村長施政方針

平成 27 年度
村長施政方針
平成 27 年 3 月 12 日
平成 27 年粟島浦村村議会
3 月定例会
本日から、平成 27 年度各会計当初予算案についてご審議いただきますが、
私から次年度の施政方針を明らかにしますので、議会を始め村民の皆様のご理
解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
はじめに、昨日は、東日本大震災の発生から4年目となりました。政府が定
めた5年間の集中復興期間が残り1年となりましたが、今なお福島県では、約
12万人が県内外に避難生活をしています。また被災3県では、約23万人が
避難生活、約8万人が仮設住宅の生活を余儀なくされています。長引く避難生
活による精神的苦痛や孤独死、被災者の高齢化など、被災地には深刻な大震災
の痕跡が残っています。
私たちはこの悲惨な大震災を風化させてはなりません。住み慣れた我が家へ
の一日も早い帰還が実現するように、政府に対し、一層の支援体制の充実を強
く求めます。
○ 地方創生
わが国は世界に先駆けて「人口減少・超高齢化社会」を迎えていることから、
国も地方も連携して「待ったなし」の構造改革に取り組むことが急務です。そ
こで、昨年11月、
「まち・ひと・しごと創生法」
(いわゆる地方創生法)が成
立しました。この法律により、地方は、人口の現状と将来の姿を示し、今後の
取り組むべき将来の方向を提示した「地方版人口ビジョン」と平成 27 年度か
ら今後5ヵ年の施策目標、施策の基本的方向、具体的な施策をとりまとめた「地
方版総合戦略」の策定をしなければなりません。
この総合戦略策定のために、国は、
「情報支援」、「人的支援」、「財政支援」
と 3 本立ての支援をします。平成26年度補正予算、平成27年度当初予算と、
地方創生の推進に向けて切れ目無く財政支援もします。
地方版戦略策定に当たっては、各自治体が主体性を発揮して取り組まなけれ
ばなりません。その策定に当たっては、成果目標や他の客観的な評価目標を設
定することや PDCA(P:事業計画、D:実施、C:評価、A:改善)を継続的
に実施することになります。
つまり、地方創生は国と地方の構造改革であり、まさに地方創生は各自治体
の力量が試され、その自治体の将来性を評価されることになるため、大変厳し
い課題が国から課せられたと言っても過言ではありません。
従いまして、粟島版総合戦略は27年度中に策定し、28年度から施策を実
行していかなければなりません。
また、地方創生事業は、現在推進している村上市・関川村との定住自立圏構
想とも連携を図っていきます。それに加え、地域を越えて、同じような志や悩
みを共有する自治体と連携し、課題解決に当たることも重要だと思っています。
○ 総合政策室の稼動
地方創生事業の計画立案や事業を推進するためには、行政の変革が必要であ
り、総合政策室を稼動させます。
26 年度新設した総合政策室の役割が重要になります。総合政策室は外部人
材も活用しながらタスクフォース(具体的な特定の目的のために一時的に編成
される組織等のこと)チームを編成し、プロジェクトを推進します。
「粟島総合戦略委員会」へ具申し、随時施策を実行していきます。
その中心となる人材については、副村長兼総合政策室長に相当する常勤の
人材を確保するため、地方創生人材派遣制度を活用し、現職官僚の確保に努
めましたが、該当する人材の確保ができませんでした。しかし、非常勤では
ありますが、企業の総合研究所のシンクタンクの方を登用することで調整中
です。
28 年度から「粟島版地方創生事業」が実際に稼動できるように、27 年度は
事業計画の策定に取り組みます。27 年度秋ごろまでには戦略計画を策定しな
ければならないと思います。
今後は予算の組み換えをし、総合政策室の必要な予算を計上したいと思い
ます。
また、27 年度は、外部人材と補助金を活用して、
「粟島文化遺産保全事業」
と「新・地域再生マネージャー事業=粟島観光産業再生事業」の二つのプロ
ジェクトを実行します。総合政策室は、27 年度からスタートするこの 2 つの
事業の指導監督等をし、また随時支援します。
○ 平成 28 年度粟島保健福祉センター(仮)設立構想
平成 28 年度保健福祉センター設立に向けて次年度は設立準備室を立ち上げま
す。
(背景)
昨年の村民へのアンケートで、
「できる限り粟島で今の生活を続けたいと思い
ますか?」という質問に、9 割の方が「住み続けたい」という回答をしました。
全国の市町村では、住み慣れた地域にできる限り長く住み続けることができ
るように、地域包括ケアシステムの構築を進めています。粟島でも、地域包括
ケアシステムの構築を目指して、27年度に保健福祉センターの設立準備室を立
ち上げます。
地域包括ケアシステムとは、医療・福祉・介護・生活支援などのサービスを
住民一人ひとりに合わせて、一体的に提供していく仕組みです。村では、その
中核を担う存在として、保健福祉センターを位置づけます。
(実施する内容)
これまでは、役場と診療所と社会福祉協議会間の横断的なつながりが薄く、
各組織単位で仕事をする傾向にありました。それでは一体的なサービスの提供
はできません。そのため、保健福祉センター構想では、次の三つを改革の柱と
して進めていきます。一つ目は、専門人材の確保と人員配置による組織の構築
です。二つ目は、情報の集約です。そして、三つ目は、救急時の体制整備です。
一つ目についてですが、センターでは、4 月から新しく社会福祉士と保健師と管
理栄養士を配置します。新たな専門人材とともに、役場職員と診療所の看護師、
社会福祉協議会の職員が一体となって、村の保健と福祉を担っていきます。さ
らに、今後の高齢化を見据え、ケアマネージャーを新たに配置し、高齢者の介
護分野の強化を図ります。
二つ目についてですが、これまでの村民の健康状態は診療所で、介護分野の
状況は社協で、とバラバラに情報を持っていたため、適切なサービスの提供に
つなげることができませんでした。そのため、センターで、村民の健康状態や
生活状況、介護の必要性などの情報を一元的に管理し、センターの職員が連携・
協力して、必要な保健医療や介護サービスを提供していきます。それにより、
医療面では、村民の健康状態を常に把握し、村上市の病院との連携体制を整え
ておくことで、緊急時にすぐに病院の医師の適切な治療を受けられるような体
制を作ります。
また、介護の面では、身体的な状態が悪化する前から、島の中で適切な介護
サービスを受けることで、すぐに島外の施設に入所するのではなく、できるだ
け島内で生活を続けられるような体制を作ります。
三つ目についてですが、現在救急患者への対応のマニュアルが無い中では対
応ができません。そのため、センターを中心に、緊急通報の受付から情報共有
の方法、その後の連絡体制と対応の仕方などについて、一連の流れをマニュア
ル化し、体制の整備を図ります。また、センターでは常に健康状態を把握して
おくことで、あらかじめ緊急時の連絡があることも予測しておくことができま
す。それにより、また誰であっても救急患者の対応が迅速かつ適切に行えるよ
うに連携体制を作ります。
(今後の展望)
これからは村民一人ひとりの健康と福祉を守り、安心で安全な生活を維持す
るために、保健福祉センターは、今後の村の生活の要となっていきます。保健
福祉センターの設立ができることで、村民が、住みなれた島で、できる限り長
く暮らし続けられることが可能になるものと思いますので、是非設立構想にご
理解を賜りたいと思います。
○ 再生エネルギー関係について
・粟島沖洋上風力発電について
昨年第4回定例会で、粟島浦村沖合洋上風力発電推進委員会条例及び事業者
評価委員会規則を議決しましたが、来年度より本格的に始動していくことにな
ります。
まずは事業者の選定ですが、推進委員会立ち上げ後、評価委員会を設置。発
電事業者を公募して、評価委員会が事業者の提案内容を評価、その評価を踏ま
えて推進委員会で事業者を選定するという流れになる予定です。
事業者選定後は、推進委員会メンバーに事業者を加え、洋上風力発電の課題
解決に向けて協議を進めていく予定です。
ただ、粟島海域の洋上風力設置計画が国のどの省庁で所管するのかまだ明確
になっていないという課題があります。わが国として始めて直面する課題であ
り、当然のことです。国のエネルギー政策が再生エネルギーに大きく依存する
方向で進められていることから、省庁間で前向きな調整が始まると思います。
本村としても国への積極的な働きかけをしてまいります。
日本のエネルギー自給率向上、世界の地球温暖化対策といった、小さな粟島
浦村が、大きな社会貢献をするチャンスであり、地域経済への効果も期待でき
る案件ですので、積極的に推進をしていきたいと思います。
・岩船沖洋上風力発電について
村上市岩船沖で粟島沖よりも半年ほど先行して洋上風力発電が推進されてお
ります。設置する企業体も決定しました。
現在、岩船港間口に覆う形で風車設置計画となっており、粟島汽船の航路に
大きく関わる問題となっております。
第一に粟島汽船の航路の安全確保を守り、村民の利便性は確保しながら、事
業の推進のために協力していく考えです。
今後、国、地方公共団体、学識経験者等で構成する航行安全及び海難防止を
調査研究する委員会が設立されますが、委員として粟島汽船、村が入り、11 月
を目途に航路の検討を進めたいと考えております。
○ 産業振興
・観光振興
平成26年度の観光客入込数の落ち込み、観光客受け入れ能力の減少など観
光産業の衰退が懸念されます。今月 14 日は北陸新幹線開業します。北陸新幹線
の開通により本村の観光客離れが懸念されますので、観光振興対策の根本から
検討し直さなければならない時だと考えます。
来年度、総合戦略の中で観光を持続できる主幹産業とすべく、JTB 総合研究
所と連携し振興策を構築していきます。
・水産振興
水産業は、環境の変化や乱獲による資源の減少、魚価の低迷、加えて生産者
の高齢化と後継者問題などで、厳しい状況におかれています。加えて、近年は
鮮度競争も激しく、鮮度が良好であることは当たり前のこととなりました。そ
こで、先月より 2 便体制に増便し、その日の水揚げは夕方の競りに間に合うよ
うに流通の改善を図りました。来年からは、1 月から 2 便体制になります。
○ フェリーあわしまの代替船建造について
新船建造委員会(仮)を設置し、新船のデザインや財源について意思決定を
行うために、村内に建造委員会を立ち上げます。汽船や行政他、島内外の有識
者による委員会を構成し、幅広い公平な議論を進めながら、専門的な見地から
の意見を尊重して進めていきます。建造委員会で決定後、航路改善協議会に諮
り、新船建造の許可や日程等が決まることになります。
○ 教育関係について
このたび「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律
(平成26年法律第76号)が、平成26年6月20日に公布され、平成27
年4月1日より施行されることとなりました。
今回の改正は、教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保しつつ、地方教
育行政における責任体制の明確化、迅速な危機管理体制の構築、地方公共団体
の長と教育委員会の連携を強化することを狙いとしております。
改正法では教育長は村長、副村長と同格の特別職となり、任期は3年となり
ます。教育長は委員長に代わって教育委員会の代表者となり、委員長職は廃止
となります。従来は教育長不在の際は一般職である事務局職員が職務代理者と
なっておりましたが、改正法では委員の中から代理を選任することとなります。
このような状況を鑑み、村では長年に渡って教育長が不在であった体制を一
新し、議会の同意を得て新たに教育長を選び、経験豊富な教育長の指導のもと、
村教育行政のより一層の充実化を目指すこととしました。
なお改正法の施行後も、現在任命されている教育委員の委員としての任期は
変わらず、引き続き教育委員としての活動は続けていただく予定であります。
平成25年度から始まりました粟島しおかぜ留学は、着実に留学生を増やし、
27年度の留学生数は小中学生合わせて10名、学校全体の児童生徒数も27
名を見込んでおります。島の子どもたち、移住者の子どもたち、そしてしおか
ぜ留学の子どもたちが、良き友、良きライバルとして切磋琢磨し成長出来る学
習環境づくりに力を入れていく所存です。
しおかぜ留学は、紆余曲折はあるにしても、今では島の活力の大きな柱にな
ろうとしています。学校が廃校になった島や集落では急激に人口減少すること
を考えれば、しおかぜ留学は、学校の存続、強いては地域の存続に多大な貢献
をしているものと思います。今後も引き続き、しおかぜ留学事業を推進してい
きます。
また高校寄宿舎晴海寮の島出身者の寮費を引き下げることにより、保護者の
経済的な負担軽減を図り、子育てのしやすい島として、Uターン者、Iターン
者の獲得と流出を防いでいきたいと思います。村の経済的な負担は増えますが、
引き下げる寮費の分はへき地児童生徒援助費等補助金の対象となっており、国
制度を有効に活用しながら子育て環境整備に努めていきます。
最後に粟島浦村奨学金貸付条例を改正し、Uターン者の奨学金返済免除規定
を設け、島出身者がふるさと粟島に戻りやすくなるよう、又村が必要とする人
材を確保しやすいように制度を改めます。
○ 粟島浦村における鹿駆除について
平成 14 年度(2002 年)に持ちこまれた 3 頭から繁殖したニホンジカ(以下
鹿とします)の全頭駆除は、本村の生物多様性を守るための重要な課題です。
鹿の被害は全国でも大きく、農林漁業被害だけでなく、マダニの媒介による健
康被害、土砂災害による生命及び財産への甚大な被害が本村でも起こり得ます。
鹿の繁殖率は高く、年数を重ねるごとに爆発的に個体数が増加することから、
3 年以内での全頭駆除を目指します。手法は、くくり罠や囲い罠を用いた直接捕
獲、ネットによる区画分けを行う環境整備、GPS 首輪での生息域調査やカメラ
トラップによる生態調査を行います。駆除は村や地域住民、国や県、専門知識
を有する各団体と連携し、強い捕獲圧を維持しつつ進めてまいります。今後の 3
年間での全頭駆除のためには、分断ネットの追加など、完全駆除までに約 1 億 4
千万円が見込まれます。ただ現在、農業被害が無く完全駆除をするための国県
の補助事業が無いために、補助対象として採択してもらうために、関係機関へ
の要望活動による働きかけをしていきます。
○ 安全情報伝達施設について
平成 27 年 2 月 28 日をもって、オフトークのサービスが終了いたしました。
これに伴い、昨年 6 月 20 日より、オフトークの代替の安全情報伝達施設を整備
してまいりました。そして、この度、平成 27 年 2 月 28 日に完成いたしました。
整備内容は、今まで使っていたオフトークの利便性をそのまま引継ぎ、4桁の
番号で島内は無料通話が可能となりました。また、島内の屋外スピーカーの箇
所は、6箇所となっております。高齢者が多い本村では、高齢者が視覚的に操
作的に分りやい端末を選択しました。以前のオフトークとの改善点は、2分間
の放送を8件録音できる機能が付いており、停電時には、放送の回数にもより
ますが、約1日は島内放送が使えます。今後は、この情報システムをさらに有
効活用し、関係機関の広報活動に積極的に活用されることを望みます。
結び
結びに、わが国の人口減少と高齢化は、全世界に先駆けての現象です。そし
て我々離島における人口減少や高齢化、人材不足等の社会現象は、必ず都会で
も数年後に生じる現象です。
地方創生は、そうした将来の姿を見据えての国と地方の構造改革です。国も
地方も同じ思いで取り組まなければ、この地方創生の取り組みは達成すること
が困難です。粟島でも、住民が一丸となって、地方創生事業に取り組まなけれ
ば、粟島の将来性はないものと思います。粟島では外部人材を積極的に活用し、
行政の構造改革、果敢に新たな事業に取り組み、粟島の創生に取り組んでまい
ります。
住民の皆様のご理解とご協力を是非ともお願い申し上げ、私の施政方針とい
たします。