「環境経営」道場

その 一 環境経営 への 問題提起
楽 わってしまった。この5月5日,大阪
しいはずの 連休 が ,一瞬 で 大悲劇 に 変
の 遊戯施設 の 管轄 は 旧建設省系 の 住宅局 で
あ り ,建築基準法 の 規制 を 受 け る の で あ る 。
1959年 に 改正 された 同法 では , メリーゴーラ
府吹田市 のエキスポランドでジェットコース
ターの 車軸 が 折 れて 脱線,1人 が 死亡 し 19人
ウンドなどの 遊戯施設 は 「工作物」 として 扱 わ
が 重軽傷 を 負 うという 大事故 が 発生 した 。事
れ ,原則 と し て 年 1 回 の 定期検査 の 実施 と ,
故 の 直接原因 は , ジェットコースターの 車軸
地元自治体 へ の 報告 が 義務 づ け ら れ て い る 。
の 破断・落下 で ,破断 は 金属疲労 であるとい
しかし 事故 が 起 きても ,航空・鉄道事故 のよ
う。
うな ,専門家 による 事故調査委員会 などは 持
●営業優先,安全軽視の経営
てないのだ 。専門家 のいない 自治体 は ,運営
その 後 の 調査 でエキスポランドは ,同施設
の 運用 を 開始 した 1992年 から 15年間,一度 も
会社 の 提出 する 点検報告書 を 受 け ,書類上 の
車軸 を 交換 していなかったことが 明 らかとな
と い う 。 こ れ で は ,自治体間 の 事故情報 の
の 法定定期検査 で 目視 チェッ
クをしただけで ,探傷検査 を
せずに
「問題 なし 」 と 吹田市 に
報告 し て い た と い う 。 ま た ,
日常点検 の 中 に 車軸 の 点検 は
入 っていなかった 。安全軽視
のずさんな 管理 の 結果 この 大
事故 は 起 きたのである 。
日本建築設備・昇降機 セ
ン タ ー に よ る と, ジ ェ ッ ト
コ ー ス タ ー な ど の 遊戯施設
で , こ の 30年間 に 132件 の 事
共有化 も ,安全意識・安全管理 の 向上 も 望 め
藤森敬三の
とが 判明 した 。同社 は 年1回
「環境経営」道場
の 検査 を 一度 もしていないこ
第�回
ジェットコースター事故の教訓
り , その 上,園内 のすべての 遊具 で 金属疲労
不備 の 有無 を 確認 するだけでせいいっぱいだ
な い 。時速100㎞近 い ス ピ ー
連
載
ドで 滑降 する 最新 のジェット
コースターを ,滑 り 台 と 同 じ
法律 で 扱 っ て よ い は ず は な
い。
●使用開始から劣化は始まる
さて,コースター 製造会社
の 責任 はないのだろうか。施
設 を 設計・製造 し た 会社 は,
その 施設 の 弱点 をもっともよ
く知 っているはずである「
。JIS
に 記載 されている 」
とか
「点検
の要望を通知した」
だけでは不
十分である。
稼動前,
日常点検,
故 が(内 ジェットコースター 事故 は 45件)
発生
定期点検 マニュアルの 提供と教育,稼動後 の
し ,死者26名,負傷者255名 を 出 しているが ,
点検・保守 の 強 い 指導 が 義務 である。売りっ
なぜか 公表 されていない 。今回 の 事故 を 受 け
ぱなしでは社会的責任を果たしていない。
国土交通省 は 全国 の 遊戯施設 の 緊急点検 を 行
い , そ の 結果, コ ー ス タ ー な ど 306基 の う ち
7基 で 安全上 の 問題 を 発見,119基 で JIS が 定
どんな 施設・機械 でも ,使用 を 始 めた 時 か
める 1年以内 の 探傷試験 をしておらず , この
施設 の 提供者,運営業者,行政 の す べ て が ,
うち 72基 は 過去 に 一度 も 探傷試験 をしていな
施設 の 進化 の 実態 を 無視 した 安全軽視・人命
かったことが 判明 した 。遊戯施設業界 は , な
軽視 の 行為 を し て い た 人災 で あ る と い え る 。
んという 安全軽視 の 恐 ろしい 業界 なのだろう
人 の 尊 い 命 を 守 るために , それぞれの 垣根 を
か。
越 えて ,社会的責任 をまっとうすべきである 。
●ジェットコースターは建築基準法で規制
日本 の 法律 では , ジェットコースターなど
Vol.43 No.8(2007)
ら 劣化 が 始 まることを 肝 に 銘 じ ,保守 をすべ
き で あ る 。本事故 は ,法規制 が ど う で あ れ ,
(藤森環境経営研究所代表,元NEC環境 エ ン
ジニアリング 社長)
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