絵解き

絵解き
アンテナアナライザによるコイルのQ測定
Koji Takei ([email protected])
jg1pld
1/13
最近のアンテナアナライザは高機能化している
・周波数の自動スイープ
・複素インピーダンスの測定(ベクトル測定)
そして低価格なこと
RigExpert, AA-シリーズの最安値は
AA-30: US $244.95
AA-170
• Frequency range: 0.1 to 170 MHz
• R and X range: 0...1000, -1000…1000
• USB connection to a PC
• $394.95
Bluetooth®によりPCと無線接続可
アンテナ直下での測定に便利
mini-VNA Pro BT
•Frequecy range 0.1 to 200MHz
• Range of impedance Z from 1 to 1000 Ohms
•Two ports VNA with S11 and S12 display
•Built in Bluetooth® Adaptor
• 389.00 €
jg1pld
2/13
コイルの直接接続測定
アンテナアナライザの測定精度
Antenna
Analyzer
L
R
1・測定レンジは広くない
1Ω< Rs, Xs <1000 Ω
↓
high-QコイルのXsとRsを同時に精度
良く測定するのは困難
コイルのQu(無負荷Q)
Qu=Xs/Rs
Z=Rs+jXs
Xs
Xs=ωL
(ω=2πf)
Rs
2・位相誤差(Δφ)の影響
例)L=10µH、Qu=300のコイルは10MHz
でXs=628Ω、Rs=2.09Ω
位相誤差:Δφ=1°があったとするとΔRs
= Xs・tan(Δφ)
= 628*0.017=10.7 [Ω]
↓
本来のRsとはかけ離れた値を表示す
る可能性
jg1pld
3/13
直列共振法
L
Antenna
Analyzer
Z=R+j(ωL -1/ωC)
+ωL
共振点で
R
C
R
ω0L -1/ω0C=0
∴ Z0=R
-1/ωC
コイルのリアクタンス成分を打ち消すためCを入れて純抵抗Rを測定、
別の測定で求めたL値からQ(= ω0L/R)を計算して求める
Rが小さすぎると(数Ω以下)、アンテナアナライザの測定精度が悪化
↓
小さなRは測定できない
jg1pld
4/13
周波数掃引により共振バンド幅を測定する
C
Antenna
Analyzer
L
R
並列共振回路のインピーダンスは
Rs  Re( Z ) 
R
(1   2 LC ) 2  (CR) 2
L(1   2 LC )  CR 2
Xs  Im( Z ) 
(1   2 LC ) 2  (CR) 2
共振点近傍のインピーダンス計算例
3.E+05
Rs
Xs
L=10µH(Qu=300)
R=2.09Ω
C=25.33pF
共振周波数:10MHz
インピーダンスが大きすぎ、
アンテナアナライザの測定レ
ンジ外!!
Rs, Xs [ohms]
2.E+05
1.E+05
0.E+00
-1.E+05
-2.E+05
9.95
10
Frequency [MHz]
10.05
jg1pld
5/13
インピーダンス曲線をもう少し詳しく調べてみると
BW3dB  2  1 
1
Z 0 
2
1
Rs 0 
2
1
LC
0 
Rs
Xs
ABS(Z)
2.E+05
2
Rs, Xs [ohms]
Z 0   Rs 0   R  Qu
R 0

L Qu
Qu 
0 L
R

1
0CR
1   LC   CR 
2
2
2
for   1 , 2
0.E+00
1
0
2
 1  1 LC  1CR
2
1  2 LC  2CR
2
1
 Rs 0 
2
-2.E+05
9.95
10
Frequency [MHz]
10.05
Rsピークの半値幅(ω2-ω1)が3dBバンド幅に相当
jg1pld
6/13
インピーダンス変換により、
アンテナアナライザの測定レンジに合わせる
C
L
R
R
C
C1
R
(a) 容量分割方式
共振回路本体に
手を加えることな
く、簡便に結合度
を調節できる(c)方
式が便利
C
L
L1
(b) インダクタンス分割方式
L
(c) トランス方式
C
L
Antenna
Analyzer
L1
d
dをかえて結合度を調節
jg1pld
7/13
L1(リンクコイル)にあらわれるインピーダンスの計算式
LとL1の相互インダクタンス:
Lx  k L  L1
R
R
等価
C
L1-Lx
C
L1
L-Lx
Rsがアンテナアナライザの測
定レンジに収まるようLxの大
きさを調整する
L
Lx

 LX 2  C 2 R
Rs  Re( Z ) 
 C R 2   2 L C  12
共振点(ω0)では
1   L C   L   C
Xs  Im( Z )   L 
 C R    L C  1
2
2
X
1
2
(kは結合係数)
2
2

0 LX 2
Rs 
R
Rsピークの半値幅が3-dBバンド幅
に相当
Qu 
0
 2  1
jg1pld
8/13
インピーダンスの計算例
Rs
Xs
Rs, Xs
[ohms]
60
共振回路
L=10µH、R=2.09Ω(Qu=300)
C=25.3pF(f0=10MHz)
50
BW=33 kHz
(半値幅)
40
30
20
リンクコイル
L1=0.16µH (ワンターン)
10
9.950
9.970
0
9.990
-10
10.010
10.030
10.050
MHz
-20
計算で仮定した結合係数
k=0.13
Lx=k√(L・L1)=0.165µH
BW=33 kHz
(SWR=2.62)
3.0
VSWR
2.5
2.0
1.5
1.0
9.950
10.000
10.050
MHz
jg1pld
9/13
インピーダンスの実測例(1)
ワンターン・コイルの位置を
調節してRs、Xsをアンテナ
アナライザの測定レンジに
収める
AA-30にワンターン・
コイルを装着
L(~10µH)
C(~25pF)
jg1pld
10/13
インピーダンスの実測例(2)
Rsピークの半値幅からQを計算すると、 Qu=f0/BW=9997/24.2=413 と求まる
BW(半値幅)=24.2 kHz
50Ω整合が取れていなくてもRs
ピークの半値幅は不変.
→測定が簡便
BW(SWR=2.62)=24.5 kHz
Rsピークの半値幅にほぼ一致.
jg1pld
11/13
AA-30を用いたコイルのQ測定法のまとめ
1.測定対象コイルにキャパシタを接続し共振回路をつくる.
このときコイルのQ値よりも十分に大きなQをもつキャパシタを
使用する.
2.AA-30の入力端子にリンクコイルを接続する.
3.共振ピークの高さがAA-30の測定レンジに収まるように、
リンクコイルと測定対象コイルの間隔を調節する.
4.Rsピークの半値幅を読み取る.共振周波数をこの半値幅
で割ればQuが得られる.
jg1pld
12/13
付録
アンテナアナライザ(AA-30)を使い始めてしばらくの間、無意
識のうちに下記(2)の誤りを犯していました。しかしよくよく考
えてみると、AA-30の入力回路(ブリッジ)の抵抗値に関係なく
AA-30は測定対象物(LCRネットワーク)のインピーダンスを正
しく計算するはずです。そうでないとインピーダンス測定器では
なくなってしまいますから。したがって、測定したインピーダンス
曲線が示すQ値は測定対象物固有の無負荷Qでなければなら
ないわけです。
加齢なる誤解
から脱出できたか
な
アンテナアナライザの入力抵抗はQ値に影響を及ぼすか?
(1)AA-30の入力抵抗は110~120Ωなので、これを
共振回路に結合すると共振回路のQ(負荷Q:QL)は
低下する
----- 正しい
(2)AA-30で測定されるインピーダンスにはAA-30の
入力抵抗を加味したQL(負荷Q)が反映される
----- 誤り
AA-30で測定されるインピーダンスは、AA-30の入力抵抗に
関係なくQu(無負荷Q)を反映する
jg1pld
13/13