介護職員処遇改善加算について 介護保険最新情報 Vol. 437 の概要解説 「介護職員処遇改善加算に関する基本的考え方並びに 事務処理手順及び様式例の提示について」 2015年6月11日 連合 生活福祉局 Ver. 2.0 2015年度介護報酬改定における 介護職員処遇改善加算 ■介護職員処遇改善加算とは? 介護職員の賃金アップにかかる原資として、特定の要件を満たした 事業所からの申請に応じて事業所へ支払われる報酬加算のこと。 ※2009年度には「介護職員処遇改善交付金」が導入され、 2012年度に現在の「介護職員処遇改善加算」が創設された。 国の審議会における2015年度介護報酬改定の議論にて、 あくまで経過的措置であり、廃止すべきとの意見もあったが、 連合から幾度となく同加算の維持・増額を求めたことが功を奏し、 制度の継続とともに、12,000円相当分の上乗せが実現した。 参考:2015年度介護報酬改定に関する談話(2015年2月10日:連合 事務局長談話) http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2015/20150210_1423564802.html 賃金改善の考え方について①-1 ■ポイント 処遇改善加算が増額されたが、「いつ」を基準にして、 実際にどれくらい賃金が増えるのか? ●平成26年度以前に加算を取得していた介護サービス事業者等の介護職員 下記①、②のどちらか ①加算を取得する直前の時期の賃金水準(介護職員処遇改善交付金(H21年度改正)を取得 していた場合は、交付金による賃金改善の部分を除く。) ②加算を取得する月の属する年度の前年度の賃金水準(加算の取得による賃金改善の部分 を除く。) ●平成26年度以前に加算を取得していない介護サービス事業者等の介護職員 →加算を取得する月の属する年度の前年度の賃金水準 過去に加算による賃金改善がされた場合は、「直前」か「前年度」 初めての賃金改善となる場合は、「前年度」 の賃金が基準とされる。 賃金改善の考え方について①-2 ■ポイント 処遇改善加算が増額されたが、「いつ」を基準にして、 実際にどれくらい賃金が増えるのか? 新設 <全4区分> 拡充部分 介護職員1人当たり 月額12,000円相当増 ※ 加算相当額の賃金改善を行うこと。 加算Ⅰ 加算Ⅱ (介護職員1人当たり) 月額 27,000円相当 (従来の加算Ⅰ) 月額 15,000円相当 加算Ⅲ (従来の加算Ⅱ) 月額 13,500円相当 加算Ⅳ (従来の加算Ⅲ) 月額 12,000円相当 既に加算による賃金改善(従来の加算Ⅰ)がされている場合は、 +12,000円程度 初めての賃金改善となる場合は、最大で+27,000円程度 が 事業所の報酬へ加算される。 したがって、実際の賃金改善額は、労使によって決定していく必要がある。 ※なお、法定福利費は加算に含めてもよいことになっているので注意 想定される状況 ケースA ※既に処遇改善加算を取得していた事業所が、新加算(Ⅰ)を取得し、 前年度を基準とした更なる賃金改善を実施する場合 (15万) (10万) 2015年度処遇改善加算 による改善分(10万) (15万) 2012年度処遇改善加算 による改善分(15万) ■従前の処遇改善加算による賃金改善分をベースと し、今回の新加算による更なる上積みを実施した。 基本的なケース。 年収 (300万) (300万) (300万) 2011年度 以前 年収300万 2012年度 処遇改善加算 年収315万 2015年度 処遇改善加算(Ⅰ)算定 年収325万円 想定される状況 ケースB ※既に処遇改善加算を取得していた事業所が、新加算(Ⅰ)を取得し、 既存の処遇改善加算の取得直前を基準とした賃金改善を実施する場合 (20万) (15万) 2015年度処遇改善加算 による改善分(20万) ■2012年度の処遇改善加算取得前の賃金水準を基準とし 改めて賃金改善を行った場合。 年収 (300万) (300万) (300万) 2012年度~2014年度に行われた定期昇給や自主的な賃金の 改善については、今回の処遇改善加算にかかる賃金改善分 に含む事業所もある。 この際、直近(例えば2014年など)の賃金と比較すると一旦賃 金を引き下げてから加算で埋め合わせしたように見えるが、 当該ケースは制度上、認められるとされる。 2011年度 年収300万 2012年度 処遇改善加算 年収315万 2015年度 処遇改善加算(Ⅰ)算定 年収320万円 ただし、事業所は、賃金改善の 「対象者」「支払いの時期」「要件」「金額」などを職員に周知し、 問い合わせがあればわかりやすく説明する必要がある。 よって労使交渉では明確な説明を求めることが重要。 想定される状況 ケースC ※既に処遇改善加算を取得していた事業所が、新加算(Ⅰ)を取得するが、 特別な事情により経営が悪化するため、 一時的に賃金を引き下げてから賃金改善を実施する場合 (特別事情届出書(後述)を提出する場合) (15万) (20万) (10万) 年収 (300万) (300万) (290万) (20万) 特 別 な 状 況 が 改 善 2015年度処遇改善加算 による改善分(20万) ■処遇改善加算の取得前を基準とし、 経営の悪化等の理由で「一時的に」賃金を引き下げて から賃金改善を実施した場合 (300万) 特別事情届出書(後述)を提出し、 引き下げが必要な事情が妥当と判断された場合は このような取り扱いが可能。 ただし、引き下げた賃金は、引き下げにかかる事情が 解消し次第、元に戻す必要がある。 あくまで、「一時的な」対応という位置づけである。 2011年度 以前 年収300万 2012年度 2015年度 処遇改善加算 処遇改善加算(Ⅰ)算定 年収315万 年収310万円 年収320万円 その他のケース ■ベアはあったが、一時金が下がったため、年収ベースでは賃金が改善しなかった。 (一時金は増えたが、基本給が下がったため、、、(同上)) →処遇改善加算は、賃金改善にかかる「原資」という位置づけのため、賃金改善の方法は 労使に委ねられる。また、「賃金水準」は年度にわたって支給した「賃金総額」であるため、 基本給・一時金という賃金項目のみで適正か否かの判断は難しい。 「基準点」 「加算の算定によって得た原資の額」 「原資の配分」 という3点を整理して 情報開示を求める必要がある。 ■新たに加算ができたのに、賃金の上乗せが少ない気がする・・・。 →「基準点」が2012年度の処遇改善加算前の時点とされた場合、そこから増えた金額をまとめて、 「処遇改善加算による賃金改善分」として事業所は取り扱うことができる(ケースBの事例)。 ただし基準点からの実際の賃金上乗せ額が、加算により取得した原資に対して明らかに過小の場合は 「賃金改善」がなされていないとみなされ問題となる可能性がある。 このことから、労使交渉で修正を求めるとともに、場合によっては自治体と共に指摘する。 ■賃金が上がった職員と下がった職員がいる。 →処遇改善は各月・サービス事業所単位の算定となる。よって一部職員の賃金が下がっていても、 全体の「賃金総額」水準がチェックされるため、制度上は認められる。ただしこの場合も、一部職員の賃 金引き下げにかかる合理的な理由について、 労使の合意を得る必要がある。 労働組合としての取り組み① ■介護職員処遇改善加算の取得を促す。 →処遇改善の実現には、労使の取り組みが不可欠。 処遇改善加算を職員に周知徹底するとともに、 事業主に対して積極的な加算取得を促す。 ■処遇の改善にあたっては、基本給の改善を実現する。 →厚生労働省の通知(2015年3月31日発出)にも、 「安定的な処遇改善が重要であることから、 基本給による賃金改善が望ましい」と明記されている。 ■「いつ」の賃金水準を基準とした賃金改善かを明確にさせる。 →直前に賃金が下がり、加算が単なる埋め合わせとならないように。 事業所が加算の取得に先立って賃金を引き下げる場合には、 所定の要件を満たす必要がある(後述)。 賃金改善の考え方について② ■ポイント 賃金アップではなくて、キャリアアップ制度の整備や、 職場環境の整備に加算が使われるのでは? 【P3L21~】キャリアパス要件や職場環境等要件(中略)に要する費 用については、算定要件における賃金改善の実施に要する費用 に含まれない。 加算はあくまで、賃金の改善に使うことが求められる。 キャリアパスの整備や、職場 環境の改善は、前提! 賃金の引き下げをさせないために ■ポイント 介護報酬が大幅なマイナスになったのに、賃金が上がるのか? 賃金水準を下げてから、新しい加算で穴埋めされるだけなのでは? 【P3L1~】特別事情届出書(後述)の届出を行う場合を除き、 賃金水準を低下させてはならない。 現行の賃金水準を一旦下げ、新たな加算分で補填する、 という扱いは、原則禁止とされている。 ※ただし、例外があるため注意が必要!(次のページ) 特別事情届出書とは ■ポイント 現在の賃金水準の引き下げが認められるのは、どんなとき? 特別事情届出書とは? 【P10L18~】事業の継続を図るために介護職員の賃金水準を引き下 げた上で賃金改善を行う場合には(中略)、特別事情届出書を提 出する必要がある。 ※特別事業届出書の記載事項 ①事業が赤字であり、資金繰りに支障が生じていること ②賃金引き下げの内容 ③事業の経営、賃金水準の改善の見込み ④賃金引き下げについて、労使の合意を得ていること等の手続き つまり、労働者がきちんと使用者側と話し合わないと、知らないうちに賃金引き 下げに合意したことにされ、賃金の引き下げが正当化される恐れがある。 もしもの場合の対応 ■処遇の改善にこだわり、賃金の引き下げは認めない。 →介護人材の確保と定着、介護の質や専門性の向上には 賃金の引き上げが不可欠。依然として低い介護職の処遇を鑑みれば、 賃金の引き下げは到底容認できない。 万が一、賃金の見直しが避けられない場合も・・・ ■一方的に賃金が下げられないよう、労使による協議を徹底する。 →処遇改善加算の取得前に給与水準を下げる場合には、 「適切に労使の合意を得ていること」が求められる。 労使の協議なく、一方的な賃金引き下げを認めないこと。 労働者の合意のない賃金引き下げには、断固として抗議すること。 ■賃金水準の改善見込みを提示させ、賃金引き下げの期限を設定させる。 →賃金の引き下げを実施する場合には、 賃金水準の改善の見込みを明示することが事業所に求められる。 労働組合としての取り組み② ■労働組合の組織化を進める。 →労働者の処遇改善・職場環境の改善を確実に進めるためには、 労働組合の存在が不可欠。 →賃金の引き下げに際しては、労使の合意が前提とされる。 労働組合がなければ、使用者側と対等に話し合うことは難しく、 一方的な処遇の改悪を認めることになりかねない。 事業主からみた賃金改善のメリット ■離職抑制、採用・研修コストの削減 →介護職が敬遠される大きな理由は、「つらいのに賃金が安い」。 きちんと将来設計を描ける賃金体系を整備すれば、離職を抑制 できる。結果的に採用・研修のコストを大幅に削減できる。 ■職員のパフォーマンス向上 →賃金改善によって職員は「自分の働きが評価された」と感じ 承認欲求を充足させる。意欲が高まればパフォーマンスが 高まることはもちろん、職場の雰囲気も改善。 すると急な残業など、緊急・非常時に対する弾力性も向上する。 ■介護職の地位の向上 →定着率が高まれば、職員にスキルが蓄積され、専門性が高まる。 これにより、より良い介護サービスを提供でき、利用者の満足度も 向上する。集客力が高まるとともに、「介護」に対する社会的な 評価自体が高まることに繋がる。
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