パネルディスカッション「学校図書館とともにつくる探究型学習の可能性を探る」 【要旨】

●パネルディスカッション「学校図書館とともにつくる探究型学習の可能性を探る」 【要旨】
(司会:桑田てるみ、パネリスト:眞田章子、庭井史絵、野村愛子
+フロア)
(桑田)
『6 ステップで学ぶ中学生高校生のための探究学習スキルワーク』を紹介する前に確認しておき
たいことがあります。学校図書館が頑張るのも、教科が頑張るのも、どちらも児童生徒の学びの向上を
目指してのことだと思います。
「生徒のために」ということを確認しておきたいと思います。
さて、
「図書館で思考力」と銘打っていますが、生徒たちの会話からいくつかヒントを得て作っていま
す。
「生徒のために」を追及すると、生徒を見ることから始めないと。その結果、図書館での会話の中に、
学校図書館が思考力を育成できる証明がありました。
例えば、生徒のつぶやき「レポートのテーマ何にしよう」には、
「テーマ決め」の思考法を示すことが
できます。本を探すときの「中国の本はどこですか?」に対しては、
「中国の何を調べるか」を指導する
方法として、NDC を使って考えさせることができます。キーワードを考える場合も、キーワードビルダ
ーで考えさせます。これの基本は図書館員なら知っているシソーラス、上位語・下位語などの関連を考
えることにつながります。生徒に「シソーラス」と云ってもわからないですが、ワークシートを示すこ
とによって分かりやすくなります。そして情報をまとめる思考もガイドしようとしているのが、この本
です。司書が生徒と何気なく交わしている会話の中に「思考力」を育成する鍵があるのです。
図書館利用指導も変化していて、本の並び方、探し方ではなく情報リテラシーに変わっていることは
みなさんもご承知かと思います。その情報リテラシーさえも越えたところにある「思考力」を育成する
ために、グラフィック・オーガナイザーを使ってみたのが、このワークシート集です。
そこで、これから自分の研究と実際に GO を利用した授業について、パネリストのみなさんからお話
ししてもらいたいと思います。野村さんは「5W1H」の思考を、庭井さんは「因果関係」の思考を、眞
田さんは「論証」の思考を、それぞれが実際の授業の中で使った結果を検証して学会発表もしています。
実際の利用の様子を報告してもらいたいと思います。
(野村)
「探究型学習を支援する学校図書館」
本校では各学年のどの教科で、探究学習のプロセスのどこの部分を指導するか図表にまとめました。
(スライドを見せながら)縦軸が探究学習のプロセスです。横軸が学年で、色の濃い部分が重点項目で
す。中 1 では、資料収集をメインにし、中2ではもう少し広げて情報の取捨選択まで。中3ではテーマ
設定からまとめまでと一通りプロセスを終えるようにしています。はじめは、図書館を使った授業自体
が少なく、このような表は作れませんでしたが、7 年目になってだいぶ実践が増えてきて、このような表
を作れるようになった。私が授業に入るときは、図書館利用ガイド(学び方のステップを示したパンフ
レット。いまどのステップにいるのかを示すようにしている)を持参させるようにして、図書館で一斉
授業は難しいので、教室に行って授業をしています。
「6ステップで学ぶ中学生・高校生のための探究学習スキルワーク」ができる前でしたが、ステップ
を示しているのは同じで、1 冊のワークを配布しました。資料を読み解くためのワークシートも示して、
奥付をみたり、目次を見たり、章の見出しなどを書きこみながら、整理できるようにしました。まとめ
る、というのはまだ自分が「歯車」などを使いこなせなかったので、原因と結果を示すだけになりまし
た。発表や評価のワークシートもあり、相互評価できるようになっています。
私がこのような支援すべきと思うようになった理由は、生徒が「環境問題の本ありますか」としか聞
いてこない現実に、テーマ決めから生徒に関わっていかざるをえないと思ったためです。その結果「き
っかけ DE マップ(5W1H マップ)
」ができました。5W1H で、問いを整理し、生徒が書いてきたもの
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をチェックして、きちんと問いになっているか指導していきます。生徒の書き方では、問いだか答えだ
かわからないものも多くありました。5W1H マップを使うと、Who 以外のものは高い割合で問いを作れ
るようになっていました(日本図書館情報学会:
「探究型学習において「グラフィック・オーガナイザー」
を利用する効果とその課題」より)
。テーマの大小で NDC を使って分析すると、3 区分だと大きすぎま
したが、4 区分ぐらいまで細かいと 5W1H もうまく作れることが分かりました。今後は、
「情報を集めて
分析する」や「書く」ことにまで関われたらいいなと思っています。
(桑田)どうして野村さんが司書という立場でこのツールを使って授業ができたのですか?
(野村)先生と生徒の活動を見ていて、テーマを決めるのが大事だなと思い、
「きっかけでマップ」を桑
田さんからもらって先生に見せたら、受け入れてもらえました。
(桑田)手元にツールがあって、それを見せることによって、先生方が納得してくれて協働ができたの
ですね。みなさんも何か教科の先生方と話をするきっかけのツールが必要ではないでしょうか。このワ
ークシート集がそうなってくれるといいですね。
実は野村さんの実践には、
『思考力の鍛え方』の中にあるように、数学の先生との協働という、珍しい
事例もありますね。その後の展開は?
(野村)今年もやろうね、と言われていて、いろいろ教えてほししいです。
(桑田)今年もやりたいということは、先生が満足してくれているのですね。事務職としての司書の壁
は非常に厚いものですが、先生から壁を崩してくれる感じですね。その点、庭井さんは司書教諭として
授業を持っていますので、また違った展開が期待できますね。
(庭井)
「“調べる”から“考える”まで」
慶應義塾普通部は男子校で、私は国語や社会の教科は持たないのですが、教員として部活や担任は他
の先生と同じ様にやっています。中 1 国語の時間数のうち 1 コマが「図書の時間」に割り振られていま
す。
『思考力の鍛え方』の中で私が書いた事例は 3 つです。「林間学校事前学習」
「世界の国調べ」「絵の
読み解き」です。眞田さんの授業とは違って、2 年前くらいから自分がやっていた実践が、桑田さんと同
じことやっているね、ということで、この本に載せてもらいました。
前任校の甲南中学校でも「情報活用」という授業を担当していました。その実践を発表した 10 年前の
パワーポイントを見ると「問う力」や「読む力」が必要なことは分かっているが、
(私は)そこにつなげ
るスキルの指導をしていると発表していました。
(スライドを見せながら)これは、国語の先生との協働
(『坊ちゃん』の調べ学習)で、
「情報活用」では「調べる」という部分を担っています。これが 10 年前
で、普通部に来てからも 5 年間くらいは同じように、
(私は)本を使った「調べ方」を教えるよ、ほかの
情報収集、たとえば実験は理科でやるよ、そういうスキルをあわせて自由研究(探究)につながるんだ
よ、と生徒には説明していました。
それが、ある生徒との出会いで現在のような形に変化しました。その生徒は、調べ学習コンクールの
常連入賞者ですが、1 年生の時から資料収集を手伝っていました。あの本がない?これはどうやって調べ
るの等、いろいろ質問してくる生徒だったので、あちこち連れて行ったり資料を渡したりしました。も
ちろん社会の先生も社会科の視点でアドバイスをしていますが、中 3 の時には章立て、構成までを「な
んで私が指導するの?」といいながらやっていました(笑)
。そのときに、資料提供で頼られているのは
分かる、でもそれ以外になぜ社会の教員ではなく自分のところに来るのかなと考えました。その結果、
読んだり考えたりする課題を、図書の授業の中に取り入れるようになりました。
これは今、図書館でやっている授業で、ホワイトボードに「事実と意見」と貼ってありますが、テー
マは学校図書館と公共図書館、国会図書館の違いについてです。これまでは単に解説して終わっていた
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のですが、今はこういったワークシートを使って、自分で違いを発見させるようにしています。授業の
ねらいは、以前と同じで「図書館の違い(館種)
」を理解させることです。
これは異文化理解の課題で絵本を使った授業で、あえて文章を伏せて、絵だけを見せてどの国か想像
させます。その予想が合っているかどうか本を使って調べさせ、絵のなかに国を特定するための根拠と
なる情報を見つけさせる。そうすると、例えば大きな月や女性の衣装にも意味があると発見します。そ
れを、ワークシートを使いながら、きちんと根拠を示しながら説明できるようにしています。
それから、これは地理の先生から毎年出ている課題(レポート)で、国をひとつ取り上げて地理的な
特徴をまとめるというものです。それがあまりにも出来が悪いということで先生が嘆いていました。ち
ょうど図書館でも、調べるプロセス全体を教えたいなと思っていたので、先生に「調べるテーマがない
ので困っていたから、よかったら一緒に指導しませんか」と提案して実施しました。良かったこととし
て、歯車マップを使った結果、小テーマ(国の特徴)同士を関連付けて考えることに貢献できた点があ
ります。ただし、歯車に入れて説明しやすいテーマ(特徴)を安易に選ぶ傾向があり、それがその国の
特徴として取り上げるべきかどうか?という点で、教科教員のねらいと外れる生徒が多く見られました。
それが、次年度以降の検討事項です。
(桑田)庭井さんが話をすると、それは専任の司書教諭だからできたといわれちゃいますよね(笑)。で
も、庭井さんのやっていることは皆さんのモデルなのです。このような「調べる」だけにとどまらない、
「書く」
「読む」までをカバーした図書館の教育のエッセンスを少しでも取り入れて、授業を持たない司
書もやっていくことが大切だと思っています。授業を持たないからできない、と閉ざすのではなくて…。
では、その「書く」ことへの指導を実践した眞田さんはどうでしたか。
(眞田)教科「サイエンス」は,表現力・思考力を育成する教科ですが、中3の授業でテーマを 5 つ教
員が指定して意見文を書かせました。教員は「指導がしやすかった」
「型があったので指導しやすかった」
という意見でした。しかし,
「根拠としてあげたことの情報が収集できなかった」という新たな問題がで
てきました。GO を提供すれば図書館はもういらないじゃないかと思ったが「じゃぁ来年度から図書館の
調べをきちんと入れよう」ということになりました。
(桑田)生徒が簡単にかっこいい文章が書けたことで、国語の先生にとっては嬉しい部分もあったよう
ですね。一方で、型にはめて書くことで、生徒の薄っぺらな知識が目に見えてきたのですね。論証文を
書かせると情報収集しなければいけないのだ、ということが教員に強くイメージされたということがわ
かりました。生徒自身も、根拠を述べるためには、図書館を使わなければいけないことに気づいたとい
うことが大切ですね。
(眞田)これまで原稿用紙で数行も書けなかった生徒が,数枚書けたり,接続詞がきちんと使えたり。
型ができるとそれを打ち破りたいという欲も教員にでています。
(桑田)ディスカッションに移りましょう。
(F1)2 つあります。今日の催しは「資料提供の先に」だと思う。学図研の議論では「資料提供」という
言葉が多く出ていたが、その人たちがここで最先端の実践を見ても、
「GO の全部が資料提供だろう」と
くくられてしまうような気もするが、私は、その先にあるような気がします。
もう一つは用語として「GO」を使っているが、中身は「ワークシート」になりそうだが、そのまま
GO を使うのか、「ワークシート」との違いなど、どう整理するか悩んでいます。
(桑田)すでに GO を「思考図」として表現している方がいます。その用語を使うわけにもいかないと
思うのですが…。GO 的な発想をしつつ図書館で調べ物をしてほしいということがあるので、的を射た、
いい表現を探したいですね。
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(庭井)私の認識では、WS と GO の違いは、GO はデザインされた図。WS は、GO を含めて学校ごと
に教員や司書教諭が作ったもの。このワークシートにはこの GO を使ってみました、というふうに言っ
ています。
『6 ステップ』の GO を使って、現場に応じて加工する=ワークシートにするのも学校図書館
の専門性かなと思っています。
(足立)図解ってことばははずせないのでは?
思考を図式化して整理するもので、まさに「思考図」
(笑)
。
(F2)私も図で・・・調べて行き着いたのはビジネス系のもので明らかに定型がある。マイクロソフトの「み
える化図」と GO は違うのでしょうか?
(桑田)思考の可視化ということで、ビジネス系や MBA のものもたくさん見てきました。アメリカで
も思考を整理するために、それらを図書館でも使おうとしたのだと思います。例えば、フィッシュボー
ンマップなど名前が決まっているものもあります。読解のためや、クリティカル・シンキングを支える
ためのものとして、1980 年代から教科書などが出版されていたので、
私たちはそれを参考にしています。
名称は様々でした。
(F3)哲学の本を読んでいたら「思考力」とは自分の考え方を辿るもので、発想力や批評や論理力・・・ど
のように違いがあるのかちょっと引っかかった。また、論証文を書こうとする時、56 ページが参考にな
ると思うが、章立てを支える段階的なプロセスがあるといいのではないかと思いました。
(桑田)論理的思考や創造的思考などがあると思うのですが、本書は「論理的な思考力」の鍛え方だけ
を取り上げています。章立てについては、私は大学の初年時教育も担当していますが、論証文から章立
てに移行するときに、演繹的思考と帰納的思考を教えています。このような抽象的なことは中学生には
難しいですね。文章単位で思考を働かせることと、章の単位で思考を働かせるのでは違うと考えている
ので、中高生用のうまい方法を思案中です。たとえば、歯車の思考では、庭井さんが中学生に実践した
がうまく行かない部分もありましたしね。
(足立)思考法には、クリティカルとクリエイティブがあって、think creatically という人もいます。心
理学系と哲学系があって、私が師事したリチャード・ポールは哲学者。ヨーロッパでも、子どもたちに
哲学的な思考を学ばせようとする動きがあって「問い」をもたせ、論証の方法や公正な思考や弁証法的
な思考法を育てようとしています。日本に紹介されているのは、哲学系よりも心理学系のほうが多いで
すね。
(桑田)私たちが参考にしたのも認知心理学です。新学習指導要領の中学国語で「批評」
「批判」という
スキルが今回復活しました。今まで入っていないスキルなので大きな話題になっています。国語科のな
かで培ったクリティカルな思考力を、総合的な学習の時間の探究でも利用するというイメージでしょう
ね。自分で批評して論証することが求められています。その時にクリティカルに考えるためのツールが
必要だと考えています。
(F4)オーストラリアでは生涯教育者の育成、カナダではクリティカル(アメリカに対して)など、国
によっていろいろな立ち位置があるように思います。大学ではアカデミック・ライティングをゴールに
おいてきました。高校では、このようなアカデミック・ライティングを目指せばよいのでしょうか。学
習指導要領で示されているような生きる力とか・・・
型にはめることについては、大学のなかでは明確に拒否することがありました。クリエイティブ・ラ
イティングを教えている先生でした。卒業論文や修士論文を書く学生はそれらを見たくなります。卒論
のレベルはこんなことが書けていなければならない、など何となく目標があります。高校ではピア同士
になるために、自分がどれくらい出来るようになればいいのか、何が目安になるのでしょうか。
(桑田)学習指導要領にどうしてもしばられるので、
「生きる力」を目指すべきでしょう。アカデミック・
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ライティングは目的が明確なので、むしろ楽な目標だと思っています。生涯学習者を目指す学校図書館
の姿が多くの方に理解してもらえていないところもありますね。そこで、実践者のみなさんに、目標を
聞いてみましょう。庭井さんのように自分の目標を持って出来る人は少ないでしょうが、一般には、教
員が考える目標に図書館の目標を付け加える感じでしょうか。
(眞田)週 2 時間のサイエンスでやったところで,どれくらいの力が身についているのか手探り状態。
それならやらなくていいかというとそうでもなく、学校の目指す教育に寄り添って学校図書館が旗を振
ってやっていいのではと思っています。桑田さんみたいな人が図書館にいたらどんなにいいだろうと思
うのですが(笑),図書館職員も実力を上げて教科に寄り添っていかないといけない。
(野村)私の学校では中 3 国語の後期で、日本人論を書きます。それをいきなりやることは難しいので
中1から段階を追ってやることが大事かと思っています。
(庭井)私の場合は、生徒の進級に関わる評価権を持っているので、ある程度は、学習指導要領に沿っ
たカリキュラムを組み立てなければいけない。なぜその評価をするのか、きちんと保護者にも説明する
必要があるので、国語の中のこの部分を、こう評価しますと言えるように準備はしています。
(F4)大学では説明をするために評価することが苦慮され、そのためのスタンダードでした。その能力
がついたことをどう評価するかということが計れなくて、私が見る限りどんづまりだと思います。眞田
先生がおっしゃったように、非常に長いスパンのことだと思います。どうやって自己評価・・・成果物が良
かったかどうかを評価したかをお伺いしたい。その時にレポートのどの部分を評価したのかということ。
(桑田)司書という視点からすると「図書館は評価するところではない」という思いがあり、生徒の成
果はあまり見てこなかったこともあるかもしれません。もちろん自分たちの活動の評価は必要ですが。
あんがい自己満足で終わっていることが多いような気がします。つまり、スタンダードがないので評価
できない。司書で生徒の学びを最後までチェックできる人が少ないと思います。たとえば、野村さんの
ように5W1H のシートがどのように使われたかは評価できても、学びを最後まで評価することは難し
いのではないでしょうか。
(野村)確かに最後まで評価できていないですね。テーマ決めであそこまでやったのに、成果物を見て
「えーこんな結果になったの」と思うこともある。
(眞田)教員は評価を出すことが大きな仕事でもあると思うのですね。目標の違いというか。
(庭井)私の評価は逃げているところもあります。最初は、主観も混じっておおらかにつけていました。
それは、国語の成績のほんの一部しか担っていなかったからです。でも、3 年前からウェイトが高くなっ
てきたのでテストをはじめてみました。参考文献がきちんと書けたか、資料に基づいた根拠を示してい
るか、といったスキルとして評価できる部分が成績の半分を占め、残りは彼らが作った成果物に対する
評価を平常点として足しています。
(F1)今のやり取りを聞いていて思ったのですが、1998 年に IP2 が出てアメリカの探究型学習が映像を
伴って入ってきて、探究型学習を支える図書館のイメージが出てきました。そこに知的自由や民主主義、
コミュニティを支える児童生徒の概念が入っています。日本では具体的なことは入ってくるのだが、理
論的なことが入ってきづらい。21 世紀のものは、学校図書館で取り入れられないと思いました。思考力
が大事だというところは伝わってきます。GO が便利だというのが入っていっても、もともとどんな力を
つけたいのか、どんな児童生徒を育てたいのかという理念が最終的にないのではないか。現場の先生は、
今ある現場しか見ていないのではないでしょうか。
(桑田)学校図書館はまるで「お化け煙突」のようで、自分の置かれている立場によって目標が違って
来てしまうようなところがあります。司書、司書教諭、教科教諭など立場によって目指すべきもの、見
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ているものが違う。それでも日本の学校図書館の確固たる基準を作るべきだと思います。いろんな団体
があり、色んな立場があるが、まずはこうなのだというものをつくるべきです。そうでないと評価もで
きないし、すり合わせもできない。私が最初に話した「自立した学校図書館」像は、最終的には学校文
化の中で誰から見てもブレの無い像でなければならないと思っていますが…。
(F5)現任校で 2 年目、その前は多摩市に 6 年いました。2003 年に足立先生の『インフォメーションパ
ワーが教育を変える!』を読んですぐに実践しました。コラボレーションをして 7 年目。4-5 年目からク
リティカル・リーディングを加えて実践しています。各学年での目標を立てています。いろんなことを
勉強しています。
(桑田)
『思考力の鍛え方』の p.238 にあるコラボの段階があるのですが、どの段階でしょうか?
(F5)モデル C (Integrated Instruction) です。国語だと 2 年生教育出版夏の・・・教員からどんな風にコ
ラボをやりたいかを聞いて、東京大空襲についてやりたいということだったので「大人になれなかった
弟たち」を利用して、アニマシオンやクリティカル・リーディングをしました。3 年生では「海がめと少
年」でやってくれということで、ちゅら島 DVD を利用して、児童に見せて絵本を担任と読みあわせ、私
が作ったワークシートを利用して、学校図書館に資料を置いているものを利用して感想の根拠付けを行
い、
「カンカラサンシン」も見せたりしました。
(桑田)図書館発でやることはあるのですか?
(F5)職員会議で、これまで多摩市でやってきた実施を説明して、それに対して教員から提案があって、
図書館からこんなことができますよと提案しています。
(足立)実践資料をお持ちでしたら、別の機会に見せてください。
(F6)中央大学杉並高等学校、常勤の司書がいます。現代文高校 3 年で 6000 字程度の論文を書くので
すが、GO を利用しないと学力格差を補えないと思っています。思考力と論理力の使い方、ワークシート
を使った良さとして、ディベートの立案をするのに活用できます。GO は読解にはいいが、クリエイティ
ブな課題には難しいと思います。物語文を GO で読む場合だと専科の先生は浅いと思うかもしれないが、
「私は・・・」で止まっていた生徒が 400、800 字書けることは動機付けとしてすばらしいと思います。GO
を使いながら理解や思考を深めていく問題解決の方法は提案できても、問いを立ち上げる、情報に軽重
をつける尺度の設定がこれからの課題だと思います。資料提供の先に学校図書館があるとするなら、
「あ
なたの問いをどう支援するか」がポイントだと思います。
(桑田)図書館には、さまざまな情報と、それを探すツールがあるので、そこから教員とどのように協
力していけばよいか考えていきたいですね。GO のような型を示すことは、底辺層をあげるのに効果があ
ります。しかし、型を破る、または型を必要としない生徒を伸ばすのは今後の課題ですね。
(足立)今日は、現場と研究者とのコラボレーションが実現している姿を見せていただきました。研究
者が関わることで現場の実践がダイナミックに変わったと思うのですが、研究者の責任(役割)につい
て桑田さんのお考えを聞かせてください。
(桑田)私はもともと現場にいたので、現場視点で考えていきたいと思う。現場に役に立つようなこと
しかしない、ということに決めたのです。読んで心を震わすような読書と探究に必要な読書を合わせた
「読書プロジェクト」も現場のみなさんと一緒にやっていますし、庭井さん主導の「地理プロジェクト」
も進行しています。これまで司書がやってきたことをまとめることと、新しいことを試すことなどから、
学校図書館の新しいアイデンティティを確立したい。
「自立した学校図書館」を目指していこうと思って
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います。
(足立)あと、眞田さんのお話にあったように、学校文化をブレークスルー(突破口)にして学校教育
をチェンジするために、しっかり現場を見ていくことが大事だということも確認しておきたいと思いま
す。
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