子どもが伸びる言葉掛け

「子どもが伸びる言葉掛け」
~子どもが変わる魔法の言葉~
1 子どもに伝わる「言葉掛け」
2 子どもが伸びるほめ方&叱り方
3 ケース別の対応
天王みどり学園 加賀谷 勝
何度言っても分からない理由
脳の多様な機能を
同時総合的に働かせることがうまくできない
・話を集中して聞くことが苦手
・見えない話し言葉を理解することが苦手
・人と目を合わせることが苦手
・音の弁別・選別することが苦手
・ワーキングメモリーに弱さがある
・言葉の意味理解に課題がある
・人の気持ちや状況を理解して合わせることが苦手
・全体を捉えることが苦手で細部に注目してしまう
子どもに伝わる「言葉掛け」
1 分かる言葉で簡潔&具体的に
・絵になる言葉や数を使う、五感に訴える
「きれいに片付けなさい」➟
?
「積木を箱に入れよう」「絵の具と画用紙を片付けよう」
「もうちょっとで終わり」➟
?
「長い針が5で終わり」「タイマーがなったら終わり」
2 否定語ではなくやってほしいことを伝える
・肯定的な表現はシンプルに理解して行動できる
「コップを落とさないでね」➟ 「コップを離さないで持ってね
「低めのボールを打つな」➟ 「高めのボールをねらえ」
子どもに伝わる「言葉掛け」
3 指示は一度に一つ(一時一事の原則)
・活動中に複数の情報を理解することが難しい
「いつまでも遊んでないで、片付けて!手を洗って
給食を食べるよ」
「給食だから10数えたら遊びをおしまいにするよ」
「片付けするよ。積木を箱に入れようね」
「じゃあ、手を洗うよ」
4 穏やかにCalm・近付いてClose・静かにQuiet
・子どものそばに行き、同じ目線の高さで、名前を呼ん
で、前振りをしてから話し掛ける(大声は伝わらない)
楽しい演習
CCQ
~効果的な指示の出し方~
活動中に自分の席から離れて遊んでいる ○○さんに
座るように指示を出す 子ども役と指導者役を体験する
1 離れた場所から大きな声で「すわります」
2 近付いて視線を合わせて静かに「すわります」
3 近付いて視線を合わせて静かに「○○さん」と呼び、
肩を手でポンポンして2秒じっと見てから「すわります」
Calm Close Quiet
子どもに伝わる「言葉掛け」
5 言葉と視覚情報(消えない情報)を併用する
・見て分かる情報を見えるように伝える
身振り手振り イラストや写真 具体物 文字や数字
6 事前の声掛けでやるべきことを明確にする
・行動の前の状況を変えれば、適切な行動に変わる
「あと5分で 終わりだよ、片付けするよ」
「教室に戻って最初にやることは? そうだね、次は?」
上手なほめ方
1 先に、部分を具体的にほめる
・ほめられると心がオープンになり、素直になる
・部分に注目すればほめられるところが見付かる
「この草の緑がきれいだね」
「この字は はみ出さないで書けてるね」
「今日の味噌汁も美味しいね。今度は大根も入れてみて」
2 すぐにその場でほめる 60秒ルール
・行動の変容は60秒以内の周りの対応で決まる
・時間をあけるとなぜほめられたのか理解できない、ポ
ジティブな振り返りが難しい
なぜほめられたのか実感できるように
うまくいったことを説明してあげる
上手なほめ方
3 小さな成果を見逃さない 25%ルール
・みんなが当たり前にできることでも、特性のある子ど
もにとっては大変なことが多いことを理解してほめる
・子どもの「できること・頑張っているとき」に目を向ける
「がんばれ」→「がんばってるね」 過程をほめる
「なわとび3回とべたね。今度は5回に挑戦」スモールステップ
4 みんなでほめる 3回ルール
・人は同じことを3回ほめられると暗示にかかる
・保護者だけではなく、園や学校の先生もほめる
ある実験→「顔色が悪いですね」
上手なほめ方
5 方法を含めてほめる
・子どものやっている行動・方法を言葉で伝える
「友達におもちゃをかしてあげたね」
「自分から片付けたね」
「はみださないで書けてるね」
「先生の話を最後まで聞くと間違えないね」
〈ほめ言葉を台無しにするNGワード〉
「○○さんは□□もできるんだ」 比較
「きれいに片付けてね。いつもこうだといいね」 嫌み
「今度は○○もやってね」 すぐ次の課題を与える
上手な叱り方
1 特性のためにできないことを 叱らない
・特性のために「できないこと」を理解する
・どうしたらその子の望むことができるのかを教える
子ども:「○○したいです」「○○やりたくないです」
教 師:「どうぞ!」と許可する
2 否定形「ダメ」 命令形「○○しなさい」は避ける
・「ダメ」だけでは混乱するので、どうすればいいのか具
体的な言い方をする、選択肢を与える
・肯定的な内容は穏やかに伝えられる
「廊下を走っちゃダメ、走るな!」➟「静かに歩こう」
「~するのいやだ」➟「これとこれ、どっちにする?」
上手な叱り方
3 共感してから 短い言葉でシンプルに叱る
・長い説教は聞き取れない、抽象的な言い回しは理解
できずに混乱する
「いつまでテレビを見ているの!いいかげんにしなさい」
「9時だからテレビは終わり」 時間や次やることを指示する
4 感情的にならず 最後はほめる
・叱りっぱなしにすると、叱られた経験だけが記憶に
残って自信をなくすので、成功体験で終わりにする
「私の言うことを聞いてくれて ありがとう!」
「落ち着いて 一人でできたね 大丈夫だよ」
上手な叱り方
5 アイメッセージで伝える
・主語を自分にすると相手をとがめる要素が入りづらく
なる(関係性を構築するメッセージ)
「(あなたは) どうして こんなに帰りが遅いの!」
1
2
3
4
相手の行動
その行動が私に与える影響
その影響に対する私の感情
私の要求
「(私は) あなたの帰りが遅いから
事件に巻き込まれたのではないかと
心配してたんだよ
7時には帰ってきてほしい」
ケース1
友達に手や足が出てしまう
・相手の言葉の意味や気持ち、状況を理解して合わせる
ことが苦手(相手の痛みや気持ちを想像できない)
・自分の気持ちを言葉でうまく表現できなかったり気持ち
のコントロールが難しかったりする
〈具体的な対応〉
・行動には全て意図があるので、理由を尋ね、子どもの気
持ちを代弁したり受け止めたりする
・「叩いてはいけない」と短い言葉で伝え、「貸して」って言
おうねと望ましい行動を教える
・「あなただって取られたら悲しいでしょ、友達だって悲しい
んだよ」と相手の気持ちを伝える(相手の視点)
根気強く教え続ければ やがて理解できる
ケース2
集中して座っていられない
・たくさんの情報がいっぺんに入るので集中できない、
不安やストレスが増してくると感覚が過敏になり落ち着
かなくなる➟刺激を減らす
・無意識にとってしまう行動なので、体を動かす時間を
つくって気持ちを切り替えたり、小さな変化を認める言
葉を掛けてやる気を引き出す
〈具体的な対応〉 事前に調子のよいときにルールを確認する
・「外に行かないで」➟「イスにすわってください」
・「この課題をやったら休み時間にいっぱい遊べるよ」と、
ポジティブな交渉をする→「○○したら□□できるよ」
子どもの□□したいをベースに言葉を掛ける
予測される行動に対して事前に対応する
ケース3
パニックを起こしたとき
・パニック~奇声を発する、自分や他人に噛みつく
物を投げつける等
・原因~予期しないことが起きた、自分の気持ちが伝え
られない、相手の指示や要求が分からない、
不快なことがある、不安な環境に置かれている
〈具体的な対応〉 潜伏期→動揺期→爆発期→回復期
・事前に変更や変化を伝える「明日は電車で出かけるよ」
・遊びや言語化で気分転換を図る「いつもと違うから嫌なの?
・落ち着くまで待つ(×厳しい叱責や優しくなだめる)
・タイミングよく声を掛けて振り返る 「がまんできたね」
言葉掛けは クールダウンしてから
ケース4
自己肯定感を高める
・自分のいいところも、ダメなところもひっくるめて、「自分
が好き」という気持ち 自分っていいじゃん!
・人の役に立っている、頼りにされていることが実感でき
るように、どんな小さなことでも感謝の言葉を掛けて認
める➟人と関わり自分の役割を果たす中で育つ
〈ある中学校3年生のやる気に関するアンケート〉
第1位 「早くしなさい」
「今日も手伝ってくれて
第2位 「勉強しなさい」
第3位 「○○しちゃダメ」 うれしかった 助かった、ありがとう
」
「ありがとう」は 魔法の言葉
クイズ 「声の掛け方」
もうすぐ運動会の練習が始まります。しかし、5歳児
の蓮君はホールで好きな恐竜の本に夢中です。
あなたは どのように声を掛けますか?
「10ページまで読んだら、本を片付けよう」
「長い針が6になったら、本を片付けよう」
「運動会練習が始まる前に、恐竜をお家に帰そう」
「運動会練習が終わったら、また読んでいいよ」
クイズ 「声の掛け方」
授業中 先生の話を聞かないで私語をする
生徒がいました。
あなたはどのように声を掛けますか?
「(あなたは)うるさい」
「(あなたは)静かにしろ おしゃべりをやめなさい」
「私は怒っています。 (静かになったら)
こういう静かな状態だと 私はうれしい」
「私は 授業に関係のないおしゃべりをされると
話しづらい。授業中は真剣に話を聞いてほしい」
ま
と
め
1 できるだけ叱らない!
・思考は現実化するので、大人が抱いた不安や否定
的な言葉掛けで私はダメな子と暗示をかけられる
2 叱ることが誤りではなく、叱り方が大切!
・子どもの「行動」を、感情的にならず、次はどうする
かを一緒に考えたり教えたりする
・叱りっぱなしにしないで、最後は必ずほめて終わる
3 小さなことでも「できた」ことをほめる!
・子どもの「できる」ところに目を向け、「できたね」と一
緒に喜ぶ
参考文献
「発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ」Shizu
「発達障害の子どもが伸びる
ほめ方・しかり方・言葉かけ」塩川 宏郷
「発達障害の子にちゃんと伝わる言葉かけ」佐々木 正美
「1回で子どもが変わる魔法の言葉」親野 智可等
「伸びる子の育て方」漆 紫穂子
※本校HP「教育専門監」のコーナーもご覧ください!