Brian McKnightのバラードにみる抑圧された感情の美学

西暦 2015 年 10 月 09 日
ダレナン博士の研究所
研究報告書 No.55
題名:Brian McKnight のバラードにみる抑圧された感情の美学
報告者:ゴンベ
Brian McKnight は 1969 年生まれのアメリカのシンガーソングライターである。バラードを得意とした
シンガーであり、その曲調や雰囲気から同じアメリカ出身のカーティス・メイフィールドやスティービー・ワ
ンダーのフォロワーとして一部では認識されているが、実際はやや異なる。もちろん、Brian は彼らから影響
もあろう。しかしながら、完全なフォロワーとは異なり、Brian には Brian らしい曲調や雰囲気にあふれてい
ることは、彼の多くの曲からも理解できる。それというのも、彼は音楽一家に生まれるとともに、そのルーツ
はゴスペルにあり、兄のクロード・マックナイトもミュージシャンであることから、幼少期から音楽に対して
他人とは異なる自分なりの見識があったことが分かる 1)。担当できる楽器もボーカルだけではなく、
ピアノ, ギ
ター, トランペットと多岐にわたる 1)。彼の曲の中でも、ファーストアルバム「Brian McKnight」に収録さ
れている「One Last Cry」は名曲中の名曲である。韓国のシンガーであるパク・ユチョンもこの曲をよくカ
バーし、ユチョンを知る人の間では有名な曲でもある。Brian の写真を図に示
す。
「One Last Cry」が収録されているファーストアルバムは 1992 年のた
め、Youtube で見る「One Last Cry」2)の MV と比較して年は経たものの、
彼の各種バラードに通じる素敵な人柄がこの写真にはにじみ出ている。
アメリカのミュージシャンの一部は、過激な表現があることも少なくはない。
その背景には、アメリカの能力主義を中心としたシビアな見方もあろうが、特
に R&B などのミュージックに関しては、人種偏見への反発を起因とする攻撃
的な曲もなくはない。人種の多様なアメリカならではの過酷な状況がそこに感
じられる。もちろん Brian にもその影響は皆無ではないと思うが、彼のバラー
ドにはあらゆる人に対してやさしい気持ちを抱かせる特徴的な点がある。
具体的な音域のデータはここでは提示できないが、彼の曲には刺激するよう
図 Brian McKnight 氏 1)
な無理な高域が少なく、適度にふくやかな低域で、かつ、全体的にまろやかな
音源を使用したバラードがほとんどである。彼が意図してこのような音を好んでいるのかは不明だが、彼がキ
ーボードで扱う音源もとてもやわらかいものが多く、「芳醇な」とでも言えるような彼独自の美学がそこかし
こに見てとれる。ファーストアルバムの音源に関しては、インドのシタールなどの音源も取り入れ、全体的に
若気の至りのとがった感じもあるが、その後の全てのアルバムのバラードは彼の美学に基づく抑圧された音の
心地よいタイプが多い。ただし、彼のファーストアルバムは決して失敗ではないことをあえてここで告げたい。
それを証明するように、このファーストアルバムはアメリカでのプラチナアルバムであり、今でもその輝きは
揺らぎない。
抑圧された音を基調としているため、聴く側の年齢に関わらずいつ聴いても心地よい。また、その音にもれ
ず感情を決して爆発させるのではなく、冷静でありつつもほとばしる感情を抑えられないといった歌い方も彼
の優れた特徴である。日本での彼の知名度はいまいちだが、この先も彼のバラードが世界中の人に愛されるよ
う、年齢を重ねても彼独自の美学を円熟してもらいたい。そう期待してやまない。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/ブライアン・マックナイト (閲覧 2015.10.9)
2) https://www.youtube.com/watch?v=sz-NhGanOAE&index=3&list=RD--IRJr_AsPU (閲覧 2015.10.9)