Title 遷移金属触媒を用いた医薬品リード化合物の創製 Author(s) 宮澤, 眞宏 富山大学地域連携推進機構産学連携部門ベンチャー・ビ ジネス・ラボラトリー年報 = University of Toyama, Org anization for Promotion Regional Collaboration, Co llabpration Division, Venture Business Laboratory VBL annual report, 22: 31-34 Citation Issue Date 2010 Type Article Text version URL publisher http://hdl.handle.net/10110/13894 Rights http://utomir.lib.u-toyama.ac.jp/dspace/ 遷移金属触媒を用いた医薬品リード化合物の創製 研究代表者 理工学研究部(理学)宮津 真宏 (1 )プロジェクトの背景・ 目的 強い生物活性を 有するポリケチド、 アルカロイド、 糖類やポリ環状エーテル は、 多くの不 斉中心を 有する環状構造を 有し、 これらのエナンチオ選択的な合成法の開発 は、 創薬の観点 か ら極めて重要な課題となっている。 また、 これらの化合物には、 ヘテロ環構造を 有するも のも多数存在し、 その立体選択的合成法の開発も非常 に重要である。 我々は、 これまで種々 のヘテロ環構造を 有する化合物の合成を行い、 その一連の研究の中で極めて有効なPd触媒を 用いた環境調和型ヘテロ環合成法を 見出した1)。 今回、 本環化反応を 応用し2ーデオキシリボース両鏡像体の立体選択的合成法の開発を行った。 (2)研究成果 2ーデオキシーDーリボースの合成 昨年度、 DN A の構成糖である、 Dーリボース の全合成を 検討し、 cis-2-ブテン-1 4- ジオール を 出発 原料として全1 6工程で立体選択的に目的化合物の合成に成功したの(Scheme 1 )。 THPO HO r OH て- 「� H PdCl (PhCN , MeOH, THF 0, ,, 0 v、〈’ .::· δ、 b -- 2 Scheme 1 OH HO 4 3 今回、 RN Aの構成糖である2- デオキシ-Dーリボース の合成を 検討した 3)(Scheme2)。 出発原料 にlー リンゴ酸(5)を 用い, 常法に従いアルコール6を 合成した。 次に, 6のアルコーノレを 酸化し, Horner-E mmons反応を行い, 不飽和エス テル7を 得た。7のエス テル部を 還元し, 生じたアル コールを THP保護しTHPエーテル8を得た。 次いで DIB AL-Hによりアセタールを 位置選択的 に開裂さ せ生じたアルコールを D M P酸化し, 環化前駆体9を得た。 H02C γへco洲 OH 5 1) BH3・SMe 町OMe)s HO� :: I 。.......- 0 ニ Ph 6 _ 2) PhCH(OMeh, p-TsOH, CH2Cl2 (85%) THPOヘグγy 0'-./0 8 Ph 1) DIBAL-H, toluene 2) DMP, CH2Cl2 (78%) 1) (COClb, DMSO, then日3N Et02C ,グ\ノ\ y l 1)DIBA凶THF 』6, .,. 0 2) (Et0)2P(O)CH2C02Et τ 2)DHP, p-TsOH NaH, THF 戸h CH2Cl2 (78%) A (88%) THPO�グか�CHO OBn 9 Scheme 2 ( M eCN ) 2 このアルデヒド9 に対し, THF溶媒中, 3 eqのべンジルアルコールと 10 mol%の PdC12 を 用い環化反応を行った。 環化反応で得られた生成物10は, 3 種のジアス テレオマー混合物 であり, その選択性 は 5 .2 : 3. 8 : 1 であ った(Scheme 3)。 31 PdCl2(MeCNh THPO/、�へCHO OBn BnOH, THF ペゲ (55%) 9 OBn ペゲ + OBn グ’·· (J- OBn BnO 10b 10a 10c Scheme 3 この時点で、生成物の立体化学は決定 出来なかったので, 評品まで導 き立体化学の決定を行っ た (Schem e 4)。 10 を ジアステレオマー混合物のまま四酸化オスミウム 、 過ヨウ素酸ナトリ ウム で、ジオールを経由するオレフィンの酸化開裂を行い、 次いで 得られたアルデヒドを 還元 してアルコール11 を得た。ここで主生成物を シリカゲノレカラム クロマトグラフィー で 分離し, 水素雰囲気下, パラ ジウ ム 炭素 触 媒 で 接触還元してべンジル アルコ ー ル を脱保護し 、 2-deoxy-D-riboseを得た。この合成品と標品との1HNMRス ペクトルにはよい一致が見られた。 なお, 合成品も標品もアノマ一位に関して, 同様にα, Oの混合物 で あった。 以上の結 果よ り, 環化体10の4位の立体化学はRで あることが明らかになり2 -deoxy-D-ribose の全合成 を達 成した。 外}J 10 OBn 1 ) ���i���:� ・' r � 2) Na �'ti 0 · eoH HO 合 へ OBn H EtOH BnO s7parable diastereomer Oヘケ H2, Pd/C HO (97%) OH 12 Scheme 4 非天然糖 2ーデオキシーLーリボースの合成 2 -デオキシ-D- リボース(12)の鏡像体である 2 -デオキシ-Lー リボース(13)の合成は、 先に示した Scheme2-4 に従い出発原来十をDーリンゴ酸を用いれば必ず合成することができる。 しかしLーリンゴ酸は 天然体であり非常に安価であるが、 Dーリンゴ酸は非天然体であり非常に高価なため出発原料としては 不適切である。 そこで 安価な原料を用いた新たな合成法の開発を行った(Scheme 5)。 出発原 料 に 1 , 3 -pro paned i olを 用い, アルコールをモノ TBS化し, もう一方のアルコールを Swern 酸化 した。生じたアルデヒドに対し, プロパギルアルコールTHPエーテルを 1 , 2 -付加し, 更にSwern 酸化して, アセチレンケトン 14を 合成した。 ケトンを(R) -M e-C BS触媒を 用いる不斉還元を 行い, 光学活性アルコール15を 得た( 90% e.e.)。 なお, 不斉収率は15を MTPA ester に誘 導 し決定した。15を Li ndlar 還元により選択的にシス オレフィンとした後, アルコールをベ ンジルエーテル化し16とした。 次にTBSを脱保護し, 生じたアルコールを TPAP酸化して環 化前駆体17を 得た。 1) TBSCI, NaH, THF (70%) 2) (COClh, DMSO CH2Cl2; Et3N HOハ�OH 3) THPOCH2 一三三 Buli, THF (2 steps 80%) 13 4) (COClh, DMSO CH2Cl2; Et3N (92%) 1) H2, Pd/CaC03 MeOH (88%) 2) PhCH2Br, NaH THF (64%) THPO OBn THPO,...O .ヘ� TBS 16 ......__.....,.〆人� 1) TBAF, THF (68%) 2) TPAP, NMO 4 A MS, CH2Cl2 (60%) Scheme 5 32 (町-Me・CBS BH3・SMe2 OTBS THF, -20 °C (quant.) ../'.... THPO' OBn /...... ,CHO ""-=/ 17 ......._,,, ノア THPO OTBS また、 17 のオレフィンの異性体で あるアルデヒド 19 も合成した。 アルキン 15 をRed-Alを 用いてトランス 還元し、 アルコールをベンジルエーテル保護して18 とした。 次にTBSを脱保 護し, 生じたアルコールをT PAP酸化して環化前駆体19を得た。 1) Red-Al toluene (40%) 15 2) PhCH2Br,NaH nsl』4NI,THF (64%) 1) TBAF,THF (95%) OBn THPO、\/\、/ � ,,;....... ._ /'... ..._,, 、. OTBS 18 OBn 2) Dess-Ma吋in periodinane, CH2Cl2 (97%) THPO-.....,/、� CHO 19 Scheme 6 次に環化前駆体 17を用いて環化反応の 検討を行った。 環化反応は D一体合成 と全く同様に行 った。 しかし, 得られた生成 物 は目的の5員環18a,bだけで はなく7員環19 も得られてき た。(18a,b : 19 = 1 : 1)つまり, 環化前駆体のオレフインのE, 成物が異なることが明らか となった。 OBn /\ /ぺ ,CHO THPO’ \==/\/ PdCl2( PhCNh グ·. � OMe + .,?'··· <;J ·"OMe MeOH,THF (60%) 17 20b 20a Zの違いにより環化生 + 蜘 SJ21 Scheme 7 得られた5員環環化体 20a,bの末端オレフイン部をオゾン酸化した後, 生じたオゾニドを NaB H4により還元しアルコール 22 を得た。 得られた 22 を接触水素化によりベンジル保護を 脱保護しジオール23を得た。最後に23を 70%酢酸により加水分解し2 -deoxy-L -ri bose(24) を得た。得られた23 および24は標品のス ペクトルデータとよい一致を示したことにより生 o y o y o o y 戸 成物の構造を決定した。 n n n 臥 Scheme8 ( 3, 4)プロジェクト成果およびプロジェクト成果の 応用・効果・構想 これまで の研究により本ヘテロ環化反応の糖類合成への有効性を示すことが 出来きた。 特 に , 極めて高価で ある 非天然型糖類の簡便な合成法を開発することが で き た。 また, 非天然 型糖質が興味深い生理活性を有することか ら今後, 医薬品開発への一助となることが期待さ れる。 (5)利用施設 超分子的機能性材料創製・評 価シス テム 高分解能 NMR 装置(1H, 13C NMRスペクトル測定) 利用内容:合成した有機分子の構造決定 利用頻度:5� 10件/日 二重収束質量分析計(EI, FAB M ass測定) 利用内容:合成した有機分子の分子量測定 利用頻度:10� 20件/月 References 33 1 ) M iyazawa, M . ; Hirose, Y. ; N arantsetseg, M . ; Yokoyama, H. ; Yamaguchi, S.; Hirai, Y. Tetrahθdron Lθtt.' 2 004, 45, 2883. 2 ) Awasaguchi, K; M iyazawa, M . ; Uoya, I; Inoue, K. ; Nakamura, K; Yokoyama, H. ; Hirai, Y. Hetθrocyclθs 2 010, 81, 2105. 3 ) M iyazawa, M. ;Awasagu chi, K; Uoya, I; Yokoyama, 81, 34 1891. H.; Hirai, Y. Iiiθtθrocycles 2 010,
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