BEPSと移転価格税制

BEPSプロジェクト
移転価格税制
2015年5月28日
経団連経済基盤本部
BEPSプロジェクトの進捗状況
Year 2014
Action Plans
1
2
3
4
5
6
7
Year 2015
8
9
1 Digital Economy
DD
R
2 Hybrids
DD
R
10
11
12
1
2
3
3 CFC
5
6
7
8
9
DD
4 Interest Deduction
DD
5 Harmful Tax Practice
R
6 Treaty Abuse
DD
R
R
7 PE Status
8
4
DD
RDD
DD
CCAs
TP:
Intangibles Intangibles
RDD
DD
R
9 TP: Risks
DD
PC
DD
Special Measures
Low Value Adding IGS
TP:
10
Others Profit Split
PC
DD
Commodity
DD
?
DD
?
11 Data
DD
12 Mandatory Disclosure
13 TP Documentation
?
DD
DD
PC
R
14 Dispute Resolution
15 Multilateral Instrument
R
DD
R
?
?
R
DD: Discussion Draft / PC: Public Consultation / R: Report
1
BEPSプロジェクトと移転価格税制
移転価格ガイドライン
章
内容
BEPS行動計画による修正
1
独立企業原則
行動8~10:公開討議草案「リスク・再構築・特別措置」(2014.12)
2
移転価格算定方法
行動10: 公開討議草案「利益分割」 (2014.12)
行動10: 公開討議草案「コモディティ取引」(2014.12)
3
比較可能性分析
4
紛争の回避及び解決
5
文書化
行動13: 報告書(2014.9)、ガイダンス(2015.2)
6
無形資産に対する
特別の配慮
行動8 : 中間報告(2014.9)
7
IGSに対する
特別の配慮
行動10:公開討議草案「低付加価値IGS」(2014.11)
8
費用分担取極
行動8:公開討議草案「費用分担取極」(2015.4)
9
事業再編に係る移転価格
の側面
(注)5月末には第1章、6章に係る公開討議草案(リスク、否認、無形資産)が公表される予定
2
行動13 移転価格文書化
決定事項
○ 国別報告
(1) 施 行
◇2016年1月1日以後に開始する事業年度(3月決算法人の場合、最初の国別報告提出は2018年)
(2) 国別報告の共有方法
◇第1ルール:条約方式…究極の親会社がその居住地国で提出、条約により自動的情報交換
◇第2ルール:情報交換の条件が整っているものの情報が提供されない場合、適用
(3) 適切な利用その他
◇報告された情報はハイレベルな移転価格リスク評価のため使用
◇中小除外(年間連結グループ収入金額が7.5億€に満たない場合、免除)
○マスター・ファイル、ローカル・ファイル
◇現地国法令に従い施行。税務当局の要求に基づき直接提出
State B
State A
国別報告=条約方式
Tax Authority
Tax Authority
ローカル・ファイル
ローカル・ファイル
Ultimate Parent
Company of MNE Group
Local Subsidiary
マスター・ファイル=子会社方式
3
国別報告
Table1 租税法域ごとの所得、税、事業活動の配分の概観
多国籍企業の名称/対象事業年度
租
税
法
域
総収入金額
非
関
連
者
関
連
者
又
は
損
失
合
計
税
引
前
利
益
現
金
ベ
ー
ス
支
払
法
人
税
額
法
当 人
年 税
度 額
発
生
額
資
本
金
利
益
剰
余
金
従
業
員
数
現
金
同
等
物
除
く
有
現 形
金 資
及 産
び
Table2 租税法域ごとに統合された多国籍企業グループのすべての構成事業体のリスト
多国籍企業の名称/対象事業年度:
租
税
法
域
成
事
業
体
税法租
法域税
域と法
異域
なが
る居
場住
合
のす
そる
の租
租税
主たる事業活動
研
究
開
発
所
有
又
は
管
理
知
的
財
産
の
購
買
又
は
調
達
製
造
又
は
生
産
又
は
流
通
販
売
、
マ
ー
ケ
テ
ィ
ン
グ
支
援
サ
ー
ビ
ス
経
営
管
理
又
は
サ
ー
ビ
ス
提
供
非
関
連
者
へ
の
グ
ル
ー
プ
内
金
融
規
制
金
融
サ
ー
ビ
ス
保
険
他
の
持
分
商
品
の
保
有
株
式
又
は
休
眠
会
社
そ
の
他
(
そ
の
租
税
法
域
に
居
住
す
る
構
注
)
1.
2.
3.
(注)追加情報のセクションで構成事業体の活動の性質について特定
Table3 追加情報
多国籍企業の名称/ 対象事業年度
必要と考えられる又は国別報告への記載が義務付けられた事項の理解に役立つ追加の情報又は説明があれば、ここに簡潔に記述
4
マスター・ファイル
【組織のストラクチャ 】
 多国籍企業(MNE)の法的及び所有関係のストラクチャと事業体の所在地を示した図
【MNEの事業説明】
 MNEの事業概要の書面説明(以下の内容を含む);
① 営業収益の重要なドライバ
② グループにおける売上高上位5位の製品及び/又は役務提供のサプライチェーンの記述。加えて、グループ売上高の5%超に達する製
品及び/又は役務提供のサプライチェーンの記述。これらの記述は、表又は図の形式であっても良い
③ MNEグループのメンバー間の重要な役務提供取決め(研究開発役務を除く)に関するリスト及び簡素な記述(重要な役務を提供する主た
る拠点の機能、及び役務コストの配分とグループ内の役務提供に係る価格決定に関する移転価格ポリシーについての記述を含む)
④ 上記②で言及された製品及び役務提供の主たる地理的マーケットの記述
⑤ グループ内の個別事業体による価値創造への主たる貢献、すなわち、果たされた鍵となる機能、負担する重要なリスク、及び使用された
重要な資産について記述した、書面による簡素な機能分析
⑥ 対象事業年度において生じた重要な事業再編取引、事業買収、事業売却の記述
【MNEの無形資産】 (本ガイドラインの6章に定義)
 無形資産の開発、所有、活用に係るMNEの全体戦略の概要の記述(主たるR&D施設の場所及びR&D管理の場所に係る情報を含む)
 移転価格目的で重要なMNEグループの無形資産(又は無形資産のグループ)及びそれらの法的な所有事業体のリスト
 無形資産に係る識別された関連企業間での重要な契約のリスト(費用分担契約、主たる研究サービス契約、ライセンス契約を含む)
 R&Dと無形資産に関するグループ内移転価格ポリシーの概要の記述
 対象事業年度における関連企業間での無形資産のいかなる重要な持分の譲渡について概要を記述(関係する事業体、国、報酬の情報
を含む)
【MNEの企業間金融活動】
 グループの資金調達方法の概要の記述(非関連者である貸し手との重要な資金調達取決めを含む)
 MNEグループ内で中心的な金融機能を果たすメンバーの特定(その事業体が組成された法の施行国及び実質管理地の情報を含む)
 関連企業間での金融取決めに係るMNEグループの一般的な移転価格ポリシーの概要の記述
【MNEの財務及び税務ポジション】
 対象事業年度におけるMNEの年間連結財務諸表。そうでない場合は財務報告、規制、管理会計、税務又は他の目的で準備されたもの。
 MNEグループにおける既存のユニラテラルAPA及び国家間の所得配分に係る他の税務ルーリングにつきリスト及び簡素な記述。
5
行動8 無形資産 中間報告
無形資産の定義付け
(パラ6.6) In these Guidelines, therefore, the word “intangible” is intended to address something which is not a physical asset or a
financial asset, which is capable of being owned or controlled for use in commercial activities, and whose use or transfer would be
compensated had it occurred in a transaction between independent parties in comparable circumstances.
このため、本ガイドラインにおいては、「無形資産」という用語は、有形資産や金融資産ではなく、商業活動に使用するにあたり所有
又は支配することができ、比較可能な状況で非関連者間による取引において発生した場合に、その使用又は移転によって報酬が生
ずるものを指すことを意図している。
無形資産に該当する例
○
○
○
○
○
○
特許
ノウハウ・企業秘密
商標・商号・ブランド
契約上の権利・政府の免許
ライセンス・その他の制限された無形資産の権利
のれん・継続企業の価値
無形資産に該当しない例
○グループシナジー
○市場固有の特徴
(参考)ロケーション・セービング、集合労働力を含め、
これらは比較可能性分析で考慮
(パラ1.82)ロケーション・セービングが関連者間でシェアされるか否かを決定する場合には、(i) ロケーション・セービングが存在する
か、 (ii) ロケーション・セービングの量は、(iii) ロケーション・セービングがMNEグループにおいて維持されているか、或いは独立した
顧客・サプライヤーにパスされているか、 (iv) フルにパスされていない場合は、非関連が同様の状況において維持されたロケーショ
ンセービングをいかに配分するか、という点につき、考慮する必要。
○ 無形資産の価格算定で信頼し得る比較対象取引が存在しない場合の評価手法として、DCF法を導入
○ 価格付けが困難な無形資産の評価方法(例:所得相応性基準)等の残りの論点については継続議論
6
行動8~10 公開討議草案「リスク・再構築・特別措置」
 移転価格ガイドライン第1章D1~D4の改定案。新たな移転価格の分析フレームワーク
(accurately delineating the actual transactions)、否認(Non recognition)の導入を提示。
 その上で、潜在的な特別措置について意見を募集。
○TP分析では取引を正確に描写する必要
○契約はその開始点(に過ぎない)
○当事者の実際の行動を見る必要
○リスクを支配する者にリスクを配分
D1,2
正確に描写された取引が独立
第三者間では見られず、かつ経
済的に意味を成さない場合(基
礎的な経済的性質に欠ける場
合)、その取引は否認
正確に描写された取引
は価格付けを行なうべく
すべての努力を行う必
要、ただし…
商業上・資金上の関係の特定
商業上・資金上の関係におけるリスクの特定
D3
D4
解釈
否認
(再構築)
特別措置
否認までのプロセスを経た上でもなお残るBEPSリスクに対抗するため特別措置を検討する必要
○オプション1 所得相応性基準
※固定価格で譲渡した無形資産が後年度に予想以上の収益をもたらした場合において、
その譲渡取引の文書化が不十分な場合、事後的にその無形資産の譲渡価格を高めに引き直す
○オプション2~3 単なるキャピタル・リッチな法人に対する不適切なリターンを防止する措置
○オプション4 最低限の機能しか有しない法人に対する不適切なリターンを防止する措置
○オプション5 軽課税国の事業体に対しCFC税制を適用する措置
7
行動10 公開討議草案「利益分割」
◇OECDの問題意識
 移転価格の結果と価値創造は整合する必要があるところ、MNEグループの統合された
性質、及びその相互に関連する態様を踏まえると、比較対象取引(又は信頼に足る差
異調整が可能な比較対象取引)を見つけることは、実務的な困難を生じさせる。そのよう
ないくつかのケースにおいて、PS法は適切なソリューションを提供するかもしれない。
 そこで、(比較対象取引に頼らずとも済む)利益分割法(PS法)の適用の可能性につい
て、ガイダンスを洗練したい。PS法に関する納税者の知見を求めたい。
◇公開討議草案の内容
 PS法が適用できるかもしれないシナリオを9つ提示。
 その中には、例えば、親会社(P社)が研究開発・製造を行い、現地子会社(S社)が広
範なマーケティング活動、販売を実施しているというシナリオも含まれている。
X Group
Company P
Manufacturing, R&D,
Intangible, Trademark
& Marketing Strategy
Unique
Company S
Marketing &
Distribution
& Valuable
Contribution
Unrelated
Customers
?
8
行動8 公開討議草案「費用分担取極」
公開討議草案のポイント
 CCA(Cost Contribution Arrangement: CCA)とは、無形資産・有形資産・役務を共同
で開発・生産・獲得することに伴う貢献及びリスクを-それら無形資産・有形資産・役務
は各参加者の事業に対し直接の便益をもたらすと期待されるとの理解の下-分担する
企業間の契約上の取極をいう。
 CCAには、移転価格税制上、複数取引の簡素化の側面がある。
 一般的に貢献(Contribution)は費用(cost)ではなく価値(value:ALP)によって評価しな
ければならない。ただし低付加価値役務などの場合は貢献を費用で計測できる。
 CCAの参加者であるためにはCCAに係るリスクを支配する能力・権限がなければなら
ない。
調整的支払
Company A
Company B
貢献
貢献
CCA
便益
便益
参加者の予測便益割合に基づき貢献割合を決定。実際の各当事者の貢献と合致している場合、
移転価格上問題は生じないが、合致していない場合は調整的支払が必要。
9
行動10 公開討議草案「低付加価値IGS」
低付加価値IGSとは




補助的性質のものであり、
MNEグループのビジネスの中核部分ではなく、
ユニークで価値のある無形資産の使用を求めるものでなく、また、ユニークで価値のある無形資産の創造につながるものでもなく、
実質的又は重大なリスクの引受又は支配を伴うものではなく、また、重大なリスクの創造につながるものでもないIGSをいう。
低付加価値IGSの該当例
・会計・監査
・売掛金及び買掛金の処理及び管理
・人事関連(配置、採用、訓練、報酬、福利等)
・健康、安全、環境その他事業を規制する基準に
係るデータのモニター、集計
・ITサービス(グループの主たる活動でないもの)
・外部・内部のコミュニケーション及びPR支援
・法務サービス
・納税に係る活動
・管理又は事務的な性質の一般的なサービス
低付加価値IGSに該当しない例
・MNEグループの事業の中核を構成するサービス
・研究開発サービス
・製造及び生産サービス
・販売、マーケティング、物流
・金融取引
・採掘、探査、天然資源の加工
・保険及び再保険
・上級管理職によるサービス
(services of corporate senior management)
低付加価値IGSに係る簡素化されたアプローチの手順(納税者の選択により実施)
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
ステップ6
ステップ7
コスト・プールの決定
*MNEの全グループメンバーの全IGSコストを年間ベースでサービス類型毎に集計
自社のためのコスト及び一対一のコストを除外
配分キーに従いコスト・プールをMNEのグループメンバーに配賦
利益のマークアップ(コストの2~5%)
低付加価値IGSに係るトータル・チャージの決定
*(一対一コスト+利益マークアップ)+(配賦されたコスト+利益マークアップ)
文書化及び報告
簡素化された便益テスト
(注)Stepの分類はDeloitteによる
10
行動10 公開討議草案「コモディティ取引」
OECDの問題意識
コモディティ(注)に依存した途上国において、コモディティ取引に係るBEPSの
懸念が生じている(例:納税者にとって有利な値決め日時の決定、コモディティ
産出国法人に対する様々な名目でのチャージ等)。そこで、移転価格ガイドライ
ン第2章(移転価格算定方法)の改定等により、以下の対応を行う。
(注)独立企業間の値決めにおいて引用価格(quoted price)が使用される物理的な製品。
例えば鉱物資源などが該当。
1. コモディティ取引における移転価格算定方法としてCUP法が適切で
あり得ること、また、引用価格がALP決定の際の参照値として利用できる
ことを明確化する。
2. コモディティ取引に係る値決めの日時が明らかでない場合に対応する
ため、みなし値決め日(出荷日:date of shipmentとする)を採用する。
3. 差異調整に係る追加的なガイダンスを策定する
11