新たな船出! - 和歌山子どもの虐待防止協会

Wakayama Society for Prevention of Child Abuse and Neglect
ニューズ通巻
No.32
新たな船出!
未来を担う子どもたちを守り
健全に育てていく活動へのご参加とご支援を
( 1- 2)
( 3-12)
(13-15)
(15-16)
【 目 次 】
新会長あいさつ 桑原義澄
公開講演会
衣斐教授
児童虐待ケースとの関わり
総会議事録
オレンジリボン広め隊!
*難聴者筆談会
*両親の日コンサート
(木根尚登さんからのメッセージ)
(橋本市保健福祉センター)
(17)
(18)
(19)
10-11月の行事予定
会員リレー紹介
27年度ポスター
児童虐待への今後の取り組み
会長 桑原 義登
(相愛大学名誉教授)
和歌山子どもの虐待防止協会の設立と発展に長年ご尽力いただいた小池通夫会長の後任として会長を
お引き受けさせていただくことになりました。就任のご挨拶をかねて最近の児童虐待の現状を確認し、本会
の活動のあり方を考えてみたいと思います。
(2)児童虐待件数増加の意味するもの
通告件数の急激な増加は、「子どもへの虐待
が増加している」という事実とともに、「社会の
児童虐待への関心が高まっている」という二つ
の特徴を読み取ることができます。
子どもへの虐待は子どもの命や人権に関わる
問題であります。虐待を受けた子どもは慢性的
なトラウマ症状として自己否定感情などの人格
形成への悪影響を及ぼし、生きづらい人生を送
ることが多いようです。また、同じような問題を
繰り返す虐待の世代間伝承の問題もはらんで
おり、非常に大きな社会的問題であります。児
童数の減少にも関わらずこれだけ児童虐待件
数が増加していることは、その社会的背景への
分析を行いながら予防や防止への対策を考え
ていかなければならない大きな課題であること
が分かると思います。
平成12年にこの法律が施行されてから改正
が重ねられて、児童虐待取り組みへの体制が
整備されてきています。通告件数の急激な増加
は、今までの人権問題への取り組みにおける
社会的啓発の重要性を教えてくれています。児
童虐待は起こってはならない問題であります
が、誰にでも起こりうる問題でもあるという認識
で取り組んでいく必要があると考えます。
1.児童虐待の現状について
(1)児童虐待通告件数の増加
近年、児童虐待の通告件数が急激に増加して
おり、平成25年度の全国の児童相談所に通告
された件数は、73,765件に及んでいます。児
童虐待件数の統計を取り始めた平成2年度の
1,101件と比較すると約70倍という信じられな
いくらいの件数の増加が見られます。和歌山県
においても平成2年度が18件であった件数が
平成25年度は793件に増加しています。児童
数の減少が見られる中で果たしてこれだけの児
童虐待が増加していると単純に考えて良いので
しょうか。
(3)通告実態から考える取り組みの課題
通告された子どもの1割弱が家庭を離れた施
設や里親などの社会的養護のもとで生活して
いますが、残りの9割以上が在宅による支援を
必要としています。「児童虐待の問題は地域で
の支援体制の充実が必要であること」や「虐待
を行っている者は実母が6割以上を占めてお
り、家事育児の負担が母親にのしかかっている
ことへの支援が必要であること」などを読み取
ることができます。
この増加の年度別推移を見ますと、児童虐待
への関心が高まり、児童の虐待防止に関する法
律(平成12年施行)制定への取り組みが始まっ
た平成10年度ぐらいから通告件数は急激に増
加していることがわかります。
-1-
今までの子育ては家庭に委ねられていました
が、家庭だけでの養育が困難になってきている現
状にあります。社会が力を合わせて子育てを行わ
なければならない時代に入ってきたと思います。
市町村が行う家庭への子育て支援策の充実によ
り児童虐待予防を図るとともに、家庭での養育が
困難な子どもに対して児童相談所が行う施設や里
親などへの入所措置である「社会的養護」との連
携した施策の充実を図らなければならないと考え
ます。
また、行政だけの活動には限界がありますし、児
童虐待への対応は社会全体で取り組んでいかね
ばならない課題であることを確認しておきたいと思
います。
(2)児童虐待予防への取り組みは子どもの健全
育成に繋がる
児童虐待の周辺には多くの不適切な養育を受
けている子ども達や、その外側に問題となる心
身の症状や問題となる養育態度などから支援を
必要としているもっと多くの子ども達がいます。
児童虐待予防への取り組みはこのような気にな
る子どもを早期に発見して社会全体で必要な支
援を行う体制をつくっていくことでもあります。
児童虐待の背景には社会情勢の変化があり、
最近も増加している「いじめ」「不登校」「非行」等
とも密接に関連していると考えています。児童虐
待予防への取り組みはこのような子どもの問題
行動の減少や児童の健全育成に繋がる活動で
もあります。
2.和歌山子どもの虐待防止協会の
取り組みと今後の活動
(1)和歌山子どもの虐待防止協会の活動
和歌山県での児童虐待に対する取り組みは
1994年1月の和歌山被虐待児症候群対策委
員会設置に始まります。この委員会は和歌山県
立医科大学小児科医師や児童相談所などの公
的機関の専門職員を中心に多職種からなる委
員会でスタートしています。被虐待児の実態調
査、連絡網の樹立、虐待予防対策などを行な
い、
1998年には、日本子どもの虐待防止研究会・
第4回全国集会を開催するなど大きな成果を上
げてきています。
活動を通じて、「虐待は決して特殊な問題では
なく、母親や養育者の育児に関する悩み・不安
などにより、誰にでも身近におこる問題であるこ
と、そしてまわりに一緒に考えたり、援助する人
がいないなど、養育者が孤立状況におかれてい
ること」などを経験してきました。「子育ては社会
で行う」という観点に立ち、子どもに関係する専
門家だけでなく、一般市民、地域の方々の参加
によって子どもの虐待に対応するという趣旨で、
2000年3月、民間団体として「和歌山子どもの
虐待防止協会」(会長和歌山県立医科大学名誉
教授小池通夫)が設立しました。
会員数は現在約200名で、「子どもの虐待防
止に関する調査、研究、情報収集」、「子どもの
虐待防止に関する支援、相談」、「子どもの虐待
防止に関する啓発」、「会報及び出版物の発行」
及び「セミナー、講演会の実施」などの活動を
行っています。
また、児童虐待の背景には「貧困」「配偶者間
の暴力(DV)」や「地域福祉のあり方」等とも関
連しており、社会情勢にも関心を持ちながら包
括的な取り組みが必要であると考えます。
(3)関係機関等との連携と住民運動としての取
り組み
児童虐待への取り組みは単独の機関だけで
の解決は困難であることは今までの検証事例が
物語っています。
同じことを行うのが連携でなく、その事例の
ニーズに合わせた役割分担や専門性の確認に
よる協働作業であると考えます。
本会は行政等の関係機関と連携しながら地域
住民との間にある民間団体として、子どもの立
場に立って考えるスタンスを大切にして、地域住
民に働きかけながら人権運動を展開していく必
要があると考えます。
皆様も児童虐待は身近な問題であるという認
識と関心を持って頂き、未来を担う子どもたちを
守り、健全に育てていく活動へのご参加とご支
援をお願いします。
-2-
公開講演会
児童虐待ケースとの関わり
~児童相談所現場からのふり返り~
衣斐 哲臣教授
(和歌山大学教育学部)
1.はじめに
今年4月から和歌山大学に転職しました。この
機会に、これまでの児童相談所(児相と略すことも
あり)で勤務してきた経験を話すように柳川先生な
らびに桑原先生からご指名をいただき栄誉なこと
と引き受けさせていただきました。演題を「児童虐
待ケースとの関わり~児童相談所現場からのふり
返り」と早々に決めました。演題は決めたものの、
その後講演の日が近づくにつれて、2つの現実す
なわち十分なふり返りを行うだけの私なりの心理
的時間が経過していない現実と、今の児童相談所
を総括するような能力を持ち合わせていない現実
は、私にプレッシャーを与えていきました。
それは、「これまで立場上言えなかったことを話
そう!」「これまでお世話になった人たちが集まる
し、十分な転職の挨拶もできていない分を埋め合
わせする話をするぞ!」「児童相談所を外から非
難することはたやすいが、Wspcanに集う人ならば
一方的な批判に留まらず、それぞれの立場で協働
するやり方をともに考えていこうではありません
か!って提言するのが私の使命だ!」など、気持
ちは高揚しテンションは舞い上がるものの、そのわ
りには皆さんになるほどと思ってもらえる学究的な
ネタが伴わないというジレンマでもありました。
結局は、準備して資料を事務局の山下さんに
送ったのが前日の夕方でした。結論的に言え
ば、目新しいものというより私なりに考え整理し
てきたことを一つのストーリーとしてお話しする
ことになります。具体的な事例や児童相談所の
現場事情も出ますが、ここでは一部のみの掲載
になることをご了承ください。
この間、虐待の発生予防、早期発見・早期対応、
子どもの保護や自立に向けた支援、養育支援など
親支援や家族再統合など、切れ目のない支援が
行われるよう対策が推進されてきました。
しかし、まだなお全国の児童相談所における虐
待相談ケースは増え続けています。図1のグラフ
は、全国の児童相談所が毎年報告したものを集
計し厚生労働省が公表しているおなじみのもので
す。平成2年度から統計を取り始めたときの虐待
対応件数は全国で、1101件でした。その後、ごら
んのとおり右肩上がりで増加し、平成25年度で7
万件を超えました。このグラフに、児童虐待防止
法施行以降に起きた大きな事件や法改正などの
トピックスを私なりに加えました。取り上げたもの
以外にも多くの事件や出来事はありますし、各児
童相談所においても体制や制度を変えるような出
来事等が起こっています。
図2に、和歌山県の児童相談所における虐待相
談の受付件数の推移を示しました。全国統計を始
めた平成2年度では、わずか17件でした。その後
はほぼ全国のおよそ100分の1にあたる数が和歌
山県の件数として増加し続けています。
2.児童相談所における虐待相談件数の
推移とトピックス
平成12年に児童虐待防止法が施行されてから
15年を迎えています。この間、児童福祉法と合わ
せて4回の大きな法改正が行われ、平成24年4月
には、民法も一部改正されました。
-3-
平成26年度では、過去最高の932件となっていま
す。最近5年間でも平成21年度の460 件と比較し
て2倍増となっています。
3つめは、中央児相(子ども・女性・障害者セン
ター)には女性相談課がありDV事案で一時保護を
すると、DV家族の子どもとして児童相談所部門に
も紹介されるケースが増えています。これも警察
通告とは別にカウントされています。以上のような
要因が考えられます。逆に、心理的虐待そのもの
(つまり、他の身体的、性的、ネグレクトではない)
を理由にして通告されるケースが増えたかと言え
ば、それは未だあまり聞きません。
3.ケース対応からの学びと
ブレイクスルー体験
図3は、平成26年度の932件を4つの虐待種別で
みた割合です。私自身が驚きましたが、心理的虐
待の数が405件(43%)で一番多くなっています。統
計上、種別の決定は1件につき一つだけですから、
たとえば1ケースに身体的とネグレクトの両方が認
められた場合は、たいていは主を身体的としてカウ
ントします。身体的と心理的がある場合は、身体的
としてとります。ネグレクトと心理的を認めた場合
は、ネグレクトを主とします。また、性的虐待があれ
ば他の種別より優先されます。つまり、より重篤で
目立つものを主としてカウントした結果が、図3の割
合です。これまでは、全国的にはネグレクト、身体
的、心理的、性的の順序が定番でした。それが26
年度初めて、心理的虐待が単独でトップになったの
です。これが今後も続くのか、あるいは全国的にも
同じような傾向があるのかは今後の統計発表を待
ちたいと思います。
では、心理的虐待件数がもっとも多くなった要因
はなんでしょう、ということを考えます。いくつかは考
えられます。1つは、警察からのDV通告が多くなり
心理的虐待が増え、しかも1つの通告家族に3人の
子どもがいれば3件になります。
このように、児童相談所職員も統計的な数値を
眺めて、比較検討したり要因分析をしたりはしま
すが、むしろこれらの数値に関心や重きを置くの
は現場の児相職員よりも外部の関係者の方々で
はないでしょうか。児相職員は、統計がある意味
十把一絡げであり、その数値から要因分析されて
もぴんとこないし、虐待の個別の実態を示すもの
でもないし、日常業務を反映するものでもないし、
あまり現場に役立つものではないこともわかって
います。ただ、今回の講演のように虐待の現状を
説明したり人員増を要求する根拠として示したり
するにはわかりやすいので使います。
虐待に関心を持つ研究者や連携する他職種の
方などにとっては、統計数値は虐待の実態を知る
貴重な一つの指標です。昨年度まで児相にいて
離れて3か月足らずの私でさえ、統計数値を知る
ことに昨年よりも関心をもって見ている自分がいま
した。これだけでも現場から離れた者としての感
覚なんだと思いました。
では、現場感覚とは何をさすものでしょうか。こ
れもいろいろな側面があります。私にとっては、
ケースから学ぶことができる感覚が挙げられま
す。別の言い方をすれば、対象者とのやりとりを
通じて事態が展開していくリアル感、あるいは難し
いケース対応の渦中から一歩抜け出る(ブレイク
スルー)感覚や体験など、そんな感覚こそが臨床
現場の最大の魅力です。臨床の現場では、個人
では味わえない勉強をさせていただいたと思いま
す。
児相に長く勤務するなかで、臨床経験の成果を
まとめたり発表したりしてきました。むしろ私の場
合、虐待の類型や原因論などの研究よりも、家族
支援を中心に対人援助実践の研究にずっと関心
を持ってきたと思います。家族療法やブリーフセラ
ピーなどの援助技法の研修や近畿の児相仲間と
ワークショップの開催や本の執筆など、実践にま
つわる活動をしてきました
2つめは、大人が大声で子どもを叱っているとか子
どもが夜中に泣いているなど、いわゆる泣き声通
告により家庭訪問や調査をする、その際に身体的
やネグレクトを認めればそれでカウントしますが、
そんな私のささやかな歩みを聞いていただきな
虐待自体が明らかでない場合には心理的とカウン
がら、私のブレイクスルー体験となった事例の紹
トすることになるため、その数が多くなったことが考
介につないでいきたいと思います。
えられます。
-4-
4.私の臨床履歴とキーワード
私の臨床現場の始まりは、総合病院の精神科で
した。15年間、臨床心理士として勤務しました。現
場で役に立つと思えることを学び取り組んできたつ
もりですが、自分の能力や性格のせいもあり、なか
なか満足した臨床成果が得られず苦悩や葛藤が
常につきまとっていたように思います。その頃の臨
床のオリエンテーションは、精神力動論をベースに
した個人心理療法や集団心理療法で、ロール
シャッハテストなどの心理検査を行っていました。
その後、私なりのブレイクスルーとなったのが、シ
ステム論的家族療法との出会いでした。それまで
の人の内面や心理機制を扱う個人療法から、個人
を取り巻く家族システムをベースにして、人と人との
関係性や相互作用のあり方を扱い、原因-結果と
いう直線的思考ではなく症状や問題を行動の連鎖
としてみる円環的思考を特徴とする家族療法の見
方へとシフトしていきました。ひとたび新たな視点を
獲得すると、それまでと見えるものが違ってきま
す。私にとってはとても貴重な邂逅となりました。
その後、児童相談所へと転職し、心理判定員、判
定係長として勤務しました。同じ心理職とはいえ、
病院心理と児相心理とは大きく異なっていました。
児童相談所のように子どもを対象とする相談機関
の場合には、子ども個人だけを考えるのではなく子
どもを取り巻く家族や地域を視野に入れて、一つの
言動がその対人関係にもたらす影響力の大きさに
ついても考慮する必要がありました。その点におい
てもシステム論的認識が有効でした。
それから相談係長を拝命、児童福祉司としての
対応を考えるようになりました。するとさらに、心理
職として情報を得て判断してきたものとはずいぶん
異なる情報の出入りがあることに驚き、同時にそれ
までの判断とも微妙に異なることに気づきます。
立場が違うと見えるものが違う。これを「たかが
5m、されど5m」という言葉で表しました。つまり、
児童相談所の一つのフロアに心理職員も福祉職員
もいますが、内部異動により係長の机が横へ
5m移動しました。「たかが○○、されど○○」、両
方向の見方ができるといいという意味で、私が好き
な言葉でもあります。「たかが5分、されど5分」「た
かが1円、されど1円」「たかが1本の電話、されど1
本の電話」「たかがカウンセリング、されどカウンセ
リング」「たかが児相、されど児相」「たかが人生、さ
れど人生」・・・。両方向の見方とは、「たかが○○」
にも「されど○○」にも同等の肯定的な意味を見い
だすことです。たとえば、「たかが人生」の言い方を
人生を軽視する否定的な意味として捉えるのでは
なく、深刻になりすぎず気軽に考えてやってみると
いう肯定的意味として捉えることができます。
-5-
そして、「されど人生」にも人生捨てたもんじゃない
ですよねと肯定メッセージを含めることができます。
「言うことを聞かない子どもには叩いてしつけるし
かない!」と追い込まれている母親に対し、「たか
がしつけ、されどしつけ」という脈絡で話を聞いてい
くと徐々に余裕が生まれます。虐待はよくないが、
それなりの状況や心情があるはず、それを聞かせ
てください、完璧なしつけなどはない、うまくいかな
くてもよい、虐待ではないしつけ方を一緒に探しま
しょう、という協働スタンスにつながります。
この援助者のポジショニングをメタポジションと呼
び、援助している自分とクライエントとの関わりをメ
タ(上位)のポジションから俯瞰するという意味で、
私自身とても重視しています。
平成12年に児童虐待防止法が施行されて以降
とくに、虐待対応は従来の福祉的ケースワークよ
りも積極的で介入的になっていき、ケース増大に
伴い虐待対応が児童相談所のメインワークに
なっていきました。介入的ケースワークとか、出前
型、関与押し売り型などと言われるケースワーク
が求められるようになりました。
全国統計では、その頃(若干曖昧です)には虐
待相談件数が非行相談件数を上回りましたが、
和歌山県では平成17年度に初めて虐待相談が
非行相談を上回りました。このことは私にある感
慨を残しました。私にとって非行相談は、それま
での病院心理臨床では出会うことがなく、児相に
転職した初日から耳や鼻にピアスをつけ違反服
を着た金髪の中学生が複数いたという光景から
児相業務が始まりました。慣れない非行ケースの
対応に苦心しつつ家族と学校と児相の援助シス
テムを構築することにエネルギーを注いでいた時
期がありました。片や、心理職が虐待ケースと関
わることはあまりありませんでした。
その後、差は広がるばかりで虐待ケースが増え
続けました。平成25年度の全相談件数の相談種
別割合を図4に示しました(件数は、障害相談が
43%と最も多い。これはどこの児相もそうで、療育
手帳の申請にかかる相談が多いことによる。虐待
が27%、非行が8%になっている)。
やがて、私の業務も虐待ケースが中心となりまし
た。一つのケース対応が一段落ついても次のケー
スがやってきます。言い方はよくありませんが、キ
リがない対応に追われます。一つ一つのケースは
異なりますからそれぞれに見合った対応を工夫し
やりとりします。にっちもさっちもいかずなかなか先
の見通しが見えず、保護者から反発され、時に攻
撃的言動に直面して萎縮し、腹を立て、落ち込
み、うんざりする(こんな表現も許してもらえるで
しょうか)こともあります。
いったい私たちは何をしているのだろうか。自分の
家族を放っておいて夜遅くまで居残り休日に呼び
出され疲弊しきって‥、うまくいって当たり前、うま
くいかなければバッシングされ‥、児相ってこんな
とこだったの!?‥と愚痴もこぼします(これも許して
もらえる?)。
でもでも、そんな悲観的な捉え方をしてしまうな
か、たった一つのフレーズで光明が差し込むことも
あります。私が気に入っている言葉は、“Learning
journey”「学びの旅」です。後を絶たずやってくる虐
待ケースに対応することは、正直言ってたいへん
ですがそれはしんどいという意味だけでなく、責任
も重いからです。つまり、児相職員には、子どもた
ちの人生を左右する重要な局面に日々関わり、最
善の方法を用意する必要と責任があります。めげ
たりひるんだりしているわけにはいかず、さりとて
すっきりした解決は少なく、ダーティソリューション
(「汚れた解決」ともいうべき現実的な収まりどこ
ろ)に甘んじなければならないことが多くあります。
そんな重要な局面や子どもと家庭を支援する業務
に携われることに感謝と幸運も感じます。支援は
子どもが目の前にいる限り続きます。そのために
時間とエネルギーを費やします。人を支援する仕
事を選んだことで学べることがたくさんあります。
それこそが「学びの旅」です。そう思えて前向きに
なれた経緯があります。
その後は、虐待対応専門員、子ども相談課長へ
と昇格しました。昇格すると、直接ケースを担当す
ることは少なくなります。スーパーバイズやケース
マネジメントする役割になります。同時に、ケース
経験を重ねるにつれて、自分がやってきたことを
発表したり総括したりもしていきました。システム
論的家族療法の考え方やケース運びをベースに
して、いろいろ私自身が身につけてきた臨床技法
や理論、そして相手のもっているもの、社会が有し
ているものなどを広く資源と呼び、それをうまく相
手のゴールに合わせて活用していく工夫を続けて
いました。それを2008年に単著「子ども相談・資源
活用のワザ~児童福祉と家族支援のための心理
臨床」(金剛出版)として出版することができまし
た。
-6-
さらに4年後の2012年には、私が編著者となり
「心理臨床を見直す“介在”療法~対人援助の新
しい視点」(明石書店)を上梓しました。メタポジショ
ンから援助者が対象者との間に何をどのように介
在させたのかを多くの著者に語ってもらいました。
もう少し説明します。これは私が専門とする臨床心
理学領域に限らず、医療保健、看護、福祉、教
育、司法など、さまざまな対人援助領域において、
人が人を支援する場合、全く何ももたずに相手と
向き合っているということはありません。そこには
何らかの理論や技法や道具などの資源を介在さ
せています。その“介在”の仕方の違いこそが、そ
れぞれの領域において専門的な理論や方法論を
生み、社会的に位置づけられています。
私は一応、システム論的家族療法を自分にフィッ
トした介在の道具として支援を行ってきましたが、
この介在の道具というものは、○○療法とか□□
理論とか△△技法など確立された既成の方法で
ある必要はありません。“介在”視点は、「援助者
が、対象者に、どんな目的のために、何を用いた
か」を“介在させているもの”として語る視点です。
極端なところ“介在物”は何でもありです。重要な
のは、関わる側つまり“介在人”の存在と“介在の
させ方”です。
たとえば、中央児童相談所(センター)には一時
保護所があります。種々の理由で一時保護を行っ
た子どもたちの通常の日課のなかに、バドミントン
や刺繍の時間を取り入れています。バドミントンで
体を動かしうまく打てるようになるプロセスに職員
が関わります。すると、このバドミントンを介在させ
たやりとりにより、子どもは生き生きとし、人との関
係を広げ、エネルギーを蓄えていきます。刺繍にし
ても同様に、刺繍を介在させた職員とのやりとりの
なかで笑顔や意欲が出てきます。そんな関わりを
ベースに治療や支援が進みます。
皆さんにも問いかけます。「あなたはご自身の対
人援助において何を介在させていますか?」 この
問いかけのもと、対人援助に関わる者が、援助の
対象とする人たちに対し、どんなアプローチをどの
ように介在させることが有効であり、役に立つと考
え、実践しているかについて、領域や流派を超え
た語り合いの場をもつことができればいいなと思っ
ています。これは、私なりの対人援助実践学の一
つのテーマであり切り口です。
私の履歴にまつわる話が長くなりすぎました。次
に移ります。
5. 「一見不幸を一転幸福に変える」
体験をさせてくれた事例
先に紹介した単著本の第1章に「一見不幸を一
転幸福に変える資源活用のワザ」というタイトルを
つけて、事例を紹介しました。児童相談所の現場
は、職員同士協力し合ってケース対応をしますの
で基本的に仲もよいです。しかし、なかなかケース
対応で楽しい話は少なく、クライエントから喜んでも
らえるケースもそれほど多くありません。しかし、こ
こで紹介した事例は、「一見不幸を一転幸福に変
える」というコピー通りに児相職員をしてそんな気
持ちにさせてくれるものでした。
それは、特別養子縁組を前提とした新生児里親
委託の事例です。愛知方式と呼ばれる方法で、厚
生労働省もその成果を認め推奨しているもので
す。(もちろん、厚生労働省が認めたからいいとい
うわけではなく、いいものはいいのであり、厚生労
働省でさえ認めたといった方がいいかもしれませ
ん。いえ、いい悪いも絶対的なものではありませ
ん。 )
つまり、妊娠はしたが生まれてくる子を育てること
ができない事情があり、堕胎することもできない状
況になっている妊婦さんの相談を受けた場合の対
応です。事情を十分調査し吟味したうえで、児相と
して社会的養護が必要と判断したとします。この場
合、これまでですと生まれてきた赤ちゃんを乳児院
に措置入所させる方法が定番でした。乳児院で養
育の様子を見ながら里親委託へつなぐこともありま
すが、里親委託に積極的でない場合は2歳を超え
て児童養護施設へ措置変更し施設で育つ子どもさ
んが圧倒的に多くいました。最近は、社会的養護
のなかでも家庭に近い養育環境が推進され里親
委託やファミリーホーム、もしくは小規模児童養護
施設へという選択が主流になっています。
そんななかで、新生児里親委託(特別養子縁組
前提であるため赤ちゃん縁組という人もいる)に踏
み切るためには、実母側の承諾と赤ちゃん縁組み
を希望する里親の決意ならびに状況が整う必要が
あります。本事例では、出産する産科病院の協力
も得られて、里親夫妻と実母側は一切顔を合わせ
ないように配慮し、里親夫妻は生まれて直後の赤
ちゃんを抱っこすることができ、その後もほとんど毎
日病院に通い赤ちゃんとスキンシップを図ることが
できました。とくに里母さんは、この話を打診した直
後から生まれてくる子を我が子として引き受けるこ
とを神様の啓示か天命か当然至極のことと覚悟
し、病院でも他の産婦さんたちに混じってマタニティ
ドレスを着込んで母親教室に通い沐浴や授乳の仕
方などを学びました。母になること、母性は強しで
す!
そして、病院の退院日を里親委託の始まりとしま
した。ある年の1月1日元旦でした。
-7-
このときばかりは私たち担当も元日に仕事するこ
とが苦になりませんでした。真っ白の産着にくるま
れ里親夫妻に抱っこされ病院の看護師さんたち
に見送られて、里親宅に帰って行く様子を晴れや
かな嬉しい気持ちで見届けたものでした。
そして、この子が5歳になった頃、近畿児童相談
所の職員研修会が中央児相であり、里母さん、
いやもうその頃には特別養子縁組が成立し法律
上の実親子になっていましたので母親に体験談
を語ってもらいました。この子も母親と並んで座
り、一緒に絵本の朗読をしてくれました。
この一つの事例がもたらした成果は、私にとっ
てその後の里親委託の推進の後押しになりまし
たし、実際、このケースをきっかけに本県でも新
生児里親委託ケースが続いています。この愛知
方式と呼ばれる方法を知るまで、この方法は使え
ませんでした。やってみてわかる意義深さでし
た。
その意味でコロンブスの卵でした。簡単なことで
はありませんが、これまでにも児相が権限として
与えられている里親委託の方法で可能なもので
す。まずは乳児院に入所するしかないという前提
をくつがえし、出産直後のタイミングで直接里親
委託し、そのまま縁組みまで持って行く。まさに望
まれない出産、一見不幸に思える出生を、一転し
て幸福の家族に変えてしまう究極の資源活用の
ワザです。これも、私のなかのブレイクスルーと
なったケースでした。
6.家族再統合の事例
もう一つ、私にとって家族再統合に関して自分
の殻を打ち破るブレイクスルーとなった初期の頃
の虐待ケースを簡単に紹介します。このケース
は、子どもの心情の汲み取り方と扱い方、親の葛
藤の取り扱い方、気持ちの変化には時間の経過
も必要であることなど、多くのことを学ばせてもら
いました。親が変化し、環境が安定し、子どもの
気持ちも変わるといった一定の時間経過の後、
家族再統合を果たしたケースです。機が熟する
のを待つことの意味などについても考えさせられ
ました。
A男とします。小3の男の子です。母親の内縁の
男からしつけと称して、「言うことを聞かない」「ウ
ソをつく」「弟のお金を取る」「店で万引きをした」
「このままでは将来ちゃんとした人にならない」な
ど言われ続け、暴力を受けていた子です。棒で殴
る、タバコの煙を吸わせる、性器を引っ張る、浴
槽に顔を沈める、食事を抜く、登校させないなど
のことがありました。母も、手を出さないまでも「こ
の子が悪いことをするからしょうがない」と、男の
やることを見過ごしていました。
ある日の晩、殴られて顔を腫らし、目を真っ赤に
充血させおびえて座り込んでいるA男が近所の家
の近くで発見されました。通告を受け児相は緊急
協議を行い、警察にA男の身柄を保護してもらっ
たうえで職権による一時保護をしました。A男は、
児相へ来て安全を保障するという説明に安堵の
表情を見せ、むさぼり食うように食事を摂り、「家
には帰りたくない」とはっきりと言いました。
その後、警察から事情を聞かれた内縁の男は
事実を認め、厳重注意をされ小さくうなだれてい
たとのことです。逮捕に至らなかったのは不思議
ですが、当時の認識でしょうか?今なら確実に逮
捕だと思います。一方、母の方は「これはしつけ
のうちである」と言い張り、虐待を認めませんでし
た。
一時保護の後、児相からの連絡に応じてやって
きた母とやりとりしました。無表情で言葉少ない人
でした。比較的素直に話し目に涙は浮かんでいる
ものの、「あれはしつけのうち。A男を家に連れて
帰る。会わせてほしい」と言い張り譲りません。本
人が拒否しているし、これは職権で預かってい
る、返すわけにはいかないと対応しましたが納得
しません。
再度、A男自身に母の思いを伝え気持ちを確認
すると、帰りたくないと言います。それならば母の
前でそのことを話せるかと聞くと、A男は躊躇した
後、母と会うことに応じました。通常、子どもに直
接、「家に帰りたくない」という意思表示させること
は避けます。児相の判断であると説明し、親には
お引き取りを願うのが通常です。しかし、このとき
は母子を向かわせました。こうした流れが現場の
判断です。
静かに応対した母子は、お互い緊張した様子
で、短い言葉のやりとりをしました。
母
A男
母
A男
母
「家には帰らないの?」
「…帰りたくない。施設へ行く」
「…弟が待ってるよ」
「…帰りたくない」
「…おじいちゃんたちにも会えなくなるよ。
それでもいいの?」
A男 「うん」・・・・
・・・・・A男は一貫して拒否を示しました。
母の沈黙が続きました。
担当は、A男を退室させました。
担当 〈…了解していただけますね〉
母 「了解してもしなくても返してもらえな
いんでしょ」
担当 〈そうなります〉
-8-
さらに、沈黙が続いた後、やがて
母 「わかりました」と言い立ち去りました
担当も、そのまま母を見送りました。
正直言って、その後この家族の修復ができるの
かどうかはわかりませんでした。しかし、自分の
行為を改める気持ちがなく、子ども自身がここま
で拒否している現状では、家庭の中に安心でき
る居場所はありません。今後の展開を時間の経
過に委ねました。
その後、A男は施設に入所し約2年が経過しま
した。担当者からの働きかけもあって母も児相と
話すようになりました。手紙を書くという提案にも
応じました。はじめは母の手紙を読むだけのA男
でしたが、何通目かの母の手紙に同封された弟
からの手紙に心緩んだのか、弟への返事を書く
と言い出しました。その後、児相のプレイルーム
を使った面会にまで展開しました。
それでもなお、母からA男への肝心のメッセー
ジが届けられていませんでした。A男の不安、わ
だかまり、不信の気持ちは晴れていない。これ
は、児相の担当者が子どもの心情に思い入れた
代弁者としての気持ちでもあります。母の当時か
ら今の気持ちをきちんと伝え、A男に対し謝罪し
許しを請うやりとりが必要です。母には、「謝罪の
儀式」をしたいと直接的に伝えました。真の心を
込めた儀式です。それを私たちが見守り判断す
ると伝えました。不十分であれば返すわけにはい
かないと明言しました。
その頃、母は保護当初よりも数段、素直にな
り、気持ちの余裕があるように感じられました。背
後に、内縁男性の存在がありました。もちろん以
前の男とは違います。
児相担当者として新しい男性とも複数回会いま
した。得てして二の舞となる男性が多いもので
す。A男の代わりにA男目線で疑いを持って(?)
男性に直面化しました。結果的には、担当の先
入見を超えて良い人だろうという判断に至りまし
た。こんな判断は、担当者が複数の目で見て協
議にかけそれでも絶対OKなどというものでもあり
ませんが、母の意向を尊重しA男の気持ちを聞
いていくなかで判断していくよりありません。慎重
派から言えば、直接の加害者だった男がいない
とはいえ、共謀する考え方を強く持っていた母の
元へ返すことに対しOKは出ないものかもしれま
せん。それでも児相としては協議のうえ現実的判
断で前に進めました。
A男にも話し面会日を設定し「謝罪の儀式」を行
いました。母と内縁男性、A男と担当者2人が同
席しました。
やりとりの詳細は省きますが、母が当時から現在
に至る自分の心情や状況を訥々と語りました。そ
の話しぶりや内容は、用意してきた割にはあまり的
を射たものではないようにも思えました。それでも、
涙を流しながら語る母の話をA男は黙って聞き続
けました。やがて、母が沈黙しました。そこへ同じく
黙って控えていた男性が、「私のほうからよろしい
でしょうか?」と助け船を出しました。
男性は、目線を下げA男のほうに話しかけまし
た。
「A男くんは、もう僕がいる状況もわかってくれて
いると思う。…近い将来、結婚したいと思ってるし、
みんなで家族としてやっていこうと思ってる。…今
までのことはママから全部聞いてる。前の人とママ
が度が過ぎたことになってしまってた。ママはあら
たまって謝らないけど、いつも気にしてた。…今後
そういうことはないことを約束する。もしかしたら叱
ることもあるかもしれないけど、暴力では絶対な
い。仲良く家族として一緒に生活していきたいと
思っているよ…」
その後、母もA男に対し頭を下げて謝りました。A
男に、〈どうかな?〉と聞くと、うなづきながら「うん、
いい」とだけ言いました。言葉数は少ない子でした
が、賢い子であり安心のうなづきでした。その日、
母らと別れ施設へ戻る車の中で、A男に再度聞く
と「うん。ありがとう」とやはり言葉少なに言いまし
た。
その後、さらに外出や外泊を重ね、地元の学校
に戻ることとなり家庭復帰を果たしました。その後
もフォローするなかで問題なく経過したケースで
す。
虐待という言葉自体の印象はけっこう強烈で
す。悲惨な子どもとひどい親という被害-加害の
関係です。多くの研究により、虐待という行為が
子どもの将来にわたって与える心身への影響が
わかってきています。虐待の期間や頻度や質な
ど重要な人との関係性によって与えられる影響
は、一人ひとり異なりますが良いものでは決して
ありません。トラウマと呼ばれる心的外傷体験が
手当てされないままに脳の中に記憶として残る
ことによっ て、将来何らかのきっかけで再現され
るというトラウマの再現性が言われます。現在の
人間関係以上に、トラウマが認知の増大やゆが
みを生んで思いがけない感情の流出が起こった
り対人関係にトラブルをもたらしたり身体に支障
を来たしたりします。だからこそ、虐待は防がな
ければならないのです。虐待という言葉でひとく
くりにすることに抵抗を感じる人もいるかもしれま
せんが、強いインパクトがある分、それを早 期に
防止しきちんと手当をする必要があります。
未然に防ぐ予防策も必要です。今年4月施行さ
れた子ども・子育て支援制度(図6)なども虐待予
防の一環として運用されることが望まれます。
7.児童虐待という視点および3つの指標
(図5参照)
話を戻します。虐待が起きている状況に対して
は早期発見し早期対応する必要があります。先
に述べたように、虐待する親を加害者、虐待され
る子を被害者としてみる見方は、親にしてみれ
ば加害者扱いされ、そのうえで「あなたを支援し
ます」と言われているようで、素直にハイとは言
いにくいものです。だから、虐待という言葉を使う
のは辞めましょうという簡単な図式ではありませ
ん。むしろ、加害-被害とか対立的関係を超え
て早期のうちに支援する関係に持って行くことが
必要です。
では次に、私なりに児童虐待をどのような視点で
捉え、家族支援を行ってきたかについて整理して
みたいと思います。
-9-
親にしてみれば子育てに口出しされることや他
人に踏み込まれること自体に、抵抗を感じます。
「うちが虐待してると言うのか?!」「虐待を疑って
いるんですか?!」となります。
こんな場合でも「いいえ、そうではないんです‥」「い
え、疑っているわけではありません」と言って、まとも
に引いてしまったのでは入り込むことができずその
ままの関わりが続きます。こういう対立や疑いを超
えて対応する必要があります。そんな感情を持ちな
がら話すのは、面接者にとっても保護者にとっても
気分のよいものではありません。できるだけ早いう
ちに、それを超えるやりとりに持っていきたいもので
す。」
面接は、相手を尊重したうえで常識的なやりとりが
できるのが基本です。面接のテクニックを意識しな
いでそれができる人であれば、そのままやればいい
でしょうが、なかなかそうはいきません。なので、面
接にはやはり一定の研修と経験がいります。相手
がどんな人か見立てることも必要です。見立てのた
めの3つの指標を提示します。
8.反発・攻撃・イチャモン等の保護者対応
保護者は、①自分の行為が虐待であるという認識
がある(Yes)かそうでない(No)か、②現状の改善
を願い援助してもらいたいという動機づけがある
(Y)かそうでない(N)か、③援助者との関係を親和
的にできる(Y)かそうでない(N)か、です。
この3つの指標が全部Yであれば、関係も面接も
比較的スムーズです。率直に援助者が危惧してい
ることを明らかにして話し合いにもっていきます。た
とえば、「私たちは今の子どもさんの状況を不適切
であると判断しています。変えていけるようにお手
伝いをさせていただきたいと思っています」となりま
す。
もし、3つともNであれば、リスク度に応じた毅然と
した介入が必要になります。たとえば、「児童相談
所としては、これを見過ごすことはできません。ご理
解ください」などです。家庭から子どもを分離して保
護する判断と実行も必要です。
緊急性を要しなければ、3つのうちどれか1つでも
よいのでYとなる要素を見つけたいものです。いき
なり、①の虐待認識について扱うよりも、③の関係
性に働きかけて相手との親和的な会話ネタを探し
たいものです。虐待の話題は横に置いて、まずは
世間話や雑談などで防衛的な構えをほぐす余裕が
ほしいです。そして、②の援助してもらいたいという
気持ちにフィットできれば保護者と向き合うことも可
能となります。①の虐待および子育ての不適切性
についての認識は、そんな関係の中で穏やかに取
り上げていくことになります。援助者のほうが、相手
のことを尊重しながら、よいところ(強み)と危惧され
るリスク(弱み)の両方をできるだけ率直に出し合え
る関係になれるといいですね。
なお、今示したYとNは、明確に二分するためのも
のではなく、傾向を把握したり、「N」の内容を吟味し
たりするための指標として使うとよいと思っていま
-10-
す。
虐待ケース対応の難しさのひとつが、保護者
対応です。虐待など不適切な子どもへの扱いが
行われていたりくり返されたりする場合には、親
の意に反しても介入する必要があります。この
介入に対し、反発や攻撃を向ける保護者への対
応には児相職員も苦慮します。怒りを向ける人
への対応にはエネルギーがいります。恐怖を感
じビビったり萎縮しうんざりしたりします。怒りに
対する耐性は人によって違います。動じない人
もいます。平気に見える人もいます。私などはビ
ビりの代表みたいに自分で思っていますが、課
員の士気に影響しますから職務柄それをみせる
わけにもいきません。
さように他者の怒り反応にはめっぽう弱い私で
すが、一方で、私自身の怒りが他の人をそれほ
どビビらせているとはあまり思っていないという
か自覚がありません。
これは生育歴や個人的体験に関わるところでも
あると思っているためそこには触れませんが、
自分の怒りには案外と鷹揚であったりします(こ
れって私だけでしょうか?)。相手を畏怖させた
り怒りにまかせて相手をコントロールしようとか
の意図はあまりなく、自分が思うように行かない
ときの気持ちを外罰的に出して何とかしてくれよ
と非論理的な要求をしたり、あるいは要求にまで
ならない気持ちを露呈させたりしている気がしま
す(なので裸の自分を見られるようで恥ずかし
い)。とは言っても、たとえば課長であった私が
仕事場で怒った様子を見せれば課員はそれに
少なからず反応して引いてしまうこともあるはず
です(つとめて出していなかったつもりですが、
最近になって思い出話の中で、意外と機嫌悪い
ことが多かったよと言われることもあり、それは
申し訳なかったと感じている次第です。課員の
みなさまごめんなさい)。
ここで私が言いたいことは、怒り反応の背後に
は必ず不安要素が隠れているということです。だ
から、怒りを示す保護者対応のひとつは、この人
は何を不安に思っているのだろうかと考えてみる
ことです。それを「不安スペクトラム」として提示し
ます。(図7)
さらに、攻撃的でイチャモンに近い保護者もい
ます。攻撃的にしか自分の要求を示せないよう
な人もいます。正当な要求や苦情のような要求、
あるいは苦情のようなイチャモン、イチャモンの
ような苦情、そしてまさにイチャモン‥といった把
握のスペクトラムも考えました。苦情・イチャモン
スペクトラムです(図8)。
スペクトラムとは、太陽の光をガラスの分光器に
通すと、光の波長の違いにより赤、橙、 黄、黄緑、
緑、青、紫という光のスペクトラムが現れます。雨
上がりの無数の雨粒によって中空に作られる虹と
同じ現象です。この連続体とか配列をスペクトラム
と言います。自閉症スペクトラム障害という言い方
にみるように、自閉症の基本的障害特徴を満たす
軽いものから重いものまでの連続体を意味しま
す。ある連続線の量的違いが、ある特徴を示しそ
れに名称をつける把握の仕方です。不安の連続
線上に特徴あるものを置くと、図7のように「現実的
な不安」「道徳的な不安」「失敗不安」「分離不安」
「破滅不安」となります。それぞれ特徴はあります
が、下へ行くほど人間の根源的な不安に触れるも
のになることを想定しました。
たとえば、子どもが思うようにミルクを飲んでくれ
ない、ちゃんと寝かせつけないと夫に怒られる、こ
の子が将来自立できない人間になったらどうしよ
う、完璧な親でないと失格だ、この子がいることに
よって私は不幸なのだ‥など、子育てにまつわる
さまざまなレベルで不安に思い、いらいらし、子ど
もにあたってしまったり、子どもさえいなければ‥
など、いろいろなことを思います。その思いや反動
が怒り反応となって出て来てしまっていることがあ
ります。
虐待をしたくてしている親はいないと信じたいで
すが、虐待という行為や示される怒り反応を超え
て、保護者とむきあい支援ができればと思いま
す。そのための一つの理解のツールとして考えた
のが、不安スペクトラムという認識の仕方でした。
-11-
とくに下の3つ、現実的な問題や不満から来る
要求(苦情、クレーム)、強迫的不安・病理性・未
熟な自己中心性からくる要求(イチャモンのよう
な苦情、苦情のようなイチャモン)、無理難題な
要求(イチャモン)については対応の仕方に苦慮
することが多く、エネルギーと時間が大量に費消
されます。いずれも何人かのケースの顔が浮か
んできます。
粘り強くつきあうしかない局面もありますが、イ
チャモンに対しては毅然とした法的対応などを考
える必要があります。あるイチャモンのケースに
ついては、弁護士の中川先生の法的対応によっ
て救っていただいた思い出が鮮明に残っていま
す。
このように振り返ってみますと、このスペクトラ
ムに限らず、今日お示しした図や事例のまとめ
なども、まさに業務としての虐待ケース対応のな
かから生まれてきたもので、児童相談所で勤務
していなければこんなことを考えるはずもなかっ
たものです。もちろん、こんなスペクトラムやパ
ワーポイントの図を、仕事勤務中に作るなどとい
うことは全くなく、職務を離れた私自身のプライ
ベートな時間の中でしこしこと作ったものです。
こうなるともはや、ライフワークです。そんな時間も
仕事のうちに含めれば、それこそライフワークバラ
ンスの片寄りは甚だしいものがあったと思います。
ストレス発散の方法は何ですかと聞かれ、昨年こ
そ、美味いものを食べる、温泉、釣りなどと即答で
きましたが、それまでは仕事・原稿書き・資料づくり
など、ワーク一辺倒の中で少し異なることをやるこ
とでバランスを取っていたと言えるかもしれません。
その結果、たとえば苦情・イチャモンスペクトラムの
図をこうやってお見せすることで、皆様がちょっと微
笑ましく、「なるほど」と思っていただければ、ささや
かにしあわせなのです。
9. おわりに
さて、まとめです。今の児童相談所の職員は、お
しなべてライフワークバランスの片寄りが重篤で
す。そんな状況で仕事をしています。経験の少ない
職員も精一杯、自分に与えられた担当業務に従事
します。お互いチームでカバーしながら児童相談所
としての機能を維持発揮させています。
私自身、ちょうど20年間児童相談所に勤めまし
た。この間に、残念ながら子どもが亡くなるという
ケースも体験しました。一昨年度の死亡事例につい
ては記憶に新しいことと思います。とくにマスコミに
報道される事態になれば、批判もされますし児相
バッシングもあります。
私たち自身、もっともその責任を感じつつ、どうした
らよかったのだろうか、と検証もします。答えはなか
なか出ませんが、関わった児童相談所職員はそれ
ぞれ受け止め苦悩しますし涙も流します。そんなこと
が二度と起きないように懸命な思いで対応している
ことも事実です。不幸にして子どもが亡くなれば、自
分たちのやり方について批判的な検証をすることは
当然ですしマスコミが児相追求をすることも当たり前
だと思います
-12-
怒りや罵倒の電話を受けることも仕方がありま
せん。他の虐待の親から、このときとばかりに
攻撃されることもあります。児相との関わりがあ
るケースの親からは、ああいう子どもを死なす
ような親と同じように見られていると思うと腹立
たしいとの言葉も聞きます。
そうしたことは児童相談所職員として勤務する
限り致し方がないことであると思いますし、与え
られた職務に専念する必要があります。一方
で、上に述べたマスコミとかケースの親とか一般
の個人はともかくとして、できれば同じ子どもや
家庭を支援する関係者の方から一方通行の批
判を受けたくはないと思います。外部からの間
接的な児相批判やとりあえず通告(とりあえず児
相に通告しておこうとか、とりあえず私は言いま
した、それ以上の権限はありませんから…という
ような、ある意味責任転嫁のような結果に留ま
る通告や進言)のようなものではなく、できれば
児相を動かすような提案とか一緒に協働してい
ける提案をしていただけたらと思います。児相側
にもそういう提案を受け入れる体制をもっておく
必要があります。連携や協働のためのルール化
ができるといいと思います。ちょうど、この7月か
ら児相への184直通ダイヤルが開始されます。
これも児相と市町や関係機関が連携してルール
化しておく必要があると思います。
そうするためにも、機関レベルだけでなく、担
当者同士とか個人レベルの対話の場を多く持
つ努力が必要かと思います。一方通行的な批
判ではなく、あるいは結論がすぐに出なくとも対
話をし続けることです。ただし、こういう個人レ
ベルの対話機会の推進は、ますますライフワー
クバランスの片寄りを増大させることになるた
め、ジレンマでもあります。
逆に、私自身は大学教員となり研究が本務と
なりました。教職大学院という学校教員養成の
領域ですので、児童福祉や臨床心理が中心で
はありませんが、教育と児童福祉の協働という
点では共有できます。ぜひ、これまで取り組ん
できた実践及び臨床を研究領域及び対象とし
ていきたいと思っています。これまで実践を通し
ての研究であった分、今後は実践に関する研
究に取り組み、子ども・子育て支援、虐待対
応、社会的養護などに役立つ活動をしていきた
いと思っています。
いろいろとお世話になりました、そして今後と
もよろしくお願いいたします。
ご静聴いただきありがとうございました。
平成26年度 WSPCAN総会
議事録から見る活動実績と27年度の計画
総会 議事録
1.開催日時:平成27年 6月14日(日)
1.開催場所: 和歌山県立医科大学保健看護学部
大講義室
1.会員数 :183名(平成27年4月1日 現在)
1.出席した会員数:105名(うち委任状出席:75名)
1.出席した理事・監事:理事12名・監事2名
1.議長選任の経過
定刻に至り司会者中川 智子氏 開会を宣し、本
日の総会は定数を満たしたので有効に成立した旨
告げ、議長の選任方法を諮ったところ、満場一致を
もって冨田 博文氏が議長に選任された。続いて議
長より挨拶の後、議案の審議に入った。
1.第1号議案:役員任期満了につき再任の件
②平成27年 3月15日(日)
オレンジリボンコンサート in わかやま
Human note・寺尾仁志
場所:県立医科大学保健看護学部大講義室
・前向き子育てプログラム
和歌山県地域子育て創生事業助成等により
「前向き子育てプログラム」を用いて、子育て
の問題を抱える家庭への介入を行い、地域の
子育ての向上を目指した。
実施状況
和歌山市 1グループ (9/11スタート)
紀の川市 1グループ (9/11スタート)
親支援(児童相談所) 2グループ
(6/16・H27年1/15スタート・アフターフォロー1回)
議長は、役員全員が平成27年6月30日任期満
了することに伴い、その改選を議場にはかったとこ
ろ、満場一致をもって、次の者が理事・監事に選任
させ被選任者はいずれもその就任を承諾した。
理事 大阪府吹田市山手町 3 丁目 6 番 9 号
小池通夫
理事 和歌山県有田市糸我町中番 37 番地の 8
桑原義登
(再任)出席
(再任)出席
理事 和歌山県西牟婁郡白浜町中 249 番地
理事 和歌山県和歌山市関戸 3 丁目 3 番 36 号
山本高正
中川利彦
(再任)出席
(再任)出席
理事 和歌山県和歌山市松島 262 番地の 26
理事 和歌山県和歌山市福島 562 番地の 15
理事 和歌山県和歌山市十番丁 20 番地
家本めぐみ (再任) 欠席
下山田洋三 (再任) 出席
林龍太郎 (再任)出席
理事 和歌山県和歌山市堀止西 2 丁目 8 番 2 号
理事 和歌山県和歌山市中之島 1828 の 4 番地
笹尾恭子
柳川敏彦
(再任)出席
(再任)出席
理事 和歌山市紀三井寺 1175 の 7 番地
理事 和歌山市中島 531-11
理事 和歌山市六十谷 258-4
冨田博文
中川智子
川口充紀
(再任) 出席
(再任)出席
(再任)出席
理事 和歌山市鳴神 903-3
監事 和歌山県伊都郡かつらぎ町大字佐野 360 番地
監事 和歌山県紀の川市貴志川町大字岸小野 107 番地の 1
木下顕次
藤井幹雄
森下宣明
(再任)出席
(再任)出席
(再任) 出席
1.第2号議案:平成26年度活動報告
・公開講演会・公開講座
①平成26年 6月1日(日)
「困難を抱える子ども保護者を支える地域の
ネットワーク:西成あいりん地区での取り組み」
講師:蕨川晴之氏
(石井記念愛染園わかくさ保育園園長)
場所:県立医科大学保健看護学部大講義室
-13-
計 4グループ
・オレンジリボン啓発活動
①平成26年11月24日(月)
オレンジリボンパレードin和歌山
「子ども虐待のない社会」の実現を目指し
つれもて歩こう!
②平成26年11月24日(祝・月)
「子どもの虐待防止推進全国フォーラム
in わかやま」参加
③オレンジリボンの作成を依頼
・出前講座・ワークショップ
・その他の活動
4月27日
「スチューデントジャズフェスティバル」での
オレンジリボン啓発グッズの配布
8月9日
両親の日コンサート~家族の絆を深めて~
8月9日
わかやまパパウィーク
11月15日
ふれあい人権フェスタ2014
11月24日
子どもの虐待防止推進全国フォーラム
inわかやま
6月20日~22日
第61回日本小児保健学会・福島
10月
第20回日本子ども虐待防止学会
学術集会・名古屋
毎週
エフエムワカヤマ(87.7MHz)における
「児童虐待防止番組」の放送
(月)15:45~15:57 (火)10:45~10:57
(水)16:45~16:57(土)7:45~ 7:57
(日)21:45~21:57
毎日更新
フェイスブック 「オレンジリボン広め隊!和歌山」
1.第5号議案 平成27年度の予算案について
平成27年度予算書
(収入の部)
(単価:円)
項 目
本年度予算額
会 費
570,000
会 費
決算額
579,000
比 較
441,000
備 考
△ 138,000
正会員
411,000
賛助会員
30,000
委託金
1,500,000
共催金
0
0
0
寄付金
0
43,277
43,277
寄付
146
46,661
46,515
利息・解析料・その他
雑 収 入
繰 越 金
計
1,706,399
206,399
326,431
326,431
0
2,405,577
2,563,768
158,191
1,908,199
1,500,000
408,199
委託金(和歌山市・紀の川市・県)
200,000
0
200,000
オレンジリボン
雑 収 入
161
146
15
繰 越 金
199,218
326,431
△ 127,213
2,877,578
2,405,577
472,001
計
(単価:円)
項 目
本年度予算額
人件費支出
予算額
人件費支出
決算額
オレンジリボン
比 較
備 考
140,000
247,994
107,994
140,000
247,994
107,994 解析料・講演会受付費・名簿管理等
104,500
104,898
旅費交通費
2,000
100
賃 金
事務費支出
398
△ 1,900 受付交通費・駐車場
消耗品費
5,000
1,571
印刷製本費
5,000
0
業務委託費
30,000
20,350
通信運搬費
50,000
72,335
手 数 料
10,000
6,048
雑 費
2,500
2,688
188 事務用品
備 品
0
1,806
1,806 FAXリボン
2,161,077
2,011,658
1,400,000
456,620
△ 943,380 講師謝金・源泉
旅費交通費
100,000
56,638
△ 43,362 講師旅費・源泉
消耗品費
30,000
12,262
△ 17,738 封筒・発送用ラベル等
印刷製本費
100,000
115,232
通信運搬費
35,000
69,147
会 議 費
0
0
需 用 費
300,000
910,965
事業費支出
諸 謝 金
△ 3,429 封筒・コピー用紙
△ 5,000 振込用紙印刷
△ 9,650 オレンジリボン作成委託料
22,335
切手・葉書・メール便・ホームページドメイン+レンタルサー
バー
△ 3,952 振込み手数料
△ 149,419
15,232 ウィング(ニューズレター)
34,147 電話・ニューズレター・アセスメント送付
0
610,965 トリプルP教材
広 報 費
7,000
78300
71,300 オレンジリボンブルゾン作成
賃 借 費
35,000
34,580
△ 420 会場費・マイク等
業務委託費
150,000
230,232
雑 費
3,577
47,682
備 品
500
0
△ 500
2,405,577
2,364,550
△ 41,027
計
収入合計
支出合計
差し引き
80,232 一時保育
円
比 較
備 考
140,000
140,000
140,000
140,000
100,000
104,500
旅費交通費
1,000
2,000
△ 1,000 受付交通費・駐車場
消耗品費
3,000
5,000
△ 2,000 封筒・コピー用紙
印刷製本費
3,000
5,000
△ 2,000 振込用紙印刷
業務委託費
30,000
30,000
通信運搬費
50,000
50,000
手 数 料
9,000
10,000
雑 費
3,000
2,500
500
備 品
1,000
0
1,000
2,637,578
2,161,077
1,290,000
1,400,000
旅費交通費
100,000
100,000
消耗品費
20,000
30,000
△ 10,000 講演会封筒等
印刷製本費
150,000
100,000
50,000 ニューズレター
通信運搬費
70,000
35,000
35,000 メール便・葉書
会 議 費
90,000
0
需 用 費
500,000
300,000
広 報 費
75,000
7,000
賃 借 費
50,000
35,000
業務委託費
250,000
150,000
雑 費
37,078
3,577
備 品
5,500
500
5,000
2,877,578
2,405,577
472,001
賃 金
事務費支出
事業費支出
諸 謝 金
0
0 講演会受付費・名簿管理等
△ 4,500
0 HB郵送委託料
0 電話代・切手・葉書・メール便
△ 1,000 振込み手数料
476,501
△ 110,000 講師謝金・源泉
0 講師旅費・源泉
90,000 テープ起こし×3回
200,000 トリプルP教材等
68,000
15,000 会場・マイク費
100,000 一時保育
33,501 講師水・お弁当等
44,105 お弁当・オレンジリボン作成材料費
・公開講演会 平成27年6月14日(日)
衣斐 哲臣氏 「児童虐待ケースとの関わり
~児童相談所現場からの振り返り」
場所 :県立医科大学保健看護学部 大講義室
・オレンジリボン啓発活動
オレンジリボン作成
・ふれあい人権フェスタ2015
平成27年11月14日(土)参加予定
2,563,768 円
2,364,550 円
199,218
前年度予算額
1.第6号議案 平成27年度の活動案について
・4月
「スチューデントジャズフェスティバル」での
オレンジリボン啓発グッズの配布
・地域子育て支援 ペアレンティングプログラム
・10月会員セミナー(会員対象)
社会擁護について (案)
・11月8日
オレンジリボン運動 オレンジリボンフェスタ
inイオンモール和歌山を予定
・エフエムワカヤマ(87.7MHz)における
「児童虐待防止番組」の放送
(月・水・金)16時24分〜 (火・木)21時24分〜
・フェイスブック
「オレンジリボン広め隊!和歌山」
(単価:円)
項 目
利息
(支出の部)
計
委託金(和歌山市・紀の川市・県)
(支出の部)
正会員 180名×3,000
△ 9,000
共催金
(単価:円)
予算額
備 考
委託金
平成26年度決算書
項 目
579,000
比 較
賛助会員 3団体×10,000
1.第3号議案 平成26年度決算報告
(収入の部)
前年度予算額
(平成27年度へ繰越)
1.第4号議案
平成26年度助成金・補助金・寄付
委託金・補助金
前向き子育てプログラム事業
親支援プログラム事業
寄 付
個人
-14-
・第21回 日本子ども虐待防止学会・新潟 11月
・第62回 日本小児保健学会・長崎 6月
・施設訪問(場所未定)
・ニュースレター 年に3回発行
4~8月、9~12月、1~3月
・例会 月に1回 ビッグ愛9階 りぃぶる
開催曜日について、ホームページに掲載。
・ホームページ
http://wspcan.jp/
・わかやまイベントボードへの情報提供
1.第7号議案
平成27年度の助成金・委託金・共催金申請に
ついて
・親支援プログラム事業
児童相談所 (グループトリプルP)
・前向き子育てプログラム事業
和歌山市・紀の川市(グループトリプルP)
・子ども虐待防止オレンジリボン共催事業
1.第8号議案 議事録署名人について
議長から、議事録署名人を指名したい旨を
述べたところ、満場異議なく賛成があったので
議長は、次の者を議事録署名人に氏名した。
議事録署名人 柳川 敏彦・笹尾 恭子
以上をもって総会の議案全部の審議を終了した
ので、議長は閉会を宣し、午後2時20分閉会した。
(議長及び議事録署名人の記名押印は記載を省略)
オレンジリボン広め隊!
和歌山
フェイスブック
「子ども虐待のない社会の実現」を
目指す市民運動
オレンジリボンの普及啓発を図る
和歌山発のFB
(全国の情報も同時発信)
隊長のH27年5~8月の啓発活動いろいろ
(6月)
27日:第11回難聴者・中途失聴者のつどい
(橋本伊都地域)
(7月)
11日:日本教育会和歌山県支部総会
記念講演「和歌山の教育」 宮下県教育長
12日: カンボジア孤児院スナーダイクマエ絵画展2015
(8月)
8日: 「両親の日」
CONCERT (大阪)
29日:虎伏学園夏祭り
恒例の焼きそば!今年は
後継の青年も参戦。しかし、
こだわりの主は今も健在!
笑顔で子どもたちのために、
腕を振るいました。
難聴者・中途失聴者のつどい H27/6/27(橋本市保健福祉センター)
高校生から80代の参加者に、児童虐待防止活動等について説明。難聴者
の方が対象ですので、私の横のスクリーンには、話している内容が、要約筆
記ボランティアにより、文字化され、情報が伝わるのです。
カンボジア孤児院 スナーダイ・クマエ絵画展2015
H27/7/12 (フォルテワジマ)
1998年カンボジア内務省登録の児童養護施設。
孤児院では、貧困や虐待を理由に親と生活で
きない子どもたちが共同生活。
団体代表メアス博子(海南市出身)
カンボジア人スタッフ 4名、児童数 23名
(本年1月現在)
運営に政府の補助は一切なく、支援者の援
助や物品販売による自己資金の調達で維持し
ています。今回の和歌山展は5回目
-15-
「両親の日」CONCERT
H27/8/8 (大阪市中之島公会堂)
コンサートでは、イヨンボさんはじめ出演者スタッフがオレンジリボンを着用。特別ゲストの元TMネットワー
ク木根尚登さんが児童虐待防止等の思いを語り作詞作曲した「色づく街に」「ノックは3回」などを熱唱。
「山よりも高く海よりも深い父母の恩。両親への感謝の心が平和の原点」。8月8日は「パパ」「母」と語呂合
わせ「両親の日」制定協議会も発足。(今年の日韓国交正常化50周年記念ともなった)
(パンフレット広告)
啓発広告を掲載してくださったパンフレット(800)・チラシ(500)を配布。
―メッセージ―
2007年にNHKのみんなのうたで流していただい
た曲「ノックは3回」、この歌が生まれたきっかけは、
ある日の新聞の記事だった。それは、いじめを苦
にして自殺してしまった子供の話。あまりにも悲し
い出来事だった。また、ある時は、子供の虐待の
記事。それを見て僕は、「青い鳥たち」という歌を
かいた。今もいじめ、虐待のニュースは、後をた
たない。世界中の子供達の幸せを願いかいた歌
は、「悲しみのチルドレン」
今回、お二人からメッセージを頂くことができま
した。益々のご活躍と敬意を込め、ここにご紹介
させて頂きます。お忙しい中、誠にありがとうござ
いました。
―メッセージ―
僕がオレンジリボン運動を知ったのは 歌い
続けてきた中で ~両親への感謝の心が平和
の原点~というメッセージを伝えたくて『両親
の日』コンサートを始めてからだ。
何故、僕は歌をつくるのか。
それは、自分に言い聞かせる為だ。
「子供達を大切にしろ」と、「子供達は宝だ」と。
そして、「未来を作っていくのは子供達なのだ」と。
どんな人にも両親がいる。
そのことを多くの大人達に伝えたい。
だから、僕は、歌をかき続ける。
そして、歌い続ける。
今は事情があって一緒に居られなくても、両親
がいなければ存在しない自分を、かけがえの
ない命を、大切にしてほしい。と思う気持ちが、
オレンジリボン運動と同じ方向に向かっている
と思ったら
僕は、不器用で、歌うことしかできないけど、
歌を歌い、応援していきたいと強く思っている。
一人でも多くの子供達が幸せになることを願って。
そして、最後に、和歌山で活動するNPO和歌山
子どもの虐待防止協会の会員の皆様へ最大の
エールを送らせていただきたい。
イ・ヨンボ
2015年 8月吉日 木根 尚登
(プロフィール) 〇大阪市生野区生まれ在日コリアン2世。〇1975年フ
ジテレビのオーディション番組で優勝。〇シンガーソングライターとして
ギターの弾き語り。〇ライブ・コンサート中心に40年間の活動。〇阪神
大震災以降から世界中の災害の救援活動としてチャリティーコンサー
トを開催する。〇ヨンボワールドには自然や友情をテーマにした作品が
多い。〇生きる喜びがわいてくる応援歌と、団塊の世代から中高生ま
でと、幅広い人気を広げている。
(プロフィール) 〇1957年9月26日生まれ。東京都出身。〇小室哲哉、宇都
宮隆と共にTM NETWORKとしてデビュー。〇ファンタジー小説「CARO
L」で小説家デビューし40万部のベストセラーとなる。現在まで著書28冊を
出版。ソロとしても今年22年目を迎える。シングル15枚、アルバム20枚をリ
リース。その他プロデュース、音楽監督、舞台、バラエティーなど精力的に
活動中。
2015年 8月 8日
-16-
10‐11月の予定
オレンジリボンフェス2015
子どもたちの笑顔が輝く和歌山!
27/10/18 社会的養護セミナー
Ⅰ 開催日:平成27年10月18日(日)
Ⅱ 場所:県立医科大学保健看護学部
Ⅲ 内容:
10~12時:セミナー
「鳥取県における社会的養護の現状と課題」
講師
里親支援とっとり里親委託推進員 吉田信彦氏
鳥取県里親会 福谷則枝会長
13〜15時:情報交換会
「鳥取県の現状などをもとに、和歌山のあり方
などについて」
11月8日
イオンモール和歌山に集合
27/11/8 オレンジリボンフェスタ2015
27/11/14 ふれあい人権フェスタ2015
Ⅰ 開催日:平成27年11月14日(土)10~16時
Ⅱ 場所:和歌山ビックホエール
Ⅲ 内容:ブース出展
Ⅰ 開催日:平成27年11月8日(日)13~16時半
Ⅱ 場所:イオンモール和歌山
Ⅲ 内容:メインイベントは、15時予定
27/11/21-21 日本子ども虐待防止学会
Ⅰ 開催日:平成27年11月20-21日(土)
Ⅱ 場所:新潟
Ⅲ 内容:第21回学術集会にいがた大会
「つながりへのチャレンジ」
アンサンブル・レネットが、たのしい音楽と笑顔
をはこんでイオンモール和歌山にやってくる。
いっしょに歌って、演奏して、身体中で音楽を
感じよう!音楽会の主役は“子ども”みんなで
つくる音楽会、さぁおいでよ!」
-17-
会員紹介コーナー No3
子どもたちが、健やかに
過ごせる和歌山を!
家本 めぐみ
(toddle わかやま)
和歌山子どもの虐待防止協会・会員の皆様には、
いつも協会へのご協力をいただき感謝申し上げま
す。
2000年の設立から協会に携わらせていただき、
早いもので、15年が経ちました。
この間、虐待防止法が整備され、子ども達を心身
ともに守ろうという動きに喜びもありましたが、虐待
防止の取り組みには、遅れもあるのが現状です。
1999年より、CAP(子どもへの暴力防止プログ
ラム)に取り組み、和歌山県内の子ども達に「あな
たたちは大切な人」というメッセージを送り続けてき
ました。
子どもたちからは、性的虐待を受けたことや、親
からの暴力に苦しんでいることを打ち明けられるこ
ともあります。私たちが受け止めて、SOSを他のお
となに伝えるときに、私たちは、大きな壁を乗り越え
なければいけない事態に陥ることがまだ多く、憤り
さえ感じます。
学校に、子どもたちからのSOSを伝えても
「次に何かあったら通報します」
「00君がやんちゃだから・・・」
「そんなことどこの家庭でもありますよ」
等あげればきりがないほどに虐待についての理解
の乏しさに、必死に説得を試みながらも、悔しい気
持ちが抑えきれないことも・・・
しかし、このような意見は、特別なことではなく、一
般的には、このように考える大人が存在することを
思い知らされるのです。
今、私たちにできることを、できるときに、子どもは
もとより、地域の大人に、しっかりと伝え続けなけれ
ばいけないと実感しています。
-18-
CAPのプログラムで、子どもたちをエンパワメント
し、2005年より、トリプルP(前向き子育てプログラ
ム)を県内でも実施し、多くの市町村で、親たちに
子どもへの関わり方をお伝えしています。
和歌山県では、こども未来課の支援をいただき児
童相談所で、親向けのプログラムを行っています
が、参加してくださる方々は、一生懸命に子どもと、
どの様にかかわるかを学んでくださいます。
ただただ、関わり方がわからずに、暴力を使って
しまっていた方、夫婦仲の問題を子どもに向けて
いた方、ほとんどの方は、今の状況が良くないこと
を理解していても、どのような関わりが必要で、ど
のような関わりをすれば、目前の問題を解決でき
るのかが、わからないまま必死に子どもに向き
合っておられます。
考え方を少し変え、悪い行動ではなく、良い行動
に注目することで、関係が変わり、驚くほどの変化
を見せてくださいます。親の可能性を感じられるひ
と時です。
私たちも、親の悪い行動ばかりに、目がいってい
ませんか?
地域の大人として、親の良い行動に目を向け、頑
張っていることに注目するだけでも、虐待が減らせ
るのではないかと感じています。
今後も、皆さんのお力添えをいただきながら、子ど
もたちが、健やかに過ごせる和歌山を作っていき
たいと考えております。
新会長
2015年度公式ポスター
コンテスト 結果発表
走る!
暑い夏の日
学生相手に
一日立ぱなし。
大学での
集中講義を終え
イオンに
駆けつけた!
11月の児童虐待防止推進月間に開催する「オレ
ンジリボンフェスタ2015」に関して、4月から取りかか
り、イオンモール和歌山様のご協力を頂けることが
確定し、去る8月20日、会長と共にご挨拶に伺いま
した。
チラシやポスターは、9月中の完成をめざし、随時
進めておりますので、宜しくお願い致します。
【編集後記】
昨年の29号から担当し、30、31、32号と通年
発行ができました。ありがとうございました。
水鳥は水面で悠々と泳いでいる。だが水面
下の足で必死に漕ぎ前進している。物事を成
し遂げる陰の努力、苦労の大切さ。若い時から
訓練を受け、その喜びも知っているのに愚痴も
出る齢頃。そんな僕を見守ってくださる方が、
「NL読んだよ。〇〇いいやん」と、ひとこと励ま
してくれる。その瞬間、 苦労は報われ、次も頑
張ろう!と天にも昇るメタボの僕がいる。
「日本ほめる達人協会」で提唱する褒め言葉
『3S+1』 (スリーエス プラスワン)
「すごい!」「さすが!」「すばらし!」の “3S”
相手が失敗した時には、「おしい!」で “+1”
子どもはもちろん、子育て奮闘する保護者、
大人だって、自分がどれくらい人に良い影響を
与えているかという、「自分の存在価値を実感
できれば、自己肯定感も高まる」と聞きました。
もちろん心にもない褒め言葉、お世辞などはす
ぐばれます。差し入れのケーキも捨てがたいで
すが・・・。こちらの視点が変われば、長所が見
え、正しく評価できる。相手ではなく、こちら側
が成長をすることが大切。
今、桑原会長のもと新たな船出の時、新たな
気持ちで チャレンジしてまいります(KK)
岐阜県大垣市 寺嶋里咲様
「周りの人の支えは、親の手助けや心の支えに
なります。それによって虐待もなくなり、子どもが
楽しく育つ環境になると思いました。
性別や年齢が違う靴をオレンジのリボンで繋ぐこ
とで、周りとの繋がりを表現し、一人じゃないよと
いうことを伝えたくてこのようなポスターを制作し
ました。
少しでも子育てをする親の不安を減らし、虐待
のない温かい家庭が増えることを願っています」
(審査員)
児童虐待防止全国ネットワーク吉田 理事長は
「たくさんのオレンジリボンが繋がっているのが印
象的、親子への支援に向かう足音が聞こえてき
そう」とコメントした。
-19-
-20-
WSPCAN
ニューズ通巻
No.32号
(2015年9月発行)
NPO法人和歌山子どもの虐待防止協会事務局 編集 木下顕次
〒640-8154 和歌山市六番丁43ハピネス六番丁ビル5階
TEL073-425-6626 FAX073-446-6724