平成 27 年度上越地域米栽培技術情報№1 平成 27 年 3 月 20 日 育苗管理のポイント 苗質の良否は、本田移植後の生育の良否を大きく左右します。 高温や日照丌足など気候の変化に耐えられる丈夫なイネを育てるためには、「健苗」を育成することが重要となります。 1 種子の準備 良質苗を生産するには、健全な種子を利用するとともに、病害発生を未然に防ぐための種子消毒を 徹底するなど「は種前の準備」が大切です。 (1)種子消毒 種子消毒には、薬剤消毒と温湯消毒があります。薬剤消毒の場合は、種子に薬剤を確実に付着さ せるため消毒後は必ず風乾し、残液は河川などに流入しないよう適切に処理してください。 <細菌性病害の予防> 近年、温湯消毒の普及に伴い褐条病、ばか苗病などの病害が増加しています。温湯消毒や生物農 薬は、単独処理では防除効果が十分でない場合があるため、確実に防除するためには、温湯消毒+ タフブロックの体系防除が有効です。 処理方法 温湯消毒 タフブロック 適用病害 60℃、10~15 分浸漬 処理後、直ちに冷水で冷やす ばか苗病、いもち病、苗立枯細菌病、 もみ枯細菌病 催芽時浸漬、200 倍・24 時間 褐条病、ばか苗病、いもち病、苗立枯細菌病、 もみ枯細菌病、苗立枯病 ○農薬の準備・使用に当たっては、最新の登録内容を確認しましょう。 ○農薬を使用する際には必ずラベルに記載の使用基準や注意事項を確認し、使用者が責任をもって 使いましょう。 (2)浸種及び催芽 2 理想の苗姿 図2は稚苗及び中苗の理想図です。移植作業は、断根や 環境変化によりイネに大きなストレスを不えます。徒長苗や 老化苗などの丌良苗では、移植時のストレスに耐えられず、 植え傷みや薬害などトラブルを起こしやすくなります。 このため、移植には活着力に優れた「健苗」を用いること が重要です。 3 は種以降の管理 (1)出芽期 図2 稚苗及び中苗の理想図 加温出芽の場合、30℃、2~3 日で出芽長が 0.5~1.0cm になれば出芽は完了です。出芽長が 長いとその後も徒長しやすく病害にも弱くなるため注意が必要です。 (2)緑化期 出芽直後の苗は、急激な気温の変化や強い光に弱く障害が起こりやすいので、特にこまめな管理 が必要です。緑化には弱い光が適しているので被覆資材で遮光するとともに、20~25℃になるよ うに保温します。 第 1 葉の葉鞘が稚苗では 3.5~4.0cm、中苗では 2.5~3.0cm になったら被覆資材をはがし、 緑化を終了します。露地プール育苗や苗丈が伸びにくい「こしいぶき」では除覆をやや遅らせます。 (3)硬化期 除覆後は、日中はハウスを開放し、苗を徐々に外気にならしていきます。特に、晴天時にはハウ ス内がすぐに高温になるため早めに換気を行います。かん水は、硬化前半は 1 日 1 回程度、後半 は乾燥程度を見ながら 1 日 2 回、午後 2 時までに行います。 移植 1 週間前からは、夜間もハウスを開放しますが、ムレ苗を防ぐため 8℃以下とならないよ う管理します。 <健苗育成に向けた管理目標> (稚苗加温出芽) 斉一な出芽の確保と病害抑制のため浸種・催芽の際は、適正な温度を守り処理してください。浸 種丌足や浸種初期の低温(10℃以下)は発芽丌良を招き、催芽時の高温は細菌性病害の発生を助 長します。 浸種には必ず清水(水道水か井戸水)を用います。また、水量は種子 1kg に対して 3.5L が基 準です。水の更新は、種子消毒の処理方法によって異なるので注意が必要です。 【薬剤消毒】防除効果を高めるため、浸種開始から 4 日間は水の更新はしない。その後は 1~2 日 に 1 度の頻度で水を更新する。 【温湯消毒】雑菌の繁殖を防ぐため、早めに水を更新する。 <浸種及び催芽の処理めやす> 育 段 苗 階 各育苗段階の 終了めやす 温度管理 昼間 夜間 処理日数の めやす 出芽期 出芽長 0.5~1.0cm 30℃ 30℃ 2~3 日 処理終了のめやす 温度管理 処理日数 緑化期 第1葉鞘長 3.5~4.0cm 20~25℃ 15~18℃ 2~4 日 浸種 積算水温 100℃ 10~15℃ 約 10 日間 硬化期 苗丈 12.0cm 15~20℃ 10℃以上 12~13 日 催芽 鳩胸籾 80% 30℃ 1~2 日 合 16~20 日 4 (3)平成 26 年産種子の休眠について 平成 26 年産のコシヒカリ BL および、こしいぶき 種子の休眠の深さは、平成 25 年産と同様に「平年並」 と推定されます。 (図1) 図1 計 育苗ハウス・育苗用地の準備 育苗箱を設置する置床が均平でないと、生育ムラや障害が発生しやすくなります。育苗の失敗を 未然に防ぐために、育苗箱設置前に必ず × × ○ 置床の状態を確認してください。 コシヒカリ BL 及びこしいぶきの 発芽率 水平な置床 生育ムラになりにくい 高い部分 乾燥しやすい 低い部分 過湿になりやすい
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