自治体向けBPO市場に関する調査結果 2016

2016 年 3 月 30 日
自治体向け BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場
に関する調査結果 2016
-マイナンバーと地方創生に関わる BPO 需要が新たに拡大-
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内の地方自治体向け BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の調
査を実施した。
1. 調査期間:2015 年 12 月~2016 年 3 月
2. 調査対象:SIer、コールセンター事業者、人材派遣系 BPO 事業者、PR 会社、ふるさと納税事業者、指定管理者、地
方自治体など
3. 調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・E メールによる取材、ならびに文献調査を併用
<自治体向け BPO とは>
本調査における自治体向け BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは、BPO 事業者による地方自治体業務の代行
サービスのことを指す。本調査では、「事務代行サービス」、「施設運営代行サービス」、「その他業務代行サービス」等を
対象とし、自治体の情報システムの開発・保守・運用業務などの IT 系 BPO 業務は含まない。
なお、本調査では、官民連携(公民連携:Public-Private Partnership)の手法の中で、官の関与度が高い「従来型業務
委託」、「包括的業務委託」、「指定管理者制度」を調査対象とし、人材派遣業務は除いている。
【調査結果サマリー】
‹ マイナンバーや地方創生に関わる BPO 需要が発生し、
2019 年度の自治体向け BPO 市場規模は 3 兆 9,883 億円になると予測
2014 年度の国内自治体向け BPO 市場(事業者売上高ベース)は、前年度比 2.0%増の 3 兆 7,517 億
5 千万円となった。地方自治体の予算が縮小傾向にあることやサービス単価が低下傾向にあるため、自
治体向け BPO 市場の成長率は微増程度に留まっている。但し、業務の一括調達を行う自治体が増加し
ており、BPO 事業者側でもサービス提供範囲の拡大に努めている。また新たな需要として、マイナンバー
対応 BPO や地方創生に関わる広報活動の BPO などへの需要も発生している。これらのことから、自治体
向け BPO 市場は、2013 年度から 2019 年度までの年平均成長率(CAGR)1.4%で推移し、2019 年度の
同市場規模は 3 兆 9,883 億円になると予測する。
‹ 今後は、下水道事業や水道事業、病院事業において BPO の活用が進むと予測
今後は、地方財政の決算規模として大きい割合を占めている下水道事業、水道事業、病院事業にお
いて BPO の活用が進むと考えられる。そのため、その他業務代行サービス市場は、事務代行サービスや
施設運営代行サービスよりも高い成長率を示していくと予測する。
‹ 資料体裁
資料名:「自治体向けBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望2016」
発刊日: 2016 年 3 月 30 日
体 裁: A4 判 165 頁
定 価: 150,000 円(税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
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2016 年 3 月 30 日
【 調査結果の概要 】
1. 市場概況
2014 年度の国内自治体向け BPO 市場(事業者売上高ベース)は、前年度比 2.0%増の 3 兆 7,517 億
5 千万円となった。市場は徐々に成長しており、2013 年度から 2019 年度までの年平均成長率(CAGR)
は 1.4%で推移し、2019 年度の同市場規模は 3 兆 9,883 億円になると予測する。
自治体向け BPO 市場は、地方自治体の予算自体が縮小傾向にあることやサービス単価自体が低下
傾向にあるため、成長率は微増程度に留まっているが、以下のような成長要因を抱えている。
委託側の地方自治体においては、業務委託にかかるコストや入札情報開示の手間を省力化するため、
業務の一括調達を行う自治体が増加しており、一案件あたりの委託規模と範囲が拡大傾向にある。一方、
受託側の BPO 事業者でも、BPO サービス提供範囲の拡大に努めている。多くの自治体が予算を縮小し
ている中で、BPO 事業者はサービス品質を維持するのに必要な予算は確保していかねばならない。その
ため、一つの業務分野で受託実績を残し、同じ自治体の周辺分野へと受託範囲を拡大させることで予算
確保に努めている事業者が増加している。
また、新たな需要として、マイナンバー対応 BPO サービスや地方創生に関わる広報活動の BPO サー
ビスなどへの需要が発生している。マイナンバー対応 BPO の例としては、マイナンバーカードの発行業務、
専用コールセンター業務、マイナンバー管理業務などの代行サービスが挙げられる。一方、地方創生に
関わる広報活動の BPO の例としては、地方自治体の PR 活動業務、ふるさと納税にかかる自治体情報発
信業務の代行サービスなどが挙げられる。
図 1. 自治体向け BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場規模推移と予測
単位:百万円
4,500,000
4,000,000
3,677,488
3,751,750
3,812,100
3,871,200
3,917,000
3,955,700
3,988,300
2016年度
予測
2017年度
予測
2018年度
予測
2019年度
予測
3,500,000
3,000,000
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
0
2013年度
2014年度
2015年度
見込
矢野経済研究所推計
注1.事業者売上高ベース
注2.自治体向け BPO とは、BPO 事業者による地方自治体業務の代行サービスのことを指す。「事務代行サービス」、「施
設運営代行サービス」、「その他業務代行サービス」等を対象とし、自治体の情報システムの開発・保守・運用業務などの
IT 系 BPO 業務は含まない。なお、官民連携(公民連携:Public-Private Partnership)の手法の中で、官の関与度が高い「従
来型業務委託」、「包括的業務委託」、「指定管理者制度」を調査対象とし、人材派遣業務は除いている。
注 3.本調査における「従来型業務委託」とは事務・施設運営に関わる単純業務などの一部を民間企業等に委託すること、
「包括的業務委託」とは公権力行使に必要な監督権などを除く、包括的な業務を民間企業等に委託すること、を指す。
また、「指定管理者制度」とは、住民利用施設等の運営を議会の議決によって指定した指定管理者に委託する制度であ
る。
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2016 年 3 月 30 日
2. セグメント別の市場状況
2-1.事務代行サービス市場
事務代行サービスとは、窓口や総務・庶務、人事、経理、マイナンバー、戸籍・住民票、国民健康保険、
介護保険、障がい福祉、臨時福祉給付金、生活保護、税務、庁舎清掃、ごみ収集・リサイクル、学校教
務・事務・給食関連業務、公営住宅、公園、コミュニティバスなどの業務の代行サービスのことである。
事務代行サービス市場は、自治体職員のリソース不足と地方自治体における財政難を背景に成長し
ている。総務省によると、地方公共団体の総職員数は、1995 年以降は減少に転じている。その一方で、
住民の高齢化が進行し、同時にグローバル化、核家族化も進み、行政に対するニーズは多様化してきて
いる。そのため、職員の業務負担が増加しており、職員のリソース不足が自治体の重要な課題となってい
る。また、地方債現在高も年々増加しており、地方自治体は厳しい財政状況を強いられている。これらの
課題を解決する手段の一つとして、職員の業務負担を減らし、コストを削減可能とする BPO サービスの導
入を検討する自治体が増加している。
しかし、地方自治体の予算縮小や安い入札額で応札する BPO 事業者の存在によって、サービス単価
が低下しているため、事務代行サービス市場は微増の推移に留まっている。
2-2.施設運営代行サービス市場
施設運営代行サービスとは、図書館やスポーツ施設、美術館、文化会館・市民ホール、福祉センター、
老人ホーム、道の駅、宿泊施設などの公共施設運営業務の代行サービスのことである。
施設運営代行サービスは、バブル期における大規模公共施設の相次ぐ建設や、2003 年の指定管理
者制度の施行を背景に成長した。しかし、それから 10 年以上を経た現在、指定管理者としての施設運営
代行サービス市場への参入企業はほぼ固定化しており、市場は成熟化しつつある。ただし、現在でも、
住民向けサービス向上を目的として指定管理者制度の利用に関心を持つ地方自治体は依然として多く
存在しているため、施設運営代行サービス市場は微増の推移を示していくと考える。
2-3.その他業務代行サービス市場
その他業務代行サービスとは、水道や下水道、交通、電気、ガス、病院、観光施設などの事業に関わ
る業務の代行サービスのことである。
その他業務代行サービスでは、地方財政の決算規模として大きい割合を占めている下水道事業、水
道事業、病院事業において BPO サービスの活用が進むと考えられる。その背景には、厚生労働省が「新
水道ビジョン」において、民間連携を課題解決の方策の選択肢としたことが挙げられる。また、総務省が
策定する「公立病院ガイドライン」の中でも、改革の 3 つの視点のひとつとして経営形態の見直しをあげ、
民間的経営手法の導入を明記したことが、病院事業における BPO サービスの活用を後押しする要因に
なると考える。そのようなことから、その他業務代行サービス市場は、他のセグメントよりも高い成長率を示
していくと予測する。
※民間企業向け BPO 市場に関する参考資料:BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査結果 2015
(2015 年 12 月 4 日発表)
http://www.yano.co.jp/press/press.php/001477
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