第 4 回 日本がんリハビリテーション研究会 プログラム・抄録集

第 4 回 日本がんリハビリテーション研究会
プログラム・抄録集
日 時
会 場
2015 年 1 月 10 日(土曜日)
慶應義塾大学 北里講堂・第 2 校舎講堂
(慶応義塾大学信濃町キャンパス:東京都新宿区信濃町 35)
大会長
高倉 保幸
主 催
日本がんリハビリテーション研究会
(埼玉医科大学 保健医療学部 理学療法学科 学科長・教授)
ご 挨 拶
第 4 回日本がんリハビリテーション研究会
大会長 高倉
保幸
本研究会は、厚労省の委託事業として行われた懇話会が発展的に研究会とな
ったものです。年々増大するがん患者の QOL を向上させることを目的にがん対
策基本法に従い 2010 年からはがん患者に対するリハビリテーションが正式に
診療報酬を算定できるようになりました。それに伴い急速にがん患者に対する
リハビリテーションの認知度は向上しましたが本邦における歴史は浅くまだま
だ解決しなければならない問題は山積みです。本研究会では、がん患者に対し
てより質の高いリハビリテーションを提供できるように学術的問題点をひとつ
ずつ解決していくことを求められています。
まず、基調講演では聖路加国際病院乳腺外科部長・ブレストセンター長であ
る山内英子先生に「がんサバイバーシップとリハビリテーション」のお話しを
していただきます。山内先生はがんサバイバーシップの問題にいち早く取り組
んできた第 1 人者であります。サバイバーシップという概念はまだまだ本邦で
は普及が遅れていると思いますが身体機能だけではなく活動や参加などを包括
的に捉えてリハビリテーションを実践していくためには大切な概念ですので山
内先生のお話しを是非お聞き下さい。さらに、シンポジウムでは今後ますます
問題となるであろう「在宅がんサバイバーに対するリハビリテーション」を企
画し、この分野の第一線で活躍する医師、PT、OT、ST、看護師の先生方から
お話しをお聞きしたいと思います。また、がんのリハビリテーションでは大き
な問題となる「骨転移例のリハビリテーション」についてライブディスカッシ
ョンを企画しました。上肢、下肢、脊椎の 3 症例を基に参加者の皆さんと一緒
に時間をかけて適切な評価や対応を考えていきたいと思います。
各職種ともに満足いただけるように盛りだくさんの内容を提供致しますので
奮ってご参加下さい。
会場へのアクセス
会場:慶應義塾大学 北里講堂・第 2 校舎講堂
(東京都新宿区信濃町 35)
交通アクセス:
信濃町駅(JR 総武線)徒歩 1 分
国立競技場駅(都営地下鉄大江戸線)徒歩 5 分
キャンパス案内 URL:
http://www.keio.ac.jp/ja/access/shinanomachi.html
受付は「北里講堂」のみとなります
第1会場は「北里講堂」となります
第2会場は「第2校舍講堂」となります
第4回日本がんリハビリテーション研究会 日程
2015年1月10日(土) 慶應義塾大学 北里講堂・第2校舎講堂
9:55
第1会場 (北里講堂)
開会挨拶
10:00
10:00~11:00
基調講演
11:00
休憩 5分
11:05~12:00
一般演題:セッションⅠ
演題1~6
12:00
13:00
第2会場 (第2校舍講堂)
11:05~12:00
一般演題:セッションⅡ
演題7~12
12:00~13:00
昼休み
13:00~13:40
一般演題:セッションⅢ
演題13~16
13:00~13:40
一般演題:セッションⅣ
演題17~20
休憩 5分
14:00
15:00
13:45~14:15
一般演題:セッションⅤ
演題21~23
13:45~14:20
一般演題:セッションⅥ
演題24~27
休憩 15分
休憩 10分
14:30~16:00
シンポジウム
16:00
休憩 10分
17:00
16:10~17:40
ライブカンファレンス
17:40
閉会挨拶
会議室
12:30~13:30
理事会
プログラム
10:00~11:00
基調講演 『がんサバイバーシップとリハビリテーション』 [第1会場]
講師:山内 英子 先生(聖路加国際病院乳腺外科 部長・ブレストセンター長)
司会:辻 哲也 先生(慶應義塾大学医学部腫瘍センター リハビリテーション部門長)
11:05~12:00
一般演題 セッションⅠ(演題1~6)
座長:田沼
[第 1 会場]
明 先生(静岡県立静岡がんセンター) 井上 順一朗 先生(神戸大学医学部附属病院)
一般演題 セッションⅡ(演題7~12)
[第 2 会場]
座長:村岡 香織 先生(慶応義塾大学) 増島 麻里子 先生(千葉大学大学院)
13:00~13:40
一般演題 セッションⅢ(演題13~16) [第 1 会場]
座長:中田 英二 先生(四国がんセンター) 國澤 洋介 先生(埼玉医科大学保健医療学部)
一般演題 セッションⅣ(演題17~20) [第 2 会場]
座長:増田 芳之 先生(静岡県立静岡がんセンター) 國友 淳子 先生(埼玉医科大学総合医療センター)
13:45~14:15
一般演題 セッションⅤ(演題21~23) [第 1 会場]
~14:20
一般演題 セッションⅥ(演題24~27) [第 2 会場]
座長:鶴川 俊洋 先生(鹿児島医療センター) 神田 亨 先生(静岡県立静岡がんセンター)
座長:阿部 恭子 先生(千葉大学大学院) 宮越 浩一 先生(亀田総合病院)
14:30~16:00
シンポジウム 『在宅がんサバイバーに対するリハビリテーション』 [第 1 会場]
司会:大阪医科大学 総合医学講座 リハビリテーション医学教室
千葉県立保健医療大学 健康科学部リハビリテーション学科
① 医師としての取り組み:山王リハビリ・クリニック
速水 聰 先生
② PT としての取り組み:武蔵台病院 リハビリテーション部
大隈 統 先生
③ OT としての取り組み:東大宮訪問看護ステーション
佐治 暢 先生
④ ST としての取り組み:大垣市民病院リハビリテーションセンター
菅田 隆弘 先生
⑤ 看護師としての取り組み:がん研有明病院 リンパケアルーム
堀 真理子 先生

16:10~17:40
佐浦 隆一 先生
小林 毅 先生
ディスカッション
ライブ・カンファレンス 『骨転移例に対するリハビリテーション』 [第 1 会場]
司会:東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科
埼玉医科大学保健医療学部 理学療法学科
篠田 裕介 先生
高倉 保幸 先生
① 脊椎:昭和大学リハビリテーション医学講座
佐藤 恭子 先生
② 上肢:亀田総合病院 リハビリテーション室
近藤 絵美 先生
③ 下肢:東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部
高橋 雅人 先生

ディスカッション
一般演題
セッションⅠ
11:05~12:00
第 1 会場
座長:田沼 明(静岡県立静岡がんセンター) 井上順一朗(神戸大学医学部附属病院)
1
同種造血幹細胞移植後の生活における移動能力に関する検討
国立病院機構九州医療センター リハビリテーション部
米永悠佑
2
予防的リハビリテーションによる早期退院支援で自宅退院に至った超高齢悪性リンパ腫患者の一例
埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
小泉浩平
3
悪性リンパ腫患者に対する短時間高頻度リハビリ介入の効果について
北福島医療センター リハビリテーション科
4
入院中の血液がん患者が抱える問題点の探索
長崎大学病院 リハビリテーション部
5
6
笠原龍一
急性骨髄性白血病に対し骨髄移植を施行された患者の理学療法介入の経験
昭和大学病院 リハビリテーションセンター
造血幹細胞移植を行った急性骨髄性白血病患者に対する理学療法の経験
~血液所見における中止基準に着目して~
北海道大学病院 リハビリテーション部
一般演題
セッションⅡ
11:05~12:00
石井 瞬
保坂雄太郎
由利 真
第 2 会場
座長:村岡香織(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学講座) 増島麻里子(千葉大学大学院看護学研究科)
7
8
がん患者を支える作業療法士の役割 ―当院での特徴と動向の報告―
大阪府立成人病センター リハビリテーション科
徳山未希子
がん終末期患者へのシームレスな関わりを目指して
たたらリハビリテーション病院 リハビリテーションセンター
三原絵美
当院の緩和ケア棟におけるリハビリテーションの現状
国立病院機構 南九州病院 リハビリテーション科
榎木大介
10 がん告知による精神症状に対して、多職種によるチームサポートが奏効した1例
一般財団法人 慈山会医学研究所付属 坪井病院 リハビリテーションセンター
福地 望
9
11 傾聴を中心とした精神的フォローが奏効した大腸癌切除に加え子宮・付属器合併切除を行った 1 例
一般財団法人 慈山会医学研究所付属 坪井病院 リハビリテーションセンター
八木田裕治
12 終末期がん患者と家族を含めたコミュニケーションでのリハビテーションスタッフの関わり
~家族間でのコミュニケーション不足により、自宅退院時期を逃した症例を通して~
市立三次中央病院 リハビリテーション科
上野千沙
一般演題
セッションⅢ
13:00~13:40
第 1 会場
座長:中田英二(四国がんセンター) 國澤洋介(埼玉医科大学保健医療学部)
13 腫瘍用大腿骨近位置換術後における荷重時期の検討
大阪府立成人病センター リハビリテーション科
加藤祐司
14 脊椎多発転移例の歩行訓練に関する考察 ~2 症例の経験から~
横浜市立大学附属病院 リハビリテーション科
山上大亮
15 精神心理的支持について~多発性骨転移の症例との調理活動を通して
医療法人社団鶴友会 鶴田病院 リハビリテーションセンター
島田妙子
16 骨転移患者でリハビリテーションを施行した 1 例を通じ骨転移診療の問題点を考える
沼津市立病院 整形外科 リハビリテーション科
小山忠昭
一般演題
セッションⅣ
13:00~13:40
第 2 会場
座長:増田芳之(静岡がんセンター) 國友淳子(埼玉医科大学総合医療センター)
17 保存療法を行うがん患者の運動機能に関する予備調査
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 理学療法学分野
中野治郎
18 The Mann Assessment of Swallowing Ability(MASA)を用いた肺癌患者における誤嚥リスク評価
独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター リハビリテーション科
藤田智彦
19 白質脳症による歩行障害を呈した患者に対して理学療法を施行した一例
IMS グループ 板橋中央総合病院 リハビリテーション科
佐藤清登
20 高齢者進行肺がん患者における治療前の歩行能力と要介護期間ならびに入院期間との関連について
の検討
静岡県立 静岡がんセンター 呼吸器内科
内藤立暁
一般演題
セッションⅤ
13:45~14:15
第 1 会場
座長:神田 亨(静岡県立静岡がんセンター) 鶴川俊洋(鹿児島医療センター)
21 多職種チーム医療による脊椎 SREs (skeletal related events)に対する取り組み
独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 整形外科
中田英二
22 脊椎転移患者への作業療法における日常生活動作指導の問題点と課題
青森県県立中央病院 リハビリテーション科
安田 卓
23 運動療法によりがん性疼痛の軽減が得られ日常生活動作が改善した 1 症例
大阪医科大学附属病院 リハビリテーション科
萬福允博
一般演題
セッションⅥ
13:45~14:20
第 2 会場
座長:阿部恭子(千葉大学大学院看護学研究科) 宮越浩一(亀田総合病院)
24 乳癌周術期患者の心理状態のリスクファクターと QOL 改善との関連
独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 乳腺科病棟
土井美幸
25 術後補助療法実施乳がん患者における身体活動量と骨代謝の関係
神戸大学医学部保健学科 理学療法学専攻
浅野光香
26 頭頸部癌周術期におけるリハビリテーションの可能性
市立函館病院 リハビリ技術科
三浦裕幸
27 乳がん放射線治療後に晩期末梢神経障害を呈した 1 症例
福井総合クリニック リハビリテーション課 作業療法室
明石美穂
基調講演
がんサバイバーシップとリハビリテーション
山内 英子
聖路加国際病院乳腺外科部長・ブレストセンター長
がん医療が次のステージへ入るべき時代となった。がんが不治の病といわれ、その治療
法を見つけることに必死になっていた時代から、がんの治療の多くの発展から、がんとい
う病が不治の病ではなく慢性病として考えられるような時代になってきた。がん罹患率が
増加し続け、いわゆるがん生存者の数は確実に増加している。がんの治療を終えたら、そ
れで医療は終わりではない。その後もがんサバイバーとして行きていく患者やその周りを
支えていく体制を医学的にも、社会的にも整える必要がある。つまりがん医療の次のステ
ージ-がんサバイバーシップ-患者の人生をともに考えるがん医療に入ったといえよう。
サバイバーシップには4つの側面—身体的、精神的、社会的、スピリチュアル的—およ
び4つ時期—急性期、経過観察期、安定期、終末期—から、それぞれに多角的、多次元的
に患者をかんがえていく必要がある。その中で、リハビリテーションはとても重要な位置
を占めると言える。欧米では早くからサバイバーシップの重要な一部としてがんリハビリ
テーション位置づけていた。場合によってはがんの治療を開始する前からのリハビリテー
ションも必要であり、臨床の現場とのチーム医療が不可欠である。日々、がん患者ととも
に悩み、歩む、臨床医として、皆さんと、がんサバイバーシップとリハビリテーション
を考えてみたいと思う。
【略歴】
1987年順天堂医学部卒業。聖路加国際病院外科レジデントを経て、1994年渡米。ハーバー
ド大学ダナファーバー癌研究所、ジョージタウン大学ロンバーディ癌研究所でリサーチフェローお
よびインストラクター。ハワイ大学にて外科レジデント、チーフレジデントを終了後、ハワイ大学
外科集中治療学臨床フェロー、南フロリダ大学モフィット癌研究所臨床フェロー。2009年4月
聖路加病院乳腺外科医長をへて、2010年6月より聖路加国際病院乳腺外科部長およびブレスト
センター長。米国外科学集中治療専門医、米国外科認定医。アメリカでの乳がんの研究、臨床経験
を生かして、患者に寄り添う診療を目指している。
シンポジウム 「在宅がんサバイバーに対するリハビリテーション」
医師としての取り組み
~在宅リハビリ中にがんサバイバーとなり在宅にて終末期を迎えた一症例~
速水 聰
医療法人社団 涓泉会 山王リハビリ・クリニック
【症例】
71 歳 男性
【診断名】
胃がん、胆嚢がん、骨髄異形成症候群
【併存疾患名】 小脳出血後遺症、右大腿骨頚部骨折術後、糖尿病、高血圧症
【現病歴】
☓-1 年 6 月
自宅にて転倒時に左橈骨遠位端骨折、第2腰椎圧迫骨折を受傷するも入院治療を希望
されず自宅に帰宅。受傷後約1か月半を自宅にて静養。徐々に動けなくなったため、
当クリニックの訪問診療・訪問のリハビリテーション(以下、訪問リハビリ)を申し
込まれた。
☓-1 年 7 月
当クリニックより往診。骨折による疼痛は認めず、下肢筋力 MMT3~4-、起立動作は
要介助レベル。下肢・体幹筋力の増強、基本動作の獲得、ADL 自立を目的として訪
問リハビリを開始。
☓-1 年 11 月
家族の希望にてかかりつけ医となる。同月の血液検査にて貧血、白血球増多、血小板
増多あり。定期的な血液検査を計画・実施。
☓年 2 月
大学病院血液内科を紹介受診。
☓年 3 月
大学病院にて骨髄異形成症候群、鉄欠乏性貧血と診断。同月に消化管出血が疑われた
ため入院加療。胃体部癌(stageⅣ)、胆嚢癌(stageⅣb)と診断。入院主治医の説明
と同意(以下、IC)にて本人・家族にがん告知、現状の Performance Status より化
学療法の導入は困難、Best Supportive Care の方針に決定。
☓年 4 月
家族の希望で自宅退院。IC に基づき終末期の在宅療養管理は家族の希望より当クリ
ニックが担当。訪問診療、訪問リハビリを再開。定期的な訪問看護も追加して終末期
医療・リハビリへ移行。
【リハビリ経過】
☓年 10 月
[当日供覧]
朝方に呼吸停止している連絡が家族より入り緊急往診、死亡診断。
【略歴】
慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院、慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター、市川市リハビリテー
ション病院、東京都リハビリテーション病院等に赴任後、平成 17 年より現職。地域のリハビリテーション科専門医とし
て在宅医療を中心に通所系サービスや訪問看護・リハビリと連携しながら、より良い在宅リハビリテーションを実践する。
シンポジウム 「在宅がんサバイバーに対するリハビリテーション」
PT としての取り組み
~当院における進行がん患者への外来理学療法の実情~
大隈 統
医療法人和会武蔵台病院 リハビリテーション部 理学療法士
【目的】
当院緩和ケア外来では、在宅生活の継続を目的とした外来理学療法が処方される。今回は、外来理学
療法の対象患者と理学療法の実施状況を振り返り、外来での理学療法の意義を検討した。
【方法】
平成 24 年 9 月から 26 年 3 月の間に当院緩和ケア外来を受診した 84 例において、外来理学療法を実
施した 14 例のうち、以下の項目について診療録で調査が可能であった 12 例を対象とした。平均年齢は
68.0±10.6 歳、性別は男性 6 例、女性 6 例、原発巣別では肺がん 7 例、大腸がん 2 例、胃癌と卵巣癌
と悪性黒色腫が各 1 例であった。調査項目は①処方目的、②初期の生活での移動方法、③理学療法実施
総単位数、④理学療法実施回数、⑤外来理学療法実施プログラムの種類、⑥外来理学療法による介入効
果、⑦理学療法処方から終了までの期間、⑧外来理学療法終了理由を調査した。
【結果】
①処方目的は疼痛軽減のための動作指導が 5 例、ADL 維持が 4 例、歩行能力維持向上が 3 例であっ
た。②初期の生活での移動方法は、屋外歩行可能が 1 例、屋内歩行が 9 例、車いす使用が 2 例であった。
③理学療法実施総単位数は 7.8±5.7 単位であり最小値は 2 単位、最大値は 22 単位であった。④理学療
法実施回数は、4.6±3.1 単位で最小値 1 回、最大値は 10 回であった。⑤外来理学療法実施プログラム
は全例で毎回の身体機能評価を行っている他、7 例で福祉用具の提案や導入、6 例で自主トレーニング
指導、3 例で動作指導、3 例で筋力強化、2 例で介助法指導、2 例で補装具の導入を行っていた。⑥外来
理学療法による介入効果は、2 例で歩行能力の向上、2 例で疼痛軽減、1 例で呼吸困難感の軽減を認め
旅行に行くことが出来た。活動能力に変化はないものの外来理学療法の継続を希望されたのは 4 例であ
った。2 例の効果は不明であった。⑦理学療法処方から終了までの期間は 52.1±64.0 日で最小値 1 日、
最大値は 229 日であった。⑧外来理学療法終了理由は、原疾患の悪化に伴う入院が 8 例、外来理学療法
のみの中断が 4 例であった。来室中断の 4 例はいずれも症状の増悪によるものであった。
【考察とまとめ】
がん患者に対する外来での理学療法については症例報告がほとんどでありどのくらいの症例が適応
となるかは明らかになっていないが、がん患者に対する啓蒙はまだ十分でないことを考えると今回の対
象例よりも適応は多く、緩和ケアを受けている症例の 20%以上の症例が適応になるのではないかと考え
られる。特に、呼吸器症状を伴いやすい肺がん患者や廃用性の歩行能力の低下をきたしている例が適応
となり、実施内容としては動作指導や筋力強化、介助や住宅改修指導が中心となると考えられる。今後
は維持期から緩和期の外来患者におけるより良いリハビリテーション実施方法の検討と共に、患者に対
してのがんリハビリテーションについての啓蒙活動を行っていく必要があると考えられた。
【略歴】
昭和 54 年 8 月生まれ。
平成 13 年に埼玉医科大学短期大学理学療法学科を卒業、埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション科に勤務。
平成 20 年 4 月から医療法人和会武蔵台病院リハビリテーション部に部長として勤務。武蔵台病院緩和ケアチームメンバ
ー。
理学療法学修士号、3 学会合同呼吸療法認定士、NST 専門療法士。日本緩和医療学会会員。
シンポジウム 「在宅がんサバイバーに対するリハビリテーション」
OT としての取り組み
~多様性ある在宅がんサバイバーへの支援~
佐治 暢
医療法人社団協友会 東大宮訪問看護ステーション 作業療法士
【はじめに】
近年、
「日本人の2人に1人ががんになる」と言われるように、がんは今では身近な病と言えます。
医療の発展に伴い早期診断や様々な取り組みによって治療技術が向上し、がんによる死亡率は減ってき
ました。対して、がんを手術で乗り越えた方、治療しながら社会生活を続けている方は年々増え、がん
の予防や治療だけでなく、今では多くの方ががんと共に生きる時代になりました。がんの術後の機能障
害を持ちつつ、またはがん治療をしながら在宅生活を送る方々(がんサバイバーシップ)に対する支援
の中でリハビリテーションの役割は大きく、今後益々求められていくと思われます。
【がんの術後の在宅生活】
がんを手術によって摘出し、根治を目指していく方の後遺症は様々です。開胸・開腹術後は消化管の
動きにくさや消化能力の変化によって体の不調を起こし生活能力の低下を起こしたり、術創の癒着によ
る皮膚のひきつれ、痛み、しびれ感が残存したり、在宅では長期にわたって辛い状況が残ることもしば
しばです。また、リンパ浮腫が出現して長い人生をケアに追われる方、術後の神経障害によって ADL
能力が大きく低下する方もいます。手術をしたら元の生活に戻れると思っていたとおっしゃる対象者は
非常に多いですが、実際は介助が必要になることも多く、福祉機器などを使って生活スタイルを大きく
変えなければならない場合もあります。
【がん治療を続けながらの在宅生活】
今では通院によって化学療法を受けることも可能になり、大きな体調変化を定期的に乗り越えながら、
仕事や社会生活を送っている方も多くなりました。多くの不快な症状や骨髄抑制の時期の外出の制限
等々、どのように工夫して生活していくか、家族・ケアの担当者はどのように支えていくのかを検討す
ることが非常に重要で、ここにもリハビリテーションの眼が必要とされています。
【まとめ】
がんサバイバーシップにおいて、在宅生活・社会生活を送るためには理解ある医療者・関係者の支援
が非常に大切です。術後や化学療法中に生じる症状は、このまま生活していけるだろうか、治療を続け
られるだろうかと対象者や家族に大きな不安をもたらします。その状況にきめ細かく応え、生活を安定
させるためには地域の専門職種のチームによる支援が大切です。医療と社会・福祉の橋渡しをするため
にもリハビリテーションは大きな役割を担っています。
在宅におけるリハビリテーションの現状を報告し、今後必要とされるサービスの在り方を検討する機
会になれば幸いです。
【略歴】
平成 13 年国際医療福祉大学保健学部作業療法学科を卒業。医療法人社団協友会東大宮総合病院リハビリテーション科に
勤務、平成 17 年同法人東大宮訪問看護ステーションに異動。以後、在宅のがん、難病、重度障害、小児など医療依存度
の高い利用者のリハビリテーションを担当している。
認定訪問療法士、ケアマネージャー資格、慶應義塾大学医学部がんプロフェッショナル養成プラン・インテンシブコース
修了。埼玉県作業療法士会訪問リハ担当理事。日本緩和医療学会会員。
シンポジウム 「在宅がんサバイバーに対するリハビリテーション」
ST としての取り組み
菅田 隆弘
大垣市民病院リハビリテーションセンター
われわれSTが関わるがんリハビリテーションには発声・構音障害や嚥下障害、高次脳機能障害によ
るコミュニケーション障害がある。
口腔がん、舌がん、咽頭がん、喉頭がん、脳腫瘍においては大きな侵襲を伴う外科手術が行われるこ
とが多く、術直後には気管切開による発声障害や嚥下障害、安静による廃用低下や体力消耗による離床
の遅れなど様々な問題を抱えるケースも少なくない。当院では可能な限り、術前より上記のようなケー
スに関してはSTが介入し、術後早期よりリハビリテーションを施行している。
今回は喉頭全摘出後の代用音声訓練におけるSTとしての取り組みを報告させていただく。
喉頭全摘出術とは喉頭を甲状軟骨、輪状軟骨とその周辺の筋肉や場合によっては甲状腺を含めて摘出し
永久気管孔となるため音声機能が損失される術式であり、術後には代用音声が必要となる。代用音声に
は電気式人工喉頭発声や食道発声、シャント発声がありそれぞれ長所と短所があるため、選択にはがん
の進行度や術式に応じて、また生活環境や年齢、発声へのモチベーション等を考慮した代用音声をすす
める必要がある。患者にとって有効でより活用しやすい代用音声をすすめることが重要であり 1 度や 2
度ではなかなか決まることができなく、継続的な関わりが必要であると考え入院中のST介入だけでな
く退院後、外来にて長期に渡り関わっている。
結果、シャント発声においてプロヴォックス調整がうまくいき再び代用発声が可能となった例や 2 種
類を併用しながら使い分けることによってコミュニケーションがスムーズにいった例などがあった。
がん治療を乗り越え、
「その後」を生きていくのに音声でのコミュニケーションが可能となれば豊かな
生活を取り戻す大きな 1 歩となる。
当日のシンポジウムではがんサバイバーに対する当院でのSTの関わりの紹介と症例紹介、発声障害
や構音障害などに対する問題点や課題などについて報告する。
【略歴】
平成 12 年
川崎医療福祉大学感覚矯正学科言語聴覚専攻卒業
平成 12 年より和光会 山田病院リハビリテーション科
平成 14 年より大垣市民病院リハビリテーションセンター
平成 24 年 摂食嚥下障害領域 認定言語聴覚士
シンポジウム 「在宅がんサバイバーに対するリハビリテーション」
看護師としての取り組み
~外来でのリンパ浮腫ケアの実際と今後の課題~
堀 真理子
田端 聡
松尾千穂
宇津木久仁子
公益財団法人 がん研有明病院 リンパ浮腫治療室
リンパ浮腫は「完全に予防すること」
「発症すると根治すること」は困難であり、重症化すると日常
生活に支障をきたす場合もある。そのため、リンパ浮腫の早期発見と重症化の予防が重要である。現在、
リンパ浮腫ケアに関わる診療報酬等はリンパ浮腫指導管理料(入院中・退院後外来で各 1 回)
、四肢リ
ンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給(支給限度額あり)があり、前者のリンパ浮腫指
導は医療者がリンパ浮腫に対して積極的に介入できる機会でもあり、患者もリンパ浮腫を知る機会でも
ある。
当院では 2009 年 1 月よりリンパケアルームで自費診療を行っている。その内容は、状態に応じたセ
ルフケアや家族指導、圧迫療法の選択、MLD の実施等である。2009 年 1 月~2010 年 7 月までのリン
パケアルーム初診 622 名のうち婦人科疾患術後(骨盤リンパ節郭清後)319 名のリンパ浮腫発症時期を
調べると、術後 1 年以内が 47%であった。中央値は 9 か月、術後 10 年以上経過しての発症は 3%だっ
た。このことから術後 1 年を一つのポイントとして捉えている。また、2011 年に婦人科でリンパ節廓
清術を受けた全患者の術後 1 年のリンパ浮腫発症率を調べたところ、全体では 26.6%であったが、抗が
ん剤の追加治療を受けた群では 36.8%、追加治療無群では 16.3%であった。追加抗がん剤治療がある
患者においては特に注意を要することがわかる。更に手術直後から、ドレナージを取り入れた介入有群
と介入無群に分けた調査では術後 1 年のリンパ浮腫発症に有意差はなかった。
リンパケアルーム初診時の病期分類(国際リンパ学会)はⅡ期前期が約半数を占めているが、発症の
不安を抱えている患者や重症化した患者、0 期~Ⅲ期に至るまで様々であり、相談内容や要する治療・
期間は同一ではない。これは、患者の生活スタイルや医療者の介入状況にも左右されていると考える。
以上のことから、リンパ浮腫の早期発見と重症化予防のためには、入院中、退院後各 1 回のリンパ浮腫
指導だけでは十分とは言い難い。発症時期として多く、治療経過にもよるが徐々に日常に戻りつつある
術後 1 年に改めて指導する機会を設けることは有効なのではないかと考えられる。また、リンパ浮腫は
長期化するため、リンパ浮腫治療の中心はセルフケアとなる。いつでも安心して生活していただけるよ
うに院内はもちろんのこと、どこの医療施設であっても在宅であっても相談や治療を受けられる環境が
望まれる。そのためにも、メディカル・コメディカルがチームとしてリンパ浮腫治療を取り組めるシス
テム作りが課題であると考える。そして、今後の保険収載動向にも注目したい。
【略歴】
1988 年 成田赤十字看護専門学校卒業千葉県救急医療センター勤務
1999 年 国立病院機構千葉医療センター勤務
2005 年 Vodder 式 MLDcertificate 取得月 2 回広田内科クリニック勤務
2009 年 1 月 がん研有明病院リンパ浮腫治療室勤務
ライブ・カンファレンス「骨転移例に対するリハビリテーション」
脊 椎
~多職種で関わり、本人の希望通り杖歩行にて自宅退院できた乳癌多発骨転移の一例~
佐藤 恭子
昭和大学リハビリテーション医学講座
【症例】50 代女性。X-4 年乳房腫瘤を自覚するも放置。X 年 Y 月左下肢脱力と腰痛で起居困難な状況で
当院腫瘍内科へ入院した。頸椎から腰椎にかけて乳がんの多発骨転移を認め、腰椎転移の神経圧迫によ
る左下肢不全麻痺と考えられた。化学放射線療法と緩和ケアチームによる疼痛管理の開始とともにリハ
科依頼となり、ベッドサイドから理学療法を開始した。頸椎カラーと体幹コルセットの作製後に起居・
坐位訓練を開始し移乗動作まで進めたが、自宅での車椅子の使用は家人に迷惑をかけたくないと本人が
受け入れず離床が進まなかった。リハ科医師が緩和ケア回診に同行するなど精神面のサポートをしなが
らリハ訓練を進めた。骨への負荷を整形外科医師と検討した上で、Y+3 月訓練室での歩行訓練を開始し
下肢筋力向上につれて杖歩行可能となり、本人の希望通り一人でのトイレ動作も可能となった。Y+4
月ケアマネジャー・在宅介護スタッフと退院前カンファレンス行い、膝折れによる転倒の危険性やコル
セットの管理を確認した後に自宅退院となり、外来化学療法継続となった。
【考察】本症例は自宅退院を強く希望していたが、病状の受け入れができず、また家人に迷惑をかけた
くないとの想いもあり車椅子の使用や介護保険サービスの導入を拒否していた。しかし、緩和ケアチー
ムや病棟スタッフ、関係診療科と話し合いを重ね、精神面のケアをすることで患者はリハに対して前向
きとなり、リハ効果は向上、在宅生活準備も整い退院できた。リスクの高いがん患者の希望を叶えるた
めのリハには多職種の関わりが重要であることを示す症例と考える。
なお、本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究である。
【略歴】
2001 年 3 月筑波大学附属病院
医学専門学群卒業
2001 年 4 月筑波大学附属病院
小児科、2003 年 7 月川崎市立川崎病院
2005 年 4 月川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター
2013 年 11 月昭和大学病院
資格
リハビリテーション医学講座
総合診療科
緩和ケア内科
助教
日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本緩和医療学会 緩和医療専門医、日本プ
ライマリ・ケア学会プライマリケア認定医指導医
ライブ・カンファレンス「骨転移例に対するリハビリテーション」
上 肢
~上腕骨病的骨折症例に対するリハビリテーション~
近藤 絵美
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院
【現病歴】70 歳代男性。10 か月前に腎癌(T1bN0M0)と診断され、7 か月前に左腎摘出術を施行され
た。
2 か月前より左上腕に疼痛を生じ、1か月前に当院整形外科受診。単純 X 線にて左上腕骨近位骨幹部
に長軸方向 59mm の溶骨性変化を認めた。腎癌による左上腕骨骨転移であり切迫骨折の状態と判断さ
れ、髄内釘固定術を計画された。手術待機期間中に明らかな誘因なく病的骨折へ至り、入院。髄内釘固
定術施行された。
【既往歴】直腸癌の既往あり、1 年 8 か月前に大腸切除術を施行された。
【手術所見と術後経過】上腕近位外側からのアプローチにて腫瘍掻爬。その後、上腕骨近位から透視下
に 8mm 径の髄内釘挿入、近位・遠位それぞれに横止めスクリュー刺入した。骨欠損部にはセメントを
充填。
術後経過良好であり、放射線治療(30Gy/10 回分割照射)を施行された。
【作業療法評価】術翌日より作業療法開始。荷重禁止、三角巾固定 4 週間、可動域練習許可の指示あり。
初診時、左上腕術創部と棘上筋部に疼痛あり、安静時 Numeric Rating Scale(以下 NRS)4/10、運
動時 6/10。左上腕全体に腫脹・熱感を認めた。関節可動域は他動にて肩関節屈曲 90°外転 80°、肘関
節屈曲 95°伸展 0°。ADL は右手を使用して自立。Performance Status(以下 PS)は 2 であった。
術前 PS は 0。妻との二人暮らしであり、農業に従事。自治会や組合などの役員を務め、自動車を運
転して外出する機会も多かった。
【目標】両手での ADL 遂行、自動車運転・社会活動への復帰を目標とした。
【作業療法経過】術創部の疼痛強く、創部周囲筋のマッサージやストレッチ、他動での可動域練習を重
点的に実施。自主練習として自動介助での可動域練習を指導。
術後 2 週時点では、疼痛は安静時 NRS1/10、運動時 4/10 へ改善。可動域は肩関節屈曲他動 140°自
動 40°外転 130°自動 30°。肘関節屈曲自他動 130°伸展 0°まで拡大。ADL は変わらず、右手を使
用して自立。
【考察】本症例は術前の活動状態が良好であり、片桐らによる生命予後の予測では予後スコア 2/10 点
で 1 年での生存率は 90%程度と予測された。
がんのリハビリテーションガイドラインにて、内固定術を施行することで疼痛や歩行能力・ADL が
改善するため手術を行うよう勧められており(推奨グレード B)、本症例も結果的には病的骨折まで至
ったが、積極的な手術適応であったと考える。術後に放射線療法を併用し、さらに術直後より積極的に
作業療法を施行して疼痛改善と可動域拡大を図ることで ADL や社会参加などの IADL が再獲得でき、
QOL の向上も期待できるだろう。
【略歴】
亀田総合病院リハビリテーション室
作業療法士
2004 年千葉県立医療技術大学校(現千葉県立保健医療大学)卒業後、亀田総合病院入職。主に急性期の脳血管疾患や回復
期リハビリテーション病棟での勤務を経て、現在は固形がん・造血器がん患者の回復~緩和的リハビリテーションに従事
している。
ライブ・カンファレンス「骨転移例に対するリハビリテーション」
下 肢
高橋 雅人
東京大学医学部附属病院
【症例】60 歳代後半の男性、2 階建の戸建に専業主婦の妻と二人暮らし。子供 2 名は同市内、隣接市内
で別居。50 歳代まで会社員、介入時無職。
【診断名】右腎細胞癌 多発内蔵転移(左副腎、脾臓〜後腹膜、横行結腸、S 状結腸) 多発骨転移(骨
盤、両大腿骨、右腓骨、左距骨)
【現病歴】
X-2 年 10 月 右腎細胞癌に対し、根治的右腎摘出術
X 年 7 月 黒色便+ 経過観察 同月中旬 両下腿~大腿部疼痛
X 年 9 月 再度黒色便+ K 病院紹介受診 右腸骨大腿骨溶骨、横行結腸転移+
X 年 10 月 当院入院 骨転移ボードコンサルト
【評価】主訴:トイレに行けないのがつらい。疼痛:腹痛(副腎、後腹膜、結腸転移)、両大腿部違和
感。ROM:洋式生活に支障を来すような制限は無し。筋力:麻痺等無し。下肢 MMT 概ね 3 以上。上
肢 PushUp 可能(あえて下肢の最大 ROM、MMT は測定せず)
。
【経過】
入院時、多発骨転移認めた。特に荷重に関わる骨転移として、両大腿骨・左距骨は切迫骨折のため、
骨転移ボードより荷重禁止の指示があり、安静度は床上のみであった。同時にリハ介入要請あり、完全
免荷での車椅子移乗方法を指導した。
X 年 10 月末 左右大腿エンボリ+髄内釘挿入術施行。
X 年 11 月中旬から両大腿骨に放射線照射実施。当初、髄内釘術後 2 週間程度で杖歩行程度での自宅
退院を想定したが、ロフストランド杖歩行後に遅発性の大腿部痛出現することがあったため、目標免荷
量を左右とも体重の 1/2(1/2PWB)までと定め、自宅退院の方法を模索した。下肢荷重測定装置
(MP-100;アニマ社製)を両足底に装着し、荷重計測しながら 1/2PWB で想定しうる各 ADL 動作が
行えることを一つ一つ確認していった。車椅子と PickUp 歩行器を併用することで 1/2PWB 程度での動
作が可能になった。
X 年 12 月初旬 医師、看護師、理学療法士、ソーシャルワーカー等の病院側医療スタッフに加え、
事前に自宅訪問を行った介護事業所職員、ケアマネージャーも交え、退院支援カンファレンスを実施し
た。その後も家屋内外の写真や、家屋改修図面のやり取りを行いつつ、自宅内で行うであろう動作のシ
ミュレーションを重ねた。
X 年 12 月下旬家屋改修完了後、
自宅退院となった。退院後は mTOR 阻害薬静注のため週 1 回通院し、
自宅での動作についても外来医師・看護師が確認した。
X+1 年 2 月 嘔気、食事摂取困難、腹痛のため、緊急入院。緊急入院の 6 日後、多臓器不全のため死
去。
【略歴】
1987 年
群馬大学医療技術短期大学部理学療法学科卒業
1987 年
東京大学医学部附属病院整形外科理学療法室
1994 年
東京電機大学工学部電子工学科卒業
1999 年
日本大学大学院理工学研究科修士課程修了
2003 年
東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 理学療法主任
2004 年
同病院
2010 年
専門理学療法士(運動器)ならびに、専門理学療法士(生活環境支援理学療法)取得
リハビリテーション副技師長
セッションⅠ 演題 1
座長:田沼 明(静岡県立静岡がんセンター)
同種造血幹細胞移植後の生活における移動能力に関する検討
◯米永悠佑 1)・簑田和樹 1)・高瀬
井上順一朗(神戸大学医学部附属病院)
謙 2)・山崎聡 2)・河野健太郎 2)・門脇賢典 2)
1)国立病院機構九州医療センター リハビリテーション部 2)同 血液内科
【はじめに】同種造血幹細胞移植に対するリハビリテーションの先行研究では、退院後長期間の身体機能の変化について検
討したものは少ない。本研究では同種造血幹細胞移植における退院後の生活における移動能力と移動能力に影響を与える因
子について検討したので報告する。
【方法】対象は、当院血液内科にて同種造血幹細胞移植を受け、平成 26 年 4 月から同年 10 月までに造血幹細胞移植後リハ
ビリ follow up 外来で身体機能評価が可能であった 13 例(平均年齢 46.15±17.79、男性 8 名/女性 13 名、移植後 3 カ月 7 名
/12 カ月 4 名/24 カ月 2 名)。評価項目は移動能力として FACHS(Functional Ambulation Classification of the Hospital at
Sagunto)、身体機能として握力・下肢筋力(大腿四頭筋力/体重)
、また医学的情報をカルテより抜粋した。FACHS を 2 群(3
以下;活動範囲に制限あり、4 以上;活動範囲に制限なし)に分け、移植後日数、移植から生着までの日数、移植後在院日数、
年齢、筋力、BMI について比較した。
(有意水準 5%未満)
【説明と同意】対象者には文書に沿って口頭で説明し、同意を得た。
【結果】評価時期は移植後平均 288.77 日、移動能力は FACHS3 以下が 8 例、FACHS4 以上が 5 例であった。FACHS の 2
群間の比較では、すべの項目において有意差を認めなかったが、高齢、慢性的な合併症有する場合では移動能力が低くなる
傾向を認めた。
【考察】移植後長期間経過していても生活の中での移動能力低下を認め、入院中のリハビリテーションおよび退院後の自然
回復または自主訓練のみでの回復は不十分であると考えられる。退院後の生活における移動能力に影響を及ぼす因子につい
て明確することはできなかった。生活の中での移動能力は、身体機能以外に精神状態、栄養状態、社会背景、慢性的な合併
症の状況などが影響すると考えられ、身体機能についても筋力だけでなく持久力など、包括的な評価が必要であると考えら
れる。
セッションⅠ 演題 2
座長:田沼 明(静岡県立静岡がんセンター) 井上順一朗(神戸大学医学部附属病院)
予防的リハビリテーションによる早期退院支援で自宅退院に至った超高齢悪性リンパ腫患者の一例
◯小泉浩平 1)・鈴木真弓 1)・安井真理香 1)・大木原徹也 1)・佐藤茜 1)・高橋直樹 2)・牧田茂 3)
1)埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター 2)同
造血器腫瘍科 3)同 心臓リハビリテーション科
【はじめに】悪性リンパ腫患者は、治療薬の進歩で超高齢者に対しても積極的な化学療法が選択され、近年は QOL 向上や在
宅復帰への対応が課題である。しかし、在宅を目指す一方で、リハビリテーション(以下リハビリ)および退院支援に関する報
告はほとんどない。今回、超高齢患者に治療を行い、自宅退院に至った症例を経験したので報告する。なお、本研究はヘル
シンキ宣言に沿って計画され、対象者には本研究の趣旨を説明し同意を得て実施した。
【症例】80 代女性。息子と 2 人暮らし。主訴:右腰部~右下肢痛。現病歴:右下肢腫脹で血液検査を行い、悪性リンパ腫が
疑われ入院。入院時 Motor FIM47/91 点。Cognitive FIM25/35 点。MMSE:23/30 点。経過:入院後 11 日目 CHOP(PSL
抜き)療法 1 コース目を開始。骨髄抑制期前は連続歩行が 150m 以上可能で、居室内 ADL も自立(PS1)していたが、骨髄抑制
期には右下肢の浮腫が憎悪し歩行距離が 20m と著明に低下。臥床傾向で ADL の低下(PS3)も認めた。また、骨髄抑制期のリ
ハビリ介入は廃用防止を目的に筋力強化練習に努めた。その後は、CHOP(PSL 抜き)療法 2~4 コースを実施。骨髄抑制期は
副作用症状が強く、食思不振となり PS 低下を認めるなど副作用症状を複数認め、リハビリはその都度練習を調整し看護師と
ADL 状況の確認、体力低下防止に努めた。治療終了後、自宅退院の際には家事動作まで確認し、入院から 3 ヶ月後独歩自立
し自宅退院に至った(PS1)
。退院時の Motor FIM89/91 点。Cognitive FIM35/35 点。MMSE:28/30 点。
【考察】超高齢の造血器腫瘍患者は、PS 悪化および認知機能低下を認める傾向があるとされ、加齢に伴う免疫能低下で治療
後の副作用が遷延するとの報告もある。しかし、治療に伴う副作用、PS 低下に配慮した上での予防的リハビリは、超高齢患
者にも有効で、自宅退院を早期から考慮した在宅復帰訓練が可能となると考えられた。
セッションⅠ 演題 3
座長:田沼 明(静岡県立静岡がんセンター)
悪性リンパ腫患者に対する短時間高頻度リハビリ介入の効果について
井上順一朗(神戸大学医学部附属病院)
◯笠原龍一 1)・神保良平 1)・渡邉紗耶加 1)・藤田貴昭 2)・小野部純 3)・山本優一 1)・甲斐龍幸 4)
1)北福島医療センター リハビリテーション科 2)東北福祉大学 リハビリテーション学科
3)東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法専攻 4)北福島医療センター 血液内科
【はじめに】造血器腫瘍患者は長期の入院を要し、高度の血球減少による易感染性や貧血などから身体活動範囲が制限され
ることが多い。そのため廃用を呈し、退院後の日常生活に支障を来たす患者を多く経験している。入院中からリハビリテー
ション(以下リハビリ)を実施することが有効であるとされているが、適切なリハビリの介入期間や頻度は明確ではない。今回、
悪性リンパ腫患者に短時間高頻度のリハビリ介入を行い、身体機能低下の予防的効果を検討した。
【対象】悪性リンパ腫の女性 4 例(年齢 55±5 歳、身長 157.5±5.9 cm、体重 52.5±2.5 kg)であった。入院期間は 121.2±37.3
日であり、全症例とも化学療法を実施した。なお、本研究はヘルシンキ宣言に基づいて行った。
【方法】治療日を除いた週 6 日、1 日 20 分実施し、内容は主に自転車エルゴメーター(10 分)を用いた持久力訓練と筋力訓練
とした。運動負荷は Borg 指数 13 を目安に実施した。身体機能評価は、6 分間歩行距離(以下 6MD)、膝伸展筋力、握力をリ
ハビリ介入初回時と退院時に測定した。なお、筋力は両側の平均値を代表値とした。
【結果】リハビリ実施日は 47.5±4。7 日、実施率は 99.5±0.8 %であった。6MD は初回時 474.2±13.8 m、退院時 570±21.2
m、握力は初回時 20.8±3.6 kgf、退院時 21.7±1.4 kgf、膝伸展筋力は初回時 22.0±1.3 kgf、退院時 24.5±2.8 kgf であった。
【考察】今回、20 分の短時間でも週 6 日の高頻度なリハビリ介入で 6MD の向上と筋力維持が可能であった。これは、血球
減少により制限された活動範囲の中でも継続的な運動を実施できたためと考える。入院期間中に生じる筋力低下や持久力低
下は、退院後のスムーズな社会復帰を阻害する要因となり得るため、より効果的な介入強度や頻度などを検討していきたい。
セッションⅠ 演題 4
座長:田沼
入院中の血液がん患者が抱える問題点の探索
◯石井
瞬 1)・中野治郎 2)・夏迫歩美 1)・坂本淳哉 2)・神津
明(静岡県立静岡がんセンター) 井上順一朗(神戸大学医学部附属病院)
玲 1)・沖田
実 3)
1)長崎大学病院 リハビリテーション部 2)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 理学・作業療法学講座
3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 リハビリテーション科学講座 運動障害リハビリテーション学分野
【はじめに】血液がん患者の化学療法は有害事象が顕著に出現しやすく、また、治療は長期におよび、易感染性により活動
範囲が制限されることもある。そのため、他科がん患者と比べ、血液がん患者では身体機能と活動量の低下に加えて精神症
状が進行しやすいのではないかと懸念される。そこで本研究では、リハビリテーション(以下、リハビリ)介入時に血液が
ん患者の身体機能、活動量、精神症状を調査し、他科がん患者と比較することにより血液がん患者が抱える問題点を探索し
た。
【方法】対象は、2012 年 8 月から 2014 年 10 月までに化学療法を目的に当院に入院し、リハビリを実施したがん患者 85 例
である。調査はリハビリ介入時に行い、評価項目は握力、膝伸展筋力、10m 歩行速度、TUG、全身倦怠感(CFS)、心理面
(HADS)、ADL(FIM)
、身体活動量とした。調査結果の解析では、疾患名に基づき対象を血液がん患者 39 例と他科がん患
者 46 例に振り分け、両者を Mann-Whitney の U 検定(有意水準 5% 未満)を用いて比較した。なお、本研究は所属施設の
臨床研究倫理委員会で承認を受けた後(承認番号 12092419)
、対象者の同意を得て実施した。
【結果】他科がん患者と比較して、血液がん患者では HADS(不安)が有意に高値を示し、また身体活動量は有意に低値を
示した。その他の身体機能、全身倦怠感、ADL においては血液がん患者と他科がん患者の間に有意差は認められなかった。
【考察】今回の調査の結果では、血液がん患者はリハビリ介入時にすでに身体活動量が低下し、精神症状が増悪していた。
つまり、血液がんの入院期間は長期に及ぶため、その状態からさらなる身体活動量の低下を招くといった悪循環に陥る危険
性が伺われ、これが血液がん患者の問題点の一つであると予測される。この点を考慮して血液がん患者のリハビリ介入に取
り組むべきであり、特に身体活動量を維持向上させることが重要であると考える。
セッションⅠ 演題 5
座長:田沼 明(静岡県立静岡がんセンター) 井上順一朗(神戸大学医学部附属病院)
急性骨髄性白血病に対し骨髄移植を施行された患者の理学療法介入の経験
◯保坂雄太郎 1)・佐藤恭子 2)・依田光正 2)・水間正澄 2)・及川雄司 1)・齋藤文護 3)
1)昭和大学病院 リハビリテーションセンター 2)昭和大学医学部 リハビリテーション医学講座 3)同 内科学講座 血液内科部門
【はじめに】急性骨髄性白血病(AML)患者に対する造血幹細胞移植(HSCT)では、治療や活動制限のため筋力や運動耐
容能の低下が生じ、退院後の社会生活に支障をきたす事がある。近年は理学療法による改善効果が報告されており、当院で
は 2014 年 7 月から HSCT 患者に対する理学療法を開始した。今回、移植前から退院まで介入した症例を検討し、今後の介
入方法について考察した。
【対象と方法】本研究はヘルシンキ宣言に沿って行った。対象は AML で骨髄移植を施行された 30 代男性。移植後から退院
までの期間に、週 2~3 回、20~40 分/日のストレッチ・筋力訓練・バランス訓練などの基本的訓練を実施し、Berthel Index
(BI)
、Performance Status(PS)
、大腿四頭筋筋力、6 分間歩行距離(6MD)などの評価を行った。
【結果】移植前は筋力や機能的にも問題なく、BI100 点、PS0 点であったが無菌室に入室した後、移植と同時に倦怠感、め
まいなどの自覚症状が出現したため活動性、筋力は低下した。無菌室退室(移植後 18 日)以降も BI80 点、PS3 点(移植後
34 日)まで低下した。その後、自覚症状が軽快すると、退院時には BI100 点、PS1 点まで回復し 6MD も増加した。しかし、
大腿四頭筋筋力は退院までに軽度の改善は見られたが筋力低下は残存し、階段や床からの立ち上がり動作に努力を要する状
態であった。
【考察】BI、PS、6MD などの活動性は改善したが、退院時に筋力低下は残存した。HSCT では、体調不良や食事量減少に
よる活動性低下、活動範囲の制限などから必然的に筋力低下が生じるが、今回は通常の筋力訓練を行っていても低下が避け
られなかった。このことから、HSCT 患者には移植前からの積極的な訓練や、より ADL に即した動作訓練などの活動性の低
下している時期にも効果的に行える訓練を考える必要がある。
セッションⅠ 演題 6
座長:田沼 明(静岡県立静岡がんセンター) 井上順一朗(神戸大学医学部附属病院)
造血幹細胞移植を行った急性骨髄性白血病患者に対する理学療法の経験
~血液所見における中止基準に着目して~
◯由利
真 1)・生駒一憲 2)
1)北海道大学病院 リハビリテーション部 2)同
リハビリテーション科
【はじめに】がん患者におけるリハビリテーションの中止基準の血液所見としては、白血球数 3、000/μl 以下、ヘモグロビ
ン値 7。5g/dl 以下、血小板 50、000/μl 以下などが代表的である。今回、造血幹細胞移植前後の理学療法を行い、血液所見
単独の中止基準を満たしていても良好な経過が得られた急性骨髄性白血病患者を経験した。本報告の目的は、急性骨髄性白
血病患者に対する理学療法実施内容と血液所見における中止基準に着目して、理学療法実施の際の留意点について再考する
ことである。
【症例】急性骨髄性白血病を再発した 40 代の女性。
【主な検討事項】再発後の 2 度目の造血幹細胞移植前後の理学療法実施内容と血液所見について検討した。本報告はヘルシ
ンキ宣言に基づき、被験者の自由意思による同意を得た。
【経過】理学療法開始時の関節可動域と筋力は正常、Barthel Index は 100 点であった。入院中の 82 回の理学療法の予約に
対して中止となったのは 6 回で、移植日を含めて移植後の中止はなかった。経過中の白血球数は 100~8,600/μl、ヘモグロ
ビン値は 4.6~11.9g/dl、血小板 11,000~208,000/μl であった。白血球が 100~200/μl 程度の期間、ヘモグロビン値の急激
な低下などがみられた。この場合は無菌室や病棟で理学療法を実施する、バイタルサインの変化や自覚症状を確認する、理
学療法内容の変更などの対応が必要であった。理学療法の内容は、筋力増強運動やバランス運動、全身持久力運動を基本と
した。退院時の関節可動域と筋力は正常、Barthel Index は 100 点であった。入院期間は 129 日、移植後 64 日で退院となっ
た。
【考察と結論】造血幹細胞移植前後の理学療法実施の可否については、一部の中止基準のみで決定するのではなく総合的に
判断する必要があると考えられた。
セッションⅡ 演題 7 座長:村岡香織(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学講座) 増島麻里子(千葉大学大学院看護学研究科)
がん患者を支える作業療法士の役割 ~当院での特徴と動向の報告~
◯徳山未希子・森本小百合・橋本伸之・池田
聖児・吉川正起・島
雅晴・伊藤久美子・加藤祐司・橋田直
大阪府立成人病センター リハビリテーション科
【はじめに】がんサバイバーが 500 万人を超える今日、治療を受けながら生活能力を維持していく必要性が高まっており、
リハビリ介入も増えていくことが予想される。当院は都道府県がん診療連携拠点病院の指定を受けており、がんリハ開始後
の作業療法(以下 OT)の特徴や動向を後方視的に調査したので報告する。
【方法】Ⅹ年/1/1~Ⅹ+1 年/9/30 で依頼のあった 527 例を対象に、依頼科別、OT 施行回数、Dietz のがんリハ分類、OT 練習
内容、転帰を調査した。本研究はヘルシンキ宣言に基づき患者の同意を得た。
【結果】依頼の多かった 4 科は耳鼻科(46%)、乳腺外科(19%)、脳神経外科(10%)、整形外科(8%)であった。施行回数は平均
13 回(術前・術後評価のみの介入は除く)。がんリハ分類は予防的リハ 60%、回復的リハ 19%、維持的リハ 16%、緩和的リ
ハ 5%。OT 練習内容については、頭頸部癌術後副神経麻痺に対する肩関節可動域練習や疼痛緩和 43%、乳がん術後の肩関節
拘縮予防や ADL 指導 19%、脳腫瘍患者への片麻痺や高次脳機能障害に対する機能回復、ADL 動作練習 10%、骨軟部腫瘍患
者への機能回復、ADL 動作練習 8%が多くを占め、他、緩和期における苦痛や疼痛緩和などの対応、気分転換を兼ねた作業
活動提供などであった。転帰は退院 83%、転院 13%、死亡 4%となった。
【考察】当院の特徴としては、頭頸部癌や乳癌において、術後の二次障害予防を目的に術前からの介入を実施しているため、
予防的リハが半数以上を占める。転帰からは 80%以上が退院していることがわかり、術後早期からの積極的な運動機能維持
改善や ADL 能力の向上、同時に環境整備や退院時自宅訪問など OT の役割は重要だと考える。今後は、集学的治療の進歩に
よる生命予後の延長から、がん治療をしながら生活能力を維持していく必要があり、より生活に密接して関われる OT の役
割は重要となる。
【まとめ】今回、当院での OT の特徴や動向を調査した。今後はさらに、多面的視点を持った OT の特性を活かせるよう努め
ていく。
セッションⅡ 演題 8 座長:村岡香織(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学講座)
がん終末期患者へのシームレスな関わりを目指して
増島麻里子(千葉大学大学院看護学研究科)
三原絵美
たたらリハビリテーション病院 リハビリテーションセンター
【はじめに】がんの病状進行に伴い、在宅-外来-入院と生活場所が変化する場合が多いが、その都度、医療介護スタッフ
が変わるため患者や家族の希望に合わせた一定した関わりが難しいと感じる。そのような状況を改善し、同一スタッフによ
るシームレスな関わりができるように入院・外来・訪問の全てでリハビリテーション(以下リハ)を行う事ができる部門を
作ったので報告する。尚、本研究は倫理的配慮を行った。
【方法】メンバーは PT3 名、OT1 名、ST1 名。活動内容は①緩和ケア病棟②外来③訪問。
①緩和ケア病棟:21 床のうち 2013 年度リハ月末処方数は 18。8 処方(89.5%)
。自宅退院希望がある場合は家屋調査を行い
退院前カンファレンスにも参加し、退院後も同一スタッフが外来リハ、訪問リハを行う。②外来:廃用改善や浮腫治療を行
う。外来通院が困難になる可能性がある場合には事前に主治医に訪問リハを提案し、スムーズな移行を目指している。③訪
問:緩和ケア外来管理の患者を対象に実施。月~金曜 1 件あたり 60 分。1 日最大 2 件。週 1 回~毎日で頻度調整している。
終末期患者では病状の変化が大きいため、診療録を詳細に記載することや、多職種との情報共有を意識して行っている。リ
スク管理では症状や薬剤、方針について医師から詳しく情報収集し、緊急連絡先、搬送先の確認は徹底している。
【結果】2012 年 10 月~2014 年 11 月に外来・訪問-入院に関わった患者は 24 名。そのうち、訪問リハを行った患者は 14 名
であった。
【まとめ】病状が進行する中でも自宅で過ごす患者、家族は不安な気持ちを持っていると思われる。そのような状況に対し
て、病状の変化や自宅環境を把握している同一スタッフが関わる事で多職種の橋渡しができ、患者・家族の希望にあわせた
シームレスな関わりができる。それは短期間の在宅生活と予測された場合は、特に意義が大きいと思われた。
セッションⅡ 演題 9 座長:村岡香織(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学講座)
当院の緩和ケア棟におけるリハビリテーションの現状
増島麻里子(千葉大学大学院看護学研究科)
◯榎木大介 1)・細山田千春 1)・小川達也 1)・丸田恭子 1)2)・廣津泰寛 3)
1)国立病院機構 南九州病院
リハビリテーション科 2)同 神経内科 3)同 呼吸器外科
【はじめに】当院は呼吸器内科・外科、外科を中心としたがん拠点病院である。当院の緩和ケア棟のリハについて症例紹介
をまじえて報告する。
【対象】2014 年 4 月から 10 月までに緩和ケア棟でリハ実施した患者。
【方法】原発巣、入院日数、リハ介入期間、リハ開始までの日数、リハ総単位数、転帰、介入時 Dietz の分類、介入時 PS を
カルテから後方視的に調査した。
【説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言に則り、患者および患者家族への説明と同意を得ている。
【結果】結果は 13 名、平均年齢 75.5 歳、原発巣は消化器系 1 例、血液のがん 2 例、呼吸器系 5 例、泌尿器系 5 例、入院日
数平均 76.3 日、リハ介入期間平均 40.7 日、リハ開始までは平均 26.3 日、リハ総単位数平均 12.3 単位、転帰は自宅退院 3
名、転院 3 名、死亡退院 7 名、介入時 Dietz の分類は回復的 8 名・維持的 2 名・緩和的 3 名、介入時 PS は 1 が 1 名、3 が
10 名、4 が 2 名であった。
【症例①】82 歳男性、経過:X 年 Y 月健診で肺がん指摘。PS 不良で確定診断行わず BSC。Y+6 月上気道狭窄を伴う咽頭後
部膿瘍あり、気管切開術施行され、緩和ケア棟入院となる。リハ介入期間:75 日、総単位数:34 単位、転帰:転院
【症例②】59 歳男性、経過:X 年 Y 月検診で肺がん指摘、化学療法施行。精神失調で、Y+10 月 BSC。疼痛管理目的で緩和
ケア棟入院となる。リハ介入期間:35 日、総単位数:15 単位、転帰:死亡退院
【考察】緩和ケア棟のリハ実施は 13/84 名で低かった。介入時 Dietz の分類は回復的介入が多いがリハ介入開始までの日数
は平均で1ヶ月近くを要していた。リハ介入期間 1 日当たりリハ単位数も 0.4 単位で少ない。一因として緩和ケアは包括診
療で十分な人員を配置し難い事、研修を受講した療法士を当てる制度上の利益が乏しい事がある。今後、緩和期において更
なる制度上の拡充を期待したい。
セッションⅡ 演題 10 座長:村岡香織(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学講座) 増島麻里子(千葉大学大学院看護学研究科)
がん告知による精神症状に対して、多職種によるチームサポートが奏効した1例
◯福地
望 1)2)・佐々木貴義 1)・遠藤正範 1)・加藤悠介 1)・八木田裕治 1)・馬上修一 1)・加藤光恵 1)・坪井永保 1)
1) 一般財団法人 慈山会医学研究所 付属
坪井病院 リハビリテーションセンター 2)同 ケアステーションあすなろ
【はじめに】多職種によるチームサポートを行い、病名・病状告知後の精神症状の軽減に成功した 1 例を経験した。リハビ
リテーション(以下リハビリ)では、呼吸法を含めた動作指導や低負荷からの運動療法を実施することで、精神的ストレス
軽減・身体活動性向上・QOL が改善され、自宅退院につながった。尚、本発表は当院の倫理委員会で認められた研究である。
【症例】53 歳、男性、診断名:肺腺癌Ⅳ期、縦隔リンパ節・両肺内・肋骨・肝臓・脳転移。主訴: 咳嗽・咽頭部不快感・嗄
声・倦怠感。現病歴:前記症状とともに、体重が急速に 5kg 減少し、精査加療目的にて入院となった。入院後抗癌剤治療開
始。治療後有害事象は出現せず、外来治療へ移行となった。患者の望みは『こうなる前の状態に戻りたい』であった。
【経過】 精神的ストレスの軽減と体力向上・ADL 改善にてリハビリ介入となった。開始当初は、化学療法による体力消耗、
副作用による全身倦怠感を伴い、労作時の息切れがあったことからベッド臥床にて過ごすことが多かった。精神面は、表情
の変化が乏しく会話数も少なかった。リハビリでは精神面のフォローに加え、呼吸指導や運動療法を実施し、病棟カンファ
ランスにて情報共有することで、徐々に感情表出や外泊が可能となり自宅退院された。
【まとめ・考察】多職種を含むチームサポートを行ったことで、有意な改善につながったと考えられる。また、
『がんのリハ
ビリテーションガイドライン』で推奨(推奨グレード A)されているように、化学療法・放射線治療中もしくは治療後の患
者に対して運動療法を実施することで、身体活動性や身体機能、倦怠感、QOL、精神機能・心理面を改善できることがわか
った。
セッションⅡ 演題 11 座長:村岡香織(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学講座) 増島麻里子(千葉大学大学院看護学研究科)
傾聴を中心とした精神的フォローが奏効した大腸癌切除に加え子宮・付属器合併切除を行った 1 例
◯八木田裕治・佐々木貴義・福地
望・遠藤正範・加藤悠介・馬上修一・加藤光恵・坪井永保
一般財団法人 慈山会医学研究所 付属 坪井病院 リハビリテーションセンター
【はじめに】今回大腸癌切除に際し、子宮・付属器全摘出まで行った 1 例を担当し傾聴を中心とした精神的フォローを行っ
たのでここに報告する。
【症例】40 代女性、診断:大腸癌(直腸癌)。手術目的で入院。
【説明と同意】本人へ説明し、同意を得た。
【経過】手術 2 日前からリハビリテーション(以下リハ)介入し術後 1 日目からリハ再開する。低位前方切除術予定であったが
癌の浸潤により子宮・卵巣摘出術の追加となった。術前より表情に乏しく、質問に対する返答も少なく情報収集も取りにく
い状況であった。術後 1 日目より離床開始したが創部の痛みが強くパス通りに離床を促すことが出来ず、2 日遅れての離床と
なった。また、術後 4 日目には病棟内歩行実施した。その後、子宮・付属器合併切除の告知に伴いリハに対して消極的にな
り、表情が乏しく会話数の減少とリハを休みたいという訴えが多くなった。症例は未婚であり、子供に対する願望も病棟看
護師に話していたこともあった。傾聴や何気ない世間話をリハ中に多く行ったことで笑みが増えていき、会話数が増えてい
き、リハに対し積極的に取り組むようになった。術後 19 日目、33 日目に化学療法実施。術後 35 日目には副作用の影響も少
なく自宅退院となった。
【考察】今回傾聴を中心に行ったことや気分転換を図る意味で世間話を多く取り入れたことにより会話数や表情の変化につ
ながったと考えられる。また、抑うつ検査に用いられるネガティブな質問に配慮するため実施せずに傾聴を中心に情報収集
や術前指導を行なったことで対象者の訴えが表出しやすくなったのではないかと考えられ、精神的ストレスの軽減を図るこ
とができたと考えられる。
セッションⅡ 演題 12 座長:村岡香織(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学講座) 増島麻里子(千葉大学大学院看護学研究科)
終末期がん患者と家族を含めたコミュニケーションでのリハビテーションスタッフの関わり
~家族間でのコミュニケーション不足により、自宅退院時期を逃した症例を通して~
◯上野千沙・中井圭子
市立三次中央病院 リハビリテーション科
【はじめに】終末期の自宅退院には医療者だけでなく家族間での連携が必要である。今回家族間でコミュニケーションが不
足し在宅移行が困難となった症例を経験した。家族間のコミュニケーション不足に対しリハビリスタッフの関わりについて
考察したので報告する。発表に際し、口頭にて本人に同意を得た。
【症例】50 歳代女性、S 状結腸癌術後、左大腰筋転移・第 2~5 腰椎浸潤での対麻痺を呈しており、治療目的に入院。娘と2
人暮らし、近所に息子夫婦在住。治療方針は本人と主治医で決定され、家族の同席はなかった。娘は今後について漠然とし
かイメージされておらず、息子の面会も休日のみで治療や今後は母親に一任されていた。
介入時、家族の都合とリハビリの時間調整ができず経過し家族と接触できない状態が続き、家屋訪問直前まで接触はなかっ
た。本人の意思表示が確認できるため、リハビリ実施計画書の説明は本人のみに実施した。歩行器歩行自立レベルに改善し
た頃より自宅へ帰りたいと訴えがあった事で自宅退院を検討するも、息子の仕事や同居する娘への負担を考え、本心を話せ
ずにおられた。
リハビリ開始 1 か月後、PT・OT 同行し家族同席で家屋訪問実施。帰院前に家族と夕食を囲まれた事で徐々に会話が増えた
が、腰椎骨転移部の圧潰進行し退院延期。病態説明を長男に実施後、家族の希望で外泊実施したが退院は叶わなかった。
【考察】家族関係に問題がありキーパーソンが不定になったことが、終末期の方針決定を困難にした要因と思われた。本人・
医療者間でのコミュニケーションは確立できても家族・本人のコミュニケーション不足によりお互いの気持ちが理解できず
方針を決めかね終末期の退院が実現できなかったと思われる。
家族間のコミュニケーションが不足している患者のリハビリ介入時には、リハビリ実施計画書の説明する機会を利用し、家
族とのコミュニケーションを図ることを重視すれば終末期退院が可能であったかもしれない。
セッションⅢ 演題 13
座長:中田英二(四国がんセンター)
腫瘍用大腿骨近位置換術後における荷重時期の検討
◯加藤祐司 1)・森本小百合 1)・伊藤公美子 1)・徳山未希子 1)・島
1)大阪府立成人病センター リハビリテーション科 2)同
國澤洋介(埼玉医科大学保健医療学部)
雅晴 1)・吉川正起 1)・池田聖児 1)、中井
翔 2)、橋本伸之 2)
骨軟部腫瘍科
【目的】腫瘍用大腿骨近位置換術ではインプラントに筋群を縫着するために、術後荷重制限が設けられるが、廃用予防や早
期退院、社会的背景などから早期荷重せざるを得ないことがある。そこで荷重時期が退院時の移動能力や Barthel Index(以
下 BI)に影響を及ぼすか検討した。
【対象】X 年 1 月~X+7 年 11 月で腫瘍用大腿骨近位置換術を施行した患者 22 例、平均年齢 63 歳、男性 12 例、女性 10 例
を対象とした。
【方法】診療録より後方視的に術後 3 週間以内に荷重開始した群を早期荷重群 16 例(以下 A 群)、3 週間以降を免荷群 6 例(以
下 B 群)に分類し、入院期間、徒手筋力テスト(以下 MMT)、入退院時の BI、移動能力、転帰を抽出し検討した。なお、本研
究はヘルシンキ宣言に基づき、患者本人の同意を得て行っている。
【結果】入院期間平均は A 群 34 日、B 群 44 日で各群間比較では有意差を認めなかった。MMT(股関節周囲筋)は退院時にお
いて両群ともに 2-3 レベルであった。入退院時の BI の平均は A 群 45 点→82 点、B 群 40→80 点と AB 群間比較では有意差
を認めなかった。
移動能力に関しては A 群で脱臼を 1 例のみ認めたが片松葉杖歩行以上の歩行能力を獲得した者が 50%(8 例)、
B 群では 33%(2 例)であった。転帰においては A 群退院 50%(8 例)・転院 44%(7 例)・死亡 6%(1 例)B 群退院 83%(5 例)・転
院 17%(1 例)であった。
【考察】当院では軟部組織の修復が得られる術後 3 週から部分荷重を開始していたが、様々な要因から早期荷重の要請が高
まる傾向にある。今回早期荷重群と免荷群を比較して移動能力や BI に明らかな差を認めず、股関節周囲筋力は免荷群と同程
度まで回復していた。また、有意差を認めなかったが入院期間短縮の傾向があった。これらのことから術後の早期荷重は可
能かと考えられる。しかし、長期的な筋力改善や歩行能力に影響するか不明であるため、今後は早期荷重での理学療法プラ
ンや詳細な筋力の推移、長期成績の移動能力の検討が必要である。
セッションⅢ 演題 14
座長:中田英二(四国がんセンター)
脊椎多発転移例の歩行訓練に関する考察 ~2症例の経験から~
國澤洋介(埼玉医科大学保健医療学部)
◯山上大亮・水落和也・西郊靖子・花田拓也・佐久間藤子・籠田雅予
横浜市立大学附属病院リハビリテーション科
【目的】がん治療の進歩により生命予後は改善し、がんのリハビリテーションによる生活機能改善のエビデンスも蓄積され
つつあるが、転移性骨腫瘍特に脊椎多発転移例の歩行訓練の適応や最適な訓練法についてはエビデンスに乏しく手探りの状
態が続いている。ほぼ同時期に経験した 2 症例の経過から、脊椎多発転移例に対する歩行訓練について考察したので報告す
る。尚、本人には説明し同意を得た。
【症例 1】50 歳代の女性。6 年前に右進行乳癌、肺、肝、骨転移と診断されホルモン療
法、放射線治療を実施。今回、第 6 胸椎圧迫骨折、対麻痺の診断で入院し腫瘍掻爬および胸椎後方除圧固定術施行し、術後 3
日でリハビリテーション科初診となった。術後歩行訓練を進めたが、術後 5 週の全脊椎X線撮影にて恥骨結合脱臼、骨盤輪
骨折を認めた。リハビリテーション治療の目標は車椅子主体の移動に変更が適切と思われたが、本人の強い要望に沿い歩行
訓練を継続した。結果はT字つえで 30mの平地歩行が可能となり、術後 8 週で自宅退院となった。自宅内は伝い歩きで移動
が自立した。
【症例2】50 歳代の女性。2 年前に右乳腺のしこりを自覚していたがX年 3 月腰痛で近医受診したところ多発脊
椎転移疑いで当院紹介され、右乳癌、多発脊椎転移の診断で入院し、ホルモン療法、緩和的放射線療法開始。コルセットを
装着し平行棒内歩行が可能になったところで自宅退院に向けた計画を立て、リハビリテーション科初診後 5 週で退院となっ
た。自宅内は杖歩行で移動が自立した。
【考察】従来多発脊椎転移、骨盤輪骨折は歩行訓練の禁忌という認識であったが、が
ん治療、骨転移に対する治療の進歩により、歩行再獲得を現実的な目標として治療計画が立てられるように変化している。
危険動作、危険運動を回避し適切な動作訓練、歩行訓練を行うことで多発脊椎転移例の移動能力の再獲得、自宅での移動の
再獲得という目標が達成できるのではないかと考える。
セッションⅢ 演題 15
座長:中田英二(四国がんセンター) 國澤洋介(埼玉医科大学保健医療学部)
精神心理的支持について~多発性骨転移の症例との調理活動を通して~
◯島田妙子 1)・吉村健太郎 1)・亀坂路子 1)・平井康裕 2)・上妻精二 3)・鶴田豊 4)
1)医療法人社団鶴友会 鶴田病院 リハビリテーションセンター 2)同
整形外科 3)同 緩和ケア内科 4)同 外科
【はじめに】がん患者は身体的な後遺症や廃用症状以外に抑うつなど精神的問題をもつことが多く、リハでは「その人らし
さ」の回復を図り QOL を改善することも課題である。今回、骨転移のため活動制限のある症例に対し、精神心理的支持とし
て調理活動を行ったので報告する。本報告は症例家族の承諾を得ている。
【症例】60 代女性、乳がん、多発性骨転移(右大腿骨病的骨折、Th10 骨転移)のため両下肢は不全麻痺、脳転移により左
上肢に軽度の運動麻痺がみられた(FIM:48/126 点)
。当初はベッドギャッジアップでも転落の恐怖があり、意欲低下がみ
られていた。リハを開始し、車いすへの移乗を行うと「久しぶりに散歩ができた」と喜ばれた。その後も移乗方法や車いす
を調整し、座位耐久性の向上を図った。目標として調理を提案すると材料や作業工程を指示されるなど主体的な行動がみら
れるようになった。1 時間の調理活動を2日間の工程に分け実施し、家族も参加した。作り方を教えられるなど「母」として
の一面を認め、大きな達成感を得られ、家族との楽しい時間を共有することができた。この1週間後より徐々に呼吸機能の
低下がみられるようになり、約 1 ヶ月後に永眠された。
【考察】がん患者は分かってもらえない孤独(関係性)、先の見えない不安(時間性)、自分ではどうしようもない無力(自律
性)に苦しみ、自己の存在意義の消滅から生じる苦痛(スピリチュアルペイン)を感じるとされている。今回の調理活動は関
係存在(家族との時間共有)
、時間存在(味の伝承)や自律存在(メニューの選択)を満たし、スピリチュアルケア(村田理
論)として有意義と考える。一般的にがん患者のリハでは浮腫や廃用への対応・指導、環境調整などにより、ADL を維持し
尊厳を守り、QOL を考慮している。今後はさらに最期まで「その人らしさ」を保つことにも着目し、精神心理的支持にも取
り組みたい。
セッションⅢ 演題 16
座長:中田英二(四国がんセンター) 國澤洋介(埼玉医科大学保健医療学部)
骨転移患者でリハビリテーションを施行した1例を通じ骨転移診療の問題点を考える
◯小山忠昭 1)2)・梶原大輔 1)・大原建 1)・野島大輔 1)・山崎貴弘 1)・門田 領 1)・相庭温臣 1)・下山勝仁 1)・望月眞人 1)
勝亦志帆 2)・眞野里奈 2)・勝亦優貴 2)・直井佑介 2)・有川美帆 2)・増田健司 2)・鏡 文雄 2)・勝又健雄 2)・石井大輔 2)
竹田津亜希 2)・芝田玲美 2)
1)沼津市立病院 整形外科 2)同
リハビリテーション科
【はじめに】骨転移は一般病院でも頻度は高い。しかし、十分な対応がなされていないのが実情と思われる。当院での経験
と全国的なデータから、骨転移診療の問題点を考える。
【症例提示】受診時 57 歳女性。20 年前左乳癌手術、13 年前乳癌多発骨転移が判明し、内分泌化学療法、ゾレドロン酸投与、
塩化ストロンチウム投与、全骨盤、胸椎、腰椎、両上腕骨、両大腿骨への放射線治療(RT)
、右上腕骨・両大腿骨の内固定手
術を施行していた。内臓転移はなく、家庭内での自立生活は可能であった。X 年 X 月 X-8 日に転倒し右肘痛あり、増悪する
ため X 月 X 日入院。右上腕骨顆部に転位のわずかな病的骨折を認めた。右肘をオルソグラス固定し、2日後 RT8Gy で疼痛
軽快。また 1 日後から、骨転移のある左上腕は荷重制限しての利き手交換に準じての作業療法を開始。入院前の ADL をほぼ
回復し 12 日目に退院した。
【当院での対応】がん専門認定医の整形外科医を中心に骨転移の診断、整形外科的評価を実施。RT・骨修飾薬使用・リハビ
リ、のアドバイス、SRE 治療を施行し、外来での原発科との共同 follow を行っている。本例においても病態評価・RT やリ
ハ依頼がすみやかになされ、
短期間での自宅復帰がしえた。
骨転移患者はほぼ全例が当科に紹介されており当科における 2004
年から 10 年間での骨転移は 267 例であった。
【公式統計から
】2014 年の、当院の属する一般病院のがん診療連携拠点病院 286 施設で、がん専門認定医資格のある整形
外科医が存在するのは 2%であった。公式データからは腫瘍整形外科スタッフが絶対的に不足している。
事例から)本例における整形外科医の介入事項は骨の不安定性の評価と固定 、骨転移に対する RT の依頼 、骨の脆弱性の評
価に基づいたリハビリの依頼であり整形外科医であれば十分対応可能であった。
【まとめ】腫瘍整形外科の育成 が望まれるが、集学的な治療が必要で、一般整形外科医の役割も重要である。本検討はヘル
シンキ宣言に準拠している。
セッションⅣ 演題 17
座長:増田芳之(静岡がんセンター)
保存療法を行うがん患者の運動機能に関する予備調査
國友淳子(埼玉医科大学総合医療センター)
◯中野治郎 1)・石井
実 3)
瞬 2)・夏迫歩美 2)・坂本淳哉 1)・川内春奈 1)・神津
玲 2)・沖田
1)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 理学療法学分野 2)長崎大学病院リハビリテーション部
3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 運動障害リハビリテーション学分野
【目的】がん患者に対するリハビリテーション(以下、リハビリ)では、積極的な運動介入が推奨されており、その効果は
多くの研究で確かめられている。しかし、化学療法や放射線療法といった保存療法を行うがん患者では、治療の副作用が激
しいため積極的な運動介入が困難であることも少なくない。そのような場合は、患者の運動機能障害に応じたリハビリプロ
グラムを展開する必要があるが、本邦では保存療法を行うがん患者の運動機能に着目した報告がほとんどない。そこで本研
究では、保存療法を行うがん患者の運動機能に関する基礎データを構築することを目的とし、調査を行ったので報告する。
【方法】調査対象は、2012 年 7 月以降に保存的治療目的で長崎大学病院へ入院し、リハビリを行う 60 歳以上のがん患者 61
名とした(平均年齢 71.4 歳、男性 32 名、女性 29 名、)
。評価項目は、Performance Status(PS)
、膝伸展筋力、大腿四頭筋
厚(超音波診断装置 SeeMore)
、握力、TUG、身体活動量(ライフコーダーGS4)
、FIM であり、評価はリハビリ開始時に行
った。そして、PS のレベルに基づき PS1、PS2、PS3、PS4 の 4 群に分け、各評価結果を比較した。なお、本調査は所属機
関の臨床研究倫理委員会で承認を受けた後(承認番号 12092419)
、対象者の同意を得て実施した。
【結果と考察】今回の調査の結果、保存療法を行うがん患者の PS が重度化していくうえで、まず PS2 の段階で膝伸展筋力、
握力といった努力性の最大筋力が低下し、次に PS3 の段階で TUG、身体活動量、FIM など実際の ADL 能力が低下、最終的
に PS4 の段階で筋ボリューム(大腿四頭筋厚)の低下に至ることが示された。つまり、PS のそれぞれの段階において、リハ
ビリテーションのターゲットにするべき運動機能の病態および残存能力は異なるといえる。したがって、保存療法をおこな
うがん患者に対するリハビリテーションでは、患者の運動障害を正確に評価し、それに応じてプログラムを提供していく必
要があると思われた。
セッションⅣ 演題 18
座長:増田芳之(静岡がんセンター) 國友淳子(埼玉医科大学総合医療センター)
The Mann Assessment of Swallowing Ability(MASA)を用いた肺癌患者における誤嚥リスク評価
◯藤田智彦 1)・中田英二 1)2)・崎田秀範 1)・黒河英彰 1)・菊内祐人 1)・冨永律子 1)・重見篤史 1)・杉原進介 1)2)
1)独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター リハビリテーション科
2)同 整形外科
【はじめに】誤嚥リスクの高い肺癌患者における嚥下障害の重症度をベットサイドで使用できる The
Mann Assessment of
Swallowing Ability(以下 MASA)を用いた評価を行い誤嚥リスク予測が可能であるか検討した。
【方法】2014 年 6 月から 11 月に嚥下障害を有した肺癌患者 11 名(男性 9 名、女性 2 名、平均年齢 64。5±14.4 歳、化学療
法 9 名、放射線療法 2 名、平均介入期間 38 日)を対象とした。全身状態 Performance Status( 以下 PS)が 4 の患者を対
象とし、高次脳機能障害、構音障害、反回神経麻痺、気管切開を認めた者は除外した。効果判定は MASA、嚥下機能評価と
して Repetitive Saliva Swallowing test
(以下 RSST)、
栄養摂取形態の評価として Functional Oral Intake Scale
(以下 FOIS)、
摂取量、体重とし、MASA、RSST、FOIS、摂取量はリハ開始時と7日目毎に評価した。体重はリハ開始時と終了時に記録
した。本研究は「ヘルシンキ宣言」に従った。
【結果】リハ開始時誤嚥性肺炎を認めなかった 9 名の MASA 平均点は 164±3 点であり嚥下障害中等度、誤嚥リスク軽度で
あったが、リハ終了後、平均点は 174±3 点となり嚥下障害軽度、誤嚥リスクは異常なしに改善した。RSST、FOIS 伴に改
善しており平均摂取量は全量摂取まで改善した。平均体重評価は 1。2 ㎏増加した。MASA 評価項目の内、開始時から終了時
に改善が認められたのは 24 項目のうち、呼吸状態スコア(2→6)
、嚥下と呼吸の関係スコア(3→5)
、食塊のクリアランスス
コア(8→10)
、口腔通過時間スコア(8→10)の 4 項目であった。他項目において低下はみられなかった。誤嚥性肺炎を認め
たのは2名であり、リハ開始時の MASA 平均点は 174±2 点であり嚥下障害軽度、誤嚥リスクは異常なしであったが、リハ
終了時に 154±3 点と嚥下障害は中等度、誤嚥リスクは軽度となった。2名伴摂食時の姿勢保持には協力的であったが食後の
姿勢保持が守られていなかった。
【考察】嚥下障害を有した肺癌患者において MASA を用いる事で嚥下障害の経過を知る事は可能であるが、食後の姿勢保持
など誤嚥リスク予測において限界がある事が示唆された。
セッションⅣ 演題 19
座長:増田芳之(静岡がんセンター) 國友淳子(埼玉医科大学総合医療センター)
白質脳症による歩行障害を呈した患者に対して理学療法を施行した一例
佐藤清登
IMS グループ
板橋中央総合病院 リハビリテーション科
【はじめに】がんやがん治療で生じる機能障害の多くは不可避的とされている。放射線治療は機能・形態温存などの利点が
ある一方、有害事象の出現が課題とされている。化学療法も同様に、有害事象による ADL 能力の低下と Performance Status
(以下 PS)の悪化が生じることがある。
今回、外来化学療法中、白質脳症に起因すると思われる歩行障害を呈したが、理学療法(以下 PT)により歩行を再獲得し、が
ん治療再開に至った症例を経験したので報告する。
【症例紹介】60 歳代男性。診断名は小細胞肺がん StageⅣ(cT1bN3M1b)、脳転移あり。既往・合併症に末梢神経障害、抗利
尿ホルモン不適合分泌症候群、耐糖能異常。
対象者にはヘルシンキ宣言に沿い、本研究の趣旨を十分に説明し承諾を得た。
【経過】X 年 8 月、結節影精査目的で当院へ紹介、上記と診断。
X 年 10 月、外来化学療法開始、肺内再発・脳転移を認め、治療評価は「進行」
、PS1。 X+1 年 6 月、全脳照射施行。 X+1
年 10 月、リンパ節転移認め、2nd line へ移行、治療評価は「部分奏功~安定」
。 X+2 年 8 月 20 日、通院中に転倒、右鎖骨
骨折を受傷し保存的加療。
X+2 年 9 月 6 日、歩行障害出現し当院入院。
「放射線・化学療法後の白質脳症」と診断、PS3。
9 月 21 日、PT 開始、24 日よりふらつきに改善あり。10 月 25 日、独歩自立し、自宅退院、PS1。
【考察】本症例は、白質脳症と鎖骨骨折の発症前まで、加齢による運動機能低下と化学療法の有害事象が影響する中でも自
立していた。今回、新たな機能障害が生じ、元々の立位制御戦略が破綻した結果、歩行障害が顕在化したと考えた。そこで、
運動機能評価に基づいて立位機能を再構築したところ、ADL 能力が向上し、がん治療再開に至った。
【おわりに】がん治療中の機能障害は不可避的だが、PT による ADL 能力・PS 改善はがん治療継続の一助となりうる。
セッションⅣ 演題 20
座長:増田芳之(静岡がんセンター) 國友淳子(埼玉医科大学総合医療センター)
高齢者進行肺がん患者における治療前の歩行能力と要介護期間ならびに入院期間との関連につい
ての検討
◯内藤立暁 1)・岡山太郎 2)・増田芳之 2)・田尻寿子 2)・石井 健 2)・満田 恵 2)・加藤るみ子 2)・真田恵子 2)・田尻和英 2)
神田亨 2)・森田恵美子 2)・岩田英之 2)・結城 士 2)・青山 高 3)・塩崎 瞳 3)・盛 啓太 4)・高橋利明 5)・田沼 明 2)
1)静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科 2)同
リハビリテーション科 3)同 栄養室 4)同 生物統計家 5)同 呼吸器内科
【はじめに、目的】人口高齢化に伴い高齢者肺癌患者は増加しているが、彼らの歩行能力が治療経過に及ぼす影響は未だ明
らかでない。本研究の目的は進行非小細胞肺癌に対して初回化学療法を受ける高齢者において、治療前の歩行距離と治療経
過との関連を明らかにすることである。
【方法】本試験は当施設の倫理委員会で承認を受け実施された前向き観察研究である(UMIN000009768)
。病理学的に証明
された進行非小細胞肺癌(3 期、4 期又は術後再発)を有し初回化学療法を予定している 70 歳以上の高齢者のうち、身体機
能評価の危険因子(ECOG-PS3 以上、活動性の心疾患、筋骨格系ならびに神経系の障害など)を有さない患者を登録した。
化学療法開始前のシャトルウォーキングテスト歩行距離 (ISWD)の中央値 285m で二群に分け、生存期間、介護不要生存期
間、要介護期間、全入院回数、ならびに全在院日数を比較した。 要介護状態は Barthel index (BI) <90 点と定義した。
【結果】2013 年 1 月より同年 11 月に 30 名が登録され、女性 11 名、男性 19 名、年齢中央値(範囲)74(70-82)才、治療
前 BI 全例 100 点、ISWD 中央値は 285 (80-640) m であった。高歩行能力群 (ISWD≥285m) と低歩行能力群 (<285m) の間
に、全生存期間に差は認めなかったが (log-rank p=0.2883)、前者は介護不要生存期間が長く (中央値 12.4 vs 7.1 ヶ月、
p=0.0963)、要介護期間が短い傾向があった (1.5 vs 3.4 ヶ月、 p=0.1227)。また高歩行能力群は総入院回数 (年間 4.5 回 vs 6.0
回) と総在院日数 (年間 40.6 日 vs 81.2 日) が短かった。
【考察】進行非小細胞肺癌を有する高齢者では診断時に歩行能力障害を認める症例が多く、化学療法前の歩行能力が高い患
者は、低い患者と比較し、要介護期間と入院期間が短い傾向が認められた。高齢の進行肺癌患者において、治療前の歩行能
力を維持しておくことが、その後の機能予後、生活の質、ならびに医療資源の利用に良好な影響を及ぼす可能性が示唆され
た。疼痛軽減に伴い睡眠障害も改善し、舌下錠の使用頻度の減少と相まって ADL が改善した。以上より、運動療法はがん性
疼痛に対する有効な治療法のひとつであることが示唆された。
セッションⅤ 演題 21
座長:神田 亨(静岡県立静岡がんセンター) 鶴川俊洋(鹿児島医療センター)
多職種チーム医療による脊椎 SREs (skeletal related events)に対する取り組み
◯中田英二 1) ・杉原進介 1)・ 重見篤史 2)・ 菊内祐人 2)
1) 独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 整形外科 2)同 リハビリテーション科
【目的】骨転移患者の ADL、QOL の改善には、離床を促すだけでなく、病的骨折リスクの医療従事者の情報共有が必要であ
る。当院は多職種による取り組みを行っており、脊椎 SREs 患者の ADL と病的骨折リスク対策の結果を検討した。
【対象と方法】整形外科病棟に入院中で、SREs で ADL が低下しリハビリが介入した骨転移患者に対し、医師・理学療法士・
看護師でカンファレンスを週に 1 回行い、各症例の安静度や病的骨折リスク評価等の情報共有を医療従事者で行った。リハ
ビリ前に病的骨折リスクが高いと判断した場合、同意書を渡し、リハビリ時のリスクなどを説明し、インフォームドコンセ
ントを得て、負荷を禁止するなどの対策を行った。休日は可能な限り看護師がリハビリを行った。今回、H26 年 1 月から 10
月までに保存的治療を行った、麻痺を認めない脊椎 SREs 15 例について検討した。男性 7 例、女性 8 例で平均年齢 67 歳で
あった。初診時に医師が Spine Instability Neoplastic Score を用いて脊椎不安定性の評価を行い、安定、中等度、不安定に
分類した。安定例は過度の負荷がかかる運動のみを制限し、中等度や不安定例は装具を装着し離床させた。これらの症例の
開始時、入院後 2、4 週の ADL を Barthel Index (BI)を用いて評価した。また、骨折を認めた症例の対応を retrospective に
検討した。
【結果】脊椎不安定性評価は安定 5 例、中等度 10 例であった。BI の中央値は開始時 85 で経時的に改善し、入院後 2、4 週
はそれぞれ 92、95 であった。骨折リスクの高い症例はリハビリ時のリスクに対し同意を得たが、1 例 2 肢に病棟で病的骨折
を認めた。この症例はカンファレンス時に看護師よりリハビリ時の骨折リスクだけでなく病棟での骨折について説明と同意
を得るように要望があり、対応ができていた。
【考察】骨転移患者に対する多職種チーム医療は ADL の改善に有用であるが、骨折リスクが高いと判断した場合、医療従事
者間で情報共有し、あらかじめ患者に対する説明と同意を行うことが重要であると考えられた。
セッションⅤ 演題 22
座長:神田 亨(静岡県立静岡がんセンター)
脊椎転移患者への作業療法における日常生活動作指導の問題点と課題
◯安田
卓・今
鶴川俊洋(鹿児島医療センター)
美香・齋藤元太
青森県県立中央病院 リハビリテーション科
【目的】2014 年 4 月から 10 月の間に作業療法(OT)処方された骨転移がん患者のうち骨関連事象(SRE)を予防でき自宅退院
した 2 症例について日常生活動作(ADL)指導の問題点と今後の課題について検討したので報告する。なお本研究は倫理的
な配慮に基づき、個人情報の保護を致しました。
【症例・経過】症例 A:60 代女性、食道がん術後に第2腰椎(L2)転移があり放射線治療のため入院、 整形外科にてコルセッ
ト作製後に OT 介入する。
開始時 Frankel 分類 D、L2 領域に痺れあり、Performance Status(PS)4、
機能的自立度評価(FIM)71、
コルセット装着方法が不適切であり、脱着とリスクについての指導を施行、長時間の座位により痺れ、疼痛が誘発されたの
で負荷時間に配慮し施行した。自宅入口は階段昇降を必要としたため、早期より階段昇降も取り入れた。退院時 Frankel 分
類 D、PS3、FIM112 であった。退院後、シャワーチェアーを使わずに床に座る、夜間トイレ時コルセット未装着などリス
ク管理での問題があり再指導した。
症例 B:70 代女性、第9胸椎(Th9)圧迫骨折後、多発性骨髄腫で化学療法のため入院、OT 介入後コルセット作製装着する。
開始時 Frankel 分類 D、Th9 に疼痛、PS4、FIM55、コルセット装着後早期に歩行器で病棟内トイレ自立し洗濯なども施行
していたが、疼痛増強、化学療法副作用、自宅に帰る不安などがあり活動度が低下した。そこで自家用車乗車練習や座位で
の振動体験などすることで不安へ対処し回復後に外来通院できた。退院時 Franke 分類 D、PS2、FIM107 であった。
【考察】2 症例の退院時 FIM は高かったが、コルセット脱場面の清拭・浴槽移乗、入院中機会の少ない階段は監視、介助で
あった。退院後調査では、コルセット脱時での入浴動作などの指導が不十分であった点が明らかとなり、コルセット未装着
時での動作指導が検討必要である。また自宅退院後、外来での化学療法など自宅外への活動も余儀なくされ、乗車などの手
段的 ADL の指導も入院早期より検討することが必要である。
セッションⅤ 演題 23
座長:神田 亨(静岡県立静岡がんセンター)
運動療法によりがん性疼痛の軽減が得られ、日常生活動作が改善した1症例
鶴川俊洋(鹿児島医療センター)
◯萬福允博 1)・西口只之 1)・樋下哲也 1)・大野博司 1)・冨岡正雄 2)・佐浦隆一 2)
1)大阪医科大学附属病院 リハビリテーション科 2)大阪医科大学総合医学講座 リハビリテーション医学教室
【はじめに】がん性疼痛に対する非薬物療法としてリハビリテーションの有効性が報告されている。今回、マッサージなど
では疼痛軽減が得られなかったが、運動療法により疼痛軽減が得られ、日常生活動(ADL)が改善した症例を経験したので報告
する。
【倫理的配慮、説明と同意】学会発表する旨を本人に口頭で説明し同意を得た。
【症例紹介】80 歳女性。X 年に小腸カルチノイドに対して腫瘍切除術、その後、骨転移に対して放射線治療、がん性疼痛に
対して薬物療法が行われた。今回、胆管炎に伴う腹痛、食欲不振を主訴に入院、持続痛に対して強オピオイド、鎮痛補助薬
の経口投与、突出痛に対して舌下錠が 3~4 回/日、頓用で投与されていた。入院後、離床、ADL 改善目的にリハビリテーシ
ョンが処方された。
【理学療法評価】理学療法開始時は腰背部に持続痛と突出痛を認めた。Brie Pain Inventory Japanese(以下、BPI-J)では平
均強度 6、睡眠障害も呈していた。また、FIM は 98 点、Performance Status(PS)は 3~4 と ADL が低下していた。
【理学療法経過】理学療法開始から 3 日間はマッサージなどを実施したが、疼痛は変化しなかった。開始 4 日目より歩行練
習を開始したところ、歩行距離の伸延に伴い持続痛が軽減し、開始時 BPI-J 6/10(平均強度)の疼痛は、開始 10 日目には
BPI-J4/10、31 日目には BPI-J3/10 となった。睡眠も改善し突出痛の軽減とともに舌下錠の使用頻度も減少した。また、FIM
は 119 点、PS は 2~3 に改善した。
【考察】運動療法による下行性疼痛抑制系の活性化が報告されているが、本症例でも運動療法により疼痛が軽減した。また、
疼痛軽減に伴い睡眠障害も改善し、舌下錠の使用頻度の減少と相まって ADL が改善した。以上より、運動療法はがん性疼痛
に対する有効な治療法のひとつであることが示唆された。
セッションⅥ 演題 24
座長:阿部恭子(千葉大学大学院看護学研究科)
乳癌周術期患者の心理状態のリスクファクターと QOL 改善との関連
宮越浩一(亀田総合病院)
◯土井美幸 1)・菊内祐人 2)・中田英二 3)・ 杉原伸介 3)・青儀健二郎 4)・宮内佳子 1)
1)独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 乳腺科病棟 2)同 リハビリテーション科 3)同 整形外科 4)同 乳腺外科
【目的】当院では、乳癌患者の ADL、QOL を改善するために体系的な取り組みを行っている。今回、乳癌周術期患者の心理
状態のリスクファクターと QOL 改善との関連を解析した。
【方法】平成 24 年 11 月から平成 25 年 10 月までの間に乳癌切除とリンパ節郭清を受けた 37 例を対象に、術前、術後 1 週、
1、
2、3 ヶ月の時点での心理状態の評価として Distress and Impact Thermometer(DIT)、QOL 評価として EORTC QLQ-C30
Global health status(C30)および Disabilities of the Arm、 Shoulder and Hand(DASH)について検討。DIT のリスクファク
ターについては、上肢機能、補助療法の有無、有害事象の有無、家族状況、就労状況等との関連を検討した。また DIT と QOL
の改善状態との関連について単変量解析(χ2検定)を行った。対象者へ研究協力について、プライバシーは遵守されること、
断っても不利益を被らないことを、説明し同意書に署名を得た上で、調査を実施した。
【結果】DIT{陽性1(適応障害)、陽性 2 (うつ病)、陽性 3 (希死念慮を伴ううつ病)}の結果は、術前 22%、5%、27%、術後 1
週 14%、5%、24%、1 ヶ月 14%、5%、16%、2 ヶ月 5%、5%、14%、3 ヶ月 11%、3%、8%であり、陽性例は経時的な
低下を認めた。DIT のリスクファクターは、術前で婚姻関係の有無(P<0。03)、術後1週で上肢機能の回復(P<0.05)、術後1
ヶ月で仕事の有無(P<0.05)、術後 2 か月で上肢機能の回復(術後1週)、術後 3 ヶ月で配偶者の有無(P<0.03)等であった。C30
は、術前 DIT 陽性症例全体では術後 1 週間目に改善(P<0.05)、術後 2 ヶ月 DIT 陽性 3 の症例は、同時点で低下(P<0.01)した。
DASH は、術前 DIT 陽性 2 以上の症例は術後 3 ヶ月で改善(P<0.05)、術後 2 ヶ月 DIT 陽性 2 以上の症例は同時点で低下し
た(P<0.05)。
【考察】今回、乳癌周術期の患者で、同居者がいない症例、仕事をしていない症例において、DIT 陽性が認められた。また、
術前に心理的な問題を有していても QOL は経時的に改善傾向ではあるが、術後 DIT 陽性 2 以上の症例では QOL が低下する
可能性があることが判明した。したがって心理的サポートは術前から術後、さらに外来移行後にも必要であると考えられた。
セッションⅥ 演題 25
座長:阿部恭子(千葉大学大学院看護学研究科)
術後補助療法実施乳がん患者における身体活動量と骨代謝の関係
宮越浩一(亀田総合病院)
◯浅野光香 1)・斎藤貴 2)・河野誠之 3)・田中優子 3)・井上順一朗 4)・牧浦大輔 4)・酒井良忠 4)・小野玲 2)
1)神戸大学医学部保健学科 2)神戸大学大学院保健学研究科 3)神戸大学大学院医学研究科 乳腺内分泌外科
4)神戸大学医学部附属病院リハビリテーション部
【緒言】閉経後ホルモン受容体陽性乳がんに対する術後補助療法の標準治療はアロマターゼ阻害薬 (Aromatase Inhibitor :
AI) であり,特徴的な有害事象として骨強度低下がある。一般的に骨強度低下の抑制に身体活動量が関与するという報告が
あるが,AI 服用中の乳がん患者ではその関連性は明らかではない。本研究の目的は AI 服用中の乳がん患者の身体活動量と,
骨強度指標の一つである骨代謝との関連性を検討することである。
【対象・方法】本研究は横断研究であり,対象者は術後ホルモン療法として AI を服用している閉経後乳がん患者 23 名とし
た。外来受診時に情報収集を行い,骨代謝の評価として骨形成マーカーにはⅠ型プロコラーゲン − N − プロペプチド (P1NP)
を, 骨吸収マーカーには酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ 5b 分画 (TRACP-5b) を用いた。身体活動量の評価には日本語版
Baecke physical activity Questionnaire(BQ)を用いた。骨代謝マーカーを目的変数とし, 身体活動量と骨代謝関連因子, AI
の服用期間を説明変数に加えた重回帰分析を行い, 身体活動量と骨代謝の関連を検討した。本研究は神戸大学大学院保健学研
究科倫理委員会の承認を得た。また,研究実施の際には対象より書面にて同意を得た。
【結果】
重回帰分析の結果より, TRACP-5b と関連がみられたものは, BQ の Total activity score (標準化β = − 0.41, p < 0.05)
と, BQ の下位尺度である Work Index (標準化β = − 0.49, p < 0.05) であり, 共に身体活動量が低いと骨吸収マーカーが高値
を示す結果となった。一方, P1NP と身体活動量には関連性がみられなかった。
【考察】日常生活における身体活動量の維持・向上が, AI 服用時の骨代謝の亢進を抑制できる可能性が示唆された。
セッションⅥ 演題 26
座長:阿部恭子(千葉大学大学院看護学研究科)
頭頸部癌周術期におけるリハビリテーションの可能性
宮越浩一(亀田総合病院)
◯三浦裕幸 1)・今野信宏 2)・長谷川千恵子 3)・原田絵理子 1)・鈴木芙由子 1)
1)市立函館病院 リハビリ技術科 2)同
耳鼻咽喉科 3)同 リハビリテーション科
【はじめに】頭頸部癌周術期において、肩運動障害や嚥下障害に対するリハビリテーション(以下リハ)の報告は多いが、
永久気管孔や大胸筋・遊離前腕皮弁の合併症に対する報告は少ない。本研究の目的は、頭頸部癌周術期に対する問題点と解
決方法について検討することである。
【倫理的配慮】本研究は対象者に文章と口頭による説明をした後、同意を得られた者を対象とした。
【症例 1】70 代男性、下咽頭癌のため甲状腺部分切除、喉頭全摘、両頸部郭清、大胸筋皮弁を施行。術前から介入。術後 5
日、FIM は 42 点、医師に問題点を確認し ADL 指導を開始。A-ROM(°)肩屈曲 95/95、外転 90/70。温泉に通いたいと希
望あるが美容面や気管孔に水が入る点で不安あり。タオルの工夫では限界があり、気管溝フィルターを使用し解決に至った。
術後 52 日、A-ROM 肩屈曲 130/120、外転 100/85 と改善された。FIM122 点、自宅退院となった。
【症例 2】60 代男性、頬
粘膜癌のため左頬粘膜切除、左頸部郭清、左遊離前腕皮弁、左前腕分層植皮を施行。術後 8 日、左 A-ROM 肩屈曲 80、外転
65。手関節シーネ固定。手指平均 TAM166。橈骨浅枝領域に感覚中等度鈍麻あり。FIM は 36 点。早期 ADL 拡大、腱滑走練
習や splint にて拘縮予防・改善を図った。術後 28 日、左 A-ROM 肩屈曲 95、外転 90、手屈曲 60、伸展 55、手指平均 TAM208
と改善し、回内制限は認めず。感覚障害は残存した。FIM は 122 点、自宅退院となった。
【考察】名取(2006)は入浴時に困難さがある永久気管孔患者は 83%と多く、タオルの巻き方の工夫が必要と述べている。
本症例ではタオルの工夫だけでは不十分で気管溝フィルターが有用であった。Orlik(2014)は、 遊離前腕皮弁後の機能を評価
し前腕回内、知覚、巧緻動作が減少したと述べている。本症例では生活場面で大きな問題は認めず良好な結果であった。周
術期管理には様々な問題があり、多職種とリハが協業することで問題点の解決に寄与できる可能性がある。
セッションⅥ 演題 27
座長:阿部恭子(千葉大学大学院看護学研究科)
乳がん放射線治療後に晩期末梢神経障害を呈した1症例
宮越浩一(亀田総合病院)
◯明石美穂 1)・三浦豊章 2)
1)福井総合クリニック リハビリテーション課 作業療法室 2)福井総合病院 リハビリテーション科
【はじめに】放射線治療後の長期生存例の数%において何らかの晩期反応が問題になっていると言われているが、晩期末梢
神経障害に関する報告は少ない。今回、晩期末梢神経障害を呈した症例を経験したので報告する。なお報告に際し、所属施
設の倫理審査委員会で承認を受けている。
【症例】70 歳代女性。X-12 年に A 病院にて右乳がん全摘出術、その後放射線療法を施行。X-1 年右肩に雷に打たれたような
激痛出現するも軽減せず、X 年 8 月筋力低下、感覚障害出現し当院入院。ミエログラフィー行うが原因分からず、神経ブロ
ックでも効果なくリハビリテーション(リハ)開始となる。X+1 年 2 月退院し、外来リハ開始。12 月、B 病院に精査目的で
入院し、乳がん放射線後ニューロパチーと診断される。X+4 年乳がん再発。作業療法経過をⅠ期(入院~退院まで)
、Ⅱ期(外
来~再発前まで)
、Ⅲ期(再発~現在)に分けた。
【作業療法経過】Ⅰ期:心身機能は腕神経叢上部(C5-6)特に腋窩神経支配領域で筋力 1、肘関節 1~2、手関節・手指 5、
右肩の疼痛、感覚障害を呈した。作業療法では関節可動域訓練、筋力訓練、疼痛軽減を目的にリラクゼーション、利き手交
換訓練を実施し、患肢保護のためにアームスリングを導入した。また、
「原因が知りたい」と不安の声が聞かれた。Ⅱ期:徐々
に心身機能の低下が見られるが、原因が分かったことで心理面での安心感が得られる。診断がついてからはリリカが処方さ
れ疼痛軽減した。Ⅲ期:再発後は化学療法が施行され、右上肢の浮腫が著明に出現しマッサージを併用した。薬物変更と共
に浮腫は改善されたが手指の筋力低下がみられ、
「今後どうなっていくのか心配」と不安な発言が聞かれる。
【まとめ】
診断がつくまでに期間を要し、心理的不安が強かった。がん患者だけでなく既往のある患者にも有害事象に関
する知識を持って関わる必要があり、それが心理的支持にも繋がると考える。