出題のねらい - 中村学園大学

中村学園大学短期大学部 幼児保育学科 推薦入学選考 小論文(出題のねらい)
中村学園大学短期大学部〔幼児保育学科〕
【 小 論 文 】
〈出題のねらい〉
課題文は最初に、
『人間には<体>という物体のなか、もしくは皮膚と皮膚のあいだに、気概や精神
<心>というのでしょうか、そういう目に見えないなにかが流れていて、一つの個体を作っているので
はないか―という気がするのです。
』と始めている。そして、人間の中に内在する見えない力について
提示し、体験事例を挙げて考えさせている。
人が人として生活し、生きることは多くの問題に悩み、思いもよらない出来事に直面して戸惑うこと
がある。そこで、それを乗り越えるにあたっての大切な要素は何であるか、どのように判断して解決し
ていくのか、と問いかけている。
その体験事例は、私たちの身近な日常生活に置き換えて考えてみることもできるものである。
その体験事例の一つは C・W・ニコルさんが南極かどこかへ探検に行った時の話についてであり、二
つは今世紀最大の悲劇と語りつがれるアウシュヴィッツ強制収容所の事である。この事例のような極限
の状態で生き抜くには、身体を鍛えたたくましい男らしい男といったタイプの人ではなく、日常の生活
をおろそかにせず、日常生活の当たり前のことを当たり前に続けていくこと、人間としての尊厳が守ら
れない状況下にあってもユ-モアを毎日、課して、みんなで支えあったことを示しながら、生き抜く力
について論じている。
保育の世界でも、
「生き抜く力を身につける」といった保育理念を掲げている園も多くある。園児の
自立と自律のために、基本的生活習慣の大切さと感性を育むことが、生き抜く力となっていくことに繋
がっているか、を出題のねらいとした。
受験生にとって極限状態を経験することは皆無に近いと思われるが、東北大震災による被災者の避難
所暮らしなどニュ-スや書籍から、またあるいは身近な経験例を聞いたり見たりすることから想像でき
ると思われる。
設問一は、どのようなタイプの人が極限状態を耐え抜くことが出来たといっているかを問うた。20
文字以内で文中から抜き出すよう指示した。この点については比較的平易な文章であったのでほとんど
の受験生が正解であった。中には、自分で文章を作成した解答もあったが、これは稀なケ-スである。
設問二は、文章にある、生き抜く力として「同じようなこと」と記された接続詞から、設問1との共
通点をみつけて、生き抜く力についての理解を問うたが、文脈のつかみ方が難しかったようで正解が少
なかった。文中から抜き出すように指示していたが、同じようなこととして自分の文章で考えてきたこ
とを書く例が多かった。
設問三は、保育者を目指すにあたって、保育者の資質とこれからどのように保育に生かしていくこと
ができるのかを問うた。保育者としてもこうした生き抜く力をしっかりもってもらいたいと願って、そ
の資質をみたのだが、生き抜く力についての極限状況の課題事例は推察しがたいものであったのかも分
からない。その点では読解力、想像力の育成を期待したい。
生き抜く力としての課題文は、小さい時からの自分の生活態度をずっと守り続けたこと、感動するこ
との大切さや喜怒哀楽の人間的感情を忘れないことが大切であること、どんな環境でもユ-モアをもち、
何かを決めて毎日実行していくことできた人が、極限状態の非人間的な生活の中ではむしろ生き延びて
きたのだと示している。普通生活でのごく普通のことを普通にやっていけることの大切さを理解してほ
しかったが、全体的にはマナ-が必要であるといった解答が多かったことと、更に表面的な捉え方とな
っていたことが残念であった。
論文内容としては折角、解答が的を得ていると思いながら見ていると、突然に事前に準備していた作
1
中村学園大学短期大学部 幼児保育学科 推薦入学選考 小論文(出題のねらい)
文にこじつけて展開していき、論文に破綻をきたす場合がみられた。
あくまでも出題のねらいとしたものは国語的な文章読解力の基礎能力と、人としての基礎的な感受
性と文章表現力である。その点からみると良い表現をしている解答もあったことを記しておく。また入
試では入学後に学ぶ保育に関することそのものが問われることはないので、きちんとした基礎学力を身
に付けるように学んできてもらいたい。そして何よりも、保育者を目指すにあたっては読解力をしっか
り身につけてほしい。国語の教養、基礎学力の修得はもっとも基本であることから、保育者になるにあ
たっても必須となることを加えて記しておく。
2