(大学数学のかけ橋「行列の話第10話」より)PDFファイル

行列式の話 10
T:では今回はいよいよ最終回です。まず、前回の問題をもう一度かいておきましょう。
【問題2】
p1
四面体 OA BC において、OA = a ,OB = b , OC = c とする。線分 OA を 2:1 に
p2
p3
q1
q2
q3
r1
r2
r3
=
内分する点を P 、線分 P B を 2:1に内分する点を Q 、線分 QC を 2:1に内分する
2
3
0
2
9
2
3
0
2
27
2
9
2
3
0
ここで、真ん中の行列式はすぐに
点を R とする。
a1 a2
a3
b1
b2
b3
c1
c2
c3
となります。
8
とわかりますので、上の式は
27
(1) OP , OQ , OR を、 a , b , c を用いて表せ。
(2)四面体 OA BC の体積を V 1 、四面体 OP QR の体積を V 2 とするとき
V2
を求めよ。 (横浜国立大)
V1
(OP , OQ , OR が張る六面体の体積)=
8
(a , b , c が張る六面体の体積)
27
と表すことができます。つまり四面体 OA BC と四面体 OP QR の体積の比は
OP = 0 p 1 , p 2 , p 31 , … , c = 0 c 1 , c 2 , c 31 として、
p1 p2
@
p3
A
q 1
q2
q3 =
r1
r2
r3
0
2
9
2
3
2
27
p1
p2 p3
q1
q2
q3
r1
r2
r3
ここで、
また、
@ A
2
3
a1
a2
a3
b1
b2
b3
c1
c2
c3
0
0
2
9
2
3
@
a1
a2
a3
b1
b2
b 3 …①
c1
c2
c3
A
8
ということがわかりますね。
27
S:なるほど。すると、真ん中の行列がもっと複雑なときにこの考え方は便利になりま
すね。
T:そうです。例えば、次のような問題はどう解きますか。
【問題3】
p =4 a + b + 2c ,
は、 OP , OQ , OR で張られる平行六面体の体積、
,
r =- a +2 b + c のとき、
S:行列形式で表して
@ A @ A@ A
p
は、 a , b , c で張られる平行六面体の体積というところまで
r
S:ちょっと待ってください。 a , b , c で張られる平行六面体の体積は、列ベクトル
a1 b1
c1
a2 b2
c2
a3 b3
c3
ではなかったですか。
T:さて、ここでもう一つ補足しておきます。一般に行列式 A , B に対して、
S:これは2次の時は授業でやりましたが、3次の場合もそうなのですね。
T:そうです。でも証明はめんどうなので、省略します。いくつかの具体例で確認できれ
ばよいかと思います。さあ、すると、①式から、
2
a
6
2
4
b
-1
2
1
c
p1
p2
p3
q1
q2
q3
r1
r2
r3
=
両辺の行列式を考えれば
4
1
2
a1
a2
a3
6
2
4
b1
b2
b3
-1
2
1
c1
c2
c3
右辺の右側の行列式は a , b , c で張られる平行六面体の体積なので、体積比は
S:ああ。転置行列というやつでしたね。
AB = A B が成り立ちます。
1
左辺の行列式は OP , OQ , OR で張られる平行六面体の体積、
T:そうです。しかし、このように行と列を入れ替えた行列についても行列式の値は同じ
なのです。このことは2次の行列式の時に話しました。
4
q =
話をしてきましたね。
で表現して、
q = 6a + 2b + 4c
四面体OA BC と四面体 OP QR の体積比を求めよ。
4
1
2
6
2
4
-1
2
1
4
1
2
6
2
4
-1
2
1
ですね。
=
4
1
2
-2
0
0
-9
0
-3
=-6 から、 6:1とわかります。
T:そうです。実は今回の行列式シリーズは、最後のここをやりたかったために続けて
きたのです。尚、これは3年8組の亀掛川君が取り組んでいた問題からヒントを得て、
連載してきました。長期にわたるおつきあいご苦労様でした。