新・地方自治ニュース 2015 No.14 (2015 年 10 月 25 日) 地方自治体間の観光事業連携と「クモの巣」による等価交換思考 新国土形成計画、そして「まち・ひと・しごと創生」における地方版総合戦略でも、市区町村たる 基礎自治体を中心とした地方自治体間連携の推進が大きなテーマとなっている。人口減少と高齢化、 さらにグローバル化が進む中で単独の基礎自治体の行政区域内で完結する生活・経済活動は極めて限 られるほか、地域への公共サービスの面でも単独の地方自治体の行政機関だけで提供し持続性を確保 することには限界があり、複数の地方自治体が連携して担う仕組みの充実が不可欠となっている。 地方自治体間連携は、単に行政機関間の連携に限られない。地方自治体の地域間の連携はレベルと して、①地縁関係等に基づく集団が形成する連携(コミュニティ自治単位の連携)、②日常圏・通勤 圏等で括られた地域としての連携(生活的自治単位での連携)、③経済面・財政面で地理的・構造的 にまとめることが出来る地域としての連携(経済的自治単位での連携)に分けられる。消防、一般ゴ ミ処理等の広域連携は基本的に②生活的自治単位での連携であり、介護保険や観光等の連携は③経済 的自治単位での連携に属する。この経済的自治単位の連携では、たとえば多くの地方自治体で展開さ れている観光事業等は、必ずしも隣接自治体間には限定されず離れた地方自治体も対象とし、民間も 含めたネットワークを形成する連携モデルも展開されている。こうした連携に加えて、地域を支える 土台としてコミュニティ単位による住民相互間の連携も重要となる。以上のような多層的な連携の構 図を形成することが地域活性化や地域内所得循環を厚くするだけでなく、持続性確保の面でも重要な 要素となる。とくに、観光事業の連携では、行政ではなく民間企業や地域団体間の多層的連携、そし て地域住民との連携が観光の質を大きく左右することになるからである。 連携の多層化 経済的自治の連携 生活的自治の連携 コミュニティ自治 単位の連携 連携機能と範囲 連携の単位 ①地域社会とは、地縁関係に基づく集団が形 成する、仕組みや関係性。 ・・・コミュニティ的自治の単位。 ②(狭義)日常圏・通勤圏等でくくられた地域 。 ・・・生活的自治の単位。 ③(広義)経済財政面で地理的・構造的にまと めることが出来る地域。 ・・・経済的自治の単位 観光事業の連携ネットワークは多層的に形成するだけでなく、その持続と共に付加価値を高めてい く努力が必要である。政策において異なる二つのもの(例えばAとB)の間に等価的なもの(共通点 や類似点)を見つけ出し、それを手がかりに思考の流れをAからBへ変換させることで飛躍的な発想 の視点を得るものとして「等価交換思考」がある。観光事業の連携ネットワークに関して、等価交換 思考として活用される存在に「クモの巣」がある。「クモの巣」と観光事業のネットワークは表面上 において何の関係もない。しかし、クモの巣と観光ネットワークの共通点や類似点など等価的なもの として、①対象者(クモの場合は獲物)が向こうから来るのを待つ形態であること、②立地によって 観光客(クモの場合は獲物)の質と量が左右されること、③観光資源等地域の魅力(クモの場合はエ サ)は大きすぎても小さすぎてもいけない、④ときどきネットワーク(クモの場合はクモの巣)は張 り替えが必要であることが挙げられる。こうした等価要因によるクモの巣の特性から、観光ネットワ ークの進化の視点を見つけていくことも有用である。 © 2015 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
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