◆帝王切開の麻酔◆ 当院では、帝王切開で出産する場合、麻酔科医師が麻酔を担当します。 予定手術で行う場合、以下のような流れで行います。 ≪手術前日~手術前≫ 帝王切開手術予定日の前日に入院していただきます。麻酔担当者が手術前日の 17:00 頃 までにお部屋にうかがい、麻酔の説明を行います。今までにかかった病気やアレルギー、 内服薬などありましたらお伝えください。不安な点、不明な点がありましたら、何でも質 問してください。 基本的に食事は手術前日の 21:00 まで、水分は 24:00 までとなっております。これは、 手術中の嘔気や嘔吐、誤嚥などの危険を避けるためですので、ご了承ください。 ≪手術室にて≫ 手術室に入った後、患者さんの体の状態を把握するため、数々の器具(モニター)を装 着します。通常のモニターは、心電図、血圧計、酸素飽和度、体温計などがあります。モ ニター確認後、点滴をします(病棟で点滴をすることもあります)。その後、麻酔となりま すが、帝王切開手術の場合、多くは、脊椎麻酔(いわゆる下半身麻酔)で行います。 脊椎麻酔では、腰のあたりから、背骨の中にある脊髄の近くに局所麻酔薬をいれ、下半 身を麻酔します。手術台の上で横向きになって寝てもらいます。膝を抱え、猫の様に腰を 丸めますと、麻酔を行いやすくなりますのでご協力ください。麻酔科医が背中を消毒し、 清潔な布をかけます。腰骨(腰椎)の間の皮膚に痛み止めの局所麻酔薬を注射します。そ の後、麻酔用の細い長い針を脊髄の近くまで進めます。目的の場所に針先が届いたら、麻 酔薬を入れます。麻酔薬が入りますと、数分で麻酔が効いてきます。足先から徐々に胸の ほうまで麻酔が効いてきます。麻酔がどこまで効いているかを確認し、十分麻酔が効いた 段階で手術開始となります。この麻酔では、冷たさや痛みは感じなくなりますが、触って いる感じや、引っ張られる感じは残ります。また、手術中、吐き気や呼吸が苦しい感じが することがありますが、麻酔科医が常に側にいますので知らせてください。 脊椎麻酔に加え、硬膜外麻酔を行う事があります。硬膜外麻酔は、脊椎麻酔と同様に背 骨の中にある脊髄といる神経を麻痺させる麻酔方法ですが、薬を投与する場所が異なりま す。脊椎麻酔をするときと同様の体位で行います。腰骨の間の皮膚に痛み止めの局所麻酔 をし、その後、硬膜外麻酔用の針を刺します。針が目的の場所(硬膜外腔)に到達したら、 直径 1~2mm の細いチューブを留置します。チューブは背中にテープで固定し、そこから 麻酔薬を注入します。硬膜外麻酔により、腹部を中心に、冷たさや痛みを感じなくなりま す。主に、チューブから麻酔薬を持続的に注入し、術後の痛み止めとして使用します。 ≪手術が終わったら≫ 手術が終わっても、しばらくの間は、麻酔が効いているので、下半身はしびれたままで す。麻酔が切れてきて、痛みがあるようでしたら、座薬や点滴で痛み止めを行いますので 知らせてください。脊椎麻酔後、頭痛や吐き気を起こすことがありますが、安静にしてい ればそれほどひどくはなりません。 硬膜外麻酔を併用した場合はチューブから持続的に麻酔薬を注入して痛みをとります。 腹部や足など麻酔が効いている部分にしびれや重だるさを感じることがあります。麻酔薬 の注入を中止すると、1、2 時間で感覚が戻ってきます。硬膜外麻酔は 1~2 日使用します。 硬膜外麻酔後に頭が痛くなったり、腰が痛くなったりすることがあります。また、背骨の 狭い所にチューブを入れるので、チューブが入らなかったり、入ったとしても麻酔の効き が悪いことがあります。非常に稀ではありますが、チューブを留置してある付近で出血し、 血の塊を作り、神経を圧迫してしまうということがあります。 また、脊椎麻酔時や、硬膜外麻酔のチューブから入れる薬の副作用で、体のかゆみが強 く出ることがあります。あまりかゆみが強いようでしたら、硬膜外麻酔の麻酔薬の注入を 中止しますのでお知らせください。 ≪全身麻酔について≫ 今までは、予定手術の一般的な流れについて説明してきました。赤ちゃんに麻酔薬が効 いてしまうと、生まれてから直ぐに赤ちゃんが泣いてくれず、赤ちゃんに大きな負担をか けることになります。ですから、帝王切開では、赤ちゃんへ麻酔薬が効いてしまうのを防 ぐため、基本的には脊椎麻酔で麻酔を行いますが、以下のような場合には、全身麻酔を行 います。 1、妊婦さん、あるいは赤ちゃんの状態が悪いため、急いで手術を行わなければならない 場合。 2、妊婦さんの状態が、脊椎麻酔ができない状態である(血が止まりにくい、背骨が大き く曲がっているなど)。 緊急で帝王切開を行う場合は、手術前に麻酔のお話をする余裕がなく、説明を省略する 場合もあります。また、脊椎麻酔で手術を始めて、手術中の状態により、途中から全身麻 酔に移行するということもあります。 全身麻酔の流れを説明します。 手術室に入ったら、心電図や血圧計などのモニターを装着します。マスクを顔にあて、 酸素をよく吸っていただきながら、同時に手術前の準備をします。具体的には、お腹を消 毒し、清潔な布をかけます。手術ができる準備がととのいましたら、点滴から麻酔薬を投 与します。麻酔薬投与前に、こういった準備をするのは、麻酔薬投与から赤ちゃんが出て くるまでの時間をなるべく短くし、赤ちゃんへの麻酔薬の移行をできるだけ少なくするた めの工夫です。麻酔で眠ってから呼吸をするためのチューブを口から気管内に入れ、人工 呼吸を行います。麻酔科医は、常に側におり、血圧や脈拍、呼吸状態や、体温などの維持 を行います。手術の状態によっては、輸血を行ったり、観血的動脈圧モニター、中心静脈 圧モニターを行います。 手術が終了し、目が覚めたら、気管の管を抜きます。状態が落ち着いたら病室に帰りま す。術後、痛みがあるようでしたら、点滴や座薬の痛み止めを行いますのでお知らせくだ さい。また、手術が長時間かかったり、体に負担が大きくなった場合、手術終了後も麻酔、 人工呼吸などを続け、全身状態の改善を待つこともあります。 最後に、私たちスタッフは、お母さん、赤ちゃんの事を考え、一番安全であると考えら れる方法で対応しています。不安な点、わからない点などありましたら、ご相談ください。 神奈川県立こども 神奈川県立こども医療 こども医療センター 医療センター 麻酔科
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