電子・光物性の極限制御

今月号の概要
電子・光物性の極限制御
『応用物理』編集委員会
今号でも各方面の専門家から幅広い分野にわたる記事をご執筆いただきました.全体をまとめて
「電子・光物性の極限制御」と題しております.各記事の内容は,グラフェンなどの 2 次元層状物
質,面発光レーザー,シリコンデバイスによる神経ネットワークの構築,トポロジカル絶縁体を用いた相
変化メモリ,磁性カーボンナノチューブ,テラヘルツ放射顕微鏡と多岐にわたっております.
グラフェンおよび 2 次元層状物質の記事ではグラフェンをはじめとした 2 次元層状物質の成長技術
とその特異な電子物性に関して総合報告をしていただいております.これらの物質群における多彩な
特性を詳細に紹介するとともにグラフェンを中心としてその成長技術について解説されています.また,
同じカーボン系の材料であるカーボンナノチューブに関する記事では,カーボンナノチューブの端の状
態やトポロジカル欠陥の導入によりカーボンナノチューブの磁性状態が制御できることを示す第一原理
計算の研究が紹介されています.
面発光レーザーの記事では,日本発の発明であり発明から 38 年が経過した面発光レーザーについ
て,これまでの技術の進展や近年の応用分野の紹介とともに,波長可変機構やビーム掃引といった新
しい試みに関する研究が紹介されています.
シリコン神経ネットワークプラットフォームに関する記事ではシリコンデバイスを用いて神経ネットワーク
を模倣する技術の最近の展望を紹介しています.神経ネットワークの中でも特に脳神経系のシナプスを
模倣,モデル化することにより,工学応用だけでなく脳神経系科学へのフィードバックも期待できる研
究の紹介となっています.
トポロジカル絶縁体を用いた相変化メモリの記事では,これまでの相変化メモリの問題点を解決する
手段として,トポロジカル絶縁体を超格子として形成する手法を第一原理計算と実験的手法の両面か
ら紹介しています.
テラヘルツ放射顕微鏡の記事では,電波と光の境界領域の電磁波といわれるテラヘルツ波に焦点
を当て,通常の顕微鏡技術だけでは評価できない電子のダイナミクスなどを評価できる顕微鏡として
レーザー走査型テラヘルツ放射顕微鏡が紹介されています.
また,今号ではノーベル物理学賞受賞関連記事として浜松ホトニクス(株)への取材記事を掲載して
います.カミオカンデおよびスーパーカミオカンデの両プロジェクトに関わった同社の袴田敏一氏にお話
を伺いました.
担当編集委員:赤羽浩一,川瀬晃道,長汐晃輔,大野裕三
応用物理
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第 84 巻 第 12 号(2015)
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