複合養殖

複
○
木村
合
養 殖
創(和水試)・田中俊充(わかやま産業振興財団)・山内 信(和水試)
キーワード:複合養殖
著者連絡先:[email protected]
魚類養殖業は一般的に海水交流の少ない閉鎖的な内湾
ヒロメが良いことが明らかになったことからそれぞれの
で実施されており、ここでは養殖業に起因する有機物負荷
培養方法について検討した。アオサは静置籠培養では藻体
に伴う富栄養化が問題となっている。今日の養殖業では水
への付着物等が認められ、増殖が不良(14%/1 週間)で
質に影響を及ぼす要因としては養殖魚の尿、残餌や糞の堆
あったことから図 1 に示す培養システムを開発し培養を
積した底泥からの窒素やリンの溶出、懸濁物の拡散による
試みた結果 1 日あたり 35%以上の増殖が認められた。ヒ
ものがほとんどと考えられる。
ロメについてはワカメ養殖と同じロープ養殖法により1
しかし、これらの溶出した窒素やリンは海藻類にとって
m当たり、7.5∼10.6kg の生産が可能であった。
は必要な栄養塩であることから本研究では魚類養殖場に
濾過装置
ブロアー
おいて海藻類と複合養殖を行うことによって海域の浄化
を図ることを目的に以下の試験を実施した。
1.窒素・リン等の栄養塩類吸収能力の高い海藻の探索。
2.養殖漁場での海藻類養殖方法の検討。
アオサ培養生け簀
3.海藻類と複合養殖を行ったときの物質収支。
マダイ養殖生け簀
1
エアーリフト
窒素・リンの栄養塩類吸収能力の高い海藻の探索
図 1.アオサ培養システム
高水温期に生長する不稔性アオサ(以下アオサ)・カジ
メ・クロメ、低水温期に生長するヒジキ・ヒロメを用いて
3
物質収支
培養器内での窒素とリンの取り込み速度を比較した。培養
高水温期にマダイを 3×3×3m の生け簀に 260 尾収容
液は沖合海水をベースに窒素源としては NaNO3 (150μ
し、9 月 9 日から 12 月 13 日までEP飼料を与え、アオサ
g at/ℓ)
、リン源としては K2HPO4 (15μg at/ℓ)を添加
は 2×2×0.8m生け簀で初期投入量を 1kg とし、1 週間ご
して、それぞれの海藻を投入後、培地内の窒素・リンの減
とにアオサを収穫する方法で物質収支を試算した。与えた
少状況を経時的に測定した。その結果、窒素・リンそれぞ
飼料の窒素 19.0%、リン 29.3%が魚体内に取り込まれ、
れの取り込み速度はアオサ 64.22μg at/dry g/hr、0.62μg
残りは海中に放出されるが、流失した窒素の 10.4%、リ
at/dry g/hr、カジメ 5.20μg at、0.60μg at、クロメ 7.30
ンの 4.0%がアオサに吸収されることとなった。アオサの
μg at、0.63μg at、ヒジキ 3.00μg at、0.47μg at、ヒ
生産量は 35.2kg であった。
ロメ 9.80μg、1.65μg at となった。以上の結果から栄養
低水温期についても高水温期と同じ条件でマダイを飼
塩類の取り込みが速やかで本県で複合養殖種として適し
育し(飼育期間 90 日)
、生け簀の周囲でヒロメ養殖を実
た藻類はアオサとヒロメであることが明らかとなった。
施した結果、餌に含まれる窒素の 15.9%、リンの 25.2%
が魚体内に取り込まれ、海中に流失した窒素の 39.8%、
2
魚類養殖場での藻類培養方法の検討
本県の複合養殖種として高水温期はアオサ、低水温期は
リンの 25.8%がヒロメに取り込まれることが明らかとな
った。このときのヒロメ生産量は 161kg となった。