博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号)昭和 58 年 3 月 31 日発行学術干l前物
1SSN 0389-4444
畳室
第 8 巻第 1 号・ 2 号合併号
論文
ロンドン lとおける博物館の教育活動
調査報告(ー)
一学校を対象とした博物館教育の促進状況一
安井
亮…....
1~15 頁
歴史の転換期と人間
一人物博物館一
種田明…… 16 ~25 頁
博物館におけるハーバリウム K ついての一考察
井上
博物館で用いる分類
吉村典夫…… 30 ~40 頁
賢治…・ 田・ 26 ~ 29 頁
学校博物館の実相と諸問題
一国学院高等学校を媒体としてー
子家和比古
….
1983 年 3 月
全日本博物館学会
41~ 59 頁
博物館学雑誌投稿基準抜粋
1- 般的 事項
3 原稿用紙と書き方
I 投稿原稿の種類
(イ)
400 字詰め原稿用紙を用い，かい替で横書きにす
(イ)論文(Ar t icl e)
る.
(ロ)討論( Discussion)
(ロ)外国語の単語は安イプライトするか ， 手書きのと
付短報 (5hort r
eport)
きは活字体とする.
(斗ぢ議 (Abst r
act)
川
同紹介 (Book review)
イタリック字体，小キャピタル字体，ゴフック字
体，ボ-}レド字体等は著者が指定する .
(吋翻訳( Transration)
(ニ)原稿の右側欄外 fC.図 ・ 表を入れる位置を赤字で示
(付解説( Commentary)
す.
(升ニュース( News)
4 図 ・ 表 ・ 図版
(イ)図 ・ 表 ・ 図版 f C.分け ， それぞれ通し番号をつける.
投稿手続
2
(ロ)
投稿原稿 K は，著者の連絡先，原稿枚数，ベーヲ超過
の場合の処置 ， 別刷の必要部数および表紙の要・不要等
図は白紙，または淡青色印刷の方眼紙 K墨または
黒インクで製図した完成原稿を作り，そのまま印刷
を記入した所定の様式の投稿原稿整理カードをそえる.
できるものとする.
カード用紙は学会事務局に用意しであるので ， 事務局
(ノ 1
に申し込めば無料で送付する.
図 ・ 表 ・ 図版の原稿 K は枚とと f C. ，欄外 K 著
者名，図 ・ 表 ・ 図版の番号を銘嘩で記入する.
(ニJ
図 ・ 表 ・ 図版につける記号 ・ 説明文(キャプショ
ン)等，活字で印刷するものは別の用紙(トレーシ
3
. 原稿の届出
干 150
東京都渋谷区東 4-10-28
ングペーパー)に書いて希望する位置がわかるよう
国学院大学博物館学研究室内
に添布する .
(ホ)
全日本博物館学会事務局
図の内容の大きさを示すには何分の 1 としないで
縮尺(スケール)を図中に書く.
日
日本語の原稿
1
原稿の構成
(イ)原稿には ， すべて外国語の表題と著者名のローマ
血投稿臨時規程
1 原稿の長さは次に示す枚数以内を基準とする .
字書きを添えるイ)論
文
400 字詰原稿用紙
(ロ)論文 (a rticle ) には舛国語の要旨 (abstract Yæロ)討
論
ρ
20 枚
け短
報
f
f
12 枚
斗抄
録
f
f
4枚
語とし，その日本語対訳を添えるホ)紹
つける ζ とを原則とする.
要旨の長さは刷り上り 2/3頁程度(英語で約 500
付原稿第 1 頁の脚注 K著者の所属する機関または連
絡先を日本語と外国語で蓄し
介
f
f
8枚
(吋翻
訳
f
f
30 枚
(ト)解
説
ff
20 枚
(労ニュース
2
日 0枚
ρ
4枚
文章と文体
(イ)文体はひらがなと漢字による口語状態(である体)
2 著者に対して無料で贈呈する別刷は表紙なし 30 部
とし，現代かなづかいを用いる.
とする .
(ロ)漢字は当用漢字とする . ただし固有名詞や学会で
広く用いられている慣用術語は ζ の限りでない
(斗句読点は ， . を用いる.
(斗本文中の人名には敬称をつけない .
(ホ)
数量を表す数字はアラビア数字とする.
(サ固有名詞で読み誤まるおそれのあるものにはふり
がなをつける .
3
超過ペー少に対しては著者が 1 ぺー?に対して2000
円を負担する .
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 1'"15 ページ
1983 年 3 月
ロンドンにおける博物館の教育活動
調査報告(ー)
一一学校を対象とした博物館教育の促進状況一一
Prom0 ti0n 0 fM useum Educati0n in L0nd0n
安井
Ryo
*
先
YASUI
次
目
1.はじめに
ll.
現在，ロンドンに於ける Museum
Education の状況。
1lI.博物館教育の外部促進機関
1
. ロンドン市教育局 ILEA
2
. Group for Education inMuseums
3
. LondonHumanities Association
4
. B BC 学校放送と Museum
5
. 師範学校と Museum
Education
Education
I
V
. Teachers' Session
1
. 博物館の教育的利用を啓発した Teachers' Se 日 ion
2
. 特定の学科学習に関連した Teachers' Session
3
. B B C テレビ学校放送番組関連の Teachers' Session
v. おわりに
機関及び学校教師を対象とした研修 Teachers' Ses
si
on
トはじめに
を紹介する.
本稿は，筆者が 1981 年 9 月始めから 1982 月 2 月末まで，
ロンドンに於ける Museum Education の調査を行なっ
た報告書(ー)である.こ乙で報告するのは，
D. 現在，
131 の博
ロンドンに於ける M
useum
Education の状況
物館 CThe Museums AssocicationYearbook
1980 年 9 月 l 乙英国の博物館教育の全国的研究組織
198 1)があるロンドンに於いて，学校による博物館の教
育利用が，どのようにして普及，促進されているかで、あ
であった Group
for Educational Services i
n
M useums(同月 l 乙行なわれた年次総会で、名称が Group
る.本稿で用いた情報は，専ら筆者が調査期間中取材 l 乙
for Education inMuseumsI 乙変わり，現在 l 乙至っ
使ったフィールド=カードの記載事項及び若干の出版物
ている)が発行した Journal o
f Education i
n
l 乙頼った.
MuseumsNu1 , Sept. , 1980 の付録リストによると，
以下，筆者の調査期間中のロンドンに於ける博物館教
英国で学校への教育サーピス部門(
Education
育の状況と学校を対象とした博物館教育活動の外部促進
Departmen t , Education Services , School
ー1くやすい
原稿受理
りょう
1 982 年 8 月 3 1 日
連絡先(白)
干 214 川崎市多摩区登戸 2578-1 登戸ハイデンス
1205
-1-
ロンドンにおける博物館の教育活動(安井)
Services 等の名称で呼ばれている)を置く博物館は 148
出所
GES 乱1.:
Journal of Education inMuseｭ
館あり，それらは英国全土(スコットランド，イングランド，
.1980.(Interim
ums Nu1 Sept
ウエールズ，北アイルランド)の 97 都市に所在していて，
)
Lis1
うち 26 館が大ロンドン(註 1 )に所在している.
10 年前の 1971 年に Department
その
of Education 表 2.
ロンドンの教育部門を置く 9 の博物館・美術館
and Science が発表した数字(註 2 )によると，学校
( 1971 年)
への教育サービス部門を置く博物館が全国で 47 館，うち
博物館・美術館
年間に，学校への教育サービス部門を置く博物館の数が
飛躍的に伸びたことが一目瞭然である.表 1 と 2 はそれ
ぞれ前記の二資料が発表した，ロンドンで学校への教育
サービス部門を置く博物館である.
表1.
目経営主体
British Library Reference Division
国
BritishMuseum
国
GeologicalMuseum.
HornimanMuseum
ScienceMuseum
Victoria & Albert Museum
出所
Dept. of Education and Science.
Museum in Education(Education Survey
12) , HMSO , Londo n, 1971.
勢 Gui l
dhall Museum と合併， 1975 年 6 月に
Museum of London として発足する.
(開館は 1976 年 12 月)
v
-
r
a
House of Commons
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L
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n
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刈
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E
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M1n
川
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ro-ｭ
fA11n
zlor
nMQ也
Commonwealth Institute
Museum
Natura1HistoryMuseum
国公国
Bethnal GreenMuseum of Childhood
国
fryeMuseum
Gef
National MaritimeMuseum
(1980 年 9 月)
博物館・芙 iftî 館
Commonwealth Institute
骨 London
ロンドンの教育部門を置く 26 の博物館・美術館
経営主体
国公国公公国国国国
大ロンドン l 乙所在するのが 9 館としている.即ちこの 10
公
国
ImperialWarMuseum
国
Li
veseyMuseum
公
LondonTransportMuseum
財
Museum of London
Museum ofMankind
National Gallery
National Maritime Museum
国
国国国国国
National Army Museum
国・公
1971 年から 1980 年までの 10 年間で，大ロンドンだ
けでも 17 の博物館に学校への教育サービス音問が置かれ
るようになったが，年表にもある通り三つの特記すべき出
来事があった.即ち，学校による博物館の教育利用封巴韮
させるために，ロンドン可前調 Inner L
orxhn Education
Authority ( 1L E A)に全国で初めて， Museum
EducationAdvisor のポストが置かれた乙と(1 978 年)
と，開館時から学校への教育サービス部門を置く博物館二
館(1 976 年 12 月にエリザベス女王によって開館された
Museum of London と，
1981 年 3 月開館のLondon
National Portrait Gallery
TransportMuseum )の誕生である.また，この 17
National HistoryMuseum
の博物館の内訳が Royal Botanical Gardens ー館を
Roya1Air ForceMuseum
公国国
Passmore EdwardsMuseum
Secondary ( 11
定をめざす 16....... 18 才)の詳交による，歴史・芸術・民族学・
Royal Botanical Gardens
国国国国国
n
o
サ-a
。
zG
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'EaF
v
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eL
l
ω
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e
tH
ao
TT
ScienceMuseum
除いて，皆 Primary(5.......11 才)，
.
.
.
.16 才) ，ないし 6 t
h
.Former( 国家試験 A レベル検
政治・経済等の文科系の学科学習として利用できることも
注目すべき事である.
ILEA の Museum Education
Advisor は 1981 年に，学校教師向けに博物館手聞の拐|
ガイド(表 3 参照)を製作した外，生徒の学科学習に利用
Victoria &AlbertMuseum
できる大ロンドン内の 63 の博物館を収録した A3 判の表
Whitechapel Art Gallery
3 種俵 4 参照)も製作し，大ロンドンの公立の Pr i
mary
-2-
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 1
'
"
'
"15 ページ
Schoo1 2.299 校及び Secondary School 586 校等の
1972
1983 年 3 月
・学校教育審議会 Schools Council
全校(註 3) I 乙配布された.なお，これら四つの資料は誰
によって Pterodatyles
でも希望があれば入手できる.また，乙の ILEAの
Lace カ >Evans
Museum Educati
onAdvisor は後の章でも触れるが，
Methuen Educational Ltd. の合
Courses i
nMuseums
-Geoffrey McCabe 編の参考文献目
I
n-Service
録 Education Through Museums
通常，単に Teacher's
1969
vices in Museums より刊行される.
1973
-Horniman MuseumI乙独立した施設を持つ
Education and Scienｭ
Provicial
Museums
and Ga11eries が He r Majest
y
's
勤の Museum Teacher が一人置かれ
Stanionery Office より刊行され
る.
る.
・ National
Portrait Gallery に教
育部門 Education
-G.E.S..M.
Services が新設
され，常勤の Ed ucati0n
は
International
Council of Museums (ICOM) に
0fficer
よって，
が一人置かれる.
1COM Committee f0 r
Education and Cultural Action
-British Museum の
Public
Ser-
vices 乙 Education Services が
1971
・ Dept.of
ceによって
Education Centre が新設され，常
1970
for Educational Serｭ
カ )Group
Session と呼ばれている)を各学期に行なっている.
1969年から 1981 年までのロンドンの博物強酵交育
と
同出版より刊行される.
大ロンドン内の博物館の教育サービス部門との合同企画に
よって学校教師を対象とした研修会 Teachers
and Old
Brothers Ltd.
(CECA) の英国委員会として認められる.
1974
・ National
Gallery 及び Tower
新設され，成人への教育サービスが始
of London , The Armouriesにそれ
まった.これは 60 年代にあった Guide
ぞれ Education
Lecture Services が発展した部門
cation Services が新設される.
である.
Natural History Museuml 乙は Pub­
・ Department
of Education and
ic Services が新設され，その中 l 乙
Science の教育監査官によって二年
学校への教育サーピスを行なう，
間にわたって行なわれた調査の報告が，
Museums in Education のタイト
Department と Ed­
Visi-
tor Resource Group が置かれる.
1975
・ G.E.S.M. の主催によって，
セミナー
ルで He r Majesty's Stati0 nery
The Museums and the Needs of
Office より刊行される.
Handicapped
-Group for Educational Servicｭ
er で開かれる.
es in Museums 編で，英国の学校へ
Museums
Museums as an Influence on
Association
the Quality of
Information Sheet として刊行され
の V &A
る.
Life
カ Z ロンドン
Museum で開かれる.
( 4 月)
-1
:
1
useums Association より Museums
1976
in Educati0 n というタイトルで，
1969 年
(9 月)
-G.E.S.M. の主催によって，国際大会
の教育サービスを持つ 41 の博物館のリ
ストが，
People カ >Leicest-
・シンポジウム Museums
ion が National
70年の二年間にわたって Dep t.
and Educat 一
Maritime Musｭ
eum Education Department(1962
of Education and Science とは
設立)と School
of Adult and Sociｭ
別に Museum Associationによって
a1 Studies , UniversitY
行なわれた調査報告書 Mu seum Ass0 ci
-
don の合同主催によって，
0 f Lo
nｭ
National
Mariti
me Museum で開かれる .(6 月)
ati0 n Rep0 rt N
a 1( 1970 年 7 月の年
次総会で採択)が刊行された.
q
o
ロンドンにおける博物館の教育活動(安井)
-Museum
0 f Manki
nd(British
Museum の
Ethnographic
services では新たに学校教育サーピ
Dept.
スが開始される.
で 1970 1 r.独立)に Education Serviｭ
ce が新設され，
-G.E.S.M. の名称が Group
British Museum の
(9 月)
Education Services より"出向"の
形で Education Assistant が教育
・教育部門 Education
1981
Service をもっ
た London Transport Museum が開
スタッフとして配属される.
・ Geffrye
for
Education in Museums 1 乙改称.
Museum の学校教育サーピス
館される.
( 3 月)
(1935.......) に常勤の教育スタッフ Teacher
Organizer が初めて配属される.それ
までは館長の他に，経営主体であるロンドン
市教育局 Inner
Ill.博物館教育の外部促進機関
筆者の現地での調査期間中，学校を対象とした博物館
London Education の教育活動を促進している外部機関に，
Authority との間で二年契約の Museum
Education Authority( 1LEA) ,
Teacher が教育スタッフについていた
Educati0n in Museums(GEM )，百le London
-Science MuseumI 乙教育部門 Education Service が新設され
Educa ー
1930 年代から Guide
されたので，以下それらの活動を紹介する.
Lecture が学校
団体に行なわれていた
Museum of London が開館される.
tion Advisor は，
1978 年のポスト新設以来， 1
981
年 l 乙学校教師向けに博物館利用の手引ガイド MUSEUM
( 12 月
VISITS( 表 3 参照)と生徒の学科学習に利用できる
of London で，歴史教育ドラ
マが教育スタッフとロンドン市教育局
1978
ロンドン市教育局 ILEA
ILEA の教材センター C entre f0 r Lear
ni
ng
Resources I r.現在事務所を構える Museum Educaｭ
・教育部門 Ed ucati0n Dept.をもった
・ Tower
Group for
Humanities Association , BBC 師範大学等が確認
tion Officer が一人置かれる1.
1977
Inner London
大ロンドン内の 63 の博物館を収録した A3 判の表三種
(表 4 参照)を製作した外，大ロンドン内の博物館の教
ILEA の劇団 Curtain Theatreによ
育サービス部門と合同で学校教師を対象とした研修会
って始まる.
Teachers In-Service Course を博物館で各学
・ 1 LE AI
L
.Museum Educati0n Advis- 期に行なっている.表 5 は筆者の調査期間中，行なわれ
or のポストが新設される.
れ研修会のプログラムである
-National Portrait Gallery と
のポストについている Gene
ILEA の公立女子中等学校 Covent o
f
1978 年の新設以来，
乙
P.Adams は過去に Gef-
fryeMuseum で学校への教育サービスに従事したこと
the Holy Family School との問で， もあり，現在も週 l 乙一回 Greater London Coun中等教育資格認定コース Certifica-
ci
が運営する歴史博物館の Rangers
House 又は
tion of Secondary Education
Kenwood , the Iveagh Bequest のいづれかで
(C SE) の Mo de N
o
.3 M U S E U M
学校への教育サービスに従事している.
STUDIES が開始される
INNER
LONDON は現在， Ci
ty of London
-Natural History Museum で、は常勤及び 12 の Metropolitan Boroughsによって構成され
の教育スタッフによる学校向けの Gal トていて，
ery Lecture はなくなる.
1LE Aによって 10 の学区に分かれている.
図 1 はその学区の区分図である。各学区 l 乙は，学区内の
1972 年以来続いている Au xi1iaries 学校の運営及び教育の指導・監督を行なう地域教育監査
(交通費のみ支給の主婦が主体で，筆者官 Area
の調査時には 50 人)による学校向け( 6
.
.
.
. 11 才のみ)の Gallery Lecture は
存続.
1980
・ British Museum の Education
Inspector が 3.......5 人配属されている・
学区によっては，例えば第 7 学区 Borough o
f Lewi-
sham が毎年一月に行なう，学区内の新任小学校教師を
対象とした研修コースの一部を全日を使って，
学区内に
ある Horniman Museum で行なうように，学校によ
-4-
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 1"-15 ページ
表 3
1983 年 3 月
ILEA Museum Education Advisor が製作した教師用手引ガイド
IMUSEUM VISITS の抄訳
1
博物館訪問の目的
最近，教室で行なっている学科の学習に関連したテーマを設定し，博物館訪問を単なる"見学"
Outing と見なさないでほしい.
教師による事前訪問
博物館で学習を行なうために，特に教師による事前訪問が望まれる.この段階で，博物館の教育スタッ
フと面会して訪問について相談されるのがよい.学習をしようとしている展示室が，訪問時に公開され
ているかを，確認する.博物館への所要時間，行き方等の実務的なことを充分に検討する.
申し込み
前もって，申し込んでおく.できたら，手紙又は博物館の用意した所定用紙を使う.
訪問の概要を公表
学校の関係者及び引率する生徒に計画書を配布する.計画書 l こは次の要点が明らかであってほしい.
1
. 訪問の年月日，時間と詳細
2
. 博物館の住所・電話番号
3
. 世話になる博物館の教育スタッフの氏名
4
. 博物館への行き方，交通手段
5
. 駐車場
6
. 昼食の準備
1
トイレの場所
引率する団体の人数
生徒の学習効果を考えて，できるだけ人数は少なくする万が望まし川人数が多い場合，いくつかの少
グループに分ける.
10 人に 1 人の割合で，大人が付くのが望ましい.
引率する生徒の年令
8 才以下の子どもは，博物館の教育スタッフによる教育サービス(特定のテーマについての"はなし"
の授講)には小さすぎるが，よく準備された短かい訪問からは多くものを学ぶ.年少の子どもには近所
の地域博物館が適している.
博物館での"ふるまい"
引率者として子どもの監視は怠ってはならない.生徒 l 乙，世話になる教育スタッフの名前を紹介してお
く乙とは賢明である.そうすることによって，討論がある場合，その進行が順調に行くから.
もし，子どものふるまいが悪かったら，すぐにその非を正すことが望まれる.深刻な場合は，一筆詫び
状を博物館 l 乙送ることが望まれる.
訪問の"ながさ"
短かく，内容のある訪問や伺回かに分けての訪問は，長く疲れさせる一回の訪問より良く，もし訪問が
長ければ団体をいくつかの小ク.ループ l 乙分け，違う乙とを学習させた方ができれば良い.昼食中文は訪
問の終りに，子どもたらが博物館の売店での買物や館内を自主的に兄てまわれるゆとりを与えてやって
ほしし\
学校 I 乙戻ってからの"追学習" Fo1
1ow-up
博物館訪問は一種の視覚教育である故，スケッチしたことや，ノートに記録した乙とは重要である.そ
れらは貴重に保存し，学校 l 乙戻ってからの追学習の出発点に使われなくてはならない.学校 l 乙戻ってか
らの追学習が想像力に富めば富むほど，生徒の記憶の中 l 乙博物館での経験は残るものである.
F
D
ロンドンにおける博物館の教育活動(安井)
1LEA Museum Educati0 n Advis0 r が製作した表(原寸 :A3 版，縦 4 3.0 侃・横 29. :X;祝)
表 4.
Educationi
nlondon
間調 Museum
C.， "I"'j明 I TOVI.d
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BRITISH
MUSEUM
C' 1'41 岡山 11 I~nliQull剛 E".I伊.W刷向削IC.G，川阿円酬凧
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山s
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凶
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臼'.1μCi 叫同 A
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11岡町帥‘hdl.帽帆尉刷.吋.円吋
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大ロンドン
図1.大ロンドン太枠内は INNER
()は ILEA の学区
LONDON
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1
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City of London
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33 C1ty or W. t"lnotor
Surrc:"{ 州
15100
参考資料:
一 7-
EducationTearbook1981 ,
Counci1s & EducationP
r
c
s
s
.
ロンドンにおける博物館の教育活動(安井)
(註 4 )
る博物館利用を促進している所もある.
刻な不況にあって，予算の目処がつかなく，結局は出版
ILEAI 乙は 41 の教材及び教育情報センターに相当す
には至らなかったが，かなりの博物館は調査に対して
る Teachers' Centre が Inner Londonl乙展在し
「協力的だった」と，調査の企画者であった British
ていて，各センターには教育監査官(学区教育監査官と
Museum Education Services のAn ne Pearson は
は別)が配属されていて，それぞれ特定の学科指導を行
詰っていた.
なっている.
乙れらのセンターの内， History and
(註 7 )
3
. LondonHumanities Association
S0 cia1 Sciences Teachers' Centre や Te-
1981 年 9 月に発足した London Humanities Asso-
achers' AIt Centre では ILEA Museum Edu-
ciation の目的は，大ロンドンに於ける Pr imary と
cation Advisor が博物館と合同で企画する Teach-
Secondary School の人文学 Humani ties の研究開
ers' Session とは別に，独自に学校教師を対象とし
発をめざすものであり，学校で人文学関係の学科を教
た Teachers' Session を行なっている
える教師，
(註 5 )
大ロンドン内の博物館で行なわれる特別展，特別教育
ILEA Teachers' Centre ,
ILEA In一
ILEA Museum Education Advisor ,
spector ,
プログラム( 6 th.Former コース等)や Teachers'
博物館の教育スタッフ，教材製作者，師範大学等より成
Session の案内は， Teachers'Centre の定期刊
り立っている.この組織は人文学関係の特定の学術テ一
行物の他，週一回(学期中のみ発行)発行される 'i lea マについての研修会を博物館で行なったり，各学期の始
contact' 誌で，なされている.
めに Newsletter を発行し，博物館で、の Teachers'
2
. Group for Education in Museums
Session や特別展等の案内を行なっている.
国内外の博物館教育関係者だけでなく，広く学校関係
(註 8 )
4
. BBC 学校放送と Museum Education
者 l 乙聞かれている，現在の GEM は年二回 Journal o
f
1981 年 9 月 1 日から 5 日まで， Liverpool で開か
Education inMuseum の外 GEM New1etter
れた GEM
(年四回)を発行して，博物館教育関係の話題を提供し
BBC と GEM との問に作業ク・ループが発足した.その
ている.
GEMI 乙は，ロンドン地区委員会があって，随
時会合を各博物館で持ち，情報交換を行なっている
Annual Conference 1981 に於いて，
グループの構成は，
BBC からの Ed ucati0 na1Li 一
aison Officer の Jane Anderson ，テレビ学
1981 年に於けるこのロンドン委員会の主な実績として，校放送者組WATCH
Series の製作担当者の Tom
国際障害者年 l 乙当たる同年に合わせて，出版を目的とす
Stanier , GEM からの John Reeve(British
る，大ロンドン内の 131 ある博物館(註 6 )に於ける身
Museum Education Service) によって楕成さ
心障害者への教育サービスを調査した乙とであった.深
れている.
表 6.
B B C 学校放送関係の Teachers'
date
theme
age
'82-0105 I 'WATCH' Prehistoric Times
0106 1 'WATCH'Captain Cook
"
0120
Session
6-8 Natural History Museum
6-8 National Maritime Museum
"
1
1
'Merry Go Round' Travellers
1
1
8-9 London Transport Museum
0121 1
"
1
1
1
1
1
1
01221
"
"
"
"
-8-
1
1
British Museum
British Museum
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 1 -15 ページ
これに先立つて，
1981 年 4 月 l 乙はロンドンの Horni ー
を与える.
man Museum で， BBC WATCH Series'North
American lndians' の Teachers' Session が二回
1983 年 3 月
実習コースのプログラムより.
)
で、あった.実習のプログラムは次の通りで、あった.
行なわれ，一回目 l 乙は 100 人，二回目(一回目のくり返
し)には 150 人の小学教師が参加した.
この企画の目的
初日 (Ja n.. 2S )
lntroductionary
二日 (Feb.2)
5 minute teaching
semlnars
は，番組の放映の前に，この番組を学校で視聴しようと
する小学教師 l 乙. Horniman Museum が所蔵する北
experlence
米原住民の民族誌資料を紹介しながら，番組視聴の準備
三日(
をしてもらう乙とにあった.筆者の調査期間中，表 6 の
Mar. 9)
Teaching and obserｭ
ving a school visit
Teachers'Session が行なわれた.
いづれの Teachers'
か放映中 l 乙行なわれた.
Session も，番組の放映前
(註 9
四日( Mar.10)
Teaching and obserｭ
五日( Mar.11)
Advisory tutorials,
ving a school visit
)
5
. 師範学校と Museum Education
course reVlew seml-
筆者の調査期間中，ロンドンの師範大学の一つである
nar
Institute of Education , University of
London で行なわれている，現職の美術科とデザイン
(Booklet of the Galler 予のluseum Course 1982)
科教師を対象とした Ar t Teacher's Certificate
Post-graduate of Education 一年コースで，博物
館での 5 日の実習 'Gallery/Museum
実習に先立つて，各履習学生は実習が行なわれる 4 の
Course
博物館の内，最低 2 館は秋学期中( 9 月始めから 12 月
for art and design teachers in training
1982' が確認された.履習学生は， Tate Gallery ,
22 日まで)に訪れて，学校による学習風景を観察する
National Gallery, V & A Museu 叫 British
ことが義務付けられている.
Museum のいづ、れかの博物館で，館の教育スタッフの
指導のもとで
5 日の実習をすることになっている
N.Teachers'Session
乙の実習の目的は，
筆者の現地での調査期間中，学校教師を対象とした研
1
. 履習学生 l 乙，主要な博物館又は美術館の業務及
び所蔵資料の特色を教え
修会 Teachers'Session (Teachers' ln-Service
Course とも呼ばれる)に，博物館の教育的利用を啓発
2
. 博物館の教育部門の活動と機能 l 乙馴れさせ，
したもの，特定の学科に関連したテーマをもったもの，
3
. 博物館所蔵の絵画文は物的資料を教材として使
って，実際、の教育実習の機会を与え，
BBC 学校放送と関連したテーマをもったものが確認さ
れたので，以下それらを紹介する.
4
. 博物館と学校との連携を強化し1.
5
. どの博物館も，教育の場であり得て，しかも教
育的価値をもつことを認識させ，
5
Session
表 9 の各 Teachers'Session は，いづれも学校教
6
. 各学生に，博物館利用の教育技術の開発の助言
表1
博物館の教育的利用を啓発した Teachers'
師に，博物館が特定の学科学習のために利用できること
ロンドンの公立学校の就学年限
(参考資料
Education Yearbook 1981 , Councils & Education press)
6
7
8
9
Prirむ ry(.6
yrs.)
10
11
12
13
1
4
15
16
17
18(才)
Jvnior(4 yrs.)
'0'レベル
Middle(5 yrs.)
検
-9-
c?
Aζ
'A' レベル
検定
ロンドンにおける博物館の教育活動(安井)
TheMuseum Association
Inner London EducationAuthority
Museum EducationAdvisor
Area Inspectors
求 Subject Inspectors
Teachers'Centres
*
*
*
Group 0fDesi
gners/ I
n
terpreters
inMuseum
出版社
BP Educational Services
Group for Education i
nMuseum
のように，教材製作を博物館の代
わりに行なう.
The London Humanities Association
師範学校( Teachers'Colleges )
,
Department of Education
and Science
Inst. of Ed ucation Univ.of LonJon
Goldsmith College of Education 等
十
BBC Educational Services
Department of Environment
Teachers' Session を
企画する.
図 2.
ロンドンに於ける博物館教育(学校対象)に関係する諸機関
1982.8
表 8.
博物館の教育的利用を啓発した TEACHERS
SESSION
QU
TA
1
・
z
e
n
a
g
v
a
o
ρLv
P
e
a
l
VA
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A
o
e
m
・L
ρlv
'h
ゐEL
e
.d
a
179-0424
'
IPrimary Schools and IPrimary I
Nat'1 Port
. Gall
.l
Nat'1 Port
. Gallery
theMuseum
181-0401 , 2
IUse ofMuseums
181-1109/11IWha
t Use i
s Art
182-0121
182-0126
182-0206
IPrimary , INat'1 Por t. Gal l., INat'1Port
. Gal l.,
Secondary INat1
1 Army Mus
. INat1
1 Army Museum
Secondary INat11Ga1
1ery
Nat11Ga1
1ery,
1LEA Museum Educaｭ
tionAdvisor
IPrimary IHornimanMuseum IHornimanMuseum ,
Lewisham Primary ,
Induction Programme I
IDiv. 7 Inspector
IMuseums and the Use ISecondary IMuseum of Londonl Museum of London ,
ofEvidence
IBritishMuseum , Schools
Counci1,V & A Museum
1LE A History and
Social ScienceTeachers'
Centre
Your class at the
-13 yrs. IScienceMuseum I Science Museum
ScienceMuseum
'82-040V3 ITheNationalGal1ery IPrimary INational Galleryl National Gal1ery ,
and the Primary
I 1LEA Museum EducaSchool Chil
d
I tionAdvisor
-10-
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 1
-15 ページ
表 9.
特定の学科学習に関連した TEACHERS'
theme
date
1983 年 3 月
SESSION
organlzers
place
for
'81-1105/061Multi Ethnic Educa-Iover 9 yrs. い st. Commonwealth 1ILEA Multi-Ethnic
tion andMuseum
lnstitute
ITeam ,
2nd. Mus.ofMankindl ILEA Museum Educaｭ
tion Advisor ,
Commonwealth lnstiｭ
tute ,
Museum ofMankind
'81-1119
ILate Stuart
'81-1125
1Sutton Hoo and the ISecondary IBritishMuseum
Anglo-Saxons
CSchools Council
Hist
0ry 13-16
Project
)
'82-0204
ILo 吋 on'
Secondary 1Museum of London
sTransport 1Primary ,
1LondonTransport
Secondary
恥1useum
1Museum of London
1LEA Museum Educaｭ
tionAdvisor
BritishMuseum
LondonTransport Museｭ
um
ILEA Museum Educatｭ
ionAdvisor
'82-0211
1Teaching Evolution 16th.formerslNatural History
Museum
Natural HistoryMuseｭ
um
'82-0415
i
e
n
t 1Primary
1lntroducingAnc
Egypt
BritishMuseum
IBritishMuseum
n ISecondary
'81-1116/201 History of Art i
the Secondary Sch001 Curriculum
1st.
Teachers'
Art
Centre
2nd.Nat'l Maritiｭ
meMuseum
3rd.Nat'l Port.
Gallery
4th.Teachers'Art
Centr
e
5th.lnst.of Educaｭ
tlon
a.
を，啓発するのが企画のねらいで、あった.筆者も参加し
た，
Horniman Museum で行なわれた Lewi sham
National Maritime
Museum,
National Portrait
Gallery ,
Institute of Educaｭ
tion ,Univ.of London
歴史教育の教材として，利用できる博物館の所蔵
b 。それらの資料を利用するに当って，持つべき考え
方の提示.
所在する第 7 学区の小学校の新任教師を対象に行なわれ
(註 4
,
する資料の活用方法の紹介.
Primary lnduction Programme は，同博物館が
た.
ILEA Teachers'Art
Centre ,
ILEA Art lnspector
)
c. 資料の具体的な手聞方法の紹介.
各セッションは，博物館が単独で企画したものか，複
数の博物館の合同企画か，
d. 歴史教育に於ける，資料の物自立j正拠り舌用の重要性.
e. 歴史の物的証拠となり得る物的資料，特定の時代
1
nnerL0nd0n Educat
-
空間を再現した展示室，絵画・古文書を含む文献
ion Authority 関係者との合同企画か，あるいは
Museum of London で行なわれたように，
資料の利用法を考える Workshop.
a , b , c は ILEA History and Social Sciencｭ
博物館
が ILEAの Teacheas' Centre ，学志望鮮芋寵議会 Sch∞ Is
Counci1 と同じ系統の他の博物館との合同企画によるも
es Teachers' Centre のスタッフと School sCounci1
のがあった.
のロンドン地区監査官，
86 人の参加者(註 10) のあった，このセ
ッション Museums
d と e は Br i
tishMuseum,
and the Use of Evidence V & A Museu m, National Gallery ,
Public
fice の教育スタッフ (Publ icRecord
Record0f
の内容は次の通りであった.
'A
唱
噌­
ロンドンにおける博物館の教育活動(安井)
Office は広報担当者)が，話題提供者で、あった.
は次の通りであった.
(註 11 )
a. 美術史研究者の仕事の紹介.
2
. 特定の学科学習に関連した Teachers' Session
表 10 の各 Teachers' Session は，学校での特定
の学科の学習に利用できる，それぞれの博物館のみが持
b. 学校 l 乙於ける美術史教育の問患
c. 博物館・美術館の，美術史への対応.
d. 特定の 2 つの絵画について，美術史研究者・画家
つ情報(最新の学術情報の提供等)を提供していた
Commonwealth Institute と Mu seum
・美術教育家 3 者の考え方を紹介.
0 f Man-
kind で行なわれた 2 日連続のセクション"多民族教育
e. 討論.
3
. B BC テレビ学校放送番組関連の Teachers'
と博物館"は，それぞれの博物館の特性を生かして(註
12) ，社会で問題化している人種差別を学校でなくすた
めの試みの 1 つであった
われた Sut
BritishMuseum で行な
ton Hoo and theAn glo-Saxons
BBC 学校放送と Museum Education を参照されたし.
のセク
ションでは， Schools Council History 13-16
Project を学校で教えている Secondary School の教
師を対象として， British Museum が所蔵する Sut-
ton Hoo の発堀資料(常設展示室に展示)の紹介を兼
ねながら，何回かの発堀で次々と明らかになっていった
新事実及び，最近の学術情報を提供していた.
Session
表 6 及び，前章「博物館教育の外部促進機関」第 4 項
このセク
ションでは，教師用資料 Teachers' Format の開発の
ために，参加者から意見や要望を聞いていた.
Natura1HistoryMuseum で、行なわれた Teaching Evolution のセクションは，国家試験 A レベル検
定をめざす 6 t
h
. former の学生( 16"-18 才)を教
える教師を対象としていて生物の進化"を，最新の
学術的話題を紹介しながら，道案内していた.このセク
V. おわりに
最後に，筆者は Horniman Museum の Museum
Teacher への一人の小学生からの感謝の手紙を紹介す
ると共に，筆者も大変お世話になった，その Mu seum
Teacher である Mary Mellors 女史を始め，同博物
館の Keeper o
f Education Services であってしか
も， GE M
Museum の John Reeve 並びに ILEA
Museum
EducationAd visor の Gene P. Adams の各氏
その他，筆者の調査に協力して下さった多くの博物館教
育関係者に謝辞を述べる.
表 1 O
. 小学生の手紙(自筆)
ションの主な内容は次の通りで、あった.
a.
1nternati0na1 Secretary であら
れる Elizabeth Goodhew 博士及び， British
進化論についての最近の話題を紹介.
(古生物学
部門の研究スタッフ)
b.
c
. ピーグル号とダーウィンの進化論.
一一VCLLLu-Rrmaヲム dωL
一一一. Sh~rt LIl同ーーー
"
"
分類学と進化論.(教育スタッフ)
(Forest
Hill School の校長)
d.
生物の進化を教えるに当たっての，起り得る問患
e.
博物館の教育スタッフが製作した学習資料の紹介.
(VVestcliffe High School の教師)
乙のセクションの目的は，進化論についての最新の話
題を提供すると共に，生物の進化について教えられる範
囲の助言と，教えるに当たっての関連事項の紛であった
1981 年 11 月 16 日から 5 日間連続して行なわれた Hi­
一一一一一一色 tomì 勾一一
一一一一一一一ー一ー一一一 _K e. nt 一一一
一ー 之さー~- 8 "2一一一一一一一
D e. qr 門日 s
門e.i\ or主、
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ιh 乙臼 m c:.n. n、 ι ~lr:，(~ ico\(日 V巴1"1.\ '''''a. r 1'Y\.ー
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> ~e("ι inヒ色ふ ~a f'.d. 'Oe :ll・A山 F::I".
story of Art i
n the Secondary School Curriculum は，
ILEA Teachers' Art Centre カ ;ILEA
Art Inspector , NationalMaritime Museum ,
National Portrait Gallery 及び Institute
of Education , University of Lo ndon の協力
を得て実現したものである.このセクションの主な内容
-12-
Lov
.
e
r
=
orf'
一一一一一一-一向 rrrV
i
;
'
" _一一一-ー一一一
A~f;.~ ー一一一一一
(ママ)
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 1""15 ページ
(脚註
sory
1.大ロンドンは 1981 年現在， City of London の他
1983 年 3 月
Teacher for Division Seven.
(当日，配布されたプログラムより)
32 の自治行政区 11etropolitan Boroughs より成る
1LE A History&Socia
l Science
s Teach-
5.
l
ers Centre は，筆者が入手した
2
. Department of Education and Science.:
I Clio I
History& Social Sciences Teachers'Cen-
11useums i
n Education (Education Survey
tre REVIEW Spring 1981 (年 4 巨刑)によると，
12) , H11S0 , London, 1971
同センターは各学期の始めに，
3
. Statistics of Ed ucation , SchoolsVo l.
ILEA の Pr imary
Schools , Secondary Schools のそれぞれに，
1 , H11S0 , 1978
Primary Newsletter と Course Booklet を送っ
1A
RY INDUCTION
4
. LEWISHA11 PR11
PROGRA1111E 筆者も 1982 年 1 月 21 日に行なわ
て，同センターが行なう講演・ Teachers ' Session
れた研修の第四日， Horni
man11useum での一日に
・会合・展示会等の案内を行なっている.同センター
は，
では，筆者が調査中確認できたところによると，所長
1981 年 l 乙採用された 20 人の新任小学校教師が
は Tower o
f London でEd ucation Officer の経
参加した.プロクヲムの内容は次の通りであった.
9:30
9:40
Arrival a
t EducationCentre
歴を持つ Carol Adams であり，他に歴史・社会科学
Entrance. Coffee.
の教育監査官 1 人，図書館司書 1 人，歴史・社会科学
Introduction by11ary11ellors ,
の学科指導教官Ad visory Teacher 4 人，教材技官
1 人，秘書 1 人によって，スタッフが構成されている.
Senior Teacher at Horniam
11useum Education Centre:
6.τne 11useums Associati
o
n
.:11useums Year-
(
1
) Background to the 11useum.
book 1981 ,
7
. British11useum Education Service の 5 人の
(
2
) Function of the Education
lecturer の 1 人であるAn ne Pearson(1970 年，
Centre.
lecturer として Birt ish11useuml 乙就職)は，
(
3
) Why visit a museum?
1975 年に行なわれたセミナ- The11useum and
(
4
) Suitable topic area for prima-
theNeeds of Handicapped People(Leicester)
ry schools.
10:25
11:15
Observe11useum staff giving
で紹介された特製の作業台Ha ndl i
ngTable を， 1978
a talk to primary school
年に Br i
tish11useum1(.導入して以来，身体障害者
children.
への教育サービス部門を開拓してきた.
Practical session i
n museum
は，聾者の為のコースを 4 種企画し，
a) observing children working
には盲人のための 3 種のHa ndling Session を行な
b) explori
ng the museum
った実績がある.この Handling Session というの
1982 年 1 月に
1981 年上半期
c
) Selecting an area of interーは， British11useum の EGYPTIAN ANTIQUITIES , ORIENTAL ANTIQUITIES
est
, wi th a view to planning a visit
及び 11EDIAVAL
ITIES の部局 Depar t
ment の所蔵資料を借りて，
with a class.
12:45
1:30
AND LATER ANTIQU-
盲人に手で触れてそれらの歴史的実在を確かめてもら
Lunch
うのが目的である.
Practical session i
n groups.
8
. 1ρndon Humanities Association は 50 人以上
Planning a programme of work
around a museum v
isitwith the
の学校教師， 1LEA 関係者，博物館関係者や教材製作
three museum teachers of Horn-
者の会員を発足時に登録したが，初年度の運営委員は
iman11useum and the Pri
mary
次の通りである.
AdvisoryTeacher for Division
Chairwoman
(Haverstock School )
Seven(Lewhisham).Tea or coffee.
3:00τne
SueHorsley
Treasurer
Horni
man Project
VeronicaKotziamani
(Hur1i
ngham Schoo1)
Barbara Phillips , Primarv Advi-
'I
q
a
ロンドンにおける博物館の教育活動(安井)
Joint Secretaries
John Reeve
,
(
2
) MERRY-GO-ROUND(8-9 才対象)
PatsyVanags
惨
(BritishMuseum Eduｭ
テーマ学習及び基礎的な調査技術の開発が目的
・春学期のシリーズRo ads andTravel1ers,
cation Service)
Joint Editors of
Janet F1oyd
TheOrkneys.
,
・夏学期のシリーズ
RichardWoff
Energ~ Ou t Bound
Activities.
(Institute of Educat
(
3
) JUNIOR CRAFT , DESIGN AND
ion ,lhiv.of London )
TECHNOLOGY(8 才以i:対象)
CommitteeMembers:Meg Errington
(Ho11and Park School)
砂交通・運輸について
,
(
4
) OUT O F THE PAST(9-11 才対象)
Anita Lassiere
砂歴史シリーズ子ども達 l 乙，自国あるいは外
(Vauxha1
1 Manor Schoo1)
国の歴史について関心を持たせるのが目的
John Sharwood Smith
Mistress An
nels Diaｭ
-秋学期のシリーズ
Institute of
ry,Ge orgian Eng1and.
Education ,
George Stephenson
・春学期のシリーズ
Univ.of London
and the Geordy Lamp ,
Char1es Diskens
9
. 1MerryGo Round 1T rave11ers の Teacher s1
Session は
-夏学期のシリーズ
182 年 1 月 11 日から 2 月 8 日までの 5
Industria1
Archaeo-
10gy,
回の番組放映(それぞれ回の再放送あり)と関連
The BrendenVoyage.
して，ロンドンの外に，
RESOURCE UNITS:HISTORY
~
Herbert Art Gal1ery & Museu m, Coｭ
ventry('82-0204)
( 11-13 才対象)
DerbyshireMuseums Service , Derby
惨
生徒 l 乙，基礎的な歴史研究万法(考古学・文
献研究)を紹介し，まだ教室で使用されていな
(
'82-0324 , 25)
CalderdaleMuseums Service ,Ha 1ifax
い視覚教材を与える.
C82-0204)
秋・春学期シリーズ:官le Greeks ,
Romans and Britons.
MerseysideMuseums , Liverpoo1(
'82-
(
6
) RESOURCE U NITS:GEOGRAPHY
0127 , 30)
U1ster FolkMuseum , HolywoodN. Ireｭ
( 11-13 才対象)
land('82-0127)
-秋学期のシリーズWh at Ice Did t
o the
C
'MerryGo Round'Tr a"vel1ers
Land,
の
Routeway across t
he
Teachers'Session プログラムより)
Penni
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.
の各博物館で行なわれた.
Museum Education と関連した， BBC 学校放送
10. 参加者の大部分は大ロンドン内外の Secondary
番組 C 8
1/ 182) には次のものが行なわれた.
Schoo1 の歴史教師で占められ，他の博物館の教育ス
くテレビ>(ラジオ学校放送番組は 2 麗あった，筆者)
タッフや， Teachers'Centre
(
1
) WATCH(6-8 才対象)
砂
年少者の視野を広くし，想像力を刺激するの
11
. Caro1 Adams ,
Michae1 Cassin, Nationa1 Ga11ery Educaｭ
Transport ， Diwa1i ,
CaptainCook, Prehis-
tion Department
John Reeve ,
toric Times
-夏学期のシリーズ
1LEA History and Socia1
Sciences Teachers'Centre
が目的
・春学期のシリーズ
のスタッフも参加者
l こ~ "\t.こ
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Services
Sea.
-14-
BritishMuseum Education
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 1
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'15 ページ
Ronald Parkinson , V & A Museum Edu
-
Museum 0fLondon Educati
onDepartment
cation Services
Dr. Alice Prochaska ,
1
2
.Museumo
fMankind は Br iti
shMuseum の
PublicRecord
EthnographicDept. で，民族誌博物館である
Commonwealth Institute は英連邦 Common一
Office
IanDawson ,
wealth 加盟の 44 ヶ国の政治・経済・文化の総合研
Schools Council Project
究所であると同時に，加盟各国の社会・文化を紹介す
Advisor
SueMillar ,
1983 年 3 月
る博物館としても機能している.
Regional Co-Ordinator o
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Schoo1Counci1Proj
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. London
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博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 16--25 ページ
1983 年 3 月
歴史の転換期と人間
一一人物博物館一一
M enschen und Gese11schaft i
m Umschwung
- das Personalmuseum
種田
Akira
現
オく
OITA
視から，今日の社会史や経済史の重視への転換は，国際
はじめに
情勢のなかで米ソの戦後「ヤルタ体制」が揺うぎ出し相
フランス政府が 1982 年開館をめざした「ピカソ美術
対的に地位が低下したことと微妙に交錯している (2)
(パリ市)の準備が大変に遅れていると聞く.一般公
マス・メディア，とくにテレビの普及は Pbt界のある
開は早くても 1986 年，遅ければまさに『大革命 200 年
地域の粉争ゃある指導者の発言内容がもはや一地域一民
祭 j (1989 弔と同時期となってしまう.
族の問題ではなく，地球全体の問題となることを内外か
館J
ピカソ (Pablo
Ruiz y Picasso) は 1881 年生れだから昨年生誕 100
年であったし，来年 (1983 年)は没後 10 年である.
ら伝えてきている.
もしも博物館の類型のーっとして社
会経済(史)博物館が可能であるとすれば，そのコレク
ピカソと，オーエル(Ge orge Orwell 1903-'
5
0 )の
ションの主体は VTR+( プラス)マイクロコンビュー
小説 r 1984j が本稿の切っ掛けである.人物と時代と
ター〔統計グラフ，地図，記録映像 etc. J になるかも
記念祭を考え併せたとき，筆者の専門に研究しているド
しれない.
イツでは 1983 年が歴史の交差点(後述の 3 をみよ)にあ
二つの流れ，すなわち第 2 次大戦後の歴史の世界史化
たつ3r る乙と，そしてそれらを文化史として精神史と
と視聴覚のメデ、イアとしてのテレビの発達普及とは，基
して掴むには博物館が最も適しているのではないかと考
本的に共通する事実認識と問題意識をもった各国指導者
えるに至った.人物博物館というカテゴリーはまだ仮説
問の，あるいは諸国民各層の対話をますます必要とし，
的なものであるが，歴史展示の一つの在り方として検討す
かっ可能にするであろう.
るに値するのではなかろうか.奇しくも日本の「文化の
日J
(1 982 年)に E.H. カー (1892........ )が亡くなった.
米ソにみられるような価値観の相対化・多様化，別の
言葉でいえば混迷は，歴史の転換期にほとんど常に出現
している.例えばアリストテレスの時代， 16 世紀(の書
1.
(
4
)
物 J\: 産業革命以降の 200 年間の時期は，混迷を打破す
私達が一個人としてアイデンティティ(自己確認)を
るための対話とその形式を模索したのである.対話は問題
問うとき，その拠り所とするのは民族と地域一生れ育つ
を解決しないが，解決の方向と手段の提示となる.作今
た土地ーの歴史であろう.
のサミット，シンポジウム，パネルディスカッションの
しかしながら他方で，この歴
史の学び方と教育ほど 20 世紀的現実のなかで変化してい隆盛と同根のものである.
るものはないのである(1)
かつての王朝史や政治史の重
原稿受理
*おいたあきら
1982 年 11 月 30 日
連絡先(自宅)
玉川大学文学部
Dozent an der Tamagawa Univ.
対話の相手は他者ばかりではない.ある種の博物館に
,
Tokyo
東京都世田谷区弦巻 5ート 33-108
(電話
-16-
03-420-6957
歴史の転換期と人間(種田)
おいて，それは展示品を通しての自己自身との対話なの
である. コレクションが肖像画であれば(?)私たちはふ:
(
8
)
館が人物博物館のカテゴリーに入るのである.
私たちにとって重要なことは，その人物が抱いたユー
ての転換期に自己をおき，現在との比較のなかで「何か」トピアの精神や理想を歴史的批判にかけるための記録・
を(再)発見したり感じたりできるかもしれない.
しか
し，本稿に言う人物博物館とはこのような擬似体験のた
資史料・記念物を集め，そしてそれらと，またそれらを
通して(入館者としての)自己と対話することである.
めだけの肖像画コレクションではないのである.
3.
2.
1983 年はドイツの宗教改革者ルターの生誕 500 年に
博物館を分類する基準となるのは，コレクションの内
容と形式である.それらは内的必然性をもったコレクシ
当る.
さらに社会主義者で国際労働者運動，革命運動の
指導者マルクス，そして楽劇 (Musikdrama) 作曲家ヴ
ョン形成史一博物館誕生以前ーと，コレッションを成長
ァーグナーの没後 100 年である.またマルクスの創始し
させ活用し時代の要求に応え，あるいは先取りしてゆく
た共産主義の政党を担造した国会放火事件を口実として
博物館活動史一博物館設立以後ーとともになければなら
弾圧し，乙ょなくヴァーグナーの音楽を愛したヒトラー
ない.また，様々な博物館はそのコレクションの大半が
(Adolf Hitler 1889-1945) の国家社会主義ドイツ針
(
6
)
属する学問分野によって性格づけられている.実際，シ
働党 (NSDAP: いわゆる Naz is) が政権を取ってから
カゴやデュッセルドルフの社会経済(史)博物館のなか
50 年目に当っている.そしてその他に作曲家ブラームス
はパネルによる図解・統計・数字 l 乙満ちあふれでいるので
の生誕 150 年，画家クラナッハの没後 450 年，あお可まフ
ある.
(
7
)
ところが人物博物館の場合，これまで博物館学が
ランスの小説家一陸軍経理官として独填に駐在したース
重要視してこなかった，というよりは対象とならなかっ
タンダールの生誕 200 年なのである.たしかに時代や歴
た「人間性」を基礎とするコレクションをもつのである.史が人物を産み，人物がまた時代と歴史を創ってゆくの
人物博物館には博物館の機能と記念物の責務が共存す
る.人物博物館の多くは顕彰すべき人物の生涯と文化史
だから，毎年必ず誰かの伺かの記念日が巡って来る.け
れども，近年たとえば日本の企業の多くが創業・創立
上の功績・仕事およびその学芸上の影響に関連したさま
100 年とか 50 年とかを迎え，国際化する状況のなかで
ざまな形式からなるコレクションを有している.建物や
転期に差し掛か勺ているように，まさに私たちが生きて
規模の大小は別として，コレク、ンョンの一点一点がもっこ
いる現在は歴史の転換期なのである.
以下の表は， F.R.Z叫d の研i 9 ) に基づ、き，
の三主在が問題なのである.たとえそれカ粗末な家具や文
Iaい
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.
.
.
.
房具で・あったとしても，その人物の生活の香があれば重要
84 年に記念祭を迎える人物の人物博物館を抄録してみ
なコレクションとなるという二重性である.したがって収
たものである.
集すべきもの及びその整理は，乙のような博物館において
は歴史(文化史)的評価に値する人物ー彼または彼女の人
生と影響範囲ーに依存するのである.それゆえ博物館の立
地は当該人物の生まれた土地，許議ある長期あるいは短
期滞在地，没した所のいずれかが望ましい.
どの博物館でも，また人物博物館でも建設の基礎とな
っているのは館の主題の説明である.主題が考古学であ
れ，美術であれ，理工学であれ，一つ一つの資料・展示
品が相互に関係を形づくり，主題の全体像を造りあげて
いることが公開の基底になければならない.博物館設立
・ァーマ
の主旨の乙とではなく，誰の何を主題としてコレクショ
ンとする/したかが解説され，体系づけられていなけれ
ばならないのである.そしてその意味から，画家や陶芸
家の名前の付いた美術館よりはそのコレクターの名前の
付いた美術館が，さらには彼(芸術家であれコレクター
であれ)の生涯に深く関係するものを集めた広義の博物
-17-
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 16-25 ページ
表
1983 年 3 月
. 198 ト 1984 I 乙記念日を迎える人物と人物博物館リスト抄(ドイツ・ヨーロッパを中心に)
表のみかた
人名〔姓，名 J
生年月日
<ABC 順>
生地一没年月日
[読み】:岩波西洋人名辞典(増補版 198 1)による.
出也
。所在地〔都市名，地番 J :館名
<
>,<
>，一等は筆者(種目)による補遺
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年号=設立開館年
Stand 1970/71
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; 現 SPD( 社民党)創立者の一人【没後 70 年】
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Brahms , Jo
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7Hamburg- 1897.
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. CarIyle , Thomas; 評論家・歴史家
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o London , 24CheyneRowS
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歴史の転換期と人間(種目)
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【ドイツでは 125 年はよく記念される】
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:Eichendorff心 edenkstätte. S
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; 教育者【フレーベル】
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<1937 年には Kindergarten (幼稚園)と
Fröbel-Museum 設立〉
o BadBlankenberg , AmGoetheweg1
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1908/1952 【新規開館】
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. Garibaldi, G
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; イタリア統一運動指導者 E ガリパルディ】
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NewYork , S
1907 開館
(America滞在 1851-'53)
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1932 設立
Geijer, E
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kGustaf; 歴史家・詩人・哲学者・作曲家【イェイエル】
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博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号)
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1983 年 3 月
Goethe , JohannW
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gvon; 詩人・作家
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1886Goethe
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.Goethe-Museum
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: Goethe
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1953 設立
CIlmenau/Sesenheim(Elsa
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nにもあるが人物博物館とはいえないと思う. )
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a:Goethe-Gedenkstätte < 1817 -'22 間居住】
1921 設立
見
Haydn, F
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e19: Haydn-Museum
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1899 開館
Herz l, Theodor; ユダ、ヤ人作家，シオニズム運動を指導【へルヅル】
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iWien【没後 80 年】
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l: GrabmalundMuseumH
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1960 開館
Heuss , Theodor; 連邦共和国初代大統領【ホイス】
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1964 設立
Hindenburg , P
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lvon; 軍人・政治家ーワイマール共和国最後の大統領一
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2Neudeck 【彼の死後ヒトラ一独裁となる】
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: Hindenburg-Museum
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ed'Arc; 愛国聖少女
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0Rouen
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s(Loiret)/Dom話my (Vosges)/Rouen 人物博物館ではないが 3 館
Johnson, Samuel; 文学者
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1946ff.再建
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d(Staffordshire) , B
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t:Johnson-House
1901 開館
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. Léger, Fernand; 画家【レジェ】
1881
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): Fernand-Léger・Museum
1957 夫人により設立
1967 国立博物館となる
-20-
歴史の転換期と人間(種田)
Lessing, G
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dEphra加;劇作家・批評家
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Wolfenbütte~
(1777 以降居住の家)
1929 設立
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n(活躍した地
Less
ing-Museum
1905 設立(1 911 以後 Nicolaihaus té移る)
o Kamenz , L
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z3: Lessingmuseum
1931 設立
Luther , Martin; 宗教改革者
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o Ei山ben ， Luthe凶 raße 1
1610 火災後再建
1817 公開
1892 博物館として設立
o Wittenberg , Co l1egier凶raße 54: L
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3Luther-G edenkhalle 開館
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97-1501 間滞在)
1959 設立してさらに
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:Karl・Marx-Museum d
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1968 開館
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Mistral, Frédéric; フランス詩人・ノーベル賞作家 E ミストラル】
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sduRh ne): Fréd むic-Mistral-Museum
1934
Mommsen , Theodor; 歴史家ーノーベル賞(文学)を受くー
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g【没後 80 年】
o Garding , AmMarkt:Theodor
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. Owen, Robert; イギリス社会運動家
【没後 125 年】
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t:Robert-Owen-Memorial-Museum
o Newtown , BroadS
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-21-
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 16"""25 ページ
1983 年 3 月
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. Raabe , Wilhehn; 小説家【ラーベ】
1831
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訂1 設立
Reis , JohannPhi1ipp; 物理学一電話発明者【ライス】
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: Phi1ipp-Reis心 edächtnisstätte
1952 設立
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hehnKonrad; 物理学者【レントゲン】【没後 60 年】
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Remscheid , SchwehnerS
Röntgen・Museum
1930 設立
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1Friedrich; 建築家【シンケル】
1781
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3Neuruppin 一 184 1. 10.9 B
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1888TH 【工科大学】 lに乙 B
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I川th ，ス
Rauch
と共 lに乙設置される.
1ω93
引1 開館〈新装〉
1943/45 分散保管〈現在"建築博物館"として構想されている一筆者注〉
Schumann , RobertAlexander; 作曲家
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Zwickau , Hauptmarkt5: Robert-Schumann・Haus
1910 n日自白
1914/56 市立博物館として生家とも.
Scott, SirWalter; 詩人・小説家
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-andRobert-Burns戸 House (
Senefelder, Aloys; 石版画発明者【ゼーネフェルダ-]
1771
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1899 開館
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rvonundzum; 政治家ーノ、 lレデンベルクとの改革で著名
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eHenri; 小説家 【スタンダール 1
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n:Stcndhal-Museum
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1934
-22-
歴史の転換期と人間(種田)
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. Toulouse-Lautrec, H
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ide; 画家
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9SchloßMalromé 【没後 80 年】
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ide-Toulouse-Lautrec-Museum
1876 設立
1922 開館
Tschechow(Chekhov) , AntonP
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h(Pavlovich); ロシア劇作家
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5Badenweiler 【没後 80 年】
o Moskau:Tschechow-Museum
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nSergeevich; ロシア作家【トゥルゲーネフ】
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:Turgenjew・ Museum
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W. Wagner , WilhelmRichard; 作曲家【ヴァーグナ-]
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2Leipzig ー 1883.2.13 Venedig
o Luzern: Richard-Wagner-Museum
1933 設立
o Bayreuth , NeuesS
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1924 設立
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Richard-Wagner-SammlungimReuter・Haus
1897 開館
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【人物博物館とは思われない】〕
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hMartin; 詩人【ヴィーラント 1
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.Riss , S
1907 開館
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. Ysay , Eugène; べ、ルギー演奏家・作曲家【イザエ】
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. Zetkin, C( K)lara; 婦人共産主義者【ツェトキン】
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1952
o Birkenwerder, SummtenerS
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e4:Clara-Zetkin-G edächtni凶 ätte
1957
q'臼
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博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 16---25 ページ
4.
1983 年 3 月
乙れとは対照的 l 乙藤田省三は事物それぞれの
(むすびに代えて)
「国境」を指摘して，物事の聞の「分業」と「協業」
一人ひとりの人間に所謂「自分史」があるように，地
の闘係だけを明らか l とすれば，それで足りるとするの
域史・民族(あるいは国家)史そして世界史は多数無数
ではなく，物的形象の含む「判じ絵的寓意」や「太古
の人々の生活と出来事を含んで刻まれてゆく
の祖型」や，末来の物を規定する「匂い」ゃ「残像」
1981 -
84 年以外に記念日を迎える人物を加えて，人物博物館
や，要するにセメント建ての機構的世界の「分室・部
は，私たちより以前に歴史の転換期を生きた人々を対象
局」性から私たちを超越させる，物の持つ非実在的な
としつつ私たちの現在そして将来の転換期を生き抜きか
姿へ彼(=べンヤミン:引用者)の眼は絶えず注がれ
っ考えよ，と迫ってきている.私のいう人物博物館は，
ていたのであった.それは一言にして言うとユートピ
"( r或る喪失の経験一隠れん
人物をとおして人類と歴史(生活)を考える手段・場所
アの精神なのである.
のことである.
坊の精神史ー J , r 精神史的考察』所収 1982 年平凡
社，
"私たちは，人間と自然，人間と人間とのかかわりと
43-44 頁)と言う.
しての労働のうちに，新しい価値を創り出す場を見出し
このような社会的・精神的な人間性は，また，ひと
てゆく乙とになるでしょう.モラル，芸術的制作も，乙
りスターリン或いはトルーマンのみならず多くの政治
の労働の場とまったく無関係に生み出されるものではな
家に欠けているため，彼ら政治家の"人物博物館"は
かったはずです.日々の社会的また個人的な人間と自然
との響きあい，人間と人間との共感・反発・交流の場は
少ないのである.
(
3
) 昭和 33(1958 )年 5 月テレビ受信契約数は 100 万台
ひろく労働の場といえるものであるし，ここからほんと
を突破した.その後，
うに根をもった新しいかたちが生み出されていくのだと
,ÚO)
考えられます:
今日，石油危機・貿易摩擦・政治不信
ブームが購入に拍車をかけ， 35 年カラー化を経て， 37
(ママ)
・受験競争・ロボット OA 革命・世界同時不況 etc. さ
34 年の「ミッチー J
(皇太子妃)
(1962) 年 3 月比は全国テレビ受信者数が 1000 万を突
破したのである.
まざまに言われるなかにあって，人物博物館を通じて近
1960 年代の先進資本主義諸国において，乙のような
代文化の構造に迫ることも博物館学のー視座になるので
テレビの雪崩のような普及とその影響は共通している.
はなかろうか.
しかしながらテレピが学校教育・社会教育・侍物館内
(1 982.1130 ー稿了)
教育に果す役割，効果，有効性や可能性についての指
摘，利用研究などはようやく緒に就いた段階ではなか
く注と備考〉
ろうか.
(
1
) 問題点が一気に噴き出したのが 1982 年夏以降の"教 (4)
科書検定論争"である.博物館に即しては，新井重三
拙稿「ドイツ博物館所蔵.. Li
bri rari
一ドイツ技術史研究抄 -J
・高井芳昭「博物館における歴史展示のあり方と実態 J
(
r 博物館学雑誌』第 7 巻第 1 号)が余すところなく
指摘している.
(2)
ウ( Geoffrey Barraclough) は木村尚三郎との対話
の中で以下のように言う;
.
.r世界諸地域における社会機構や価値観，文化伝統
の違いはあっても，人類が根本において一つであるこ
とを認識することによって救いがやってくる J
J
キャフリー
人物の尊厳一人格と仕事ーを最も適確に表わすのであ
る
•
ScottishNational Portrait Ga llery ,
・
National Portrait Gallery ,
Edinburgh/Scottland ,Queen Street
London/England , 2 S1
. Marti
ns Place
(94 ペ
r すべて
ばらばらになり，あらゆるまとまりは過ぎ去った」
r私たちには余り時間は残されていない J
W.C.2
(
6
) 拙稿「文化遺産と博物館 J (大西健夫編『現代のド
(1 67 ページ)という事実に対するより深刻な受け止め
万，
ナンョナ凡'
英国には 2 つの著名な"国立"肖像画美術館がある.
肖像画は美術の特殊な領域であるばかりでなく，その
現代の"英雄"待望感の周辺にあるものをパラクロ
ージ)といった 21 ut 紀への挑戦の姿勢から
142(1982) , PI07-119J 参尽
(5)
について
(r 科学史研究 J I
I2 1,Nu
(174 ,
175 ページ)という苛立ち" (NHK ブックス 298r ガ月
イツ』⑬所収，三修社 1982) P212........213 の表 1 博物
館機能の分類ーコレクションの内容，表 2 博物館資料
の分類ーコレクションの形式を参照されたい.
にとっての変革期 J 1977 年 202 頁)である.
-24-
歴史の転換期と人間(種目)
(
7
) ・
ChicagoHistorical Society ,
S
. 2) である.
Clark St.at NorthAve. 【筆者未看/
帥清水正徳「働くこと句意味 J(岩波書店 1982 年:)198 頁.
下記博物館パンフレット等から引用】
•
(付記)
LandesmuseumVol
k undW
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te
.
V
.
1980 年 6 月(公式には 1981 年 12月) ,
西
ドイツ・ハンブルク・市に「労働博物館 Museum der
Ehrenhof 2 , 4000 D sseldorf 30
【"世界に 2 つしかない"と説明されている.】
ArbeitJが設立されたことをつけ加えておかねばなら
一一人物博物館と同様，経済/社会経済(史)博物館
ない.本稿では人物をとおして人類と歴史(生活)を考
というカテゴリーも，おそらく日本では未だ仮説的な
える「人物博物館」を扱 "J t::.. が，この「労働博物館」は
ものであろう.あたかも歴史観が研究者の"時代区分"人物を生み出した時代の労働をとおしてー工業化時代の
に反映するように，博物館の分類も研究者の"博物館
ハンブルク1乙限定されるが一人間と歴史(生活)を考え
学Museology" を映すように思われる.
ると乙ろなのである.
(
8
) 甚だ借越な一博物館にとってではなく筆者にとって
である一例を「大和文華館 J I 乙求めたい.同館は「矢
(メモ〕
社 (New
旧「ニューヨーク・ハンブルグ・ゴム製造会
York-Hamburger Gummiwaren Compaｭ
代幸雄記念美術館」と称してもよい，むしろそうある
gnie )J 工場 l 乙開館(予定) .約 2700 m を利用して，
2
べき美術館であるが人物博物館ではない.二人の人物
従来の博物館に付随した設備(図書館，視聴覚ルーム，
(矢代氏と祖父種目虎雄)の理想を実現したものであ
レストラン等)をくみ込むほかに，勇退職工(労働者)
るが，収集に尽力された矢代氏の生渥・仕事に関する
による実演と解説，経営者・労働者双方の再就職のため
記録や資料・内外への影響やその分析研究を欠いてい
の再教育プログラム，幼稚園児教育，小中高校の授業と
るからである.
の連携ーなどさまざまな企画がある.
(保坂清『美術館を歩く西日本編』玉
Kontaktadresse :Museum der Arbeit,
川選書 1981 年， 63"'-66 頁，その他を参照〕
(
9
) Franz Rudolf Zankl , Das Personalmuseum.
Muse 包 mskunde
(~建物) 20∞O山
Maurienstt
; 1
9
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Untersuchungen zu einemMuseumstyp , i
J 20∞O∞o Hamburg 1
(資料はポン大学 Dr. Erich Pauer 氏からいただい
Bd.4
1(1972),H. 1-2 , S. 1-132
(とく l 乙S.80 f f.)一同じ標題による Diss. K ln
た Staatliche Pressestelle 2
7
.1
.83 等からであ
1969 を縮めたもの一，従って状況は 1970/71 (
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.
る.
-25-
)
( 1983.7. 12 種目記〕
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号〈通告 10 号) 20--29 ページ
1983 年 3 月
博物館に b けるハーバリウムについての一考察
A Study on the Herbaria in Musewm
井
上
Kenji
1. はじめに
賢
f台
1NOUE
集積されている博物館は驚くほど少ない.大学のハーパ
日本の植物学研究は本草学時代からはじまり，明治維
リウムと比較すると明らかである(表ー1.).充実した
新以後，多くの研究者により近代的な分類学が進められ，ハーバリウムを持つ博物館は国立科学博物館と大阪市立
今日では，多くの図鑑類が出版されている.日本の植物
自然史博物館のみであろう.今後，おしば標本の集積を
誌の概観が分類学者により，ようやく解明されつつあり，積極的に行うべきか否かについては，分類学的研究か，
とれに伴い，尼大な植物標本が大学のハーバリウムを中
地域社会の自然に関する情報センターになるような機能
心に集積された.その結果，植物誌研究から種属誌研究
をもっ乙と，即ち社会奉仕か(小官他
1970 )とい
へと進展した分類学はさらに系統分類学へと発展したが，う問題ちクローズアップしてくる.乙の問題は相反する
今後研究されなければならない多くの主題を残している.ものとして扱われ，どちらをとるべきであるかという議
また一方では，分類学発展の陰で，日本における高等植
物の分布様式の解明は置去にされてしまっている，地域
去ー 1
日本のハーバリウムにおける植物原本保有.註
植物誌も編集されているが， M学文献として再現性の確
保されているものは比較的少ないように考えられる.植
本
標
量
大学
物分類学及びフロラ研究は今後さらに，調査・研究きれ
なければならない分野であり，乙の分野の研究者の養成
をも含めて，博物館で担うべき役割は大きいと考えられ
る.
そ乙で，本論文においては博物館ハーバリウムについ
て寸づ?に論議されていない，いくつかの点について考察
を試みた.
博物館
200 万以上
1
100
1
50
2
25
2
10
8
1
5
7
I
1
30
5
2. ハーバリウムの研究分野
博物館は標本を媒体とした教育・研究をする施設であ
るので，分類学はまさに適した分野であろう.しかしな
がら，日本において分類学的研究のための標本が十分に
*いのうえけんじ
原稿受理
東京農業大学図説E 標本部
1982 年 12 月 20 日
連絡先(勤)
Musewn , Tokyo University of Agriculture
東京都世田谷区桜ñ: l-l-l
東京農業大学図書館標本部
電)
-26-
03-420-2131(内線 459 )
博物館におけるハーバリウムについての一考察〈井上)
論もなされてきた(小菅他
1970)
. 柴田がいうよ
的にならざるをえない.しいては，学芸員の専門性を低
うに，社会奉仕を考えれば生態学研究の充実を図らねば
くし，博物館の研究機能を失うことになる.学界では，
ならないであろうが，そう簡単なととではない.生態学
一般的 I乙維管束植物の研究がシダ植物と種子植物に研究
が分類学の基盤の上に発達してきたととを考えれば，両
者の専門がわかれているととから，日本における単独の
者が併行して発展してゆく乙とが望ましい.具体的には，自然史博物館でもシダ植物と種子植物にそれぞれ学芸員
屈が多様であるために，その一部である少数の標本から
を配置しなければ，ハーバリウムの正常な機能は得られ
では種を認識する ζ とは困難で，図鑑によるだけでは精
ないと考えられる.
(
2
) 学芸員の学術指導
確な同定すらおぼつかない.そして，種を認識できなけ
れば，植生調査をすることすら不可能であるし，いわゆ
ハーバリウムの利用者は博物館展示を見学に来る利用
る社会奉仕の内容すら保証できなくなってしまう.乙う
者とは異なり，積極的に研究・調査をしてみようという
した乙とから，自然史教育は博物館の一目的であるが，
人達であり，研究レベル，専門レベルの層の人達である
教育施設としての資質を博物館自身が向上させることは，芹沢(1 976) .これらの利用者の数は少ないが，芹沢が
さらに重要な課題であり，植物分類学研究の必然性が考
えられる.
分類学は系統分類学への発展により，核形分析，発生
述べているように，学芸員は利用者の行なう研究・調査
が有意義な方向へ発展するように適切な示唆を与える責
務を負うことになる.
様式，花粉形態，成分分析などからの系統の追求がおこ
なわれており，尼大なおしば標本を積みあげておこなわ
教育は直接的な学術指導と，利用者が必要とする標本
を収集・整理・保管しておく間接的指導とがある.
なくてもできるようになってきた(従来の基礎的な研究
の直接的学術指導とその周囲の問題
の手法を否定するものではない).系統分類学において
ハーバリウムの学芸員の利用者に対する直接的指導に
は，すべての館でヨーロッパの主要な博物館ハーパリウ
ついては，学芸員の専門的知識が要求されるが，博物館
ムのような大規模なものは必ずしも必要ではないかもし
利用者の大多数が展示見学に集中しているために，乙れ
れない.ある程度の標本集積量があれば，日本の博物館
への対応 l乙追われてしまう.展示などの教育活動は博物
においても分類学的研究は可能であると考えられる.
館の華やかな部分であるが，専門的指導は市民大学とし
近年，各地域のフロラ・植生などの調査も進んでいる
ての博物館における学芸員の，はなやかではないけれど
が，博物館が主導的立場で実施したものは比較的少ない
も，重要な教育活動である.その活動としては，植物分
ょうである.フロラの研究は種の分布様式を知るうえで
類学，フロラ調査，植生調査などの方法，まとめ方の指
基礎的な研究であり，地域社会の自然史資料となる.
導などがお乙なわれる.指導にあたる学芸員は各々の分
野 l 乙精通していなければならず，自身の研究・調査から
3. ハーバリウムの学芸員について
(1)学芸員の専門性
得た知識が必要となってくる.学芸員の研究活動が他の
教育活動などと同じレベルまたわこれに優先して評価さ
標本の収集・整理・保管に責任のもてる学芸員が博物
れることが必要と考えられる.しかしながら，目先の教
館に必要なことは，今までよく述べられ，多くの博物館
育活動が重視され，研究活動が疎外されているのが実状
において学芸員の養成(資格を与える ζ とではなく)が
である.その場しのぎの将来性のない活動といわざるを
なされている.博物学時代においては，一人の研究者が
えない.ハーバリウムの予算と人員の貧弱さが学芸員の
植物学全般のみならず，生物学全域を研究分野にするこ
教育と研究活動を両立させない原因ではあるが，他にも
とは珍らしくなかったが，今日では植物学も高度に分化
要因はあるようだ.
し，分類学においてさえ，高等植物のすべてに精通する
それは，分類学に対する誤解である.分類学は大学で
ことは常識的には不可能となってしまった.このような
はすでに衰退しているから，今後は博物館でするべきで
ことから，博物館の学芸員が対象とする分野し植物自
あるという意見にも代表される.植物分類学は名前をつ
然史部門においては限定されてくる.一学芸員が推管束
けるだけの学問であると考え，日本においては，すでに
植物を全て研究対象にすることは，もはや困難であろう.名前はほぼつけ終わったので，不用の学聞になったと言
下等植物をも含めた植物全体について責任を負う乙とは
う他の分野の研究者もいる.乙のような意見は若い学芸
一人の学芸員では不可能である.とのことは教育の部分員の研究意欲をどれほどそこなうか計り知れないものが
にも影響し，専門以外のものについての教育は，教科書
ある.図-1.は日本の分類学関係の
円i
ヮ“
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通告 10 号) 20'"'"'29 ページ
1983 年 3 月
図新植物の発表
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図ー1.
30
2
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40
50
種類
日本産維管束植物の分類における基礎的研究の推移
ている植物分類・地理，植物研究雑誌から 1977年'"'-1981
もなるために，学術的にも有効な手段となるので標本の
年までの聞の分類学における基礎的研究の推移を示した
収集と整理はハーバリウムの将来の布石としなければな
ものである.との図からは分類学が現在も活発に研究さ
らない.今日まで，いくつかの地域において分類に精通
れている乙と，そしてますます発展している乙ともうか
した学芸員が常在していなかったために，マニアによつ
がえる.他の分野の研究者からの分類学についての誤解
て採集された貴重な標本が散逸してしまっている .ζ れ
は，鑑別分類学に終始していた分類学者にも責任の一端
らの標本が地域博物館に保存されていたら，日本産推管
束植物の分布様式の解明にどれほど寄与したか計り知れ
はある.
植物の系統分類学はまだまだ途についたばかりであり，ないものがある.乙の問題の解決には博物館ハーパリウ
大学のハーバリウムだけでおとなうのみでなく，博物館
ムの整備が急務と考えられる.
ハーバリウムの学芸員も系統分類学的な研究活動を行し、，
(3)
研究から得られた豊富な知識を教育へ転課するよう考え
標本の収集・保存についての遅れは，いくつかの原因
ねばならない.
学芸員の仕事量と博物館の設置者
が考えられるが，その代表的なものに学芸員の技術的・
。間接的指導と地域の標本
事務的仕事量に関するものがある.欧米の代表的な博物
ハーバリウムが研究・調査のために標本を収集，整理，館におけるテクニカル・スタッフに相当する職種が日本
保管することは，利用者の研究の発展に寄与するととに
には確立されていないために，学芸員が技術的・事務的仕
なり，学芸員の行う間接的指導として重要であると考え
事の大部分を担うことになる.乙れらの仕事色重要な業
られる.学芸員は尼大な時間と経費を収集，整理に費い
務ではあるが，学芸員の本来的業務とは考えられない.
やすが，乙れはただ標本量を増加するのみであると理解
乙のような日本の事情は，植物学の発展を博物館が支え
されている.しかしながら，利用者が多くの標本に直接
てきたヨーロッパとの歴史の違いであるが今後検討を要
触れることは，多様な種についての認識を一層確実なも
する問題である.
のとしてゆく.
学芸員が本来的業務に没頭できるようなハーバリウム
標本の収集，整理は，時として，学芸員自身の研究を
は運営経費のうえから考えると，県立クラス以上の単独
巴自する乙ともある.この乙とは，ハーバリウムを利用
の自然史博物館が望ましいといえる.県立クラス以下の
するアマチュア研究家の研究対象となる標本類が地域植
スケー Jレの博物館でテクニカ Jレ・スタッフの充実は困難
物誌の基礎資料となる場合が多く，学芸員の研究課題と
であろう.しかし糸魚川 (1980) は自然史博物館の地域
-28-
博物館におけるハーバリウムについての一考察(井上)
性ということから，県立クラスのスケー Jレには自然発生
学芸員が，今まで述べたような本来的業務に没頭出来
的でないこと，地域に密接しにくいこと，行政指導型で
るようにするには，テクニカル・スタッフの充実が必要
ある乙となどから，問題があるとしている.
と考えられるが，乙のようなスケー Jレをもっ博物館は県
立クラス以上の単独の自然史博物館でなければ機能しな
4. まとめ
いであろう.
博物館のハーバリウムには分類学的研究をするに寸づt
最後に，本論文をまとめるに際し，有益なと指導をい
な標本呈が収積されていない.今後社会奉仕を考えればただいた東京農業大学の吉村典夫，梅室英夫両氏に感謝
生態学的研究も充実させなければならない.しかし，そ
の意を表します.
の基盤として，分類学の研究が必要となってくる.分類
学は系統分類学へと発展し，核形分析，発生様式，花粉参考文献
形態などからの手法から研究されるようになり，各博物( 1
) 小管貞夫:自然博物館の保存の在り方.博物館研究
4
3
(
1
)
:2
5
.
.
.
.
.
.
.
.35(1970).
館に大規模なハーバリウムを必ずしも必要としなくなっ
ている.地域の標本を主体としたハーバリウムにおいて (2)
柴田敏隆他:自然史博物館の収集活動. (1973).
も，教育・研知舌動は寸づ?に可能であろう
(3)
芹沢俊介:自然史系中小博物館における教育活動の
が維管束植物のすべてに精通する乙とは不可能となりつ (4)
金井弘夫:海外の標本室をみて(1). 日本植物分類学
植物分類学も近年は高度に細分化され.一人の学芸員
つある.分類学の高度な細分化は，利用者の専門性骨高
めるために，研究活動から得られた学芸員の豊富な知識 (5)
が要求される.学芸員の教育活動には学術分野の直接的
指導と，必要な標本を集積する乙とも教育活動と考え
構成.博物館学雑誌 1(2): 1
.
.
.
.
.
.
.
.1
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1
9
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{
)
)
.
会会報 3(5): 1
7
.
.
.
.
.
.
.
.
2
0(1
9
7
{
)
).
新井重三:地域における公立自然史博物館の建設と
活動.博物館学雑誌 3 ・ 4 :1
.
.
.
.
.
.
.
.(
)
(1979).
間接的指導とし，分けて考えた.直接的指導については， (
(
)
) 糸魚川淳二:自然史博物館に期待するもの.博物館
多くの研究課題を残し，活発に研究されている植物分類
学が対象となる.乙れに伴う地域の標本の集積が間接的 (7)
研究 15(3): 3
.
.
.
.
.
.
.
.f
)(
1980).
上野輝弥:内側からみた欧米の自然史博物館.博物
館研究 17(2): 3
.
.
.
.
.
.
.
.(
) (1982).
指導となる.
-29-
博物館雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 30""40 ページ
1983 年 3 月
博物館で用いる分類
Classification for Museums
仁1
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典
YOS1M U R A
Abstract
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1.はじめに
学芸職員や利用者が行う研究のうち，重要な地位を占
博物館の重要な諸機能のうち，資料の保管，展示，資
めるものは，資料の同定や資料を利用した標本等の同定
料 l 乙関して学芸職弓および利用者が行う研究は，すべてである.資料の保管にあたっては，資料の特性にもとづ
分類と密接に関連する.
* よしむら
つねお
いて整理排架が行われる.展示は，その作成にあたって，
原稿受理
1982 年 12 月 30 日
東京農業大学博物館・情報学研究室
連絡先(勤)
Laboratry o
f Science Information ,
干 156
TokyoUniv
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東京都世田谷区桜丘 1 ー 1-1
東京農業大学
Te1 03-420-2131
-30-
博物館で用いる分類(吉村)
表1.分類行動の 3 つの Phase
Phase
目
行
的
分類法を作成する.
名
動
分類対象である概念を，必要
称、
分類( C1
assifi
cation)
とする視点から見て，似た性
質を持つものをまとめてひと
1
つのグループとし，全体をい
くつかのク.ループにする.
2
対象事物が，分類法のどのグ
個々の対象事物の性質を調べ
同定(
ループに属するかを決める.
分類法のクツレープの概念との
索引づけ(
ldentification)
lndexing)
一致を見出す.
3
対象物を整理する.
Phase2 の結果にもとづいて， 排列( Sorting)
対象物を最適な場に置く.
排架 (Arrangement)
何等かの視点で資料を区分し，区分の結果を互いに関連
んで書き出すことは，機械でもできる.第 3 の区分は，
づけてひとつのストーリーを構成する.資料目録は資料
少なくとも定形の郵便物については，自動区分機を用い
を整理区分し，その特性を記載したものである.
て行うことができる.ひとが行うこともできることは.
同定.整理，排架および区分，ということばで示され
いうまでもない.
るひとの行動の内容は，いずれも"分類 ω ということば
Phase1 の分類の結果は， P
h
a
s
e2 を拘束し. P
h
a
s
e2 の
で示される行動の 1 部であるといえる。(分類の)結果は Phase 3 を拘束する.反対に Phase 2 の
分類は.
P
h
a
s
e3ω分類 l 乙配慮して行われ..，
Phase1 の分
類は Phase 2 の分類 l 乙配慮して行われる.
2. 分類の意味
分類ということばは，普通に用いられることぼである.
しかし，その意味は多義にわたる.大別すると，つぎの
3. 分類 CP
3 屈になろう.
第 1 は，
r 分類法」のことである.これは事物を整理
2 つに大別できょう.
するための規則を意味する.
第 2 は，
第 1 は，
r 分類法を表示した分類表 J のことである.
る乙とである.その結果として得られるものが分類法で
これらのうち，第 3 の分類には表 1 I 乙示す 3 種類の意
味があると考えられる.
あって，認識分類法と呼ぶことができる.生物進化の過
程を形態 l 乙着目して認識することが形態学的生物分類の
郵便に関係するととにとる. P
h
a
s
e1 は，研究であり.
郵便番号の体系を作る乙とである.
H , G.A Engler らによって大成された生物
P
h
a
s
e2 は，差出人が分類法がその結果の 1 例である.過去から現在までの時
受取人の住所から郵便番号簿を見て，郵便番号を決定し
記入することでゐる.
Classifi 田 ti ∞自身を目的とする.すなわら
事物をグルーピングあるいは区別し，体系づけて認識す
第 3 は，ひとの行う「分類行動 J である。
身近な例を，
hase1)の目的
博物館において分類 (Phase 1)を行う目的は，つぎの
を，人間社会の構造の変化に着目して認識することが歴
P
h
a
s
e3 は，記入された郵便番号に史の研究であり，その結果として時代区分が得られる.
もとづいて，郵便物を配送地域別に区分することである.
物質を構成原子と分子構造 l 乙着目して認識することが，
郵便番号を作るのは，ひとでなければできない.郵便物無機，有機化学研究の基本であり，その結果として化学
に記入すべき郵便番号を決めることは，普通はひとが行分類法が得られる.
う.しかし，たとえばワードプロセッサを利用すること
とし，
第 2 は，事物を蓄積するにあたって，乙れを整理し，
乙の機械に郵便番号表を記憶させておけば，機械
後に多くの事物のなかから必要なものを取り出すために
に宛先の住所を打ち込むことによって，適切な番号を選
用いる，分類法を作ることが目的である.
旬ι
qu
博物館雑誌第 8巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号)
乙の分類法は，取扱う対象によって 2 つに大別できる.
3
0
"
"
"40 ページ
1983 年 3 月
は展示の位置へ行けばよい.
1 つはもの"を対象とする場合であって，物品排架
(
2
)
(展示・収蔵)用である.他の 1 つは，概念を対象とす
資料から得られる情報，あるいは得ょうと期待する情
る場合であって，概念(情報)検索用である.
情報検索用分類法
報を持つ資料を検索するための分類法である.
情報検索用分類法は，適用のしかたによって，物品の
ひとつの博物館資料は，多種多様な情報を持つのが普
排架に用いることが可能である.しかし，物品排架用分
通である.したがって，ひとつの資料には複数の分類項
類法を，資料の持つ情報の検索用に用いることは著しく
目が lndex (検索のためのキー)として付与される.
不便であり，情報需要者の要求にこたえられない場合が
分類法の作成時には，互いに独立した視点を必要数設
多い.乙のことは，元来情報検索のために作られている
け，各視点の範囲内で必要な細分をして分類項目とする.
筈の博物館資料目録が，その作成者以外のひとや異った
たとえば，日本国内の生物分布に関しての情報を扱い，
専門分野のひとが利用するには，極めて不便である場合
必要な視点が生物の種類と地域であるとする.この分類
が多いという事実に照らしでもあきらかである.博物館
表として，図 2 が考えられる.乙の分類表は，生物区分
l 乙収蔵されている歴史的な資料，たとえば民俗資料を，
と地理区分とが互いに独立であり，表のなかでは組合わ
農業技術の立場ーから，目録によって検索することは現実
されていない.
には甚だしく困難である
lndexing および検索の段階で，必要があれば組合せ
を行う.このような方式を Pos t
-coordinate 方式と呼
4. 博物館て利用する分類法
ぷ
Pos t-coordi
nate方式で、は，並行分類を必要とし
(1)排架用分類法
ない.したがって下層における分類項目数は少なくてす
収蔵または展示にあたって，資料の置き場所を決める
む.
ための分類法である.ひとつの資料または資料群は，当
分類表に採りあげられている視点の種類が多ければそ
然ひとつの場所にしか置けない.したがって，ひとつの
の利用範囲は広くなり，少なければ利用範囲は限定され
資料または資料群は，ただひとつの分類項目 K属し，同
る.前者は普遍分類法であり，後者は偏向( S1
anted)
時に他の分類項目に属することはあり得ない.したがっ
分類法になる.
て，分類法の作成時に，必要と考えられるすべての項目
を，他の項目から独立させて，表のなかに設けておかな
6. 分類法の作成と利用
ければならない(1)
たとえば，日本の生物に関する標本を収蔵または展示
Pre-coordinate 方式
図 3 に分類法作成の考えかたを示す.乙乙で視点おょ
するとする.まず生物全体を動物と植物 l 乙区分し.つぎ
ぴ属性としてなにを考えるかは，目的によって決まり，
にそれぞれを各地方に区分するとした場合，分類表(第
その順序については，埋論的な必然性は必ずしもない.
2 階層まで)は図 1 に示すとおりになるであろう.
分類法の段階および項目数は.主として取り扱う対象
この分類表は，生物区分と地理区分とを， j組合せて
(群)の数による.この分類法の作成は，展示構成にお
作られたものである.このように，表のなかにあらかじ
ける展示項目設定，収蔵室および収蔵区分の設計のため，
め組合せた項目を作っておく分類方式を，事前( P
r
e- 必ず行う必要がある.
coordinate)方式という.また，動物・植物の各第 1
資料の収蔵・排架と展示とは，目的が異なる.したが
階層内 l 乙おいて，分類の第 2 階層で比北海道………九州
って，両者に共通の分類法が適用される可能性は極めて
が並ぶことになる.乙のような分類法を並行分類法とい
少ない.収蔵・排架のためと，展示のためには，多くの
Pre-coordi
nate 方式の分類法では，並行分類が必
場合，それぞれ個有の分類法を作成する必要がある.収
ず生じることとなり，その結果，下位の分類項目の数は
蔵・排架は，後に資料を利用するため，資料の物理・化
多くなる.
学・生物学的性質を保つこと，および資料を取り出しゃ
う.
生物区分と地理区分のいずれを第 1 階層の区分法とし
すくすることが目的である
て採用するかは，全く便宜的に決められることで、あって，
前者のためには，資料の物
理・化学・生物学的性質により，収蔵室に要求される大
どれが優先するかについての理論的根拠は之しい.
きさ位置および環境条件が異なる.このことと収蔵施設
資料の検索を行うには，利用者が欲する分類項目を分
全体の効率的運用とを併せ考えて，分類法を作成しなけ
類表上できがし，該当項目に属する資料の収蔵場所また
ればならない.後者は，資料と収蔵位置の関係を示す目
円。
qL
博物館で用いる分類(吉村)
(分類の視点〉一一一一7( 生物の種類地
域)
r 北海道地万の動物
卜東北地方の動物
卜関東地方の動物
ト中部地方の動物
￨
目
〉シ
I 動物一一一一一一一一十近陵地方の動物
卜中国地方の動物
卜四国地方の動物
￨
上
九州地方の動物
生物
r 北海道地方の植物
卜東北地方の縞物
卜関東地方の植物
ト中国地方の値物
￨
￨
i
ι 組物
ト近畿地万の植物
イ、
卜中国地方の植物
￨
卜四国地方の筒物
L 九州地方の植物
ノト
(第 2 階層み分類項目〕
(第 1 階層の分類項目)
録を整備しておけば，取り出しにあたっ
て資料の保管場所に到達できる.したが
って，収蔵・排架の分類法作成にあたっ
ては，前者の要求にこたえる乙とを優先
すべきである.展示は，一般利用者に対
して博物館が設定した意図的情報を伝え
る手段である.
したがって，意図的情報
の構成・構造にもとづいた分類法が作ら
れる必要がある.
この方式の分類法による，
図1.
生物標本収蔵のための分類表
または
lndexing )および Phase 3 の分類行動
CSorting , Arrangement) は，分類
( 2 日本の地主主)
(分類の視点)ー一一一一う( 1 生物の種類)
P
h
a
s
e2 の
分類行動 2 Cldentification
法の作成と同じ経路をたどって行われる.
l
「動物
1
卜関東地方
ψ
卜中部地方
日本一一一--'"一一L
i
生物
ノ卜
L 植物
i
北海道地方
ト東北地方
A
卜近畿地方
γ
「中国地方
ι
小
ト四国地方
九州地方
;小
(
2
) Post-coordinate 方式
図 4 の上半部 l 乙分類法作成の考えかた
を示す.ここで，大項目としてなにを採
用するか，および細分をどのように行う
かは，分類の目的に合わせた Philosophy
(第 l 階層の分類項目) (耳12 階層の分類項目)
図 2.
(第 1 階層の分類項目)
(第 2 階層の分類項目)
による.細分は
Post-c∞rdinate方式で、
あることに特に配慮して，必要最少限度
生物標本情報検索のための分類表
にとどめる.細分段階の一部において並
行分類を行うと，実用上便利な場合がある.
図 4 の下半部は，この方式の分類法を
用いて行う，
Phase2 の分類行動
lndexing の考え方を示す.
Pre-coordinate 方式の場合と異な
り，すべての分類項目のそれぞれが，ひ
とつひとつの分実用す象の属性を示すのに
適当であるかを判断し，適当な分類項目
モ一一一一一一一ーー辰上階層分類項目
のすべてを，その分類対象 l 乙付与すべき
lndex として採用する.
実際の lndexing においては，まず，
ひとつの大項目が対象 l 乙付与すべき lnd位
の概念を包括しているか否かを調べる.
包括していれば，その大項目に含まれる
令一一「ー第 2 階「凶分類項目
すべての中項目のそれぞれについて，同
様の操作を行う.この操作を，下位項目
について順次行う.包括していなければ
11J
4、
その項目に属するすべての下位項目は，
lndex として採用しない.
v
Post-coordinate 分織を実用する
には，コンピュータ等の機械を利用する
図 3.
Pre-coordinate 方式分類の考えかた
のが現実的である.
っd
q
o
博物館雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 30-40 ページ
最上階層の
1983 年 3 月
一一一歩
視点(分類項目)
第 2 階層の
Q
ー+
視点(分類項目)
φψ
'v
ー
'
+
'
寸入Y州
v
、
視点(分類項目 r
口仰い
よ州Yv
第 3 階層の
分類
Phase 1
CI
a
s
s
i
f
y
i
n
g
C
分知
Phase 2
C
l
n
d
e
x
i
n
g
)
図4
Post-coordinate 方式分類の考えかた
符号としてローマ字等の文字でとE く主に数字を用いた十
6. 情報検索用分類作成上の留意点
進数形式は種々の点で便利な方法である.
情報検索用分類を作成するたあたっては，次のような
点を配慮すべきである
この形式では，ある段階における細分項目数は，最大
10 である.
まず，使用目的を明らかにし，これに合わせて視点・
概念の取捨選択をする必要がある.また，分類のf.%者数
…,
もし，
10 を少し超えるときは，
0, 1, 2,…
7, 8, X.y , z
, 9 とする.一般に符号(分類標数)
のうち，
0 は上位項目の"一般 ω を
9 は 1 -8
.(X ,
・項目数は，対象とする資料数に合わせて決められなく
y ， Z) 以外のその他のことをあらわす.ただし，各段階
てはならない.各分類項目を示すコトパは，必ずしもひ
で細分項目を 10 まで設けられるからといって，必ずしも
とつの単語でなくても差支えない.
(例:殺菌剤による
防除)分類項目には対 1 対応の符号を与え，Ir動，ir習
0
-9 をすべて使用する必要はない.
を作っておくことが適当である.
作業およびその後の処理をたやすく行えるようにする.
-34-
2-8 のうちアキ
博物館で用いる分類(吉村)
例
319
人戸
微生物の生産
3190 向上一般
3191
分離，検索
3192 培地調製・殺菌
3193
菌の接種
3199
その他
:ζ~;
。
9b>多く用いられるようになったとき，これを細分し，
3194 培養条件の管理
3195 菌体の収集
のように項目数を増やしていけばよい.
図 5.
農業技術のとらえかた
最後に注意すべきことは，不必要な細分はしないこと
である.それには，まず粗い(段階数の少ない)分類を
農業技術主題分類表の各大項目名，大項目別の下位項
作ってみて，実際に試用してみた後，必要が生じた後 l 乙
目数を表 21 乙，慨略表(中項目まで)を表 31 乙，細分例
細分していく乙とが望ましい.
を表 4 から表 6 までに示す.本分類表 l 乙は，和文のテキ
ストの他，英文テキストおよび和文の，五十音順索引が付
7. 農業博物館において f静日検索に用いる分類法
の原型一一農業技術主題分類法的一一
(I)目
されている
(4) 分類法の使用
的
農業技術主題分類表は，
í データベースを利用した農
要素技術連関解析の手法2).を農業技術へ適用するため 業技術における要素技術連関解析})に使用した.日本
に使用することを目的とする.
の国立農業研究機関で，
要素技術連関解析とは，複合技術についてこれを構成
1980 年および 81 年度 l 乙実施さ
れた研究課題約 6，000 件について，研究の概要説明を
する要素技術に着目して，各要素技術のウエイトおよび
lndexing し，データベースを作成し，解析を行った.
要素技術間の関係を定量的に解析して，複合技術の構成
その結果，本分類法が，農業技術の構成と構造を解明す
と構造をあきらかにする乙とである.
るうえで有用なことが明らかになった.
(
5
)
このためには，技術の要素となる事物の概念を整理し
系統立てた分類法が必要である.乙の要求に乙たえて作
成されたもののひとつが，農業技術主題分類法である.
(2)
基本的な方針
農業博物館への応用
農業博物館は，農業技術 l 乙関する調査研究，資料の収
集・保管・公開利用を行う.そこにおける調査研究は，
農業技術全体およびひとつひとつの農業技術に関する発
農業技術を，図 5 のように捉える.図中の 1 および 2
達過程等をあきらか l 乙し，将来の農業技術に役立てるこ
は，生物および無生物である有体物が主体である.エネ
とが目的である.そして，博物館資料の主なものは，農
ルギーと情報は，有体物ではないけれども，農業技術適
業技術を実際に適用するための機器である.したがって，
用の対象と結果であるから，乙れらを有体物とあわせてまとめ
収蔵資料について，農業技術の内容からの検索が必要と
る.
なる.
3 の技術には，農業技術の特性を考慮して，生物技
術だけでなく，工学技術，社会科学的技術，自然科学お
よぴ社会科学を含める.
農業技術主題分類法は，その使用結果から農業技術の
4 の環境・条件には，技術を適構成と構造を解明するうえで有用であった.したがって
用する場所および時・時間の問題を含める.
1 と 2 は，まとめてひとつの大項目とする.
つの大項目として独立させる.
この分類法は，農業博物館において応用する可能性があ
-1はひと
ると考えられる.
3 は，本分類法の中心的
しかし本分類法は，技術の内容を取り扱うために作ら
な部分であるので，これを分けていくつかの大項目とす
れたものであって，博物館資料を対象とする場合には，
る.
若干の改訂が必要である.そのうち最も重要な点として
分類法の構造は
Post-coordinate 方式とし，部分
的には P re-coordinate 方式を併用し，
ケタとする.
(3)
10 進数形式 4
は，図書でいう書誌事項に相当する資料事項との関連づ
けがあげられる 9 農業技術主題分類表の構成と構造から
みて，この改訂は比較的容易 l 乙行い得ると考えられる.
構成の概略
農業博物館において情報検索を行うシステムに対して
p
h
u
q
u
博物館雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 3
0
.
.
.
.
.
.
.40 ページ
表 2.
大
項
1983 年 3 月
農業技術主題分類表(大項目名，分類項目数)
名
目
大項目
中項目
小項目
細項目
場所，条件
1
10
58
315
生物，物質，機器，プラント.エネルギ、ー，情報
1
10
69
518
生物科学
1
7
21
99
生物技術
1
8
40
22 5
総合問題，関連分野
1
7
28
1 18
物質科学
1
8
47
131
物質処理，物質加工，運搬，貯蔵
1
7
34
109
エネルギーの技術，情報の技術
1
5
27
74
8
62
3 24
1 , 5 89
メロ
ミ
計
表 3.
。
o0
o1
o2
o3
o4
o5
o6
o7
o8
o9
農業技術主題分類表(概略表)
場所，条件
20 生物科学一般
向上一般
21 生物学，古生物学，分類学，解剖学，形態学，
陸地，
気候帯
人類学，心理学
水圏，海洋，淡水域
2 2 細胞学，発生学，生物の性，生長段階
空間
2 3 遺伝学
海域
24
生物栽培，飼育の場所
25 生態学
世界の各地
26 生物研究の技術
生四学，生化学，生物物理学
日本の各地
有史時代，時間，量，質
￨3
生物技術
30 向上一般
相，形状，物理化学的剣牛
31 農林業の技術(対象は植物と微生物)
生物，生物の細胞・組織・部位・器官，物質，
32 水産技侃動物(晴乳類と鳥類を除く)飼養技術
機器，プラント，エネルギー，情報
34 畜産(対象は鳥類 ， Q甫乳類)
10 向上一般
35 育種，品種改良
11 微生物・植物(分類学的分類)
36 疾病
12 動物(分類学的分類)
37 医学一般，訟蹄，治療
13 生息地別生物分類，手岡田拐l性描扮類，有害封却 i 38 衛生，公衆衛生，薬学
14 生体関連物質，細胞，組織，生物の部位・器官
1 5 物理・化学物質
1 6 資源的物質
5
17 用途別物質
51 開発，地域 l 乙関する問題
総合問題.関連分野
5 0 同上一般
18 食品
5 2 生活，生活技術
19 部品，機械，プラント，エネルギー，情報
53 公害(原因が人為的なもの)とその防止，自然
2
生物科学
1
災害とその防止
54 警察消防防衛安全
-36-
博物館で用いる分類(吉村)
5 5 経済，経営，規格，標準，検査
70 向上一般
5 6 法律，制度，行政，社会，社会福祉，職業，産業
71 資源探索，資源採取
6
7 3 物質の使用価値
72 物質製造
物質科学
60 向上一般
74 不要物・有害物の技術
61 数学
76 物質加工
62 天文，測時
78 運搬，貯蔵
63 物理
64 化学
8
6 5 結品・鉱物学
8 0 向上一般
エネルギーの技術，情報の技術
6 6 i由学
8 1 エネルギ一変換，不要エネノレギー処理
6 7 気象，気候
82 エネルギー輸送，エネルギー貯蔵
8 6 情報の単位処理・総合処理
7
物質処理，物質加工，運搬，貯蔵
表 4.
187
間管理，コミュニケーション
農業技術主題分類表(細分例ー 1 )
051 7 公園，緑地
061
ヨーロッノ f
o7
日本の各地
051 8 林地，林野
o610
向上一般
070
向上一般
062
アジア(日本に限る場合
o709
日本の各地その他
o71
o7 10
北海道地方
051 9 その他
070 0 向上
o52
動物飼育の場所(魚類を
除く)
o6 20
o52 0
同上一般
062 1 東アジア(日本，韓国，
o7 )
052 1 屋外飼育場
o52 2
o5 23
向上一般
畜舎
062 2 東南アジア
072
養鶏場，鶏舎
o6 23
o7 20
o721
o7 22
052 4 蚕室
その他のアジア(ソ連領
アジアを含む)
052 5 養蜂場
o526
o5 2 7
o5 2 9
053
o5 30
o5 31
o5 32
o539
観賞用動物の飼育場
実験用動物の飼育場
o630
o6 30
向上一般
漁場
水産増養殖場
東北地方
同上一般
青森県
岩手県
アフリカ
072 3 宮城県
向上一般
072 4 秋田県
064
アメリカ
o729
その他
o64 0
o641
o6 4 2
o64 3
向上一般
北アメリカ
073
関東地方
中央アメリカ
o730
o731
茨城県
その他
漁場，水棲生物調育場所
向上一般
北朝鮮，台湾，中国)
072 5 福島県
南アメリカ
その他
向上一般
073 2 栃木県
o6 5
オセアニア，南極大陸
o6
世界の各地
065 0 向上一般
060
向上一般
o65 1
o60 0
向上
065 2 南極大陸
オセアニア
o73 3
o7 34
o7 35
o73 6
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
円i
q
u
博物館雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻第 10 号) 30-40 ページ
表 5.
1983 年 3 月
農業技術主題分類表(細分例ー 2 )
125 9 その他
￨1 32 7
飼養動物，家畜
13 29 その他
126
時乳動物
1260 同上一般
133
12 6 1
13 30 向上一般
ゲッシ類
126 2 ウマ，その他の奇蹄類
作物(工芸作物→ 134 ，果樹→ 135 )
13 31 雑穀
1 26 3 ウシおよび大きな反すう動物
13 32 豆類
12 64
1 333 根菜
ヒツジ，ヤギ，その他の小さな反すう動物
1 26 5 ブタ
1 3 34 果菜
126 6 クジラ類，海獣類
1 3 35 葉菜，茎菜，花菜
1 26 7
13 36 その他のそ菜，そ菜一般
ヒト
1 2 68 その他の霊長類
13 37 飼料作物
126 9 その他
13 38 肥料作物
13
130
13 39
その他
有害生物
134
工芸作物
向上一般
1 34 0 向上一般
生息地別生物分類，利用目的別生物分類，
1300 同上
134 1 デンプン料作物
1 34 2 油料作物
131
生息地別生物分類
13 43 糖料作物，甘味料作物
131 0 向上一般
134 4 香辛料作物，晴好料作物
131 1 水棲生物
1 345 薬用植物
1 31 2 林地生物
134 6 繊維作物
131 3 土壌生物
1 347
131 5 野生生物
1 34 9 その他
コe ム料作物
13 1 9 その他
1 35
1 32
果樹，その他の有用樹木(1 3 号令を除く)
利用目的別生物分類(有用生物一般→ 165 ，
135 0 果樹一般
作物→ 13 み/4. 果樹→ 135 )
13 51 仁果果樹
132 0 向上一般
1352 準仁果果樹
1 3 2 1 実験微生物
13 5 3 核果果樹
132 2 実験植物
1 354 柴果果樹
1 323 実験動物
1 3 5 5 堅果果樹
1 324 観賞弔植物一般
1 35 6 その他の果樹
1 32 5 観賞品j 木本
1 3 58 その他の有用樹木
1 32 6 観戸厄草本
1 359 その他
一 38-
博物館で用いる分類(吉村)
表 6.
農業技術主題分類表(細分例ー 3 )
3 164 細菌による病災害
3 16 5 菌類による病災害
3 16 6 その他の植物による病災害
3 16 7 見虫による害
32
3 168 その他の動物による害
水産技術，動物(暗乳類と鳥類を除く)
飼養技術
31 6 9 その他(原因不明を含む)
320
317
植物の病災害防除
向上一般
320 0 向上
3 17 0 向上一般
317 1 物理的防除
3 21
漁労
31 72 生物的防除
321 0 向上一般
3 1 73 殺菌剤による防除
3 21 1 漁況
3174 殺虫剤による防除
321 2 魚群探知
3 17 5 除草剤による防除
321 3 網による漁労
31 76 その他の化学的防除
32 1 4 針・もりによる漁労
3 17 7 農薬施用法
32 15 その他の静護法
31 7 9 その他
321 9 その他
318
林業技術(一般的な植物栽培技術に含まれ
32 2
るもの→ 312 ， 313 ， 315/317 )
3 2 20 同上一般
3180 同上一般
水産増養殖(水産植物を含む)
32 21 幼期水産生物採捕
318 1 施業方式
32 2 2 採卵，繁殖
31 82 天然育林
322 3 ふ化，飼育
31 83 人工育林
32 2 4 水産土木，増養殖場の整備，増養殖設備の
3 1 84 測樹
整備
3 1 85 林分測定
3 225 給餌，施肥
318 6 施業計画
32 26 収護
318 7 伐採
32 29 その他
3 18 8 林業土木
318 9 その他
魚類の病災害と防除
32 30 向上一般
319
微生物の生産
319 0 向上一般
324
319 1 分離，検索
32 40 同上一般
養蚕，養蜂，その他の昆虫飼養
319 2 培地調製・殺菌
324 1 催青
3 193 菌の接種
32 42 上接，営けん
31 94 培養条件の官理
324 3 蚕種，種まゆ
3 19 5 菌体の収集
3 244 給餌
-39-
博物館雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 3
0
.
.
.
.
.
.40 ページ
は.多面的でしかも論理構成をもった検索の実行が要求
1983 年 3 月
要な笥55 である.そのためには，博物館において，なる
されるため，コンピュータを利用することが現実的であ
べく多くの視点を網羅した Post-coordinate 分類法を
ろう.しかも農業の地域的特性等から考えて，漢字処理
考案作成し，乙れを用いて資料の持つ情報分析を行って
が必要となる.
おくことがまず必要である.
筆者は，農業技術主題分類表の仮改訂を行い，これを
博物館における分類法は，芋術分野の壁を超えて，で
用いて東京農業大学農業資料館が保有する農機具資料約
きるだけ多くの博物館に共通なものであるように標準化
3 ，5 00 点に関するデータベースを作成し，情報検索 l 乙試
されることが望ましい.そのためには，多くの博物館の
用したうえで，本格的な改訂を行って，
学芸職員の協力が行われなければならない.
日本国内の博物
館 l 乙所蔵されている農業技術資料に関する情報のデータ
ベース化を順次行う予定である.
本報告の作成にあたって，五十嵐瞳氏(農林水産技術
情報協会)の協力を得た.感謝の意を表する.
8. おわりに
文献
博物館の資料は，これを館の学芸職員や外部の多くの
(1)吉村典夫:農業技術主題分類表
東京 1983
ひとびとによって効果的に利用される乙とに，その最も
(
2
) Tuneo Yosimura Analysis of R
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大きな意義がある.そして，外部の利用者が行う資料利
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用は，あらかじめ館が設定したストーリーにもとづいた
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展示を観覧することにとどまってはならない.ひとつひ
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とつの資料から得られる情報の量は膨大であり，しかも
(
3
) 吉村典夫:データペースを利用した農業技術におけ
多岐にわたる.乙れらの情報を，できるだけ多くの視点
る要素技術連関解析.文部省科学研究費一般研究 ß ，
から検索できるように整備しておくことが，博物館の重
1981......1982 年度
-40-
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通番 10 号) 4
1'"59 ページ， 1983 年 3 月
学校博物館の実相と諸問題
一国学院高等学校を媒体としてー
The Problems of Museums at School
-by the medium of Kokugakuin High School 一
千家
Yoshihiko
和比古
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れる.
ヒ::，
日
これを補完するのが博物館機能であるが， r もの」
による教育，
博物館は，事象認識の媒体 l 乙具象的な「もの」を主体
として，より直接的に情報伝達する一機能を有する機関
である.
I もの j による理解の有効性は，理論的に
は承認を得ながらも実際的には市民権を得るまでには至
っていない.
学校博物館の実態はむしろ「陳列室 J に近いが，問題
この博物館には諸形態があるが，学校博物館もそのーはその活用にある.活用の円滑化を果すためには，学校
つである.学校博物館には研究機能を主な目的とする大
図書館における図書館司書のように，学校博物館におい
学附属博物館と，教育普及機能を主な目的とする他の教
ても学芸員相当の専門職員が要請され，寺領博物館の基
育機関附属の博物館とがある.乙乙では後者について対本的課題の所在が乙乙にある.これら諸問題に対する効
象としたい。
果的解決は未整備である法的措置にある.
教育普及機能を主たる目的とした学校博物館の設置数
現状の教育の一活路が「もの」にあることは明瞭であ
は少なく，その理解は十分でない. I文献」による教育は
り，学校博物館普及の醸成か望まれるが，それは学校図
長い歴史を経験し，今日比至っている.
書館法のような法的整備なくしてはありえない.
しかしながら，
同知のように今日の受験対応の教育状況は「文献」教育
の限界とともにその弊害をも露呈している.その因とし
て，全感覚をして理解を求める方法論上の欠如が考えら
*せんげよしひ乙
国学院高等学校勤務
原稿受理
1983 年 1 月 20 日
連絡先(自)
干 222
横浜市港北区大豆戸 925 の 1
ーポラス D 棟 314 号
-41-
大倉山第 2 コ
Te1045-5
42-9
2
5
7
学校博物館の実相と諸問題(千家)
してきた.近時の文化財保護委員会による「風土記の正
目次
i
E
構想J '最近の文化庁による「歴史民俗資料館構想」
はじめに
学校博物館としての本資料室
もその具体的な徴証であろう.そして，これら博物館施
a. 学校博物館の概念
設は国民の要請に対して，たしかに一程度の役割を果し
b. 本資料室の概要
てきた.
皿
学校博物館の現状と本資料室
また乙の間 l 乙は，多くの先達・先学により博物
館施設自体の在り方などをめぐっての厳 lX'追求が諸々の
a. 学校博物館の現状
形で繰り返され，残された課題も多々あるとはいえ，一
b. 現状の検討
層の充実もはかられてきた.
W
学校博物館の活用
しかし.それは主として，\
いわば登録博物館として存立可能な諸条件を備えた博物
a. 学校博物館の存在意義
館独立施設を対象とした色のであり，より限定された条
b. 活用について
件の中で整備しなければならない「学校博物館」的存在
V
I もの」による教育の要請
は，むしろ等問視されたむきがないでもない.博物館本
-結びにかえて一
来の「教育普及的意図」という乙とを評価すれば，基本
的には「学校博物館」の充実をはかる乙と乙そ，博物館
I
はじめに
活動の中で果さねばならない一件である.また立場を換
校内胞設として「もの」を展示・陳列するシステムをえて，教育現場においてもこれからの学校教育の果さね
設置し，乙れを学校教育の教材として教育現場に実際的ばならない大きな課題のように思料される.
に援用するという教育の一方法論は，今日の学校教育の
私立国学院高等学校は，歴史・古典の講究をして日本
世界において積極的に認知，具体化されているとは言い文化，ひいては日本そのものを明らか l 乙するという私学
難い.むしろ，理論的には理解を得ながらも，現実は
としての「国学院」の一伝統を継承して，開校以来三十
「文献」中心によるつめ込み的教育が主体的に実飽きれ余年，乙の方面の資料の収集に努め今日に至っている.
て，言わば「無視」の状態にある.乙の偏重の結果，教現在，収蔵資料は有職故実・考古関係品を主たるものと
科教育のみならず広範な教育諸問題の顕在化を招き，あ
して，ー高等学校内における収蔵資料としては質量とも
る商の限界，行き詰まりを生じせしめてきているととはに現状の学校博物館の形姿からすれば.一程度の段階に
周知のとおりである.
しかしながら，乙の状況に対する到達していると言えよう.
基本的かつ効果的な改革は，現実的諸制約の中で埋没し，
明瞭化されていないと言っても過言ではない.
以下 ζ 乙では，従来ややもすると継子的扱いともなっ
ている学校博物館の実態と諸問題を，国学院高等学校の
と ζ ろで，純粋教育機能機関としての一学校施設の内場合を紹介しながら，学校教育における博物館活動のー
において，収蔵資料展示のための，いわゆる博物館抱設助として自戒を込めて考述してみたい.
を別 lζ 設置してこれを広く公開，運営することには多く
の諸条件の整備を必要としている・したがって，学校内
における博物館的な資料展示については一程度の限界も
否定できない.ζ 乙 1<:. 基本的に専門博物館あるいは研
E
学校博物館としての本資料室
a. 学校博物館の概念
学校博物館なる用語は， ICOM. 我固における博物館
ru
究機関ではない，学校教育機関の附属施設としての学校法，その他の学校教育関連法規の中においてもとくにみ
博物館のかかえている困難な現状がある.また学校博物る乙とはない.
しかし，諸先学の研究成果によってその
館に対する積極的な対応は，文献を中心とした学校教育用語のもつ概念は窺測可能で‘あり，乙乙では諸氏の博物
の基本的構想、に抵触し，そ乙 I 乙は従来の教育体系 l 乙対し館の分類の在り方から，学校博物館の定義的整理をして，
て現実的な見直しを求める諸問題も内在している.
その視点を明瞭化しておきたい.
振り返って，戦後の経済復興から高度成長へ，そして
棚橋源太郎氏は，戦後早く，我固において博物館法の
一応の到達点に達した安定期に入ると，置きざりにして制定された前年の 1950 年，すでに博物館の体系的分類を
きた教育，社会教育の欠落に対する国民各層の反省と広試みられ，
r 学校博物館」の一項を設定されている.そ
範な要請が始まる.博物館は，それへの対応能力を有すの概要は，内容から見た種類の場合とその観点から見た
る一機関としての期待を担い，昭和 26 年の博物館法制種別の場合との二大別した視点から，前者を総合博物館
定以来，戦前とは比較にならないほどにその設置数を増と専門博物館とに二分類，さらに専門博物館を科学・歴
-42-
41""59 ページ，
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通番 10 号)
1983 年 3 月
史等極別で細分されている.後者は①設立管理者，②観的普及機能にあり，研究機能を主体としたものではない
覧利用者，①対象地域，@陳列場所と観点を分け，学校乙とである.すなわち，研究を主たる目的とする大学附
博物館は②観覧利用者を基準とした分類 l 乙，公衆博物館，属博物館は対象としな日学校博物館の基本的概念を以
教育博物館，児童博物館とともに併置されている.
上のように考え，さらにここでは，校内にある施設であ
鶴田総一郎氏は，①目的による分類，②一般的分類，
③利用者別分類，④その他と四大別された視点を示され，
ることを前提として明示しておきたい.
では，本稿で資料として扱う国学院高等学校資料室の
学校博物館は二者の立場より導かれている.すなわち，
場合はどうか.結論的には，本抱設は①~①の基準内容
一つは①目的による分類を収集・整理保管・研究・教育
l 乙相応するものとして誤りなく，とくに狭義的概念、の範
普及の四つの目的を偏するところなくとり入れているも
陪として認定される.一方，我国博物館法の立場からす
のという標準博物館と特殊博物館に二分され，特殊博物
れば，当然にそこに示された「登録博物館」の基準に達
館中においてさらに教育普及目的を制約する場合のもの
するものではない.乙の点において「博物館」なる用語
として児童博物館，犯罪博物館とともに位置づ、けられて
使用の適否も一般には問われよう.ただ周知のように，
いる.因 l 乙，教育博物館は教育普及目的を強調する場合
我国で、は登録博物館のほかに「博物館に相当する施設」
として別に分類されている.他は前掲，棚橋氏と同様に
をこれに準ずるものとして認めている.
③利用者別分類より，成人博物館，児童博物館とともに
は胞設・資料・職員・事業・運営などの条件項目があり，
処理されている.
1
t7
乙の審査要項に
と乙ろで夫学附属博物館は，①の目的それにしたがって資格審査を受けて認定される.この我
による分類においては研究目的を強調する場合の特殊な
国の博物館法による博物館の用語使用からすれば，すな
ものとしてこれより除外されているが，①の利用者別分
わち法的解釈よりすれば，本資料室は乙の各条項に適合
類の場合は広義に把えられたようでこれを併記されてい
し「博物館に相当する抱設」としての内実を有している.
る.
また，
1974 年の ICOM定款第 2 章博物館の定義(再
花5
新井重三氏は，①資料による分類，②機能による分類，改訂)第 3 条には，
I 博物館とは，社会とその発展に奉
①資料展示の場所による分類，④資料収集の範囲による
仕するために，人類とその環境についての物的証拠を，
分類，⑤利用対象者による分類，⑥管理者による分類，
研究，教育および慰楽を目的として，収集し保管し，
⑦博物館法の立場からの分類などというように多角的か研究し，伝達し，展示する営利を目的としない恒久的機
注8
つ詳細な分類視点の方向を提示されている.なかで、も，
関をいう.
J と記載されており，博物館が公共の利益の
②の機能による分類項を@全機能型，@保存機能重視型，ために設置運営される常置機関であることを明確に規定
。教育機関重視型，@研究機能重視型，@レクリェーシ
している.以上の内容からして，公益的な教育機関とし
ョン重視型に細分されて ， 0教育機能重視型の範時に学
ての国学院高等学校内に設置された資料室は，学校博物
校博物館，子供博物館を纏め，その志向するところを明館の範障に適合するものと認めて誤りあるまいと考えら
示されている.他方，大学附属博物館は鶴田氏分類と同
様 l 乙@の研究機能重視型に局せしめられている
れる
ただし，純粋に博物館の諸機能的解釈からすれ凶
I 博物館」なる用語使用が真に適正かどうかは別の問題
その他，伊藤寿朗氏は①形態別分類，②機能別分類，
である.筆者は，むしろ「博物館」なる用語は学校博物
③目的別分類と三大別されている.とくに①の形態別分館の実態からすれば，適正でないと考えている.このよ
類項において，(0種類別，@経営主体別，のその他と細
うに「学校博物館 JIC 対する立場を明らかにして，以下
分化され，@の経営主体別項に「学校」を掲げられてい考述したい.
る
b.
以上であるが，このような先学諸氏の代去的な分類を
本資料室の概要
花9
本資料室の設置目的は刊行されている図録によれば，
基本として，学校博物館なる用語の意味すると乙ろを
I 日本古典の研究は皇典講究所以来の国学院の伝統であ
ここでは以下のように整理・理解したい.①管理経営主
り，古典の内容を正確に把握する伴侶として… J ，
体が学校教育機関である乙と.狭義にその機関とは，基
覚に訴える内容を文字の記述だけでは，生まれながらの
本的に小学校~高等学校までの機関であり，これに付加
盲人民説明するのと同様に納得させる乙とが困難である.
するとすれば専修学校・特殊教育機関などが考えられる.
一目瞭然という言葉の通り，例文通りの実物を示す乙と
I視
②当該施設の日常的利用者が，広義 l 乙は被教育者であり，が一番有効である J ，そして「歴史・古典の教育の参考
狭義には児童・生徒であるとと.①その機能目的は教育に供する」というところにあるかと思われる.
-43-
学校博物館の実相と諸問題(千家)
きて，収蔵資料展示のための施設は二つの様相がある.
倍・障子絵・各種の土器・古墳出土品などの歴史・古典
一つは資料室的在り方，他はショーケース単独による在
資料等であり，とくに有職故実関係の資料を主体として
り方である.前者は文科館と称する普通教室の存在する
いる.有職故実関係の資料は現存遺品のみならず現存品
建物とは別の鉄筋コンクリート，地下 1 陪，地上 4 階建にも入手困難なものもあり，重要な品については実大，
ての最上階， 4 階の約 286rrt を展示用として利用したも
のである.なお，
t ， t の模造品・標本を伝統技術の粋をつくして作製，
3 階は図書館となっている.資料室は，遂次資料の補完をはかっている.そ乙で，収集資料は各
この 4 階を第 1"""3 資料室とフロアーの 4 区分し，フロ
室 l 乙分散展示することになる.第 1 資料室は奈良時代よ
アーにも若干の展示物を置くものの第 1"""3 の資料室を
り近世にわたる歴代男女の装束等の服飾・宮殿の調度・
基本的な展示室としている.それぞれの専有面積は第 1
寝殿内御調台・章輿などの標本を中心とする.総じて男
資料室約 100rrt ， 第 2 資料室約 81rrt， 第 3 資料室約 65
女の服飾通史をはじめとした王朝・公家文化の故実資料
2
77f，フロアー約 40m を測る.乙のように室面積は異なるが，
展示といえよう.乙れに対して，第 2 資料室は第 1 資料
室形はフロアーを除きいずれも狭長である.資料室は本
室が公家的様相であるに比して武家的様相を濃くし，大
来的に資料展示室用としての機能を果すために，とくに
鎧皆具・威各種・矢各種など中世より近世にわたる武具
あらかじめ設計作製されたものではない.教室転用の可
・馬具・武装類を中心とした武家的文化の歴史・故実関
能な状態につくられたものであり，むしろ基本的には教
係資料展示である.第 3 資料室は，かつて考古関係品と
室である.
アイヌ民俗関係品であったが，アイヌ民俗関係は今はな
したがって，資料展示に伴う，また維持保存
のための内装諸設備が整備されている訳ではない.展示
く，また考古関係品の本館ショーケースへの一部展示に
ケースは，各室ウオールケースを窓側・入口を除く壁
伴い，現在は考古関係品を中心としながらも，江戸期の
添いに据え，中央空聞にセンターケース(第 1 ・ 2 資料
水導管や駕龍・絵巻物・『大和名所図会』などの和書及
室各 2 )，デスクケース(第 3 資料室 6 )を設置してい
び「義径記」など多数の著名古典の写本等各種の展示・
る.
したがって観覧者の動線は，室形・展示ケースの配収蔵の状態で体系的な統一性はない.
置の類似から各室ほぼ一定である.各室は三辺が壁にて
乙のように各室の展示は，第 1 ・ 2 資料室の場合.有
他と画されて，残る一長辺は表面凹凸のある装飾ガラス
職故実関係資料を集中展示して系統的に整理され，展示
窓で構成されている.乙れより一方向からの間接的自然
にもゆとりがあり理解の得易い展示方といえる.
採光は可能であるが，当然これだけでは不定である.と
ながら，第 3 資料室は室面積が最も狭いなかに前述の如
しかし
ころが，主な展示品である有職故実関係品には染色類が
き様々な歴史関係資料が配置されており，有故故実関係
多く，自然光を間接的にせよ採光しつづけていくと紫外品以外の寄せ集め的感がないでもない.それだけに，乙
線による変色を招く.そこで，紫外線による変槌色を防のような場合は展示ケース外の空間にゆとりがない乙と
止する意味で窓には暗幕を張り，むしろ自然光の侵入を
遮断している.
もあり，第 1 ・ 2 資料室以上に展示方に対する配慮が必
したがって人工照明によるが，照明は天要であろう.
井の蛍光灯のみにより通常の教室並 i 乙行われている.一
次に，ショーケースについては 1 階部分に各部活動の
般的には観覧に際し支障はないが，展示資料を踏まえて
栄誉類と刊行物を陳列し， 3 ・ 4 階部分を教材展示とし
照明度を考患するまでには至っていない.
て利用している.例えば， 3 階ショーケースは伊立修善
他は普通教室の存在する鉄筋コンクリート地下 1 階，
寺梅林 I 乙建立されている尾崎紅葉・高浜虚子などの文学
地上 5 階建ての本館. 1 ・ 3"""5 階の各階に設置され碑の拓本を，
たショーケースを利用したものである.
4 階ショーケースには第 3 資料室にあった
ショーケースは原始・古代の各種の土器・石器・木製品類を展示してい
各階廊下中程の壁をくり込んでつくりつけられたもので，る.
これは 4 階の普通教室が 2 学年の教室に相当し，
2
横 5 m ，高さ1. 7m ，奥行 0 .4 5m の規模を呈し，内部 l 乙
学年は社会科科目日本史を勉学するという関係を配慮し
ガラス製の自在陳列棚を設置している.照明は廊下天井
ての乙とである.乙の他，
5 階のショーケースには一時
部より 3 個の白熱灯スポットにて行う.現在，資料展示理科教材が展示されたこともあるが，現在は撤去され若
干の昆虫標本が置いてある.以上のショーケースによる
用として使用中なのは 3 ・ 4 階のものである.
次に，乙のような展示艦設において.どのような資料展示は，かぎられたスペースでまとまった資料の展示な
を如何なる形で展示しているか紹介しておきたい.
どは困難であるが，日常的に資料に触目できる点にその
収蔵資料は服飾・武装・装身具・調度・乗輿ゅ楽器・
良否はともかく特色がある.
-44-
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通番 10 号) 4
1
.
.
.
.
.
.59 ページ. 1983 年 3 月
このように本校においては収蔵資料展観のために二つ
の展示システムが存在している.
ショーケース展示の場
住 11
行の『歴史資料保存機関総覧』によれば 81 例の設
置例を知り得る.全国の学校，小学校~高等学校の
注 12
合は当然ながら自由に生徒の自に触れる状態であるが，
本・分校合せた総数 40， 413 校 (1976 年当時)との
資料室展示の場合は専従的な管理職員乃至学芸員などに
対比からすれU. その設置例は 0.002% とあまりにも少な
相当する職員が不在である乙とから，日常的 l 乙開校して
い.ただ，別 l 乙資料室的施設を設けずに図書館内に展示
いるかぎり利用できない訳ではないが，普段は閉~~.犬態
したり，若干の展示を行っても資料室と名を冠しないと
となっている.以上が国学院高等学校内に設置された資
乙ろもあることは確かである. したがって，学校博物館
料室，学校博物館の概要である.活用・活動の具体相民的指設の実態を寸分違わず正確に把えた数字とは考えら
ついては以下の項で触れるとととする.
れないが，全体的な数字に大きな変動はなく，バランス
皿学校博物館の現状と本資料室
が許されれば，既述の学校博物館の数字的実態は，正し
もくずれないものと考えて良かろう.乙の理解と見通し
a. 学校博物館の現状
く学校博物館の等問視された現況を裏づけるものであり，
大学附属の博物館を含まない狭義の学校博助館の全国学校博物館の実態の貧しさ・困難さを如実に示唆してい
的実数をここに提示することは不能である.ただ全国的る.そこで，全国の学校博物館の実態を知るために，そ
に集成された事例があり，乙れを利用し一般傾向を探り
の諸例を纏めておきたい.ただ一例一例詳しく記載する
たい
とかえって繁雑化するので，表記不寸づ?な内容となるカ主
注 10
1978 年発行の『全国博物館総覧』・ 1979 年発一般傾向を知り得れば目的は達し得るので一覧表とする.
表1
学校 1耕忽館一覧
施設名
A
6
.
所
設立主体
在
f出
1
北海道家庭学校博物 福祉法人 北海道紋別郡遠軽町字留岡
自官
2
東川郷土館
公・小
3 倉石村立中市小学校
合石村文化財保存室
公・小
4
公・小
5
五戸町郷土資 fAtm
下田町立本ノ下小・
公・小中
庁
新冠郡新冠町字共栄
青森県三戸郡白石村中市宇田
F
H
資料内容
備
活用
考
考古・民俗・生物関 収蔵・展示 木造平屋 1 棟・展示室
90.95m
'
係等
農業・生活関係等
1
1
民俗・考古関係等
保存
茂平
約 5， 000 点
三戸部五戸町宇天満後
農具・民共関係等
2
1
約 3 ， 000 点
上北郡下田町字上久保
民俗関係約 500 点
保管
考古・民俗関係
展示
展示
東Jl I/J 学校内 l 乙設置
五戸小学校敷地内 l 乙設
置
22-2
中学校郷土民俗資料
f
i
I
T
6 新郷村立野沢中学校
公.rþ
H
三戸郡新郷十、伏字西越
約 1 ， 000 点
郷土博物館
7
東栄d 苧校民俗資料
室
公・小
P
8 八戸市立民俗資料収
!説w
公・小
庁
9
ノ
0. 子「口守>
岩手県立広田水産高
校付属博物館
10 岩手県立宮古水産高
校水産博物館(相当
施設)
1
1 秋保町立資料館
黒石市大字上山形字築
f
i
I
T14
八戸市大久喜
民俗(農・漁具)等
保存
大久喜小学校 l 乙設置
約 1 ， 000 点
0.王F子司
公・中
岩手県陸前高田市広田町字大
久保 138
H
魚・貝類等水産関係
約 550 点
展示
1952年，博物館相当施
ヨ~
宮古市磯鶏 12 地雷l
魚・貝類等水産関係 収蔵・展示 創立 60 周年記念事業
163
約 1 ， 400 点
宮城県名取市秋保町長袋字大
L
-45-
山村民俗・考古関係 収蔵・展示 秋保中学校内 l と鉄筋コ
600 点
ンクリート 2階建 324 m' ,
1 陪 l 乙民家一部復元
学校博物館の実相と諸問題(千家)
施設名
/彪
12 一迫町歴史民俗資料
設立主体
公・小
所
地
資料内容
宮城県栗原郡一迫町真坂宇山 民俗関係約 500 点
館
13 鬼首小学校民俗資料
在
活用
備
考
収蔵・展示 寸刷、学校内 lと旧宅移
築復原宵1..2 階建 1 槙
213
王 30
公・小
H
玉造町鳴子町鬼首字原 民俗関係約 700 点
公・小
庁
本吉郡唐桑町字宿浦
収蔵
館
1
4 唐桑町教育委員会
民俗関係若干
1
1
唐桑小学校内
//
金成d学校内
400-2
15 金成町民俗資料コレ
公・小
H
16 斎藤報恩農業記念館
公・高
庁
遠田郡小牛田町牛飼字 農具コレクション
伊勢
17 志津川町民俗資料館
公・小
庁
本吉郡志津川町入谷字 民俗関係約 350 点
童子
18 秋田県立角館南高校
公・高
栗原郡金成町字中町 7
ノY
クション
秋田県仙北郡角館町岩瀬字小 民具・農具・やきも
郷土資料室(館)
19 江南村立江南南小学
館
公・小
23 佐久間郷土資料館
入谷4 学校内 l 乙古民家
を移築
収蔵・展示
展示
ノ
4\;: .主
i主
庁
東松山市松山町
学校関係・民俗・考 収蔵・展示 旧松山中学校校舎を記
古関係
念館とする
公・小
F
秩父郡東秩父村御堂
手漉和紙製作用具等
約 585 点
館
22 勝浦市民俗資料室
置
/
/
,1/ 1881
念館
21 東秩父村立民俗資料
小牛田農林高校内 lζ設
の等 600 点
埼玉県大里郡江南村大字小江 民俗・歴史関係
校資料室
20 埼玉県立松山高校記
展示
公・小
公・小
千葉県勝浦市墨名 735
H
民俗(漁・農・年中
行事関係)約 300 点
安房郡鋸南町上佐久間 民俗関係
ノア
東小学校の校舎の一部
を利用
展示
勝浦d 学校内一教室を
利用
〆〆
佐久間小学校内
13
24 清和民俗資料収蔵庫
公・小
25 東京都立芸術高校美
公・高
君津市西粟倉
民俗関係等 627 点
収蔵
秋元d 学校内
東京都目黒区大橋 2-18-58
西洋画複製等 41 点
展示
校舎内 1 陪宵1 1.052d.
H
術館
26 私立国学院高校資料
2 階 754
q ・肯
私
fB
J
F
渋谷区神宮前 2-2-3
室
27 田奈小学校郷土学習
公・小
神奈川県横浜市緑区田奈町
28 青海町教育委員会
公・中
新潟県西顕城郡青海町青海
29 新潟県立能生水産高
/ム\ .言
I可
デ
H
公・小
H
を利用
有職故実・考古関係 収蔵・展示
等
学校・民俗関係
収蔵
考古関係多量
収蔵
漁業・水産増殖関係
展示
51-13
資料館
西顕域君首E生町能生
青海中学校
校海洋博物館
30 西山町立石地小学校
郷土資料室
3
1 高岡市立博労d学校
公・小
32 高岡市立伏木 d学校
公・小
子ども博物館
刈羽郡西山町大字石地 民俗・考古・歴史・
教育関係
富山県高岡市博労本町 5-1
H
高岡市伏木東一宮 17
-1
-46-
H
全卒業生の作文・習 所蔵・展示 明治 35 年以来のもの
字・図画 3 万点
考古・民俗関係
庁
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通番 10 号)
抱設名
必
33 棄資料館
34 南越中学校郷土資料
所
設立主体
在
資料内容
地
公・小中 福井県福井市石新保町 12-32
4
1
.
.
.
.
.
.59 ページ， 1983 年 3 月
考古・民俗関係等
公・中
H
今立郡今立町野岡
考古・民信関係等
35 三国南小学校資料室
公・小
F
坂井郡三国町上西
考古・民俗関係等
36 美浜町新庄民具館
公・小
H
三方郡美浜岡新庄
民俗関係
37 三珠考古館
公・小
活用
備
考
所蔵・展示 葉小・中学校内
ノY
センター
山梨県西八代郡三珠町大塚
考古関係
保管・展示 新庄小学校内
展示
大塚小学校内
4264
38 伊那d 学校郷土室
公・小
39 協和小学校資料室
公・小
F
北佐久郡望月町協和
民俗・考古・歴史
約 500 点
40 西塩田小学校郷土資
公・小
P
上田市大字手塚 1065
民俗・考古関係
41 泰阜村立学校美術館
公・小
H
下伊那郡泰阜村 3817
美術・工芸 117 点
42 堀金民俗資料館
公・小
H
南安曇郡堀金村烏111
民俗関係約 3000点
収蔵・展示 堀金小学校内
民俗関係約 12 ， 000
収蔵・展示
長野県伊那市伊那 3221
民俗関係約 300 点
収蔵・展示
ノソ
1
1
料館
展示
泰阜北小学校内
2464
43 今井小学校郷土資料
公・小
P
松本市今井 1616
0.言仔~リ
H
下高井郡木島平村中村
45 広正小学校資料室
公・小
P
塩尻市広圧原新田 116
46 新山小学校郷土室
公・小
H
伊那市宮県 535-2
室
44 下高井農林高校郷土
館
占
47 座光寺小学校郷土室
公・小
庁
飯田市座光寺 2535
考古・民俗関係
1
1
4 ， 500 点
48 朝日小学校民俗資料
公・小
岐阜県~大野郡朝日村万石800
室
49 江東小学校民俗資料
考古・歴史・民俗
開校 50 周年を記念し
て展示場を作製
収集・保管
約 500 点
公・小
庁
大垣市内原 3-135
民俗関係 1 ， 138 点
保管
公・小
H
羽島市小熊町 2-361-
民俗・歴史関係
収蔵
公・小
庁
岐阜市安食 381-1
歴史・民俗関係
52 上宝村民俗資料館
公・小
P
吉城郡上宝村拐尼 350
民俗関係約 500 点
展示
栃尾小学校内
53 川上村郷土館
公・小
P
恵那郡川上村 410
民俗関係等約 500
点
展示
川上小・中学校内
江東小学校内
E官
50
Jj 、
5
宝
51 万県小学校郷土資料
資料館は特設
館
-47-
学校博物館の実相と諸問題(干家)
胞投名
ノ16.
54 久々野町郷1:資料館
z没江主体
公・小
所
{
E
I出
岐阜県人-野 i彬久々野町大内
資料内特
考古・民的関係等
約 500 点
J丹
備
JIJ
{米竹
4宅
久々野小学校より昭如
54 年度久々野集古館
J¥
55 白河町民俗資料館
公・中
加茂郡白川町河岐
H
民俗関係約 500 点
1830
56 本郷d 学校民俗館
公・小
M
岐阜市本・郷町 3-1
民俗関係約 500 点
57 宮 d 、学校郷土室
公・小
H
大野郡宮村 3072
歴史・民俗関係
収蔵・民ぷ n 河中学校内
展示
収蔵・展示
約 400 点
58 加藤学園考古学研究
私・高
59 愛知県立起工業高校
静岡県沼津市大岡自由ケ圧
考古等数万点
収蔵・展ノ云
繊維産業関係
展示
1979
所
公・高
愛知県尾西市小信中島 3513
繊維資料館
愛知県尾張樹監試験場
の本館を移築
60 美和町郷土館
公・中
6
1 東員町郷土資料館
公・小
62 三重県立名張高校郷
o
為
.
言
I司ず
庁
海部郡美和町木田
三重県員弁郡東員町深 660
民俗関係等約 900 点
収蔵・展示 美和中学校内
民俗関係約 150 点
収蔵
三和Jj\'学校
農具・考古関係等
約 380 点
収蔵
前身は名賀農学校であ
り，農業科の伝統を残
京都府組喜郡宇治田原町岩山 民俗関係約 200 点
収蔵
旧校舎 2 教室利用
庁
名張市東町 2067
土資料室
す
63 宇治田原 4 学校郷土
~\A ・ IJ 、
資料室
64 桑飼小学校郷土資料
公・小
H
与謝郡加悦町宇加悦
民俗関係
収蔵・展示 加悦町中央公民館郷土
資料室より民俗資料ぞ
65 川上小学校資料室
公・小
M
熊野君玖美浜町字畑
民俗関係
展示・保管
66 奈良県立十津川高校
j
ム句人・主
I司
雪
室
別匠
945
67
社会科資料館(郷土
館)
奈良県立吉野高校林
業博物館
68 奈良市立帯解小学校
奈良県吉野郡十周 rlH込之上 民俗関係約 430 点
公・高
P
吉野郡吉野町飯貝
林業関係約 1 ， 2 ∞点
公・小
P
奈良市柴野町 9
民俗関係等約 1 ， 600
資料室
69 宮滝遺跡出土品収蔵
収蔵
58
開校 100 周年記念とし
て開館
収蔵・展示
占
公・小
M
吉野郡吉野町宮滝
考古関係
収蔵
民俗関係等約 1 ， 000
展示
中荘d 学校内
庫
70 印南小学校郷土館
公・小
和歌山県印南町印南 1915
占
71 温泉小学校民俗資料
公・小
島根県大原郡木次町平田 507
72 岡山県立興陽高校農
公・高
岡山県岡山市藤田 1500
民俗関係等約 333点
収蔵
農業関係約 1 ， 000 点
展示
農業民俗関係
収蔵
海軍関係
展示
-2
館
機具展示室
73 政田民俗資料館
74 教育参考館
公・小
国
F
岡山市政津
広島県安芸郡江田島町
海上自衛隊第 1 締ヰ学
校内.石造 2 階建 1 棟
5 , 260 m
'
-48 ー
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通番 10 号) 4
1
.
.
.
.
.
.59 ページ， 1983 年 3 月
;
1
.
施設名
設立主体
所
在
1也
資料内容
活用
75 長門高校民俗資料室
ノ
0. ~口守~
山口県長門市東開川
歴史・民俗・考古関
係等約 3 ， 574 点
展示
76 大川第一 rfl 学校郷 j:
公・中
香川県大川郡大川町富田中
歴史・考古関係
収蔵
考
2911
資料宝
77 福岡 !11む主糸JJ113 校郷
v
r
a
0.
r',;j
fúi 岡県糸品部前原町篠原 380
考古関係多数
/
/
土宝
78 福岡県也九i 岡高校 x
ノo、.・ r~ J
づ:
が
福岡市博多区 ìP，J川町 1
x 古関係
λノ
古資料主
79 伊E!:J mf郷土資料室
公.
r
f
l
長崎県同彼杵郡伊モ日町 Efl
モ îfX 鉱業・民谷関係
展示
伊王町 'j1学校内
3273
80
えひーの rfj 立加久政小
公・小
山崎県えびの市架ドìrH U
民俗関係約 100 点
保存・民示
巧古関係約 100 点
保存
号古・民俗関係
約 18 ， 000 点
l
H
i
:
学校民俗資料宝
81
日崎市立桔 rl1学校郷
公・'1 1
/1
{f 崎 ílj 古付 H汀江川1J;(rfl
上資料主
!リjJJ 付立問物館
三一
汗 J
公・小
岐 ~HI， U出上 j!ß HJJJj 付気iミ 154
λF
網野町立郷 L 資料館
公・小
京都府竹野郡網野町字イミバ
ノア
，~':ïænj 郷 L 資料館
公・小
!日j 山県内情 rH向町 21
IJ~
旧明万小学校校舎を改
丸、
FF」z
考古・民俗・毘史関 {弔 iT ・展示 本 lH 小学校郷土資料室
イ子学校 Nt校 IL{、ド L 、校{f7
仔c杓1， 500 ，Ó
転JIl資料館 l こ
民俗・歴史関係
1Jr:':j梁北小学校を改造
収蔵
約 1 ， 000 点
む凶学校資料館
〆/
公
山口県岩 lqrH 右 lJ~
3
1
-8
民俗・教育 t~J係等
収蔵・民心
約 6 ， 000 点
制問 \11~ 立明白高校凶
庁
ノ
0. ，:γ
d
九i [lfJ!'f~lt イ(íliH/ド 876
号古関係
収蔵
行森県東i:MH拡蓬田村郷沢
初、 H ・生活関係
展示
明治 3 'r r建築のむ rn学
校伐合を修築して資料
fifll こ
凶占館内 l 乙印ヲIJ
.
!
t
f
i
'
蓬[1 1 村氏俗資料主
/
/
公
ILI 蓬川
利HJ
※①基本資料は『全国時物館総覧j) (1977.8
.1) , [J歴史資料保存機関総覧j) (979) である.
②展示品が書籍・文書のみの場合は割合した.また，各学校の歴史を示す教科書類を収蔵・展示する場合もあ
ったがこれも割合した.
@設立主体の項目の略号は以下のようである.国→国立特殊教育機関，公→都・道・府県・市・町・村立，私
→私立学校法人，小→小学校，中→中学校，高→高等学校.
④活用の項目は，報告者の用語表現をそのまま記載したものであり，あえて統一していない.また，収蔵のみ
の場合でも必ずしも展示してないとは限らない.
⑤
参考は旧校舎を利用したものであるが，現校地内にあるか確認できないもの，また，図書館に陳列した例を
1 例示した.
-49-
学校博物館の実相と諸問題(千家)
表2
都府県道
別
都道府県別設置状況と設立主体
小学校
中学校
高等学校
育
学その他の
校 学関校教係
計
備
考
公立!私立 公立!私立 公立 j 私立 公立(私立 公立私立
お毎道
1
青森
5
5
埼玉
千葉
新潟
2
2
いずれも水産高校
1
7
高等学校 1 は農林高校
.
2 !
福井
3
山梨
1
長野
9
t
1
.
愛知
'
3
奈良
2
4
:
島根
1
岡山
1 :
.
1
福岡
'
2
計
.
:
8
1
2
高等学校 1 は工業高校
2
時諮誠意事裂を主体と
4
1
'
1
.
2
1
:
:
e
.
1
:
1
2
1
:
16
海上自衛隊関係
2
'
1
(+2)~
高等学校 1 は農林高校
10
e
1
:
1
53
:
'
1
香川
小
1 学を校含む
3 のうちには小中学校
3
'
1
.
'
1
山口
宮崎
1
1
.
1
'
2
1
長崎
10
1
4
高等学校 1 は水産高校
1
:
t
公立高校 1 は芸術高校
2
:
和歌山
広島
3
.
.
'
3
1
~
.
1
3
!
1 ;
e
静岡
京都
1
1
2
:
。
9
1
:
1
1
'
1
'
1
'
'
1
三重
s
a
'
富山
岐阜
小校学
1 校を含
5 のむ.うちには，小中学
1
2
3
6
1
:
東京
神奈川
1
'
秋田
接選率芸校 1 は福祉法人立
.
1
岩手
宮城
2
1
e
2
1
'
-50-
81
( )は小中学校を中学校欄 l 乙
属させてないので参考まで
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号 )41-59 ページ， 1983 年 3 月
表 1 を数的 l 乙処理したものが表 2 である.これから学
本資料室の周辺諸状況を鮮明化させたい.
校博物館の一般傾向を指摘しておきたい.
イ)
設置主体からの検討
①都道府県の行政区別の設置分布は，中部地方(岐
設置主体の公・私の別を観てみると，そのほとんどが
阜・長野両県で 20 例)及び東北地方(青森・宮城・岩
県市町村立のいわゆる公立校で，本校のような私立の学
手・秋田各県で 1 6 例)に比較的多いことが注目される.校例は 2 例しかなく例外的ですらあった.この差は伺に
これらの地方 l 乙多く設置される理由としては，つぎのよ
起因するのであろうか.基本的に考えられるのは，学校
注目
うなことが考えられる.すなわち，乙れらの地域は一般
総数の相違である.学校博物館設置の基本資料とした両
的地理環境を言えば山間地帯の占める度合が大きく，そ
文献の調査時 i 乙近い 1976 年の統計によれば，全国の各学
注 15
れだけに小規模村落・農村地域を内含する傾向もつよい.校総数はd学校 24プ16 校(国立 71 校・公立 24，485 校・私
それ故にこそ，民俗資料等の残存度もまた高いと思料さ
立 160 校) ，中学校 10 ，719 校(国立 76 校・公立 10ρ92
れる.さらに関連して人文的環境を言えば，とくに長野
校・私立 551 校) ，高等学校 4978 校(国立 17 校・公立
県などは「教育県」としての異称を有する状況があるが
3734 校・私立 1227 校)である.そして，各学校総数に対
このような風土的伏況も一つの作用として考えられよう.する私立の比率は，小学校約 0.65% ，中学校約 5 .1 %,
総体的にみても資料室的設置のあるところは，
í人口集高等学校約 24.6% ，全体で約 4.8% にすぎない.すなわ
中地区J ，大都市付辺というより各地周辺地域が多いよ
ち，公・私各総数 l 乙対する設置比からすれば， 1 ， 000 校
うに思われる乙対し公 2 ・私 1 の割合の差でしかない.公立校におけ
②設置主体者は d学校，中学校，高等学校という学
る設置比数が若干上回る事情の一つには，公的機関の利
年段階に分類してみると，小学校における設置数が圧倒用ということから，学校(とくに小学校)あるいは公民
的数にのぼることが明らかである.この傾向は今後も変館的施設を使用して郷土の文化財を保存・展示するケー
更の余地はないと予測される.以下高等学校，中学校の
スがある.
J[買となる.
学校に保管・展示してあった資料が搬出されるケースも
③高等学校の場合は，普通科のみ乃至それを主体と
もっとも，逆に町や村の新資料館建設に伴い，
討こ確かにある. lかし，一覧表作成の資料としたこつの文
する学校より，農林・水産・工業という特別の職能・技
献からす相ま，後者の例より直結の例が多いようである.
術等の具体的な修得を教育目標とした学校，あるいは伝
私立における少なさは，そのよって立つ地理的立地環
統的に前記の特定された専科を有する場合が多い.した
境も無視できない.私立の立地環境は，比較的人口の凋
がって，幅広い一般普通教養を教育目標とした学校に限
密地帯，都市化された「人口集中地区」空間であること
定すれば，小→中→高と学年が高くなるほど学校博物館
が考慮される.一般的に都市化が進行すれば，在地的な
の設置例は減少するという結果となる.
郷土色が失われるという現象を生じる.したがって
注目
注 17
@設立主体を公・私立と区分すると，いわゆる県市原則的には， 1962 年の「旧全総」・ 1969 年￠悶全総」・
注目
町村立の地方の行政下における公立の学校は 81 例中 77
1977 年の「三全総」と開発の展開から都市化は確実に進
例の 75% を占める.とくに，小学校・中学校例はすべ行拡大を継続しており，各地における在地色はしだいに
て公立である.
色槌せはじめている.それだけに，都市部においては最
⑤展示内容は，一般的には農具，その他衣・食・住の
も身近かな民具等の民俗資料の収集さえ，困難な状況に
生活民具等の民俗資料が圧倒している.次いで，昨今の
あるということも遠因として良かろう.さらに，私立の
開発ブームの影響を受けてか考古資料の多きが自につく.場合はとりわけ財政，経営に関わるウェイトが大きいと
以上，表 1 ・ 2 から一般傾向として摘出される.
b
いうことである.学校博物館の運営，すなわち収集・保管-
現状の検討
かつて加藤有次氏は，
展示・維持という具体的諸機能推進のためには，恒情的
[全国博物館総覧』によった学予算の確立が当然要求されるのである.ここにこそ「私
注 14
校博物館 26 例についての整理を試みられている.乙の立j における正しく現実的なかっ重大な問題が露呈され，
例中には乙こで学校博物館の範障に含めなかった例も合学校博物館設置，運営の困難さに直面するのである.活
まれているが，学校博物館の状況を詳細に検討されてお用の問題となると，さらにその度合がつよくなる.とこ
り，今日においてもなお正鵠を得たものと評価される.
ろで，私立の場合は学校法人であるが故に私学として独
故 l 乙，
唱i
同
hu
学校博物館の実相と諸問題(干家)
注目
殊性という性格内容をクローズアップさせれば，必ず
の目的から 7 類型を提示されている.本来的には加藤氏
しも博物館的展示施設の設置し難い環境のみとは言えな
の指摘のとおり，設立に際しては「独立に設立して，学
い.この意味では，本校資料室はうまく私学の特性を生か校内の児童・生徒を中心に対象とした教科教材活用のた
し，その個性的な存在性を明ら糾乙した，主張力のある展示
め」というべきであろう.ただこれが理想的ではあるけ
内容の整備主れた学校博物館と言うことが許るされよう.れども，校内に博物館施設を「独立」的に設定すること
学校博物館に関して私立の後進的現象は否めないが，
は並大抵のことではない.それに至るまでには数多い諸
活路は私学それぞれの個性を如伺にして生かしていくの
条件を克服しなければならない.現在でもよほどの理解
かという点に一つある.
者の存在，しかも英断を必要としている状況は弓変であ
次に設置主体を学年段階別に観ると，小学校が多い傾
ろう.本校の場合は，言わば理想的な状況でしだいに整
向があった . IJ学校における設置例が多いということは，備された類型に相当するが，やはり経営者の意志と資料
やはり基本的には 24 ，716 校という絶対総数ということに
収集者の熱意に拠るところが大といえる.鞘走の各地方
あろう.ただそれだけではない.社会科教材の内容を検
における県単位の博物館の設立に関してさえも，本来，
討すれば，在地郷土との密着度はより低学年が高いとい
行政主導によって地域住民の社会教育のために施設をつ
う一般傾向を指摘できる.とくに第 4 ・ 5 学年といった
くることが望まれるのにもかかわらず，篤志家の主体的
段階である.それから高学年に至るほど視野が拡大され運動によってはじめてそれが果されるという実例もある
住 20
はじめ，郷土 l 乙対する比重は低下の一途となる.すなわ
ほどである.まして，一般化されない立ち遅れた学校博
ち，小学校社会科教育の問題のーっとして，自らの町・
物館の設立に関しては，現在においてなお，熱心な理解
村へのアプローチがあり，自分たちの祖先が乙の町・村
者のいわば独走的なはたらきかけを要しないと設置まで
でどのような営みを展開してきたかということが，その
こぎつけない後進的状況がある.とのような状況を打開
理解のための方法論として選摂されるからである.そ ζ
していく特効薬は，残念ながら唯一つ，義務的性格を持
により強い在地との直接的な結合があり，その密着度は
たせた法的整備が最も現実的な方策である.あたかも，
見逃せない.それはまた，より都市化されていない地域
学校図書館法によ勺てすべての学校に図書館の設置が義
における小学校に典型があると思われる.というのは，
務づけられているようにである.すなわち，学校博物館
行政区別分布から導かれた中部・束北地方に多いという
も学校図書館法第一条のように「学校教育において欠く
現象の評価があるからである.
ことのできない基礎的な設備であることにか九がみ，そ
逆に高等学校における設置例が少ないということは，
の健全な発達を図り，もつて学校教育を充実する乙とを
注2
幻
1
前縦述lに峨乙哨関連酎させ尚れば雌総数蜘の約吋
t
科的視野が地球的規模に拡大される乙となどが言えよう.これを義務づけるという状況でもなければ，学校博物館
さらには，高等学校の場合の多くは受験対応中心の文献
の普遍化は全く困難であると言わざるをえない.結局そ
教育に比重を置いているという乙とも重大な要因である.の不備が，地方において現実にせっかく校内に資料展示
その意味で，農業高校・水産高校・工業高校などの設置
室があるにもかかわらず，最近の文化庁の推進指導によ
例が普通科を主体とする高校より多いのは，それがより
る各地域それぞれの歴史民俗資料館構想の具体的な実現
限定された特殊な個性的技術教育を内容とするからであ
化の影響からか，校内展示資料がそこに吸収され，ため
り，焦点がしぼり易く，個性的内容の摘出が容易な環境
に学校博物館を消滅させてしまうというケースを生じき
にあることも対称的に観取される
せている.発展的形態から校外に独立資料館が設置され
このように学校博物館における設立主体の検討からは，たとしても，校内施設のそれによる解体・消滅には割り
本校のように「私立」の「普通課程」のみの受験校であ
切れないものが残る.設置目的には加藤氏の示された様
る「高等学校」に学校博物館が存在する ζ とは非常な僅
々な状況があるが，いずれにしても法的整備がなければ
少例であることが知られてくるのである.ただし，実は
とくに公立の場合乙のような例すら今後にも起り得るの
依拠した両調査の一覧文献に本校資料室は掲載されてお
である.
らず，本校のような例も他にある可能性の余地も留保し
ハ)展示内容からの検討
ておく必要があろう.
展示の内容は，一般的に歴史・民俗関係の資料のケー
ロ)設置契機からの検討
スが多く，具体的には生活用具，考古関係品であった.
先述の加藤氏は，学
PHU
qL
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 41--59 ページ， 1983 年 3 月
乙とと無関係ではない.前述のように，小学校において
る.本校のように古典を講究することが一つの学校法人
は自己の存在する生活の諸環境を理解するために，郷土
の一課題とするならば，それに基づく展示としてそれな
を育成してきた祖先の営みを探る機会が与えられ，祖先
りに評価しなければならない.また，これを通じて教育
が創造し伝えてきた物証が具体的に求められるのである.の方針をアピールできるわけで，むしろ特殊個性を表現
その際 i 乙は最も直接的に祖先の生活 l 乙触れ得る民俗質料
した展示の場合が好ましいことすらある.すなわち，私
がその媒体資料となりやすい.また，旧来の民具などは
立学校における学校博物館の資料的内容は教材として利
日常的文化の急激な都市化に伴い各個において不用品化
用できる資料であることは大前提であるが，同時に外へ
してきたことも，収集における窓口を広げることとして
もアピールできる個性的資料である乙とが内部的問題と
注意しなけばならない.さらに都市化に伴う郷土の荒廃
しては現実的に望ましい.このことは，実は私立にかぎ
の反動としての心情的な失われた郷土への回帰現象も
らず公立においても表 1 に示した農林高校とか水産高校
民俗資料保存への底流として考慮しておく必要があろう.のようなスペシャリスト的人材育成を目指す場合におい
本校などは都心中の都心 l 乙存在しているせいか，民俗資
ても同様であり，農業資料とか漁具資料などがそれぞれ
料は基本的に皆無と言って良い.コンクリートジヤング
の教育 l 乙有効な教材として確かな機能を果すであろう乙
ルの中 i 乙「郷土」は見当らないと言えば過言であるが，
とは否定できない.その意味で岩手県の広田水産高校附
それに近似する.ともかくこのような事情から，展示内
属博物館，宮古水産高校水産博物館，岡山県の興陽高校
容には，結果として民俗資料を求めた場合の一般的で多い
農機具展示室，愛知県の起工業高校繊維資料館等は評価
ことが理解されるのである.他方，それでは理科系のも
すべき例である.したがって，どのように資料の幅を求
のは皆無かというとそうではない.逆に理科系教材とし
めるかは学校それぞれの設置目的，個性に対応させれば
ての模型・標本類は，小学校に限らずどの学校でもと言
良いのであって，それぞれの活用の具体的方針に基づい
えるほどに理科室が設置され，その備品としてすでに
て行われれば問題はないのである.これに関して，とく
整備されている状況がある.結局，人文系教材について
に普通課程の学校博物館における教育機能重視という原
の「もの」に対する認識の不足が今日の事態を招来し，
則からややもすると外れるものという見方も出てこよう
新たに資料室展示となると人文系資料ということになる
が，繰り返せば要は活用の問題であり，ことさらにそれ
のであろう.
でのみ博物館を営利目的のために利しているなどという
そこで，学校博物館として広く浅く資料を求めるか，
指摘は当を得ないものと考える.むしろ，公益的教育の
何らかの特殊性を引き出して中核資料を収集するか，ど
法人機関として自らの教育方針を押しつけではなく，公
ちらの道を選択すべきであろうか.しかし，この問題は
関することは当然のことと言わねばならない.重ねて，
あまり現実的ではない.というのは，現在の学校博物館
教育効果を期待できる主体的活用が問題なのである.
の設置状況から，極言すれば，まず量的に設置数を増し，
なお，この他 l 乙施設面 l 乙関して検討しなければならな
「もの」による教育への実際的理解を拡大することが先
いが，資料が不足しておりととに検討することはできな
決の課題としてあり，質的な問題の細部に至る要請可能
い.ただ，一般的には空教室をそのまま転用する場合が
な周辺環境の醸成に至っていないからである.ただ当然多く
ながら，設立に際しては将来への展望を明確にしておか
とくに展示のための資料館(室)を独自に建設し
ている場合は少ない.研究機関的性格を有する大学附属
なければ，竜頭蛇尾どころか廃屋化してしまう蓋然性が
の博物館はともかく，小学校~高等学校レベルでは，現
高い.学校博物館そのものを学校図書館的に存在させる
在そこまで望むのは無理な状況かも知れない.しかし，
ならば，教育教材として学校図書館と同様の在り方，す
資料次第ではその保存維持のための策を講じなければな
なわち幅広い分野の関係教材としての標本なり，現物資
らず，それぞれに対応する個別的措置はいずれにしても
料を収集するべきである.その普遍性に立脚して，個性
整備しなければならない.本校においても，無紫外線蛍
が生じさせられれは理想的であろう.どちらにしても，
光灯の使用とか，染色の有職故実を考えれば白熱0:1 をか
如何に展示資料を活用していくかが実は問題なのであり，らませて自然光に近づけるとかなどの照明，パネルを利
資料の偏位性があったとしても，あえてそれが学校博物
用した展示など内部施設面において改良すべき点は多々
館として否定されるも
qU
FO
学校博物館の実相と諸問題(千家)
室の位置は，現況からすれば比較的恵まれた状態にある
物理的な現象を文字・計算で語りつくして十分に理解で
といえよう.ただし，一般に博物館は学校博物館にかぎ
きるか，化学反応式のみで物質の組成，生成，その実態
らず，むしろ実際的な活用の在り方が問題であり，設置
が解釈できるか，原理を知覚したのみでは現象を正しく
目的が理想的であり，資料室も整い，展示も形を為して
把えた乙とにはならない .ζ 乙に学校博物館の存在意義
いたとしても，それでもって活用の仕方まで理想的とは
があろう.すなわち，
1全感覚」をして教材を理解でき
言えないのである.したがって，設置契機(目的)の如
る環境の形成が教育機関内部に求められるのである .1文
何が学校博物館の決定因子とはなり得ないのは当然であ
献」偏重の教育的状況から「実物」教育の実を向上させ
る.あくまで結論は，その活用の在り方の如何にかかわ
るべく環境の育成が必要である.
るのである.そとで，以下はこの活用について検討を重
b. 活用について
ねたい.
学校博物館の設置目的，その契機は一様のものではな
く種々のものがあった.
町学校博物館の活用
しかし，たとえいずれの事情が
そこに介在しようとも校内に博物館的施設が存在する事
a. 学校博物館の存在意義
実は変らない.問題はその施設なり展示資料をいかに維
学校陣物館の活用について考える前に乙の存在意義に
持発展させ，生徒・児童に対して教育課程の中で提供し
ついて再確認しておきたい.学校博物館設置の意義は奈
ていくかにかかわってくる.収集展示された資料もその
辺に存在するのかすでに明瞭であろう。従前の寺小屋式
活用の仕方によっては死蔵に等しいものにもなってしま
の「よみ」・「かき」・「そろばん」的な言わば文字を
うだろう.活用の在り方によって，むしろ学校博物館は
媒体としての情報取得は無限の想像的形象世界を展開さ
生きもし，死にもするのである.加藤氏は，
1現実 l 乙存
せることになり，文学的世界には有効であっても，科学在する地域社会の博物館ですら，学校教育に対応する図
的分野に至ると事実認識の求められる点において限界を
難さがあることで，乙とさら学校内に自ら博物館施設を
みない訳 i 乙はいかない.言い古されたことわざであるが，開設して、活用することは，教育的効果を知りながらむず
「百聞は一見にしかず」というー句は貴重である.例え
かしい諸問題を残すから ζ そ，学校博物館の進展をみる
ぱ，本校における教育の目的の一つに古典への理解を深
に至らないのではなかろうか」と述べられている.至言
めるというととがあるが，古典の教材に記述された内容
である.
の機能性を説くのみでは容易に理解されない.当時の形
法的に設置義務のある学校図書館は，図書館司書の存
態と機能とを合致させ，初めてより正しい理解が生じ，
在によって円滑なその活用がはかられている.同様に，
その事実認識から科学論理的な思考の展開が始まる乙と
学校博物館も資料の充実がはかられればそれほどに専門
になる.しかし，現実の教材は文献的教材が基本的とい
的知識が要求されてくるのであり，その管理・運営に関
うよりは，ほとんどといっても過言ではない.ただ，現
しては図書館司書のように学芸員相当の専従職員が必須
在の傾向として，その偏在性の反省から教科書類に図版の存在として要請される.現在，大学附属博物館はとも
の多用が顕著になって来始じめてきたことは確かである.かく，狭義の学校博物館に学芸員を置いているところは
こ乙に一程度の進展を指摘する乙ともできる.それでも
ないようである.博物館相当施設の審査要項はその一つ
なお，科学的な教育を実践するためには不足である，例
として，(!浮芸員有資格者，~浮芸員に相当する者とい
えば，仁徳陵古墳は全長約 480m ，世界最大級の前方後
う専門的職員を有することを規程している.本校の場合も，
円形の墓と説明し，一葉の写真を添布しただけでは圧倒
内部的に乙れを満たす人間環境はあるが，専従する学芸員
されるそのスケールの大きさ，その墓っくりのために使
は居ない.部屋の非専従管理者はいても活用的に資料室
役された人々の労働量の苛酷さなどは目前にしなければ，専門を業とする存在はない.資料室に常駐の管理者がい
原則は知り得てもそれ以上の理解は困難であり，そとに
ない故，資料室そのものは施錠された封印状態が日常的
は新しい事実発見の認識に対する感動は生じまい.すな
な姿態であり，生徒自身が自由に展観できるものではな
わち，平面的に縮少された一枚の写真と実物との距離は
い.封印が解かれ，生徒自身が自由に展観できるのは，
限りなく遠い.より科学的な認識は，平面的コピーによ
実際的に文化祭当日の二日間のみと言って良い.したが
るものではなく，立体的な実物によって果されるもので
って日常的に言えば，資料展示室というより資料収蔵室
あり，ー感覚のみならず「全感覚」を駆使して生まれる
というのが実態に近い表現であろう.
ものと愚考される.理科の実験が正にその例で
n
U
A
F
D
博物館学雑誌第 8 巻第 l 号・ 2 号合併号(通巻 10 号) 4
1-59 ページ，
の指摘がある.
乙れは棚橋氏によって紹介された「ワシ
1983 年 3 月
機会のうち，伺度見単したか.
ントン教育局=スクールライフ」の報告であり，前掲加
r1 回J
50 名・ r2 回J
藤氏もヨ閉されている.すなわち，
r3 回J
3 名・ r4 回J
r 保管してある蒐集
品を出して来て，児童に見せることは彼等の興味を膨起
質問 3
見学したのはいつか.
して有効であるが，学校博物館としていつも同じ物を教
『第 1 年次
室内又は学校内 l 乙陳列し，生徒が勝手に出入り出来るよ
先心を鈍らすに過ぎないからである J
45 名・『第 2 年次J
『両年次 J
質問 4
うにして置く ζ とは，徒 l 乙児童の興味を殺ぎ，彼等が研
17 名
.と指摘し，小学
か
『はいJ
29 名・『いいえ J
い」と考えている.
町南方J
3名
日常的 l こ展観できるシステムは，本校にも実は存在し
質問 5
解いたととがあるカ、
4 階ショーケースの場合，縄文一弥生一古墳(土師
『はいJ
器・須恵器)各時代の土器を中心として展示している.
63 名・『いいえ J
次に質問 1 において，
歴史教科書に記述された各土器を具さに観察できるよう
12 名
rいいえ』と解答した生徒を対
象として以下の質問を一設定した.
にしてある.例えば，生徒が誤解しやすいものに土師器
質問 6
資料室の存在は知っていたか.
質問 7
入学に際して購入した『古典参考図録』を紐
『はいJ
と須恵器がある. r縄文土器以来の伝統的素焼きの土器ム，
「大陸伝来の堅い灰褐色の土器」という文字による抽象
的な概念も，一目する乙とにより確かな認識を生じせし
124 名・『いいえJ
38 名
解いたととがあるか.
『はいJ
しかし，それは必ずしも普遍性を有すとは限ら
ず，さらに日常的展示の場が駄目押し再確認の機会を各
個l 乙与え一層の事実認識の明瞭化を果し得るのである.
43 名・
入学に際して購入した『古典参考図録』を組
た.普通教室のある建物各階のショーケースの陳列であ
める.
13 名・
見学は父兄乃至他校友人を案内同伴したもの
校内に設置された学校博物館の存在を「余り望ましくな
る.
21 名・
1名
115 名・『いいえ J
47 名
以上である.乙の調査の結果から抽出すべき留意点は
以下のとうりである.
なるほど，日常的展示の情性から「興味を殺ぎ，研究心
①見学体験者は調査対象者 237 名中， 75 名の約 32
を鈍らす」という「もの J I こ対する無感動の慢性化した
%にすぎな~\逆 l 乙 68%が未体験者というととになり，
心理的悪弊を生じる傾向も確かにあろう.ただ，それは
見車体験者は 3 人に 1 人の割合でしかない.
活用の方法論を除いて語れるものではなく，日常的展示
②見学体験者 75 名中，その回数は 1 度のみの場合が
50 名， 67%に及ぶ.
が必然的にとのような逆効果的結果を招くというもので
はなかろう.先 l 乙述べたように，日常的に見せる ζ とに
③見学体験者 75 名中，その時期については第 1 年次
よって少なくとも初期的段階においては複数度の刺激を
における場合が 45 名， 60% を占め，両年にわたる場合は
与え得るのであり，認識のより確実性を生じているとと
17 名，
も事実である.逆l 乙，日常的l乙展観できないことの弊害
23%にすぎない.
④ 見学体験者 75 名中，見学 l 乙際して父兄・他校友人
は確実に存在する.
を案内同伴したのみの場合が比較的多く， 29 名，
乙乙 l 乙在校生 2190 名の約 11% に相当する 2 年生 237
39%
I 乙達する.
名(男子 97 名・女子 140 名，ただし， 2 学年全体の生徒
⑤見学体験者 75 名中，教材としての『古典参考図録』
数は男子 330 名・女子 442 名・計 772 名である)を対象
を紐解いた生徒は 63 名， 84% に至り，ほとんどが見て
としたアンケートの調査結果がある.詳細な調査ではな
いる.
いが，およその傾向は窺担1同能であり，これを示そう.
①見学未体験者 162名中，資料室の存在自体を知ら
調査内容・結果は以下のようである.
質問 1
ない生徒主が 38 名， 23% にも及ぶ.乙れは重要な数字で
文科館資料室の展示を見学したことがあるか.
ある.全体として 16 %，約 6 人民 1 人は入学後 2 年の経
『はい』… 75 名(男子 18 名・女子 57 名)
過にもかかわらず，未だその存在を知らない乙とになる.
『いいえ』… 162 名(男子 79 名・女子 83 名)
次に質問 1 において，
⑦ 見学未体験者 162 名中，
rはい』と解答した生徒を対象
として以下の質問を設定した.
質問 2
r古典参考図録』を紅白平
いた生徒は 115 名， 71% という高さを示し，未体験者で
も実は資料展示の基本的内容を知っている生徒が意外に
いままで 4 日間( 2 年生の場合)の自由公開
多1，\
phU
FO
学校博物館の実相と諸問題(干家)
以上であるが，概括的に言えは在校生 3 人民 1 人が見
質問 1 を『いいえ』と解答した場合( 162 名人
学体験し， 6 人l 乙 1 人がその存在すら知らない.以下総合
的に若干の所見を付加したい.
『有j
109 名( 67%)・『尺
53 名 (33 %)
総体的には 237 名中， 175 名が利用し，その利用率は約
まず，見学体験者の割合が非常に低い数値を示してい
る乙とを直視しなければなるまい.因 t c:.， 日本史選択(大
学受験に際して日本史を選択する者)の 3 年生， 46名を
74% に及ぶ.資料室利用率 32% と大きな差がある.
それは，質問 1 を『いいえ』と解答した 162 名の 67%
が図書館は利用した体験をもつことでも明らかである.
対象とした場合でも見学体験者は 13 名， 28% を示して
教材として利用するものであるかぎり，身近な存在で
いるにすぎず，先の二年生を対象とした調査結果 32%
なければならない.学校博物館は図書館のように常時開
の数値に近似する.乙の状況では 2 年生が 3 年生に進級
室が望まししそこにこそ教育的欲求に即応する学校博
した段階においても，乙の数値の変動はほとんどない可
物館の機能性がある.乙れに対しては，機会を設け資料
能性が大である.すなわち，このままではせっかくの資
室にて授業を行うなどして活用すれば良いという意見も
料室展観を 1 度も果さずに学舎を巣立ち行く生徒が在校
当然出ょう.しかし，第 u 乙，教材として使う資料のタ
生 2190 人中 1500 人前後も出てしまうことが予測され，
イミングとその量の問題がある.また，たとえその意見
乙のうち資料室の存在自体を知らない生徒が約 350 名合
を認めたとしてもそれだけ 1 度見れば良いというもので
まれる乙とになる.乙の問題は，回数 1 度の生徒が圧倒
はない.図書館利用のように生徒各個の知的欲求に随時
的であることをも合せ考慮すると，教員側カ〉らの啓蒙の
応じられる体制が必要である.第 21 c:.，実はこれが基本
不足も当然指摘しなければならないが，さらに年間 2 目
的問題であるが，資料の具体的活用には幾多の専門的素
聞の自由公開機会でしかないことも大きく起因している
養を必要とするのであり，資料の活用法について専門外
乙とはまちがいない.
の一般教員にそのすべてを求めるにはおのずと限界
次に見学体験時の人的関係をみると，本校生徒以外と
の同伴件数が比較的数値を伸していた
このことは，後
が存在している乙とである.したがって，日常的に，円
滑に資料室の活用がはかられているかと問われれば問
述するように収蔵資料の図録を刊行して全生徒の教材と
と答えざるを得ない状況でしかない.言わば仏つくって
していることと関連し，見学未体験者の場合でも『図録』
魂入れず的状況でもある.魂入れるためには，専門的に
を紐解く例数が162 名中 115 名 l 乙及ぶ乙ととも合せ理解
その活用法を具体化していく学芸員の存在がどうしても
しなければならなハすなわち，図録の刊行自体は大き
必要である.ただ，乙のことは本校のみの特殊状況では
く評価しなければならないが，かえって生徒自身は
なくて，学校博物館の現実の普遍的課題でもある.
詳細な図録によって机上で展示品の基本的内容を知り得
る乙とになり，乙とさらに図書館の上階まで行き実物を
このように学校博物館の実のある運営を考えた場合，
一般教員の部分的・片手間的整備では，資料数・その質
見ることもないという考え方に支配されてしまう傾向も
の向上が進めばそれだけ円滑な活用から遠ざかる状態が
生じているのではなし功〉と考えられる.実物があるにも
予測される.とくに私立学校は，公立学校と比較した場
かかわらず，安易に図録のみにて処理してしまうのであ
合経営上の諸問題より，小学校を除く中・高等学校，と
る.したがって，文化祭当日にたまたま知人等を案内す
くに後者における教員一人当りの生徒数は多く，若干名
るとき初めて実物を見るという乙とになるのであろう.
を除きすべて学級担任という現状である.このような職
日常的に展覧できるということは，資料が至極当然の
i
!25
場の諸環境度も私立似易合は微妙に交錯もし，場合によっ
ように目前にある乙とから現象に対して不感症的になり，ては片手聞に拍車もかかり，結局それによって資料室の
刺殻性の後退を招くところに悪弊があった.しかし，ア
総合的活用を伴う整備はさらに遅れる一方となることも
ンケート調査の数値を前提とすれば見学体験者の数値は
考えられる.
低く，見学体験した後の問題より，それ以前の問題が歴
然として存在している
一般的 I c:.，学校博物館は一人乃至一部の熱心な教員 l 乙
参考までに，日常的に開館して
よって資料収集が行われ，整備されているのが現状であ
いる図書館はどうか.図書館の利用目的を読書・勉学に
る.したがって，その熱心な教員が退かれると，資料そ
住 26
前提してその利用体験の有無を，先の質問 1 の解答と関
のものへの理解ある人が居なくなり，まるで物置き小屋
連させると次のようである.
的状況からまぬがれない
(ただし頻度は無視する)
-56-
博物館明監誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号)
4
1
.
.
.
.
.
.59 ページ， 1983 年 3 月
ういう結果を招来しないためには，学校全体の資料室へ
争社会の処方として受験対応の文字記憶中心の授業展開
の理解が必要であり，継続的な活用運営を考えれば，繰
がある.そこにあるのは， r本物」に対する理解を求める
り返えすが専門的職員の設置しかない.本校においても
よりもテキスト上の理屈のみを頭にたたき込むという，
資料室の管理・維持・活用の充実を期すためには，学芸
1903 年の固定教科書制定以来の教科書至上主義自撫味
員の設置が要求されるのである.具体的には，たとえ授
無臭の無機的存在でしかない.現実に日本史を例とすれ
業は担当してでも身は学年にあるのではなく，資料室に
ば，授業では各時代性を認識するために政治的動向が最
あるという状況をっくり出すことが，将来へ向けて資料
優先され，経済的動向がそれにつづく，そして文化史的
室を発展させるべく，教材として円滑な・活用をはかるべ
分野はほとんど触れずじまいで終わるのが現状である.
く不可欠の条件であると考えている.
そこで生徒は受験対応のため作者・作品・記念物等を作
このように，本校においては「展示」そのものについ
ての活用に望むべきととろがあるが，
品に触れる乙となく，ただひたすらにその文字を記憶す
r もの」自体の活
る作業を仁点」を獲得するために繰り返すのである.そ
用について整備された刊行物がある.有職故実資料を中
心l 乙図録化を行い.
れでも 1 年間で近代に至る乙とはない
r古典参考図録』として刊行を果し，
文部省は「ゆとりある教育」を指示しはじめた.しか
し， 51 年度以来進学率が低下し続けているといえども
逐次増補している.また，毎年『教育参考暦』という 6
枚綴りの暦を発行し，この図柄にもまた，図録に未収録
徴的変動でしかなく受験対応の教育状況は学歴尊重・偏
あるいは新たに収集した資料を用い，教材としてかつ生
重の管理社会であるかぎり不変であり，現実には学校の
徒の年間の学習計画のために供している.このような刊
予備校化的現象がどうしても維持されていくのである.
行物の継続的発行は博吻館町舌動として評価しなけオUiな
乙のような状況であるからこそ，むしろ校内に博物館施
らないし，
設を設置し，具体的な「本物 J I 乙触れさせる乙とが必要
r教育参考暦』などはユニークな活用の例で
あろう.
であろう.あくまでもテキストは他人の言葉であり自分
のものではない.我々の祖先がその叡智をかたむけて合
v
r もの J による教育の要請ー結びにかえて一理性を追求し，形成させてきた諸々の技術文化の継承も，
既述のとおり国学院高等学校に付設された資料室も，
やがては理論のみによってしか残されなくなってしまっ
学校博物館全体の動向と規を同じくした諸問題をかかえ
た状態花王るかも知れない.現 ttø子供達がつくるのは，
た状況にあり，少なくとも博物館的立場よりすれば決して
設計図があり，プラモデルのように半製品の部品が用意
満足できる状況ではない.それがまた活用状況の不十分
されたものを組み立てていくものでしかなく，そ乙に創
さも招いているのである.
造的世界はない
祖先の「もの」をっくり出した創造力
我固において「よみ」・「かき」教育の歴史は古い乙学ぶ機会もなく，プラモデル的な半製品を完成させる
それに対して.
r もの」による教育の歴史は浅い
「も
だけの観察力しかないとしたならば，将来につながる教
の」を展示し，実際の「もの」から学ぶという科学的方育は存在した乙とにはならない
文字のみに比重をかけ
法論の展開するのは考証学の発達する江戸期以来のとと
た教育の方法論の選択は，認識の未消化を蓄積させ，消
である.しかも，広く一般の人々を対象とした恒久的展
化不良症状を生むのみである
博物館の機能の一つには
示施設の登場は近代を待たなければならなかったので・あ
「もの」の展開をとおして人類の広範な歩みを未来へ継
り，帝国博物館が設置されたのは実に 1889 年の乙とで
承する ζ とがある.すなわち，理論のみでは「もの」の
ある.このような歴史の浅さからか
本質は忘却されてしまう可能性がつよい.
r もの」に対する
理解は現実的には軽い扱いでしかない.現実の「もの」
r もの」を媒
体とした教育の在り方 l こ，より客観的な，一方的に与え
がもっ説得力の大きさは百菜では対応できないものがあ
られた内容ではない自身の体験による認識が生まれ，無
る.
r一目瞭然」という言葉がその説得力の高さを言い
限の新しい創造性が醸成される.むしろ，乙のような立
当てていよう.言葉・文字を弄した表現力には一程度の
体的教育に乙そ，真の「ゆとりある教育」の活路がある
限界があり，文字・言葉からのみによる「もの」の復原
ように思われる.ただ単に物理的に時間数を削減するこ
r もの」と直樹協
とのみが「ゆとりある教育」ではなかろう.また，たと
することによって，はじめて「もの」の本質を見極める
は困難を極め，誤解も生じやすい.
えそれを認めたとしても現実の学歴社会への対応を考え
ことが可能になるのである.現在，学校教育
Fhd
円d
学校博物館の実相と諸問題(干家)
体的にはどうするか.文部省として「ゆとりある教育J
8
) 注l! é 同じ.
を志向するならば，朝交博物館，学校博物館学芸員など
9
) r古典参考図録』 第三版 国学院高等学校 1982
の設置義務に関する法的措置を講ずるべきと考える他は
1
0
) 日本博物館協会編
ない.
国学院高等学校においては，いわゆる建学の理念に即
1Ù
応する形で資料室を開設しているが，現実的にそれが円
滑に機能しているとは言い難い.施設的には比較的恵ぐ
『全国博物館総覧』
地方史研究協議会編
山川出版社
1
2
)
まれていると言えるが，それを活用する条件には不備な
ぎょうせ
1978
い
『歴史資料保存機関総覧』
1979
日本教育年鑑刊行委員会編
1978 年版
ぎょうせい
『日本教育年鑑』
1978 因に 1981 年の統
点がある.いかに恵まれた形があろうとも，それを主
計では d学校総数 25.004 校うち私立 166 校，中学校総
導的に活用の具体相に方向づけていく専門的職員がいな
数 10.810 校うち私立 550 校，高等学校総数 5219校う
ければ，その有効性・存在意義は半減する.場合によっ
ち私立 1241 校.
ては，資料室の荒廃・落日が急速に訪ずれる可能性色な
1
3
) 中部・東北地方の設置件数の多い県の状態を示す.
きにしもあらずである.すなわち，秋田県立鷹巣高等学
林野面積は，長野県1.012.000 必α( 3 位)・岐阜県
注 27
校の場合がその意味で典型的な例であろヲ.本校もとれ
8
5
4
.
0
0
0.
t
a( 5位)・青森県 658.000 .ta(
を他山の石として戒しめなければならない.
423 .0 00必α( 21 位) ，耕地面積は長野県 153.000 必α
「本物」を見る価値，それを見極める力というものを
8 位)・宮城県
(9位)・岐阜県 77.000 .ta( 26 位)・青森県 168.000 .ta
養成することが，理論の先行する今日だけに必要とされ
(6 位)・宮城県 159.000必α( 7 位)とそれぞれ上位を
る.我々は実体のない文字・言葉ではなく，具体的に確
示めている.さらに，このうち「人口集中地区」は青
実に情報伝達される実体，
森県に 2 地区あるほかはすべて 1 地区のみである.す
r もの」によって祖先の叡智，
自然の驚異などを体得することこそ，にせ物の横行する
なわち，山地面積多けれどもまた耕地面積も多く人口
風潮の中において大切にしなければならないと考える.
も分散傾向を示すという特色がある.
「もの」を見，
r ものJ !é触れる実体験こそ，事実認識
の原点であるという価値感を教育の現場に具体的に生か
さねばならない.
1
4
)
加藤有次
雄山間
最後に，本資料室が博助館的施設としてと乙まで充実
してきたのは，学校長の理解と鈴木敬三博士のと努力に
15)
注 12!é 同じ.
1 7)下河辺淳編
脚注
『博物館概論』
1978 年の「巻末資料編」に，
学苑社
第 11 回 ICOM
1977
象とした教科教材活用のための目的.
②記念事業として設立される場合.
③教育を目的とした地域社会の研究活動を契機に必
然的 l 乙設置
r岩波六法全書』
悶和 57 年版岩波書店
3) 棚橋源太郎
『博防館学綱要』
4)
「博物館の分類について J
鶴田総一郎
理想社
新井重三
理想社
1982
1950
スペース利用の必要性から止むなく資料収集し，展
r博物館入
1956 所収
「博物館の分類J
④廃校舎が発生したさい，また空室がある場合に，ス
示開設される場合.
⑤社会教育を目的とした場合.
r博物館学講座 1 Jl
⑤近代化が進む現代社会において，過去の資料の保
1980 所収
6) 伊藤寿朗
7)
国土庁
注目文献により 7 類型 l乙分類されている.
r国際博物館会議定款
1974 年 6 月 11 日
ている.
雄山閣
至誠堂
①独自に設立して，学校内の児童・生徒を中心 l 乙対
総会(コペンハーゲン)に採択」として全文掲載され
門』
日本考古学協会
『資料宥詮国総合開発計画』
r!第三次全国総合開発計 lliij
19)
1)伊藤春朗・森田恒之
5)
『埋蔵文化財白書』
1971
]
8
)
2
)
r博物館学講座 1 Jl
1
9
7
1
敬意を表したい
(1974 改正
「学校博物館 J
1979 所収
16) 和島誠一他
依るものである.すでに，学校創期より乙れが重要性に
着目され，今日の状況が形成された.その慧眼に対して
r:地理街十要覧
1981 年版』二宮書店による.
注 2 に同じ
「博物館の分類と範鴎」
存 l 乙目的を置く場合.
注 1 文献所収.
⑦
20)
-58-
その他，目的・動機は種々考えられる.
拙稿
「歴史系博物展示雑考J
国学院大学博物館
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号(通巻 10 号) 4
1
'
"
"59 ページ， 1983 年 3 月
学紀要第 6 輯
1981
小学校(公) 25人・(私) 23.2人，中学校(公)
2
0
.
3
2
>
> 注 21 乙同じ.
人・(私) 22.9人，高等学校(公) 17.6人・(私 )25.2
~
人である。
注 141 乙同じ.
2.1注 31 こ同じ.
2
$ とくに有職故実関係資料の蒐集は，鈴木敬三博士，
2の本来調査対象は 251 名であったが，完全解答者のみ
考古関係品については小出義治先生のと尽力によるも
をここに資料として使用した.
2$注 12 文献によれば，本務教員 1 人当りの生徒数は
のである.
幼注 14 文献に詳細な事情の引用がある.
Qd
pD
O
b
j
e
k
t
i
v
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nd
e
rRaumfahrt
地
より NASA-photo
寺代をひらく
公共文化施設の総合的研究企画設計集団
トヨIJL~払罰~
主疋る実績/国立民族学博物館/
国立歴史民俗博物館/日本はきも
の博物館/新潟県立自然科学館/
神奈川県立自然保護センター/東
京都台東区立下町風俗資料館/文
部省高エネルギー物理学研究所/
建設省建築研究所/福井県立博物
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装身の意義と歴史・・・・.
.
・
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・
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:
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.町
〈装身の歴史〉
~
〈考古学の周辺〉
抜歯習俗の成立 ::-ji--:::: ・::::::::::春成秀爾
・高山純
入墨の意義と性格 :::::::::::::ji--::
-各巻の主な目次・
*1巻博物館学総論
博物館学と博物館技術学/
博物館の目的と使命
-R
第 2巻日本と世界の博
人物埴輪頭部における装身表現 ::::ji--:: ・杉山晋作
・:::::西口陽一
耳飾からみた性別 ::::ji--::::::
装身具にみる身分制度:::::::::::::::・:亀田博
〈身体の変エ〉
採取の時代 :-ji--:: ・::::::::::::::::春成秀爾
物館史
農耕の時代::::::::::::::::::::::::世
岩界永
三館史/日本の博
の省
博物
物館史/種類別博物館史
千賀久
大王の時代 ::::ji--::::::::::::::::
-R
第 3巻日本の博物館の
・:佐藤興治
律令制の時代 ::::::::::::::::ji--:
現状と課題
〈装身と原始・古代社会〉
わが国の博物館/種類別に
.
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.・・・藤田富士夫
縄文 j古墳時代の玉製装身具・.
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.・・・・・小笠原好彦
縄文 1古墳時代の布・.
貝輪と銅釧の系譜::::::・:::::::::::::木下尚子
田
第
第
3
2
1号
号
号
特集・古墳の謎を解剖する
特集・日本旧石器人の生活と技術
特集・縄文人は何を食べたか
特集.神々と仏を考古学する
縄文土器
m
みた日本の博物館/世界の
博物館/未来社会と博物館
*第 4巻博物館と地域社
ふ一品
現代社会と博物館/余暇の
利用と博物館
-R
第 5巻調査・研究と資料
展示と展示法
の保存/保存科学の研究
安第 7巻展示と展示法
v
〈学芸員と学芸活m動
展示概論/展示の構成と実
施計画/展示室の管理と運
営/館種別博物館における
-R
第 9巻博物館の設置と
運営
*第叩巻参考資料集
w
v
V動 -R
第 8巻博物館教育と情
の収集〈学芸員と学芸I活
報普及〈学芸員と学芸活動
博物館における調査と研究
/博物館資料とは
-R
第 6巻資料の整理と保
HV
管〈学芸員と学芸活
動
収集目的と保存目的/資料
*7
縄文土器H*@縄文人の精神文化
間縄文時代研究史
縄文土器I*8社会・文化
生業
律令時代の衣服規定・.
.
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.・・・・・武田佐知子
加藤晋平・小林達雄藤本強編全叩巻
鍵谷明子
儀礼と装身 ::::::::::::::::::-ji---:
石野博信
v:::::::::::::::
〈連載講座〉古墳時代史
第
4
号
第
85/ 各 3000 円
*印既刊
縄文人とその環境*@続縄文・南島文化
道具と技術
5~3~~
電話 (262)32311振替東京 3 ・ 1685
山 閣
国間見2-6-9 雄
昭和 57 年度全日本博物館学会役員 一 覧( )J債不同)
A
z
;
;
;
長
総務委員
樋口
清之(国学院大学栃木短期大学学長)
。加藤右次(国学院大学) ， 下津谷達男(野田市郷土開吻館) ，関忠夫(武蔵野美術大
学) ，丸子豆(立正大学) ， 柴田
編集委員
敏隆(山階鳥類研究所)
。新井重三(埼玉大学) ，岩崎友吉(東京国立文化財研究所名誉研究員) ，広瀬鎮(日
本モンキーセンター) ，後藤
和民(千葉市教育委員会文化課) ，街樟忠夫(国立民族学
博物館)
行事委員
。吉村典夫(東京農業大学) ，佐々木朝登(丹青社) ，遠藤悟朗(埼玉県立 ζ ども動物自然
事事
監幹
公園) ，鶴田総一郎(法政大学)
松本昭(昭和女子大学) ，矢島稔(上野水族館)
金山喜郎(国学院大学)
編集後記
大変遅れましたが，第 8 巻の第 1 号と第 2 号を合併して通巻第 1 0 号をお送りします . 今回は長丈のものが多く ，
ついに ιo 頁ほどの大部になりました.本会発足以来，季刊として年 4 回の発行をめざしてきましたが ，乙 れまで
のととろ，年比平均 1~2 号発行するのがやっとという現状です .
最近，とくに原稿の乱雑なものや挿図や挿表のコピーが不明瞭なものが目立ち，割付けや値字 K 甚だ困難をきた
し，それが印刷や発行を遅らせている大きな原因ともなっていることは確かです . ζ のままだと，編集を担当する
者も印刷を引受ける者もいなくなり，結局，会の活動の発展を阻害する結果になりかねません .
長文のものや，挿図や挿表のやたらと多いものも目立ちますが，それぞ読ù'者や，編集や印刷をする者の苦労も
十分に配慮して，ていねいな原稿や作図 ・ 作表をぜひともお願いしておきたい .
ζ とに最近 ， 寄稿するメンパーが固定し ， その内容がやや片寄ってきたきらいがありますが，それは決して編集
委員会の意図するものではありません .ζ の機関誌を，より多くの研究者や学芸員の交流の場として共有するため
IC も，広い視野をもって，さまざまな分野からの自由閥達な寄稿を求めて止みません .
編集委員会
博物館学雑誌第 8 巻第 1 号・第 2 号合併号
昭和国年 3 月 25 日印刷
昭和 58 年 3 月 31 日発行
編集兼発行者
全日本博物館学会
東京都渋谷区東 4 ー 10
- 28
国学院大学博物館学研究室内
電話
03(409 )0 111 内線 331
J. M1s .S田 . Ja戸m.
Vol
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.2
. Marm31 . 1983 , AcademicPr
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THE JOURNAL OF
THE MUSEOLOGICAL SOCIETY
OF JAPAN
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2
Articles and Reports
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f Museum Education i
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15page
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Akira OITA .
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. 16~ 25page
A Study o
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Kenji INOUE .
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. 26~29page
Classification f
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Tuneo YOSlMURA …...... 30~ 4Opage
The Probl
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f Museums a
t School
一← by
t
h
e m 巴 dium o
f KokugaJ王uin High School
ー
Yoshihiko SENGE
....…・.
41~ 59page
March 1983
THE MUSEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN

企画競争入札に関する情報の取り扱いについて

CPO-JP会報 29号

バ レ ン タ イ ン の 夜

アルマトゥイ

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