脳機能計測に用いるMRI技術の現状と課題 MRI Technologies for measurement of brain functions 産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門 医用計測グループ 本間一弘 Biomedical Sensing and Imaging Group (BSI), Institute for Human Science & Biomedical Engineering, The National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) 1.はじめに NMR を原理とする MRI や MRS は、磁 位(拡散、灌流)、血液循環(T1 、T1ρ)、 化学的な変化(δ)の多面的な測定が必要 気共鳴する元素の緩和時間(T1,T1ρ、 と考える。 T2、T2*)、拡散係数( D)、化学シフト(δ) (3)撮像法の選択と最適化:従来、種々 およびそれらの時・空間的な変化(血流、 灌流、各種の経時的変化)を観測してスペ の MRI 撮像法が提案され、脳機能計測に利 用されてきた。しかしながら、各撮像法に クトルあるいは画像として提示する。 は個々に問題があり、撮像法の利点のみな 今回は、開発中の MRI 撮像法、NMR 測 らず問題点も熟知し、撮像条件の最適化を 定法なども交えて、脳機能計測に用いる 図ることが不可欠である。例えば、拡散強 MRI 技術の現状と課題に関して検討した。 調イメージングは、印加するMPG間で空 間を変位する全てのスピンが測定され、撮 2.MRI の課題と対策 像法の誤差(EPIではスピンの dehasing (1)高感度化:MRI や MRS における最 も大きい研究課題は「高感度化」にあると など)が付加される。Tractgraphy やfM RIに関しても技術的な課題は多い。 考える。NMR は原子核のスピンの変化に由 来する磁気モーメントの変化を磁気計測す 3.あとがき る。熱平衡状態にあるエネルギー準位を RF 従来から開発が進められてきたMRI/ パルスにより遷移させるが、その差は、用 S技術は、目的に合致した撮像法の開発が いる磁場強度に依存する。高感度化のため 不可欠である。この意味から、ユーザの要 には、 (1)超偏極技術による遷移量の増大、 (2)静磁場強度の増大、 (3)検出系の高 求が不可欠で、医工連携体制の強化が望ま れる。 感度化、 (4)造影剤による磁気共鳴元素密 度と緩和時間の制御、がある。これら全て に対する取り組みが不可欠である。高感度 化は、微量分析を可能にするのみならず、 撮像の高速化、高空間分解能化にも寄与す る。 (2)測定量:大脳組織およびその機能の MRI/Sの測定は、BOLD 効果や血流の変 化のみならず、脳機能に伴う組織の局所的 な磁気共鳴元素の変位(循環)、イオン化の Xe 超偏極 MRI 3次元拡散強調 MRI 測定、外的刺激に対する反応の測定など、 (ファントム) (Axial 断面) スピンの位相変化(T2とT2*)微細変
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