ・街路灯(LED)の拡充設置 ・長期避難対策及び計画(非常用電源確保、防災備蓄確保) ・エコカー(電気自動車、燃料電池車等)導入支援 ・水素ステーション、パイプラインの整備 ・太陽光発電、風力発電導入 ・特定目的会社(SPC)運営の長期展望(ビジョン)計画支援 ・エネルギーマネジメントシステム(EMS)導入 ・公共交通機関のエコ化(FC バス導入) 83 4.3.2 先進地の事例研究 「本章4.1 先進事例」で整理した先進事例について、表2.4.28に各地域の規模を示す人口と面 積に加えて、スマートコミュニティ及び水素社会の構成要素を整理した。主な構成要素は、地域の 自然エネルギー資源を最大限に利活用すること、地域内のエネルギー消費を最適化し地域エネルギ ーマネージメント(CEMS)により、省エネ・省コストを図ること、電気自動車(EV)などの次世代 交通システムを有効に活用することなどが挙げられる。 マリンピア沖洲の面積は、1.156km2と先進事例に比較して大変規模が小さく、また、宅地を有し ておらず夜間には殆ど人はいない環境であることから、事例をそのまま採用するのは適当では無い と考えられる。京浜臨海部での低炭素水素活用実証プロジェクトの事例では、横浜市風力発電所「ハ マウィング」で得られた電力を用いて水素を製造し、最適な水素供給を行うための貯蔵と輸送の仕 組みや、製造した水素を青果市場や冷蔵倉庫等の燃料電池フォークリフトに導入利用することが検 討されている。周南市水素利活用計画においても、自然エネルギーで得られた電力を活用して水素 を製造、貯蔵、輸送し、燃料電池車(FCV)や燃料電池フォークリフトに利活用することを目指してい る。 ここで、 「本章3.3 地域の有望な自然エネルギーの種類とポテンシャル調査」 で前述したとおり、 マリンピア沖洲地区は太陽光発電及び風力発電が適しており、エネルギー供給を起点として考案す ると図2.4.19に示すA~E案が提案できる。現状で実績のある太陽光発電に加えて、陸上での風力発 電と洋上での風力発電の2種類が挙げられる。洋上風力発電は各地で研究開発がなされており、期待 される発電技術の一つである。 エネルギー利用については、発電した電力をそのまま電気として利用する、もしくは京浜臨海部 での事例のように水素に変換して利用する、2つの方法が考えられる。電気として利用する場合は、 スマートコミュニティの全ての事例で導入されているCEMSを基本に考え、夜間の状況を考慮すると 沖洲地区全体を対象として面的最適化を検討することが望ましい。また街路灯(LED)や災害時の非常 用電源確保に利用することで地域課題の解決に繋がる。一方、水素に変換して利用する場合は、燃 料電池車(FCV)の導入促進に向けて水素ステーションの整備や、水素利用企業や蓄電設備へのパイプ ライン化が挙げられ、 これらの取り組みは徳島県水素グリッド構想へ貢献出来るものと考えられる。 エネルギー供給 エネルギー利用 A案:太陽光 Ⅰ案:電気としての利用 B案:風力(陸上) ・CEMS C案:風力(洋上) ・街路灯等への利用等 Ⅱ案:水素に変換しての利用 D案:太陽光+風力(陸上) ・水素ステーション E案:太陽光+風力(洋上) ・パイプライン化 図2.4.19 エネルギー供給及び利用の提案 84 表 2.4.28 各地域におけるスマートコミュニティ及び水素社会の構成要素 スマートコミュニティ事例 名 称 対象地域人口[千人] 宮城県 宮城県 F-グリッ 気仙沼 ド 市 - 2 対象地域面積[km ] 人口密度(人/km2) 地域エネルギーマネジメントシステム (CEMS) ビルエネルギーマネジメントシステム (BEMS) 工場エネルギーマネジメントシステム (FEMS) 3 - 宮城県 宮城県 岩手県 岩手県 岩手県 石巻市 山元町 宮古市 釜石市 北上市 水素社会事例 福島県 神奈川 会津 県 若松市 横浜市 愛知県 豊田市 京都府 福岡県 けいは 北九州 んな 市 山口県 福岡県 周南市 前原市 福岡県北 神奈川県 九州市 川崎市 京浜 臨海 67 16 13 58 37 93 130 3,703 422 244 971 149 68 68 1426 1445 344 554 65 126 441 437 383 435 918 154 488 656 104 36 142 96 195 29 200 460 84 213 339 8,513 460 1,584 1,990 227 654 1,889 10,042 15,052 ● ● ● ● ● ● ● ● 家庭エネルギーマネジメントシステム ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● (HEMS) ● ● ESCO サービス ● ● ● 地域新電力 ● ● 自然エネルギー発電等 太陽光発電 ● ● ● ● ● 風力発電 ● ● ● ● ● ● 小水力発電 バイオマス発電 ● ● バイオマス熱利用 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 地熱発電 コージェネレーション ● ● ● ● ● ● ● 水素利用 蓄電設備 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 次世代交通システム 電気自動車(EV) ● プラグインハイブリット車(PHV) ● ● ● ● ● ● 燃料電池車(FCV) ● 超小型車 EV 充電設備 ● ● ● ● ● ● カーシェアリング ● ● ● ● ● ● 生活支援 産業復興 ● ● 水素ステーション 植物工場、ICT 活用、LED 利用 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 85 ●
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