病気ではなく人を診るために、新たな挑戦

Doctor's File
会員インタビュー
Vol.10
勤務医時代は脳血管障害や脊椎に関する治療
病気ではなく人を診るために、新たな挑戦
脳血管障害や脊椎に関する専門性を活かした
テーラーメード医療の実践
おおくぼ脳脊椎クリニック 院長 大久保 信治
ので、投薬や処置をはじめ最終的には手術まで、
を専門とし、年間 100 を超える症例に対して手術
患者さんのニーズに合わせたテーラーメード医療
を行ってきた大久保信治先生。
を行えるよう心掛けています。
昨年 5 月に土浦市で新規開業し地域医療を実
先生
脳血管障害の治療では予防を中心に、生活習
践、1 年が経過した。大久保先生に開業の経緯
慣病や心房細動の治療に取り組んでいます。脳卒
やこれまでの専門的診療をどのような形で活かさ
中では心房細動が原因となり脳梗塞を引き起こす
れているか伺った。
ケースが多く、この点について少しでも啓蒙がで
きたらと思っています。特に最近、ワルファリンの
― これまで脳神経外科専門医としてご勤務を重
欠点を補う抗凝固薬として新規抗凝固薬が出てき
ねてこられ、石岡循環器科脳神経外科病院で
ており、予防重視の観点からもこの薬剤が浸透し
の勤務を最後に、昨年、土浦の地でご開業さ
ていない状況を改善していきたいと考えています。
れておりますが、開業のきっかけについてお聞
かせください。
石岡循環器科脳神経外科病院は二次救急医
また、MRI がいつでも予約なしで撮れる体制
にあります。早期発見・早期治療を心がけてい
ます。
療機関であり、脳血管障害が原因で助からない
かもしれない重症の患者さんが毎日のように運ば
― 脊椎疾患では手術が必要となる場合、先生が
れ、診療にあたっていました。そのような光景を
執刀される。クリニックの医師が手術まで担当
目の当たりにして「一歩前の段階で食い止めてい
するスタイルは珍しいですね。
大久保信治先生略歴
石岡循環器科脳神経外科病院の院長をはじめ
つくば 市出身。山梨医科大学医学部卒
らなかったのではないか・・・」という思いが募り、
スタッフとの良好な関係があってこそ出来ることだ
業、1991 年、同大学附属病院脳神経外科
脳卒中の予防を地域に密着して行うことが大事で
と思います。信頼関係が重要です。
入局。同病院をはじめ複数の病院で勤務
れば・・・」
「予防をしていればここまで酷くはな
また、当クリニックには、石岡循環器科脳神経
医を努め、故郷・茨城にある石岡循環器科
外科病院で撮影した画像をリアルタイムで確認す
脳神経外科病院に赴任。その後 2014 年 5
土浦で開業した理由ですが、私自身つくば市
るシステムがあります。当クリニックの患者さんを
月に「おおくぼ脳脊椎クリニック」を開業。
の出身で高校が土浦一高でしたので、この地であ
病院で手術した場合、翌日、私はクリニックの外
この間、 北 海 道 大 学 脳 神 経 外 科 に国
れば、地元であるつくばや土浦の方々も通えます
来がありますが、患者さんの翌日の画像を確認す
内留学、PELD で世界的に有名な韓国の
し、今まで診ていた石岡方面の患者さんも診るこ
ることも可能ですし、病院の患者さんで、担当医
Wooridul 病院に短期留学、帝京大学溝の
とができるからです。
から相談を受けた場合もこちらで画像を確認する
口病院整形外科の研究会に参加。
はないかと思うようになり、地元の方々の健康に
貢献するため開業をしました。
ことができます。患者さんの情報を共有できるよ
― これまでのご専門を活かした形で診療をされ
うに努めています。
ているそうですが、具体的にどのような診療を
行われているのでしょうか。
もともと脳血管障害に対する治療が中心でした
が、十数年前より徐々に首・腰の椎間板ヘルニア
― 今後の目標を教えて下さい。
― 腰椎椎間板ヘルニアに対する手術は PELD
の施行件数が多いのでしょうか?
PELD は一つの手段としては持っていますが、
今はまだ行っていないのですが、訪問診療に
も取り組みたいと思っています。積極的に行うと
いうよりは、当クリニックに通われていた患者さん
や狭窄症といった脊椎疾患に興味を持つようにな
内視鏡で取り除けないケースもあるなど、必ずし
で、症状が重くなり通うことができなくなった患
り、北海道大学脳神経外科への留学などを経て、
も PELD が良いとはいえない場合もあります。患
者さんを訪問していくといった形をとりたいと考え
脊椎疾患に対する知識・手術の技術を身に付け
者さんには、従来の切開する方式と内視鏡手術、
ています。
ました。腰椎椎間板ヘルニアに対しては、経皮
両方のメリット・デメリットを伝え、より確実な方
的内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(PELD)
法をとるようにしています。
も行っています。
最近、PELD はマスコミでも取り上げられる機
現在は月・火・水・金・土はクリニックで診療
会が多く、また、低侵襲であることから、特に早
を行い、休診となる木曜日は石岡循環器科脳神
期復帰を望む若い患者さんが PELD を希望する
経外科病院で手術を行う体制をとっています。開
ケースが増えています。
業後 1 年間で、脊椎疾患 60 ∼ 70 症例に対して
手術を行っており、このうち 8 ∼ 9 割は当クリニッ
クに通われている外来患者さんで手術適応となる
方に対して手術を行っている状況です。
その他、
当クリニックで行える日帰り手術として、
背骨の圧迫骨折によって寝たきりを余儀なくされ
た患者さんに対し、椎体内にセメントを注入する、
今まで診てきた患者さんの一生にかかわって診療
をしていきたいと思います。
― 会員の先生方にメッセージをお願いします。
脊椎疾患では、整形外科の先生でも MRI が
すぐに撮影できないために診断がつかない場合、
− 患者さんは地元の方が多いのでしょうか?
当院で MRI 撮影を行い、読影して患者さんをお
地元の方も多いですが、茨城県北、栃木県や
かえしすることも可能です。そのようなご要望があ
千葉県から来られる患者さんもいます。遠くから
れば、ぜひ、ご連絡を頂きたいと思います。MRI
来られる方は、ホームページをみて来てくれている
はお電話頂ければ、すぐに撮影することができま
のだと思います。
す。すでに、循環器科や眼科の先生方とは、こ
年齢的には、若い方から高齢の方まで、幅広
経皮的椎体形成術があります。この手術を行うこ
い層の患者さんが来られます。ヘルニアは若い人
とで、骨折部の疼痛改善、長期臥床状態による
でも発症します。地元の方は高齢の方が多いで
褥瘡・肺炎を防止することにもつながります。
すが、遠方から来られる方は若い方が多いと思
脊椎疾患に関してはブロック注射も行います
やはり信頼関係が大事だと思っていますので、
います。
のような連携を始めています。
― 先生の末永いご活躍を期待しています。本日
はありがとうございました。