背部痛と発熱を主訴に喜界徳洲会 病院より紹介となった71歳男性

背部痛と発熱を主訴に喜界徳洲会
病院より紹介となった71歳男性
宇治徳洲会病院
内科 柴田 祥宏
主訴
左背部痛、全身倦怠感、体動時前胸部痛
既往歴
平成2年膿腎症にて右腎摘出、
慢性腎不全にて透析通院中、
高血圧、
多発性胸椎圧迫骨折
現病歴
透析にて喜界病院にて透析通院中。平成18年
より左背部痛、平成19年1月より倦怠感を自
覚。半年前よりCRPの軽度上昇、貧血の進
行が認められた。CT上左肺背側に腫瘤を認
め、採血にてPro-GFRの上昇をみとめ、肺小
細胞癌疑いにて、名瀬徳洲会病院に紹介と
なる。
【主な入院時現症】
BP:147/70、HR:120、SaO2:97%(RA)、BT:36.9℃
Eye:sl anemic、not icteric
Throat:not reddish、not swelling
Lymph:not palpable
Lung:clear、air entry;good
Heart:reguler、no murmur
abd:soft&flat、no tenderness b/s:normal
Liver&Spleen:not palpable
edema:(-)
【入院時主要な検査所見】
<血液所見>Glu 84、CRP 2.4、CPK 38、AST 24、ALT 21、
BUN 66、Cre 11.3、Na 135、K 4.2、Cl 100、WBC 6500、
RBC 253、Hb 7.8、Ht 24.4、Plt 31.1 血沈 1H 120以上、2H
120以上 HBs抗原(-)、HCV抗体(-)、
<血ガス>異常認めず
<ECG>NSR。ST change(-)
<UCG>軽度心肥大。A弁石灰化あり開放制限あり。
LV asynergy(-)
<胸部CT>1×2cmの造影効果のない楕円状に左肺背側胸膜
肥厚を認める
胸膜肥厚に対して
• 胸膜穿刺を施行
黄色透明な液体150mlひける。
一般→ADA10、LDH84、
細胞数156(単核球43%、多核球7%)
培養→結核、細菌認めず
細胞診→異型細胞認めず
ちなみに、PRO-GFRは腎排泄のため腎不全患
者では高値になる。
ツベルグリン反応は陰性。胸水ADAも有意な陽
性ではない。抗TBGL抗体は陰性。胸水は漏
出性である。既往歴にも結核を思わせるよう
なエピソードはない。
以上のことを考えて、肺癌、肺結核は否定的と
なった。
腰痛、体動時の疼痛に関しては
腰痛に関しては、まずは悪性疾患を検索しなけ
ればならない。
透析患者は悪性疾患に罹患しやすいため精査
をしなければならない。
多発性骨髄腫は否定しておかなければならな
い。
次にマルクを施行
2/2マルク施行
胸骨および腸骨稜にて骨髄穿刺施行したが、う
まく引けず。DRY TAP であった。
そのため、右上後腸骨稜にて骨髄生検施行。
結果は「細胞数が少ないため確定診断はでき
ないが、悪性のように見える」であった。
Bence Johnsタンパクは特に認めず
他のM蛋白は認めなかった。
以上より、多発性骨髄腫も否定的となる。
再度、腰痛、背部痛の検索
• 胸椎、腰椎レントゲンを施行
• 腰部CT施行
腰椎2R Xp
骨盤Xp
腰部CT
Xp、CT上より融解像と増骨像がまだ
らにある骨変化が認められた。
骨転移しやすい悪性腫瘍
・悪性黒色腫
・甲状腺がん
・肺癌
・乳がん
・消化管悪性腫瘍
・腎細胞癌
・多発性骨髄腫
・前立腺がん
• 再度、CTガイドにて狙い撃ち骨髄穿刺施行。
DRY Tapのため骨髄生検施行。
・結果はMetastatic carcinoma, probably
from prostate cancerであった。
・また、血清PSA 3420と上昇していたため
前立腺生検を施行
H.E染色
PAS染色
前立腺生検の結果
Adenocartinoma,
poorly differentiated
診断
前立腺癌
多発性骨転移
治療
リュープリン(3.75) 皮下注 1回/月
カソデックス 1錠 分1
今後は地元の喜界島にて透析をしながら暮ら
すこととなった。
前立腺がんのまとめ
・欧米では男性癌死のトップである。
・発症年齢では前立腺肥大症より平均10
歳高い。
・排尿障害で受診することが多いが、骨転
移による腰痛を主訴に来院することもある。
・腺癌がほとんどで、ホルモン療法が著高を
示すが、次第に無効となり再燃すると有効
な化学療法がないという疾患である。