レジリエンスを育てる;小児病院の現場から

レジリエンスを育てる:
小児病院の現場から
自治医科大学
とちぎ子ども医療センター
子どもの心の診療科
鈴木 賀代
• 子どもの心の診療科(児童精神科)
• 発達障害・被虐待児
• 養育者が精神疾患罹患者
レジリエンスが
• 家庭環境が脆弱
育ちにくい環境
子どもの心の診療科(児童精神科)
• 自尊感情の低さ
• 対人関係の困難さ
• 自己効力感の低さ
レジリエンスを
高めることが
困難
子どものレジリエンスを高めるために
生活
リズムの
改善
本来の
安心できる
関係づくり
入院
支持的
なかか
わり
その子ら
しさを引き
出す
安心して
休息でき
る場所
偏った思考を
和らげ、社会に
適応できるよう
な練習をする
事例①
家族レジリエンスを高めること
ができた症例
中学生・小児神経症
既往:神経性食思不振症
4人家族:両親と10代の同胞
事例①
入院までの経過:
神経性食思不振症で入院し3か月程度で食行動の変化
がみられ、家族・本人の理解もよく退院となる。
地元校へ復学する。
部活や勉強のストレスから家庭内で母親への攻撃が強
くなり、家具の破壊行動・暴言がみられるようになる。
食事へのこだわりも強く、母親の料理の過程を観察し、
油などを調理に使うと激しく怒りを表出した。当院受
診時に、失踪し、警察に保護され入院となった。
家族レジリエンスの概念
患者さんの思い:
①家族の危機的状況
母親には、私の考えていることを言わな
くてもわかってほしい。私のことを好きな
らば、わかるはずだ。私の希望すること
と別のことをするのは、私のことを好き
ではないからだ。
②永続的なストレス
理解されたい思いが届かず、いつもスト
レスを感じている状態。
家族レジリエンスの概念
母親の思い:
①家族の危機的状況:子供から嫌われて
いる。いつも見張られていて、いつ怒り出
すのかと緊張している。怒らせないように
精一杯気を遣っている。私のいうことは聞
かないため、怒り出すとすぐに実家に電話
をかけSOSを出している。
②永続的なストレス:理解しようとはしてい
るが、子どもの思いを適切に受け取れず、
いつもストレスを感じている状態。
家族レジリエンスの概念
先行要件①家族の危機的状況
②永続的なストレス
医療者・
看護の介入
母親への
アプローチ
患者さんへの
アプローチ
• 患者さんの気持ちの代弁
• 良い関わりのフィードバッ
クによる強化
• 母親の気持ちの代弁
• こだわりに対する軟化
• イライラした時の振り返り
看護介入の実際
家族レジリエンス 帰結
①家族機能の
新しいパターン
の
確立
②家族の
成長
• 言語的コミュニケーション
の増加
• 向き合える親子関係
• 対処行動の変化
• 相互理解の促進
家族レジリエンスの概念
先行要件①家族の危機的状況
②永続的なストレス
医療者・
看護の介入
帰結
①家族機能の新しいパターンの確立
②家族の成長
小児科(小児がんの子ども)
•
•
•
•
突然の入院
痛い検査
つらい治療
ボディイメージの変化
入院そのものが
困難の連続
子どものレジリエンスを高めるために
1.患者さん自身が病気である
自分を受け入れることをサポートす
る
2.その子らしさを大切にする
3.地域とのつながり、入院前後を
過ごす環境とのつながりを
大切にする
1.患者さん自身が病気である自分を
受け入れることをサポートする
病気の
治療選択に参加
する
受容
真実を
共に支える
告げる
納得状況の
確認
2.その子らしさを大切にする
•
•
•
•
大切にしているものを共有する
自ら治療に参加する
居場所作り
保育の継続・教育の継続
3.地域とのつながり、入院前後を過ごす環境
とのつながりを大切にする
• 面会の工夫(きょうだい・ともだち)
• 地元校との連携
• 復学支援カンファレンス
事例②
大切にしているものを共有し、
その子らしく過ごせることができた症例
小学校低学年・神経芽細胞腫再発・終末期
5人家族:両親と学童期と幼児期の同胞
事例②
経過:
神経芽細胞腫再発による治療目的に
て入院。
終末期を迎え下肢の疼痛がある。
優しくさすることで緩和する。
夜間の中途覚醒あり。
学校に行きたい。
個室に行くと
みんなと会えな
くなってしまう
から嫌。
のこりすくない
時間を家族と共に
有意義に
過ごして欲しい。
大部屋でいろいろ
な人と関わること
が好きな子なので、
本人の意思を尊重
したい。
医療者間カンファレンス
2.その子らしさを大切にする
保育士
医師
家族
患者
分教室
教員
看護師
心理士
• 自ら治療に参加する
• 居場所作り
• 保育の継続・教育の継
続
• 大切にしているものを共
有する
その子らしさを大切にする
• 学校にいるときの自分は小学生の自分
• 病棟にいるときは治療中の自分
• さすってもらうのは病棟の中だけ
• 本人の意思を尊重し、授業を受けること
ができるように援助することで充実した
日々を送ることができるだろう
レジリエンスに寄与する質的要素
①促進的環境
(I have 因子)
②内的・個人的強さ
(I am 因子)
③スキルやコンピテンス
(I can 因子)
促進的環境(I have因子)
信頼できる
家族
病気を
希望を
支える
与える
看護師
分教室教員
地元での
大好きな
友人
保育士
入院中の
病気を
友人
支える医師
内的・個人的強さ(I am 因子)
尊敬される
人柄
辛抱強く
頑張れる
多くの人に
好かれる
つらい
他人の
ことを
つらさに
忘れる
援助する
他人の
いやなこと
を忘れる
つらさに
共感できる
スキルやコンピテンス
(I can 因子)
悩みを
相談
できる
恐れを
前向きに
取り組める
相談できる
自分の
病気と
病気に
共存できる
向き合える
自己決定
できる
「実りの秋」 好きなこと・頑張ったこと・嬉し
かったこと・楽しかったことを色画用紙に書
き、壁に貼った大きな模造紙の木の幹にい
ろんな実を実らせた。
親子でじっくり
向き合えた
レジリエンス
を高めている
周囲の人に
支えられた
入院による
困難
家族の絆が
深まった
• その子らしさを大切にする
• 自分自身が大切な存在であることを認知する
• 困難を乗り越えることができたと実感できる
レジリエンスが
高まる
参考文献;
高橋泉(2013).「家族レジリエンス」の概念分析-病気や障害を抱える子どもの家族支援における有用性-.
日本小児看護学会誌, p1-8.
河内智香・新家一輝・石井京子ら.(2005)レジリエンス概念と今後の研究動向.大阪大学看護学雑誌.
(11)5-8.
藤原千恵子(2009).患者のレジリエンスを引き出す看護職者の支援.看護研究42(1),p37-44.