129Xe-MRI/S基盤技術

脳機能計測に用いるMRI技術の現状と課題
MRI Technologies for measurement of brain functions
産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門
医用計測グループ
本間一弘
Biomedical Sensing and Imaging Group (BSI), Institute for Human Science & Biomedical
Engineering, The National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
1.はじめに
NMR を原理とする MRI や MRS は、磁
位(拡散、灌流)、血液循環(T1 、T1ρ)、
化学的な変化(δ)の多面的な測定が必要
気共鳴する元素の緩和時間(T1,T1ρ、
と考える。
T2、T2*)、拡散係数( D)、化学シフト(δ)
(3)撮像法の選択と最適化:従来、種々
およびそれらの時・空間的な変化(血流、
灌流、各種の経時的変化)を観測してスペ
の MRI 撮像法が提案され、脳機能計測に利
用されてきた。しかしながら、各撮像法に
クトルあるいは画像として提示する。
は個々に問題があり、撮像法の利点のみな
今回は、開発中の MRI 撮像法、NMR 測
らず問題点も熟知し、撮像条件の最適化を
定法なども交えて、脳機能計測に用いる
図ることが不可欠である。例えば、拡散強
MRI 技術の現状と課題に関して検討した。
調イメージングは、印加するMPG間で空
間を変位する全てのスピンが測定され、撮
2.MRI の課題と対策
像法の誤差(EPIではスピンの dehasing
(1)高感度化:MRI や MRS における最
も大きい研究課題は「高感度化」にあると
など)が付加される。Tractgraphy やfM
RIに関しても技術的な課題は多い。
考える。NMR は原子核のスピンの変化に由
来する磁気モーメントの変化を磁気計測す
3.あとがき
る。熱平衡状態にあるエネルギー準位を RF
従来から開発が進められてきたMRI/
パルスにより遷移させるが、その差は、用
S技術は、目的に合致した撮像法の開発が
いる磁場強度に依存する。高感度化のため
不可欠である。この意味から、ユーザの要
には、
(1)超偏極技術による遷移量の増大、
(2)静磁場強度の増大、
(3)検出系の高
求が不可欠で、医工連携体制の強化が望ま
れる。
感度化、
(4)造影剤による磁気共鳴元素密
度と緩和時間の制御、がある。これら全て
に対する取り組みが不可欠である。高感度
化は、微量分析を可能にするのみならず、
撮像の高速化、高空間分解能化にも寄与す
る。
(2)測定量:大脳組織およびその機能の
MRI/Sの測定は、BOLD 効果や血流の変
化のみならず、脳機能に伴う組織の局所的
な磁気共鳴元素の変位(循環)、イオン化の
Xe 超偏極 MRI
3次元拡散強調 MRI
測定、外的刺激に対する反応の測定など、
(ファントム)
(Axial 断面)
スピンの位相変化(T2とT2*)微細変