藤岡研究室 緑が丘 3 号館 205 号、206 号 室 建築史 [email protected] 未来の建築がどうなるかについて、皆さんは関心があるでしょう。10 年後、20 年後に皆さんが建築界 の第一線で活躍する頃にデザインや技術がどのようなものになっているかを知りたいと願うのは、当 然のことでしょう。しかし、未来の建築を いま見ることはできません。皆さんが見ることができるの は、これまでに建てられたか提案された建築だけです。それを再解釈することを通してしか、未来の建 築を立ち上げることはできないのです。 建築史は、いい建築とは何かを考えるための手がかりを与えるものです。いい建築をつくりたいからこ そ、また未来の建築に関心があるからこそ、過去の建築に目を向けるのです。つまり、過去の建築の研 究を通していい建築とは何かを考えようとしているのです。ここで注意しなくてはならないのは、過 去の建築は自明のものではないということです。専門家が一致して認める自明の価値のようなものは 存在しません。過去の建築の中に新しい意味を発見すること、そしてそれによって建築をこれまでと は違った視点で考えられるようになることが大事なのです。 藤岡研究室はおもに日本近代の建築史を研究しています。「近代」は、日本では幕末の開国から現在まで を意味します。直近の事実まで扱うわけで、あまりにも時代が近すぎて中立性が保てないのではない かと思われるかもしれません。建築史は完全ではあり得ませんが、それが事実の単なるコレクション ではないことも理解しなくてはなりません。建築史は、著者が重要と考えるいくつかの事実の間に何ら かの関係を見て、それで過去を理解可能なものにしようとする営みでもあります。したがって、なぜ ある事実にだけ意味を見るのか、それらをどのような方針でまとめてひとつの言説にするのかについ ての方法論や歴史観が求められます。ですから、藤岡研究室では事実を収集・記録することは最終目 的になりません。研究対象を限定していても、そこから建築に関して意味のあるメッセージを導き出 すことを目指しています。 以上から、学生に求められる資質は次のようなものになります。1)現代建築に関心を持っている人、 2)方法論や歴史観など、研究方法に意識的で、相対化ができる人、です。 参考までに私がこれまで発表してきた著作の一部を以下に記します。そこでは、 「日本的なもの」や、 「空間」、「文化」、「保存」などの概念とデザインの関係を巡る考察をはじめ、都市史、技術史などに関 して、先に記したことが具体的にどのように展開されているかがうかがえると思います。(藤岡洋保) <主な著書> ・ 藤岡洋保(共著)『清家清』(同編集委員会、新建築社、2006) ・ 藤岡洋保『表現者・堀口捨己—総合芸術の探求—』(中央公論美術出版、2009 ) ・ 藤岡洋保『近代建築史』(森北出版、2011) <主な論文> ・ 藤岡洋保「昭和初期の日本の建築界における『日本的なもの』─合理主義の建築家による新しい伝 統理解─」(『日本建築学会計画系論文報告集』no.412、pp.173-180、1990 年 6 月) ・ 藤岡洋保、佐藤由美「建築雑誌に示された『空間』という概念の導入と定着」(『日本建築学会計 画系論文報告集』no.447、pp.109-118、1993 年 5 月) ・ 藤岡洋保、今藤啓「『丸之内紳士録』大正 11 年版・大正 15 年版・昭和 6 年版に掲載された高級社 員の居住地分布に見られる特徴—大正末期から昭和初期における東京の中産階級の居住地に関する研 究—」(『日本建築学会計画系論文報告集』no.470、pp.235-42 1995 年 4 月) ・ 「『文化会館』の系譜—『文化』概念の変容と建築家の姿勢—」( 『日本建築学会計画系論文集』 no.524、pp.311-318、1999 年 10 月) ・ 藤岡洋保、平賀あまな「大江新太郎の日光東照宮修理」( 『日本建築学会計画系論文集』no.531、 pp.311-318、1999 年 10 月) ・ 増田泰良、西澤英和、藤岡洋保「日本における鉄筋コンクリート造の導入および算定理論の受容過 程に見られる特徴について」(『日本建築学会計画系論文集』no. 634、pp.2773-2782、 2008 年 12 月)
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