ミニカラムと LC/MS/MS を用いた野菜中のグルホシネ-トの分析

ミニカラムと LC/MS/MS を用いた野菜中のグルホシネ-トの分析
(株)チュ-ケン生活環境研究所
゜松原英隆、高戸徳子、今村弥生
[目的] 近年, GC/MS や LC/MS を用いた様々な農
ル 2.0ml に溶解
薬の多成分同時分析法が提案され,迅速で効率的な農
(16)遠心分離後,上澄液を LC/MS/MS で分析
薬の分析が可能となっている。ただし,これらは非イ
装置:TSQ QUANTUM(Thermo)
,LC20A(島津)
オン性でしかも極性が小さく,アセトンやアセトニト
カラム:HYPERCARB(Thermo)150×2.1mm
リルのような有機溶媒による抽出が容易な農薬を対象
Parent ion:252.1,Product ion:210.0,Cll.Energy:15V
としたものである。しかし,農薬の中には水溶解度が
溶離液:1%酢酸溶液とアセトニトリル
大きな農薬もあり,これらの農薬は同時分析が困難で
グラジェント条件:5%アセトニトリル(0~2 分)-
個別分析の必要があり,操作が煩雑で,高い回収率が
100%アセトニトリル(2.1~7.0 分)-5%アセトニト
得られにくいものが多い。本研究では,除草剤として
リル(7.1~14 分)
の使用頻度が高く,イオン性で水溶解度が大きなグル
[結果] 図 1 は,
ほうれん草 5gに 50ng および 500ng
ホシネ-トをミニカラムと LC/MS/MS を用いて迅速
のグルホシネ-トを添加した試料のほうれん草 2g分
かつ高い回収率で分析する個別方法の開発を試みた。
について,
それぞれLC/MS/MS分析した結果である。
試料としては,ほうれん草を用いた。
妨害ピ-クの少ないクロマトグラムが得られた。
[方法] グルホシネ-トの分析方法を以下に示す。
ほうれん草 5gにグルホシネ-ト 50ng を添加した
(1)粉砕試料 5gを MeOH 50ml で 2 回振とう抽出
試料 5 検体を調製した後分析し,定量値の標準偏差
(2)抽出液をろ過後 5ml 程度まで濃縮
(σ)の 10 倍値から定量下限値を求めたところ,そ
(3)精製水 20ml を加えて超音波処理後 5ml に濃縮
の値は 15.6 ppb であった。また,ほうれん草 5gにグ
(4)精製水 10ml を加えて超音波処理
ルホシネ-ト500ngを添加した試料5検体を調製した
(5)GF/C ろ紙で吸引ろ過(精製水で十分に洗い込む)
後分析し,定量値の平均値と添加量との比較から回収
(6)ろ液を 50ml のメスフラスコに移し精製水で定容
率を求めたところ,平均値で 80%であった。以上の結
(7)20ml(試料 2g分)を強塩基性陰イオン交換樹
果,
本分析方法は十分に利用可能であると考えられる。
脂 SAX HF (1.0g)の 2 個直列ミニカラムに負荷
(8)ミニカラムを 20ml の精製水で洗浄した後,グル
ホシネ-トを 20ml の 20%酢酸溶液で溶離
(9)50℃以下で減圧濃縮乾固後,試料をメタノ-ル
で 10ml 容量のリアクティバイエルに転溶
(10)窒素ガスを吹付けて濃縮乾固後,試料をメタノ
-ル 0.2ml に溶解
:
20ng/2g 試料
90
80
70
60
50
7.85
40
9.07 9.11
30
8.13
20
10
0
100
5.18 5.53
6.09
6.14
8.27 8.63
7.22
9.57
10.17
7.43
90
(11)酢酸 0.5ml,オルト酢酸トリメチル 2.0ml を加
80
えた後,窒素置換して密栓し,80℃で 2 時間反応
60
200ng/2g
70
50
(12)放冷後,窒素ガスを吹付けて乾固
40
(13)残留物にメタノ-ル 0.2ml を加えて溶解
20
(14)アセトニトリル 2.0ml を加えた後,活性炭ミニ
7.43
100
30
10
0
4.96 5.37 5.65
5
6.09 6.31
6
7.19
7
7.87 8.13
8
Time (min)
8.78 9.11
9
9.62
10.15
10
カラム(300mg GL-Pak Carbograph)処理
(15)窒素ガスを吹付けて濃縮乾固後,アセトニトリ
図 1 グルホシネ-トの LC/MS/MS(SRM)分析例