悪性リンパ腫の診断と治療 新潟市民病院 血液内科 髙井和江 市民公開講座 2015年11月13日 血液腫瘍の頻度 (全国がん登録 男性、2013年) 大腸 15% その他 19% 造血器 7% 胃 14% 腎・膀胱 8% 肝胆膵 9% 肺 14% 前立腺 14% 登録総数 352,417例のうち、血液腫瘍は23,940例(6.8%) 血液腫瘍の頻度 (全国がん登録 女性 2013年) その他 16% 乳房 22% 腎・膀胱 3% 造血器 7% 子宮卵巣 15% 肝胆膵 8% 胃 8% 肺 8% 大腸 13% 登録総数277,074例のうち、血液腫瘍は18,382例(6.6%) 悪性リンパ腫の頻度 (全国がん統計 血液腫瘍 男女合計 2013年) 多発性骨髄腫 11% 他の血液腫瘍 16% 悪性リンパ腫 52% 白血病 21% 血液腫瘍42,322例のうち、悪性リンパ腫が22,156例(52.4%)を占める。 日本における悪性リンパ腫の罹患率の推移 本日のお話 1. 悪性リンパ腫ってどんな病気? 2.悪性リンパ腫:検査と診断 病型診断・病期診断 3.悪性リンパ腫の治療 4.化学療法の副作用と対策 悪性リンパ腫とは? 白血球の中のリンパ球ががん化した腫瘍で、リンパ節が 腫れたり、腫瘤(こぶ)ができたりする病気 多くはリンパ系組織に発生するが、全身のあらゆる臓器 から発生しうる。 リンパ系組織: リンパ節、胸腺、脾臓、扁桃腺など リンパ外臓器: 脳、眼、胃、大腸、小腸、甲状腺、肺、 心臓、肝臓、骨髄、脊髄、皮膚など 腫瘍細胞の形や性質から、大きくホジキンリンパ腫と 非ホジキンリンパ腫の2種類に分類。非ホジキンが大部分 リンパ球の種類と働き リンパ球は、細菌やウイルスなどの病原体の侵入を 防ぎ、これを排除する(これを免疫という)。 リンパ球にはB細胞、T細胞、NK細胞があり、それぞ れががん化し、多種多様なリンパ腫を発生する。 B細胞:抗体という蛋白を作って血液中に放出する。 T細胞:移植における拒絶反応のような細胞性免疫 を担当する。 NK細胞:免疫反応を介さないで腫瘍細胞を攻撃する。 悪性リンパ腫タイプ別頻度 日本血液学会、国立病院機構、日本小児血液・がん学会:2013年診断例 T/NK細胞性 13% ホジキン 5% その他 0% B細胞性 82% 悪 悪性リンパ腫10,381例のうち、B細胞リンパ腫が8,447例(81.3%)を占める。 非ホジキンリンパ腫の悪性度分類 悪性度 低悪性度 慢性 (年単位) B細胞性 小細胞性リンパ腫 MALTリンパ腫 濾胞性リンパ腫 (グレート1,2,3a) T/NK細胞性 菌状息肉腫 中悪性度 (月単位) マントル細胞リンパ腫 濾胞性リンパ腫(3b) びまん性大細胞型 末梢性T細胞 血管免疫芽球性 未分化大細胞型 高悪性度 急性 (週単位) リンパ芽球性リンパ腫 バーキットリンパ腫 リンパ芽球性 NK/T細胞性鼻型 成人T細胞性 MALT:mucosa-associated lymphid tissue (粘膜関連リンパ組織) リンパ球の分化と代表的なリンパ腫の発生 びまん性大細胞型 B細胞リンパ腫 (インフォームドコンセントのための図説シリーズ 悪性リンパ腫 医薬ジャーナル社より引用) 悪性リンパ腫の発生原因 大部分は原因不明、一部に細菌やウイルスが関与 1.胃MALTリンパ腫 ヘリコバクター・ピロリ菌陽性例では除菌療法が有効 2.EBウイルス関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ・免疫不全関連:移植後、関節リウマチ、AIDS、加齢など ・慢性炎症に伴う:膿胸後リンパ腫 3.EBウイルス関連T/NK細胞リンパ腫 ・節外性NK/T細胞リンパ腫-鼻型 ・小児全身性EBV陽性T細胞リンパ増殖異常症 4.成人T細胞白血病/リンパ腫 HTLV-1に感染 数十年後に発症 (累積発症率 2~5%) 沖縄九州地方に多いが新潟でも散発。 検査と診断 (1)リンパ腫の確定と病型診断 ・ リンパ節または腫瘍生検 しこりのあるリンパ節あるいは腫瘍の一部を外科的に採取 ・病理組織診断:免疫染色による病型分類 採取した組織を顕微鏡で観察し、リンパ腫細胞の形や免疫 染色の特徴から詳細な病型を決定する。 ・染色体分析、遺伝子診断 詳細なリンパ腫の病型や治療選択・治療反応性を検討する 濾胞性リンパ腫 CD20陽性→B細胞性 検査と診断 (2)病期診断のための検査 1.病歴(問診):これまでの経過、発熱、体重減少、寝汗など 2.診察:リンパ節の腫れの部位や大きさ、扁桃腺の腫れ、 腹部のしこり、肝臓脾臓の腫れ、皮膚 の異常など 3.血液検査:白血球、赤血球、血小板、肝機能、腎機能、血糖 ウイルス関連検査;肝炎ウイルス、HTLV-1、HIV、EBVなど 4.骨髄検査:腸骨に針を刺して骨髄液を吸引する骨髄穿刺、 組織を採取する骨髄生検で骨髄への浸潤やその状態を見る 検査と診断 (2)病期診断のための検査 5.画像診断:胸部X線、超音波検査、CT, MRI検査、PET検査 病変の大きさや広がり、胸水、腹水の有無など 6.消化管内視鏡検査:病変があれば生検、ピロリ菌検査など 7.脳脊髄液検査:脳や髄膜にリンパ腫浸潤が疑われた場合 病期分類(Ann Arbor分類) I期:1つのリンパ節領域、リンパ節以外の臓器の限局的な病変にとどまっている。 II期:横隔膜を境界として、その上または下のいずれか一方に限局した2つ以上の リンパ節領域、リンパ組織の病変。 B症状:38℃以上の発熱、寝汗、体重減少がある場合は“B”, なければ“A”とする。 B症状なければ 病期 IA 両側頸部リンパ節、縦隔病変に加え 最近強い寝汗あり: 病期 IIB 病期分類(Ann Arbor分類) III期: 横隔膜の両側に及ぶリンパ節領域またはリンパ組織の病変 IV期: リンパ節以外の臓器への広範な浸潤。たとえば、骨髄、肝臓など 発熱、寝汗、体重減少なし 病期 IIIA CT検査で肝臓に多発性病変あり 原因不明の発熱持続:病期 IVB 悪性リンパ腫の治療 リンパ腫の種類 悪性度 病型(B or T/NK細胞性) 進行に影響 する因子 進み具合 (病期) (予後因子) 治療方針 進行に影響する因子:予後因子とは 国際予後指標:International Prognostic Index: IPI 予後因子 年齢 血清LDH PS* 病期 節外病変数 予後不良因子 61歳以上 正常上限を超える 2~4 III またはIV 2以上 *PS:Performance Statusとは全身状態の指標 PS0: 無症状 、PS1:軽度の症状があり、PS2: 日中の50%以上は起居 PS3:日中の50%以上は就床、PS5:終日就床 予後不良因子の数によってriskを決定 0または1:low risk(L) 2: low-intermediate risk (LI) 3: high-intermediate risk (HI) 4または5: high risk(H) 国際予後指標(IPI)による各リスクグループの 生存曲線 L: low risk, LI: low-intermediate risk, HI: high-intermediate risk H: high risk (N Eng J Med.329:987-994, 1993より引用 非ホジキンリンパ腫の病型・病期と治療 低悪性度リンパ腫での主な治療選択肢 I期 III、IV期 II期 2つの病 変が近い 放射線治療 I期の胃MALT リンパ腫では ピロリ菌の除菌が第一選択 2つの病変が 離れている 経過観察、抗がん剤治療 (+抗CD20 モノクローナル抗体)* 圧迫症状部位への放射線治療 * CD20抗原陽性例 中悪性度リンパ腫での主な治療選択肢 I、II期 抗がん剤治療 (+抗CD20 モノクローナル抗体)* 抗がん剤治療+放射線治療 III、IV期 抗がん剤治療 (+抗CD20モノクロー ナル抗体)* 高悪性度リンパ腫での主な治療選択肢 抗がん剤治療(+抗CD20モノクローナル抗体)* * 抗CD20抗原陽性例 ホジキンリンパ腫の病型・病期と治療 限局型:I,II期 結節性リンパ球優位 型ホジキンリンパ腫 B症状(発熱、 体重減少、寝 汗)がない 進展型:III,IV期 古典的 ホジキンリンパ腫 B症状 がある 放射線治療 抗がん剤治療+放射線治療 抗がん剤治療 分子標的薬剤とは 腫瘍細胞の持つ分子(蛋白質)を標的にして、 腫瘍細胞をピンポイント攻撃する。 標的分子を持たない正常細胞は攻撃しない。 抗がん剤のような血液毒性や嘔気・脱毛など は、ほとんど認めない。 モノクローナル抗体によるインフュージョン・リア クション、TK阻害剤による間質性肺炎など、特有 の副作用には注意が必要 血液腫瘍に対する分子標的薬剤 1.モノクローナル抗体 一般名 商品名 標的分子 適応疾患 リツキシマブ リツキサン CD20 B細胞リンパ腫 オファツムマブ アーゼラ CD20 慢性リンパ性白血病 モガムリズマブ ポテリジオ CCR4 成人T細胞白血病/リンパ腫 末梢性T細胞リンパ腫 ブレンツキシマブ ベドチン アドセトリス CD30 ホジキンリンパ腫 未分化大細胞リンパ腫 ゲムツズマブ オゾガマイシン マイロターグ CD33 急性骨髄性白血病 2.チロシンキナーゼ阻害剤 イマチニブ グリベック BCR/ABL 慢性骨髄性白血病 リツキサンの 作用機序 CDC ADCC Complement-dependent cytotoxicity Antibody-dependent cellmediated cytotoxicity Fcレセプター 補体系 活性化 Bリンパ球 リツキサン リツキサン NK細胞、マクロファージ CD20抗原陽性Bリンパ球 CD20抗原 リツキシマブ(リツキサン):抗CD20モノクローナル抗体 Rituximab(モノクローナル抗体)による副作用 Infusion reaction (インフュージョン・リアクション) Rituximab(リツキサン)投与後24時間以内に多く発現する副作 用、特に初回では90%に出現。 主な症状:発熱、悪寒、悪心、頭痛、掻痒、発疹など 重度の場合:低血圧、アナフィラキシーなど 注意を要する患者 ・血液中に腫瘍細胞が大量にあるなど腫瘍量の多い患者 ・脾腫を伴う患者 ・心機能、肺機能障害を有する患者 対処方法 ・前投薬:解熱鎮痛薬・抗ヒスタミン剤の予防的投与 ・注入速度を緩めるか、投与を中断し、対症療法を行う ・重篤な場合は直ちに中止し、昇圧剤、酸素投与など リツキサン投与方法 リツキサン : 375 mg/ m2 、1週間間隔 、8回投与 (点滴静注) 生理食塩液または5%ブドウ糖液にて1mg/mLに調整 前 投 与 : リツキサン各点滴静注開始30分前に経口投与 解熱鎮痛剤 :アセトアミノフェン 400 mg 抗ヒスタミン剤 :d-マレイン酸クロルフェニラミン 2 mg 前投与 リツキサン点滴静注速度 25 mg/ 時 30分 1時間 100 mg/ 時 1時間 200 mg/ 時 残りの時間 B細胞リンパ腫の標準的治療 リツキサン併用CHOP療法(R-CHOP) 1 2 3 4 5 6 ・・・・・・・22日 リツキサン 375mg/m2 アドリアマイシン50mg/m2 オンコビン 1.4mg/m2 エンドキサン 750mg/m2 プレドニン 40mg/m2 内服5日間 (外来) ・日本では、特に高齢者に対しアドリアマイシンの代わりにTHP-ADR (ピラルビシン)を使用するR-TCOP療法を選択することが多い。 ・年齢、合併症、PSによって投与量を調整する。 ・外来では リツキサンとCHOP療法を1日で投与する。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する CHOPとR-CHOPの比較(GELA 98.5 syudy) (Feugier P. et al. J.Clin.Oncol.2005; 23:4117-4126) 症例1.発症時37歳女性 濾胞性リンパ腫(病期 IVA) 【リツキサン単独療法が著効した事例】 X年 初診。全身リンパ節腫脹、肝脾腫、骨髄浸潤あり:病期IVA リンパ節生検で濾胞性リンパ腫と診断。 CHOP 6サイクル+CVP 6サイクルで部分寛解 X+2年 再燃し、TCOP 7サイクル+CVP5サイクルで部分寛解 X+5年 再燃しサルベージ療法後 重症帯状疱疹 X+7年 肝機能障害(GOT 946), HBs抗原陽性化、 INF-α併用しながらTCOP 6サイクル、以後経過観察 X+14年 全身リンパ節腫脹著明、末梢血に腫瘍細胞出現(白血化) Lamivudine使用しながらTCOP 6サイクル施行したが水腎症出現。 リツキサン単独 週1回 4回施行後 ほぼ完全寛解にいたり、 以後無治療で経過観察。13年間(発症より27年)寛解維持している。 X+17年 Lamivudine中止5か月後肝炎再燃し、再開。 X+20年 HBV-DNA陰性化、X+21年 Lamivudine中止、以後再燃なし。 症例1 リツキサン投与前後の腹部CT 脾腫は消失( ) 投与前(X+14年) 傍大動脈リンパ節の縮小( ) と左水腎症の改善( )を 認める。のう胞は不変( ) 投与3.5年後 症例2:46歳女性 濾胞性リンパ腫 病期 IVB 【初回寛解時に自己末梢血幹細胞移植併用大量化学療法施行例】 200X年 全身リンパ節腫脹で紹介受診。リンパ節生検で 濾胞性リンパ腫(CD20+)と診断。治療希望せず経過観察自己中断。 200X+2年 全身リンパ節腫脹が増強し、再受診。体重減少、寝汗あり WBC 59,600/μL (リンパ腫細胞 84.5%),Hb 6.5g/dl、血小板20.4万 LDH 613 IU, sIL-2R 10,400 U/mL IPI :high riskにて予後不良と判断し、初回治療時に自己末梢血幹細胞 移植併用大量化学療法(auto-PBSCT)の適応と判断した。 寛解導入療法 及びauto-PBSCTで寛解を得たが、3年後 再燃有り、 サルベージ療法(リツキサン+ベンダムスチン併用療法)施行。 腫瘍縮小後は、再発予防のため、地固め療法として「ゼヴァリンによる RI(アイソトープ)標識抗体療法」を行う予定。 症例2の治療概要 大量隔週 R-TCOP-G Rituximab 375mg/m2 d-1 THP-ADR 75mg/m2 d1 CPA 1,000mg/m2 d1 VCR 1.4mg/m2 d1 PSL 50mg/m2 d1~5 G-CSF 2μg/kg d6~ 移植前大量化学療法 LEED療法 CPA 60mg/kg d-4,-3 VP-16 250mg/m2 d-4,-3,-2 L-PAM 130mg/m2 d-1 Dexa 40mg/body d-4~-1 自己末梢血幹細胞採取 CD34+細胞 2.6x106/kg 自己末梢血 幹細胞移植 症例2 入院時頸部CT (200X年2月) PBSCT後頸部CT (200X年6月) 症例2 入院時 胸部CT (200X年2月) PBSCT後 胸部CT (200X年6月) 症例2 入院時腹部CT (200X年2月) PBSCT後腹部CT (200X年.6月) ゼヴァリンによるRI(アイソトープ)標識抗体療法 放射性同位元素(アイソトープ)であるイットリウム-90(90Y)を結合した モノクローナル抗体(イブリツモマブ)を静脈注射し、リンパ腫細胞に 結合した抗体の90Yから放射されるベータ線によってリンパ腫細胞に ダメージを与える治療。 ゼヴァリンによるRI標識抗体療法 【適応】 CD20陽性の再発または難治性の「低悪性度B細胞性 非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫」 【治療スケジュール】 約10日間の入院治療、治療は1回のみで終了 1日目 ①リツキシマブ 3~6時間で点滴、投与4時間以内に ②インジウム-111(111In)イブリツモマブを10分で静脈注射 3~4日目 ②投与48~72時間後、ガンマカメラを用いて画像診断を行う。 111Inイブリツモマブから放射されるガンマ線により、薬剤の体内分布 を測定し、骨髄に著明な分布が認められる場合は治療不適格と 判断し、以後の治療(90Yイブリツモマブ)は中止する。 7~9日目 ①リツキシマブ 3~6時間で点滴、投与4時間以内に ②イットリウム-90(90Y)イブリツモマブを10分で静脈注射 B細胞リンパ腫のCD20抗原に結合し、90Yから放射されるベータ線 (5.3mmの範囲に影響)によって、リンパ腫細胞にダメージを与える。 化学療法の副作用 1.消化器症状:吐き気(悪心)・嘔吐 下痢・便秘、腹痛 2.骨髄抑制:白血球減少、貧血、血小板減少 3.皮膚障害:血管外漏出、血管炎、薬疹、脱毛 4.腎障害 5.肝障害 6.心筋障害 7.肺障害:間質性肺炎 8.神経障害、9. 性腺障害 消化器症状:便秘 【原因】 制吐剤の使用により、腸管の蠕動運動が低下 ビンクリスチンによる末梢神経や自律神経の障害によ る腸管運動の低下 食事量や水分摂取量の減少・食事内容の変化 【治療】 消化管運動改善薬 便が硬くなっている場合は緩下剤:酸化Mgなど 麻痺性イレウスにならないように早期の対策が必要 骨髄抑制:抗腫瘍剤による造血障害 白血球(好中球減少):発熱、肺炎、敗血症など 感染症の予防と治療、G-CSF製剤の投与 G-CSF:好中球(白血球)の造血・動員を刺激する薬剤 赤血球減少(貧血):めまい、息切れ、倦怠感 赤血球製剤の輸血(血色素 7g/dl以上目標) 血小板減少:出血傾向:紫斑、粘膜出血 血小板製剤の輸血(血小板1~2万保つ) 白血球(好中球)減少に対する支持療法 抗生物質 発熱 CHOP PEG-G-CSF G-CSF 4000 白 血 球 数 2000 1000 0 7 14 21 治療日数 リンパ腫の免疫不全と易感染症 リンパ腫=リンパ球の腫瘍化(正常に働かない) Bリンパ球:液性免疫(免疫グロブリン産生) ウイルス感染:帯状疱疹、サイトメガロウイルス B型肝炎ウイルスの再活性化→ 劇症肝炎 細菌感染:肺炎球菌 Tリンパ球:細胞性免疫、免疫の司令塔 ニューモシスチス肺炎、結核、非定型抗酸菌症 化学療法による好中球減少 細菌感染:緑膿菌、大腸菌その他の腸内細菌 真菌感染:カンジダ、アスペルギルス、ムコール ステロイドによる免疫不全(リンパ球機能の抑制) 白血球(好中球)減少時の感染対策 清潔に保つ 口腔内:うがい、はみがき 手指 :手洗い、アルコール擦り込み 身体 :積極的に風呂(シャワー)に入る 発熱時の抗菌薬投与 可能な限り早く(翌日まで待たない) 多くの細菌に十分な抗菌力を持つ薬剤を選択 検査(血液培養、胸部X線など)を行いながら 免疫力・体力を落とさない。 前向きに考える。十分な休息・睡眠、栄養補給 リンパ腫治療におけるHBV再活性化 抗腫瘍剤治療(ステロイドを含む) リツキシマブ(抗CD20抗体) 造血幹細胞移植療法 これらの治療による免疫力の低下が、HBVの 再活性化を惹起し、重症肝炎を発症する危険あり。 慢性肝炎やキャリアの患者には、抗ウイルス剤を 併用しながら、利益が上回る場合のみ治療を行う。 HBs抗原陰性でも、HBs抗体、HBc抗体陽性例では 定期的にHBV-DNAを測定し、陽性化したら抗ウイルス 剤の予防投与が必要。 まとめ(1) 1.悪性リンパ腫は、リンパ節のほか、全身のあらゆる臓器 から発生しうるためさまざまな症状が見られます。 2.リンパ腫の種類(病型)、悪性度、病期(進み具合)、 予後因子によって治療方針を決めるため、生検による 組織診断、免疫染色、遺伝子検査、骨髄穿刺・生検、 画像診断など、様々な検査が必要です。 3.全身の化学療法が中心ですが、分子標的治療薬の併用、 放射線治療を組み合わせ、治療効果を高めます。 まとめ(2) 4.再発例や難治例では、自己末梢血幹細胞移植併用 大量化学療法が選択されることがあります。 5.低悪性度B細胞性リンパ腫やマントル細胞リンパ腫の 再発・難治例にサルベージ療法として抗腫瘍薬(ベンダ ムスチンなど)、ゼヴァリンによるRI標識抗体療法など 新しい治療法があります。 6.化学療法による副作用に対し、様々な支持療法を併用し、 化学療法を安全に実施します。 ご静聴ありがとうございました。
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