SHR mini No.9 滋賀大学保健管理センター〔 2005 . 11 〕 ヘルペス脳炎について 脳炎の可能性を念頭に置く必要がある。 抗ウイルス剤の開発により致命率は減少した 日本脳炎や、米国で大きな問題になっている ものの、後遺症を残す症例も多く、いまだ重篤 ウエストナイル脳炎を除く急性脳炎を代表する な疾患の一つであること、抗ウイルス剤投与中 疾患である。 単純ヘルペスウイルス 1 型 (HSV-1) 止後に再燃する可能性があること、に十分な注 あるいは 2 型(HSV-2)の初感染時または再活 意が必要である。 性化時に発症し、年長児から成人のヘルペス脳 画像検査では、CT や MRI で、側頭葉底部や海 炎のほとんどの症例は HSV-1 によるものである。 馬領域など大脳辺縁系に所見が多いとされてい HSV が中枢神経系に移行する経路は、上気道感 る。 染から嗅神経を介してのルート、血行性ルート、 感染した神経節からのルートの 3 通りが考えら 【 治療・予防 】 れている。抗ウイルス剤が開発されるまでの予 ヘルペス脳炎を疑う場合、入院の上、一刻も 後はきわめて不良で、 致死率は小児で 70-80%、 早く抗ウイルス剤の投与を開始しなければなら 成人でも 30%とされていた。抗ウイルス剤の使 ない。第 1 選択はアシクロビル(ゾビラックス) 用以降、致死率は 10%程度であるが、およそ 1/3 で、10mg/kg を一日 3 回、14-21 日間点滴静注 の症例に重度の後遺症を残す重篤な疾患である。 する。治療終了時には、必ず PCR 法により HSV DNA の陰性化を確かめることが重要である。第 【 臨床症状 】 2 選択剤はビダラビン(Ara-A)である。その他、 年長児・成人のヘルペス脳炎は HSV-1 の再活 γグロブリン製剤、抗痙攣剤、副腎皮質ステロ 性化によるものが多く、HSV-2 は主に脊髄炎や イド剤、浸透圧利尿剤、濃グリセリンなどが併 髄膜炎の形をとることが多い。急性期症状とし 用される。 ては、発熱・頭痛・嘔吐・髄膜刺激症状・意識 障害・痙攣・記憶障害・言語障害・人格変化・ 幻視・異常行動・不随意運動・片麻痺・失調・ 脳神経症状など非常に多彩で、しかも全ての症 状がでるわけではなく、発熱と不随意運動のみ といった症例もある。中枢神経症状を起こした 場合、特に口唇ヘルペス再発時には、ヘルペス かぜ(普通感冒)の症状 のどが痛む・鼻汁・くしゃみ・咳 熱は出ても高くなく、全身症状はほとんどない インフルエンザの症状 悪寒・頭痛から始まり、激しい全身倦怠感・筋肉痛・関節痛 38℃以上の高熱が続き、合併症を起こし重症化することもある 予防方法は? ◆栄養と休養を十分取る・・・体力をつけ、抵抗力を高めることで感染しにくくなります。 ◆人ごみを避ける・・・病原体であるウイルスを寄せ付けないようにしましょう。 ◆適度な温度、湿度を保つ・・・ウイルスは低温、低湿を好み、乾燥しているとウイルスが長時 間空気中を漂っています。洗濯物を部屋に干したり、 加湿器などで室内の適度な温度と湿度を保ちましょう。 ◆外出後の手洗いとうがいの励行・・・手洗いはウイルスの侵入の機会を少なくします。 うがいはのどを清潔にし、粘膜をなめらかにし乾燥を 防ぎます。 ◆ マスクを着用する・・・飛沫のウイルス侵入を防ぎ、鼻やのどの粘膜保湿効果があります。 ◆ 予防接種を受けましょう・・・インフルエンザの予防接種は内科医院等で受けられます。 効果が出るまで1ヶ月かかるので早い目に受けましょう。 インフルエンザにかかったかなと思ったら 48 時間以内に病院で診察を受けましょう。 早期に服薬すれば、症状が軽くてすみ、重症化を防ぐことができます。
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