<協会制作記事> 久米島で見た、感じた海洋深層水 やはり亜熱帯の島

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<協会制作記事>
久米島で見た、感じた海洋深層水
やはり亜熱帯の島・海洋深層水利用の可能性が大きいようです
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1月のメルマガでは、昨年 11 月 18 日、19 日に沖縄県久米島町で開催された、第 14 回海洋深層
水利用学会全国大会 海洋深層水 2010 久米島大会
(沖縄県海洋深層水研究所開設10周年記念大会)
の特別シンポジウムでの報告を基に、世界の新しい海洋深層水利用の動きをご報告しました。今月は、
19 日の午後に行われた海洋深層水関連施設などの見学会の模様をお伝えします。
(株)久米島の久米仙 酒造所
ここは言うまでも無く沖縄県の誇るお酒、泡盛を醸造している所です。久米仙という名前は、呑み
助たちにはかなり知られた銘柄名ではないかと思いますが、如何でしょうか。
日本酒の醸造所なら先ず頭に浮かぶのは大きな樽ですが、ここでは、大きな貯蔵用のかめが目に入
ります。これが多数並んでおり、このかめで長い年月を掛けて古酒を造っているのだなと実感しまし
た。訪問記念に 15 年物(43 度)の古酒を 1 本土産にしました。
沖縄県海洋深層水研究所
研究所は 2000 年に開設され 2010 年で 10 年目を迎えました。今回の学会では次の一般講演を行
いました。
「沖縄県久米島のクビレズタ(海ブドウ)養殖水槽に出現した付着珪藻」
、
「海洋深層水の
冷熱を利用した夏場ホウレンソウ栽培の収益性」
、
「久米島海洋温度差発電複合利用」の 3 つです。
クビレズタ(商品名:海ブドウ)は、2003 年からすでに陸上水槽による養殖が、次に見学した久
米島海洋深層水開発(株)の施設でなされていますが、海洋深層水は富栄養であるため、水槽壁面や
海ブドウの表面に多量の付着珪藻が付着して、成長阻害や品質の低下を招くことが問題となっていま
す。そこで 2010 年から付着珪藻の増殖を抑制するための研究に着手したとのことです。研究は、ま
だ初期段階ですが、今後の成果に期待します。
次に、海洋深層水の冷熱利用として夏場のホウレンソウ栽培の研究現場を見学しました。
冷熱の利用方法は夏場の高温期にホウレンソウの根域を、海洋深層水(約 10℃)で熱交換した 12℃
却
式
殆
安
の冷淡水を通したパイプで冷 し、栽培する方 で、夏場には ど栽培できないホウレンソウを、
定して生産することが可能になったとのことです。
内容は、1,500 ㎡の借地にハウス、配管、送水の各施設(以上耐用年数 14 年)と自家労働評価額
とその他の諸経費を基に収益性を試算した結果、施設費の補助が無い場合は 945 千円の赤字、1/2 補
助を受けた場合は 543 千円、2/3 補助を受けた場合は 1,039 千円、8/10 補助を受けた場合は 1,436
千円の収益が見込めるという結果が得られ、補助金制度を活用して施設や設備を導入できれば、十分
に収益を確保できるとのことです。
今後の課題としては、より収量の多い品種の選定と増収技術の開発、土壌冷却条件の検討による冷
水使用量の軽減などの技術開発も重要であるとのことでした。
研究
根域冷却栽培ベッド
久米島海洋深層水開発(株) 海ブドウ養殖場
隣接する久米島海洋深層水開発(株)では、陸上水槽で養殖生産されて
いる現場を見学しましたが、透き通ったエメラルドのように美しい緑色の粒の連なりで、久米島の飲
み屋さんで食べ、みやげにもしましたが、酒のつまみに合いました。
養殖場の担当者の話では、付着珪藻の繁殖による収量の減少と品質の低下で、この防止対策が大変
沖縄県海洋深層水研究所に
とのことでした。
海ぶどう
バーデハウス久米島 海洋深層水スパ
メインコースは海洋深層水スパの体験なのですが、私は高知県室戸で体験済みなので、今回は何人
かの方と、畳石とバーデハウスの隣にある久米島ウミガメ館を見学しました。
沖縄でのウミガメの来遊数は減少傾向にあり、保護活動が行われています。しかし人間の活動に伴
う海の漂流物の増加や環境破壊の影響で、ビニール袋のような漂流物を誤って飲み込んだウミガメが
衰弱死する例が多く、衰弱死したウミガメの胃から、大量のビニール袋が出てくるそうです。このよ
うな展示を見て説明を聞いていると、なんだかウミガメに申し訳なく、せつない気持ちで展示館を後
にしました。
バーデハウス久米島で使用する海洋深層水は、開館当初から直線距離で約 2.5km 離れた取水施設
から、タンクローリーで海洋深層水を運んで使用しており、その経費は経営上大きな負担となってい
たようですが、昨年、補助事業により取水施設からの送水管が敷設され、経営改善に大いに役立って
いるそうです。
想 いろいろ構想が動き始めたようです
久米島に来て幾つか学ぶところがありました。それは亜熱帯に位置する久米島においては海洋深層
水を利用できる可能性が大きいことです。このことは漠然と考えてはおりましたが、温度差発電に係
わる動きを知り、その感を改めて深くしました。
亜熱帯の島・久米島の海洋深層水の感
当大会の開催の前日久米島において、沖縄県主催により、日米の研究者や技術者が海洋温度差発電
の可能性を探る「オーシャン・エナジー・ワークショップ」が開催されています。
これは国の施策にも沿ったもので、海洋温度差発電に本格的に取り組む先触れとなる動きです。久
米島においては約 10℃の海洋深層水が取水されており、
夏には 30℃近くにもなる表層水があるので、
この大きい水温差を利用すれば効率良く発電できます。日本各地の取水地の中で海洋温度差発電に最
も適したところは久米島なのです。
業規模の発電には膨大な量の海洋深層水が必要ですが、発電に利用した後の海洋深層水をいかに
上手く活用するか、発電計画の進捗と並行して、海洋深層水の利用計画を作ることは、今後の島の経
済活動の活性化にとって非常に重要なことになるでしょう。
商
触
エ
生産では全国でも有数の地位を占めるようになっております。農業では栽培対象種数の拡大、水産関
係では 10℃から 30℃近くの範囲の海水を利用することが可能となるので、理論的には寒冷域から熱
帯域の水産生物の種苗生産や養殖が可能となるはずです。
すでにその先 れとなることとして、高温期におけるホウレンソウ栽培があり、養殖クルマ ビの
困
アワビなど貝類の種苗生産における初期段階
の餌料として必須なものなのです。ここからも各種貝類の種苗生産の一大拠点と成りうる可能性も見
海ブドウ養殖にとっては りものの付着珪藻、これは
えてきます。
ろ ろ困難な問題は現実にあり、これからも問題が生じるでしょうが、発電をした後の海水の利
用をあれこれ考える、楽しいことですね。沖縄県のなかに「夢の島」が出現することを海洋深層水に
関係する一人として、強く願っております。
い い
最後にニュースを一つ
海洋深層水研究所の入口に久米島町が運営する「久米島海洋深層水ふれあい館」があります。
久米島の海洋深層水関係の施設、海洋深層水の利用状況などを一般の方々に知ってもらうための展
示館です。
我々協会の者にとっては、とっても嬉しいものを見つけました。展示用の机の上に、来館者
が手にとって読むことが出来るよう、当協会のメルマガが1号から綴じられて置いてあったのです。
本当に嬉しかったですね。
ふれあい館の方々、どうもありがとうございます。
ここで
当協会のメルマガを綴った閲覧ファイル
(OKUMURA)