2015年度ニューズレター発行しました!

l.6 2013.6 発行
奈良教育⼤学
特別⽀援教育研究センター
ニュースレター
Vol.8 2015.7 発行
〒630-8528 奈良市高畑町
TEL&FAX 0742-27-9314
http://nara-edu-csne.org
E-mail:[email protected]
巻頭言
-香芝市立下田小学校 校長 山本敏久先生より、ご寄稿頂きました-
特別⽀援はだれのもの…この⼦らとともに、全ての⼦どものために。
⾹芝市⽴下⽥⼩学校
校⻑
⼭本敏久
15 年以上も前のことです。ある特別支援教育関係
そして何よりも、子どもらから私たち自身が問われてい
の全国大会に、私は研究会の一員として毎年参加さ
ることを真正面で受け止めているか。さらに言えば、そ
せていただいていました。全国の様々な教育実践に
れらをこの子らのみならず全ての子どもが輝くために還
触れ、刺激的な経験をたくさんさせてもらい、少しでも
し得ているか。自問が続いています。
子どもたちに還したいと思っていました。そんな中、あ
る年の東京大会で感じた違和感を今も覚えています。
周年記念大会とはいえ、近未来的で立派なホテルで
行われたその大会は、子どもに関する実践研究の発
表や交流はあったと思うのですが、当時の私にとっ
て、大人のセレモニー感が色濃く滲んでいたように思
います。学校に子どもを残して「今ここにいてよいの
もとより、子ども一人一人のヒストリーとニーズは実に
様々で、座学や理屈ではとてもかなうものではありませ
ん。ゆえに「保護者はその子の専門家」だと素直にそう
思います。と同時に、日進月歩の特別支援教育に携わ
る私たちは、常に最新の知見が求められることから「指
導のプロ」であらねばと思います。専門家とプロが協働
することほど、子どもらにとって、心強いサポーターはい
ないと思います。もちろん、「指導のプロ」であるために
か」と自問しました。と同時に、大人ではなく子どもらに
は「学び続けるプロ」でなければならないことは肝に銘じ
こそ、このような場を見せてやりたい、経験させてやり
ているつもりです。あらゆる機会を見つけて学び続けな
たいと強く感じたように思います。
ければならないと思っています。
その後、図らずも、大人の世界にどっぷりと浸ること
その重要な一翼を貴特別支援教育研究センターが
になった私は、またしても、いろいろな違和感をもちな
担っていただいており、私たち教員にとってセンター
がらも「書類の向こうに子どもがいるのよ」という先輩の
は、いわば砦のような存在となっています。また、岩坂先
叱咤を胸に、「誰かがせにゃならん仕事」を「少しでもク
生をはじめスタッフのみなさまには、教員のみならず、子
リエイティブ」に取り組み、子どもたちに還せるものを模
どもはもちろん多くの方々がお世話になり、支えてくださ
索し続けてきました(きたつもりです)。
っていることに、深く感謝申し上げます。どうぞ、これから
そして今春、再び毎日子どもらと向き合う機会を得
て、改めて思いました。特別支援はだれのものか。教
育のための教育になっていないか。研究のための研
究にはなっていないか。「適切な指導」と「必要な支
援」を混同していないか。ツーマッチな支援で自立を
もよろしくお願い申し上げます。
「(これまで出会って来た)子どもらに、いっぱい教えても
ろたなぁー」これは、学校で再会した旧知の同僚と交わ
したことばです。これもまた、全ての子どもが輝くため
に、忘れたらあかんことやと思い続けています。
阻害していないか。
センターからのお知らせ
当センターでは、概算要求プロジェクト「地域連携に基づく特別支援教育人材養成モデル推進事業―ICT 活
用による人財と教材のネットワークの構築(H25-27)」に取り組んでいます。昨年度の金森克浩先生による特
別支援教育セミナーをもとに「見てわかる さわって楽しむ ICT 活用術」
(映像教材)を作成しました。ICT 初
心者でも、タブレット片手にこどもにあった教材を作成できますので、ぜひ子どもと一緒に「できる楽しさ」
を体験して下さい。
(センター発達障害支援プログラム【http://cp-support2.nara-edu.ac.jp/htdocs/】で閲覧い
ただくことができます。)
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平成 26 年度の取り組み
教育相談
・発達相談
 相談件数: 357 件
(内訳:発達相談 242件、教育相談等 1件、集団プログラムのべ 176件)
 相談例
・字を書くのが遅い、計算ができない
・会話が一方通行で、同年齢とのコミュニケーションが難しい
・発達障害の診断を受けたが、子どもの良いところをどう伸ばしていけばよいか教えてほしい
…などでした。
・・・・相談のご利用につきましては、当センターのホームページをご参照下さい・・・・
実施した研修会
特別支援教育公開講座
一般の方・専門家の方むけ
①10/4(土)
シンポジウム 「発達障害に対応した高等学校教育の最前線」
②10/19(日)
「学びの支援-ICT を活用したコミュニケーション支援-」
※京都教育大学開催、京都教育大学と奈良教育大学の双方向システムにより、学内で映像実施
香川大学教育学部
教授
坂井
聡氏
※第 2 回特別支援教育セミナーと兼ねて開催
③11/9(日)
「遊び・余暇の支援-感覚統合・スヌーズレンの視点から-」
姫路獨協大学 客員教授 太田篤志氏
④11/22(土)
シンポジウム 「働くことの支援-本人、支援者、企業からのメッセージ-」
「働くことの支援を通して~知情意体から考えると見えてくること~」
「企業が求める力 そして 企業ができる定着支援について」
「発達障害者の<働く>を分解して考えると見えてくること」
司会:岩坂英巳
中屋ひろ子氏
奥野哲啓氏
笹森理絵氏
総計 171名
特別支援教育セミナー
①8/12(火)
教員の方むけ
学校でできる!使える!―ICT を活用した支援の実際―
「特別支援学校で使うタブレット端末の活用法と AT(支援機器)のこれから~障害児の出来る!を
支援する ICT の活用~」
NPO 法人支援機器促進協会(ATDS)代表
高松
崇氏
「通常学級における ICT の導入と活用~普通の○○でも楽しくできる ICT~」
鳥取大学医学部医学系研究科
②10/19(日)
臨床心理相談センター協力相談員
「学びの支援-ICT を活用したコミュニケーション支援-」
香川大学教育学部
大羽沢子氏
教授
坂井
聡氏
※第 1 回特別支援教育公開講座と兼ねて開催
③2/21(日)
「発達障害のある子どもへの ICT を活用した支援」
国立特別支援教育総合研究所
教育情報部
総括研究員
総参加者数 154名
専門家の方むけ
養成講座
①7 月19 日(土)
金森克浩氏
ペアレントトレーニング(PT)養成講座
講師:岩坂英巳、大西貴子
20 日(日)
②8 月5 日(火)
ティーチャートレーニング(TT)指導者養成講座
講師:実践されている先生方、岩坂英巳
総参総参加者 89名
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専門プログラムの実践報告
「どよう SST くらぶ」では、平成 26 年も、小学校4~6年生の男の子6名が参加してくれて、
全 10 回のプログラムを受けて、卒業していきました。「学校で、普段の生活の場で、友達と
上手く遊ぶワザ」を学ぶ SST ですが、SST のなかでも、メンバー同士、ぶつかり合い笑い合い
思い合い、色んな気持ちを体験しながら仲を深めて行きました。
ワザを学びながらも、心に体に残る友達との共有体験もたくさんしてもらえたことと思います。
SST
ソーシャル
スキルズ
トレーニング
***参加メンバーの⼀⼈と、そのお⺟様から、感想をお寄せ頂きました***
どよう SST くらぶでは、勉強の後
の、遊びタイムが楽しかったです。
先生達に邪魔されながら、みんなで
コミュニケーションが苦手な子ですが、毎回スキルを
使って友だちと協力し合いミッションクリアする遊び
タイムをとても楽しんでいました。いざ、学校で実践
となると難しいようでしたが、ワークシートのおかげ
助け合ってゴールできたからです。
で、自分から友だちとの関わりを持つことができまし
SST に参加して勉強になったこと
た。一緒に参加したメンバーとこれからも遊べること
は「思っていることは言葉にしない
を楽しみにしていますし、保護者も情報交換しながら、
といけない」ということです。
この出会いを大切にしていきたいと思っています。
PT
ペアレント・
トレーニング
UCLA Parent Training プログラムをもとに、行動理論に沿って発達のアンバランスを
持つ子どもたちの行動を理解し、適切な対処法を具体的に学習し、話し合い、そして練習し
て身につけていきます。これまで 17 グループ 100 名以上の方が卒業され、子どもの行動・
意欲、親の養育の自信、親子関係などの改善がみられることが実証されています。スタッフ
も参加された親の方の笑顔の向こうに子どもの笑顔が感じられて、楽しい時間です。
〜参加された⽅より、感想コメントをいただきました〜
1年間、夫婦でペアトレに参加させて頂き、大変多くの事を学ばせて頂きました。ペアトレの中で、私たち家族が
心がけるべき言葉がけや接し方等をいろんな角度から教えて頂きました。宿題もあり多少苦戦する部分もありました
が、この宿題を通じ息子に対して「プラスの言葉がけ」を意識したり、よく観察して「息子の良い所探す」等、子供
の行動に関心をもち、子供を認めるという事をしっかり定着させる機会となりました。また、一緒に取り組む保護者
の皆様と知り合えた事も大きな収穫だったと感じております。本当にありがとうございました。
特別支援教育セミナー・セミナー運営委員会
ICT をキーワードに3つのセミナーが開催されました。第 1 回は、ATDS 代表の高松崇先生から最新アプリの紹介
と活用についてお話いただき、また、元小学校教員の大羽沢子先生から小学校通常学級での ICT 導入についてご
経験をもとにお話いただきました。
第 2 回は香川大学の坂井聡先生より、障害のある子どものコミュニケーション支援で大切な考え方や ICT を使うこ
との意義について多くの示唆をいただきました。そして、第 3 回は国立特別支援教育総合研究所の金森克浩先生よ
り、支援に役立つアプリの紹介や実際に iPad を操作する演習を通して、発達障害のある子どもたちへの ICT 活用術
を教えていただきました。なお、ご講演と演習は ICT 教材として、当センターホームページでも閲覧できます。(ログ
インが必要です。)
また、奈良県内のリーダー的教員の先生方にお集まりいただき、2 回のセミナー運営委員会を実施しました。「校
外連携」、「校種間連携」、「地域のセンター校的機能・ネットワーク」、「保護者との連携」、「ICT 活用」、「合理的配
慮」等をキーワードに、活発な情報交換、意見交換がなされました。様々な校種・立場から情報交換ができる貴重な
機会となっています。
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平成 27年度の予定
研修計画
…内容や申込方法など詳細はHPをご参照ください…
特別支援教育公開講座
※会場はすべて本学です
一般の方・専門家・教員対象
①11 月 1 日(日)10:00-13:00 【次世代センター2 号館多目的ホール】*特別支援教育セミナーを兼ねています
「発達障害のある子どもの良いところを伸ばす支援」 熊谷恵子氏(筑波大学 教授)
②12 月 6 日(日)13:30-17:00 【次世代センター2 号館多目的ホール】
「発達障害のある人の良いところを発揮して働くために大切な支援」(仮)
向後礼子氏(近畿大学 准教授)
「発達障害当事者の歓喜と苦悩~障害者としての生き易い生き方とは?~」
難波寿和氏(山陰発達障害当事者会スモステの会)
特別支援教育セミナー
教員対象
①8 月7日(金) 13:30-16:30【次世代センター2 号館多目的ホール】
「学びと体・感覚・運動」 加藤寿宏氏(京都大学 准教授)
②10 月 17 日(土)13:30-16:30【310 教室】
「発達障害の子どもの主体性を伸ばす ICT 活用の具体例」 小川修史氏(兵庫教育大学 講師)
③11 月 1 日(日)10:00-13:00 【次世代センター2 号館多目的ホール】*特別支援教育公開講座を兼ねています
「発達障害のある子どもの良いところを伸ばす支援」 熊谷恵子氏(筑波大学 教授)
ICT スキルアップ講座
今年度、「地域連携に基づく特別支援教育人材養成モデル推進事業―ICT 活用による人財と教材のネットワークの構築」(H25
-27)最終年度として取り組む、ICT を現場で実践する連続講座です。
*本講座は若干名の募集となるため、関係機関を通じての案内・募集となります。ご了承ください。
PT・TT リーダー養成講座
・・・今年度の PT 指導者養成講座の募集は終了しました・・・
①ペアレント・トレーニング(PT)指導者養成講座
7 月 19 日(日)・20 日(月祝)
②ティーチャー・トレーニング(TT)指導者養成講座
8 月 18 日(火) 講師:現場で実践されている先生方、岩坂英巳
専門プログラム計画
講師:岩坂英巳、大西貴子
…詳細はHPをご参照ください…
●ソーシャルスキルトレーニング(SST)
●ティーチャー トレーニング(TT)幼児版
平成 27 年 5 月~平成 28 年 1 月
平成 27 年 7 月~12 月
月1~2 回の土曜午前、全 10 回実施予定
木曜夕方、全 6 回実施予定(フォロー会含む)
(他、事前事後評価・レクレーション・修了式も実施します)
●ガールズ SST くらぶ(SSTG)
平成 27 年 7 月~12 月
●ペアレント トレーニング(PT)
平成 26 年 7 月~11 月
木曜午前、全 10 回
(修了式・個別ブースターも実施します)
特別支援教育研究センター スタッフ
★センター⻑:岩坂英⺒(児童精神科医,特別⽀援教育⼠ SV)
★特任准教授:⼤⻄貴⼦(臨床⼼理⼠)
★特任講師:式部陽⼦(臨床⼼理⼠)
★相 談 員 :宮﨑瑠理⼦(作業療法⼠)
⼩枝久美⼦(臨床⼼理⼠)
武藤葉⼦(臨床発達⼼理⼠、事務兼務)
★研究員:⽥中宏季(情報ネットワーク担当)
★教育学部兼務教員:
根來秀樹(副センター⻑)
、⽟村公⼆彦、越野和之
★事務:⼤久保直⼦
☆他にも客員教員、研究部員、セミナー運営委員など多くの
現場の先⽣⽅にお世話になっています
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