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ウエブマガジン Stereonet Air Force Two レビュー (2015/03/17)
By Alistair McKeough
Air Force Two(AF2) はTechDASのフラッグシップ機 Air Force One(AF1)の弟分である。AF1 は2012にデビュー
したと同時にライバルを軒並みなぎ倒し、世界一のターンテーブルはどれかという議論には必ず登場して見せ、その
確固とした地位を築いた。
この AF2 もまたセンセーションを巻き起こしている。なぜならこの弟分は兄貴分の AF1 を AF1 たらしめている特徴
にできる限り近づけてあるからだ。AF2 は AF1 を簡略化した機種ではなく、これはこれで素晴らしいターンテーブル
だ。実際、ラック上で兄の AF1 より設置面積が大きくなっている。
TechDAS は Stella Inc. の自社ブランドだ。Stella は日本の本格的ハイファイ機器ディストリビューターだ。TechDAS Air Force ターンテーブルは発売から日が浅いが、輝かしい日本のターンテーブル製造の歴史の賜物だ。AF1 はマイク
ロ精機の技術部長だった西川英章氏によって設計された。彼の設計指針は唯一点、適度な大きさで最高のターンテー
ブルを作ることだけだったと伝えられている。
その目標達成のため、最高のバキュームシステム、エアサスペンション、エアベアリング、エアダンピング、エアサ
クションが必要とされた。これら技術は西川氏がマイクロ精機にいた時代には十分進化していないと感じられた。つ
まり Air Force ターンテーブルはより進化したアプローチが取られているが、同時にマイクロ精機での数十年の知識や
開発の恩恵を受けている。
AF2 を欲しいと思っている人には吉報だが、AF2 には AF1 のテクノロジーが申し訳程度ではなく、文字通り溢れんば
かりに惜しみなくつぎ込まれている。AF1
ではエアだけで行っていた脚部のダンピングは、ハイブリッドサスペン
ションがシャーシの4つの脚部で採用され、オイルと空気圧でスプリングをダンピングしている。しかしその他の
AF1 を特別な存在にしていた主要な要素はすべて兼ね備えている。エアベアリングもエアバキュームも AF1 そのまま
である。
バキューム吸着ターンテーブルは目新しくない。マイクロ精機だけでなく、SOTA や Basis などのブランドがこの方式
でいろいろなモデルを作っている。これ自体驚くべき点はない、スタイラスがトラックするために平らな面を作った
ほうがいいのは明らかだ。
しかしこのバキュームはただレコードを平らにするだけではない。振動を減衰するのだ。その結果ディテールの高解
像度、ノイズフロアの低減、より安定して位相のそろったサウンドステージ、よりパワフルな低音域などの音響上の
利点が実現する。
AF2は 振動減衰を徹底的に行っている。AF2 では再生中にレコード面を軽くたたいてもトラッキングエラーが起こら
ない。他のものは忘れたほうがいい。TechDAS が採用しているバキュームシステムは他のどんなターンテーブルメー
カーも達成したことがないレベルの振動減衰を実現している。
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小売価格 42,000 ドルのこの AF2 は涙が出そうなほど高価な最高級のターンテーブルだ。しかし AF1 の約半額で、
AF1 レベルのテクノロジーとパフォーマンスが楽しめるのだ。
TechDASはこのコスト削減を賢い方法で実現した。この価格を実現するためにどこで妥協したかというと、主に
シャーシ製造を削り出しではなく鋳造にしたことによるコスト減だ。素晴らしいことに、これは音の忠実性を全く損
なっていない。仕上げは個人的な好みの問題だが、私はマットな鋳造メタルが好みだ。これは削り出しシャーシほど
高級 (premium) ではないが、それでも素晴らしい外観だ。おまけにルクルーゼのキャセロール鍋並みに丈夫だ。
セットアップした重量は47kg、設置面積は幅684mm×奥行454㎜×高195。小さいラックを使っている人は要注意
だ!しかもパワーサプライとバキュームのユニットが幅430mm×奥行232mm×高150mm、重量は10kgの別筐体で
ある。このユニットはターンテーブルから離しておくことができるので、私はパワーコンディショナーと一緒に見え
ないところに置いた。
モーターで AF1 に使われているのと同じ 4㎜ 研磨ポリウレタンベルトを駆動し、オプティカルマイクロプロセッサー
制御システムを使ってスピードを管理している。ベルトは非伸縮性である。糸ドライブの信奉者たちもこれなら喜ん
で納得すると思う。最初のセットアップでは AF2 を Tension Cal モードにしておき、ベルトテンションを手動で調
節する。一方コンピューターで 33 と 45 回転両方のスピードを測定する。私のKAB SpeedStrobe で測定したところ
AF2 は完璧に正確で、4か月さんざん使った今でもまだ正確だ。
AF2 では従来のベアリングを全く使っていない。10kg のアルミプラッターは研磨されたガラス面の上に設置される。
ターンテーブルの電源が入っていない時、プラッターはガラス面上に乗っていて回転は不可能だ。電源を入れると、
エアポンプがプラッターをベース面から正確に 0.03 mm 浮上させて回転を可能にする。これは全て完璧に音を立てず
に行われる。
操作面はというとAF2は操作するのが楽しい。ブラシ仕上げアルミのフロントパネルには左に Stop 33 45 の
ボタン、右側に Suction とピッチコントロールボタンが配置されている。また2インチのモノクロ LCD ディスプレ
イもあり、回転スピードをリアルタイムで表示する。
レコードを置いて Suction ボタンを押せばレコードがプラッターに吸着する。相当歪んだ 180g の重量盤でも吸着が
可能だ。スピードを選ぶとプラッターが 33 または 45 rpmになるまで LCD ディスプレイに wait と表示される。2,
3秒後ディスプレイが lock と表示して確認されれば、これでもう針を落とせる。レコードを外すときは Suction ボ
タンをやさしく一度押せば静かにバキュームが停止しレコードをプラッターから離す。
4か月間散々使ったが、その間中毎回 33 と 45 のどちらでもほぼ即座にスピードをロックした。もう私はロックする
まで待たないで、セットした後はリスニングチェアに頭を持たせかけるだけである。毎回同じように私がチェアに座
るまでに定速でロックされている。
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トーンアームについて一言。私は AF2 に 2種類を使ってみた。トーンアームにこれほど負荷をかけないレコードプ
レーヤーを私は見たことがない。どの録音でもトーンアームは上下運動が全く見られなかった。AF2 はレコードを非
常にフラットに再生し、振動もないためトーンアームへの負担は大幅に軽減されている。
試聴には Lyra Atlas を Thales Simplicity II または Graham Phantom II Supreme に搭載して使用した。Phono は
Dartzeel NHB-18NS Preamp の onboard stageで処理し、Dartzeel NHB-108 power ampに送り、Avantgrade Trioス
ピーカーを駆動した。スピーカーケーブルは Jorma Statement, interconnects は Evolution BNC Links、Phono cable
は Tara Labs Zeroを使用した。
リスニング
4か月間、私は実にさまざまなジャンルの音楽を聴いたが、その全てに AF2 は非の打ちどころなく余裕を持って再生
してみせた。
それではどんな音なのか?これを書くため私はオーディオファイルの常套句を使うまいと必死になっている。
まず、AF2 は静寂だ。本当に静寂だ。操作中メカニカルなノイズが全くないのだ。フォノカートリッジからの雑音も
全くない。曲の間の静寂は完璧だ。私のレコードの大半はノイズフロアが私の部屋のノイズフロアより低かった。以
前は少しヒス音や外側の導入溝でパチパチいう雑音を我慢しなければならなかったレコードも全くノイズなく再生す
る。
月並みだが、もちろんオーディオ再生ではできる限り低いノイズフロアが基本的に重要だ。それが確保されてはじめ
てその他のオーディオ体験が限りなく味わえるようになる。Air Force ターンテーブルの登場で、アナログ再生でノイ
ズフロアがどれほど静寂になりうるかという再評価が必要になっている。
ノイズフロアが私の部屋より低い多くのレコードで、AF2 はこの点でデジタル並みに優れている。
AF2 のもう1つの際立った特徴はそのパワーと圧倒的なダイナミクスとドライブだ。この点では Yamaha GT-2000 の
ように大きな重量や存在感を与えるダイレクトドライブの名品の流れをくんでいるかもしれない。しかし同時に AF2
には仰々しさや押しつけがましさがない。堂々とした威容にもかかわらず、優美である。AF2 は音楽をパワーと安心
感を持って再生する。波に乗っているサーファーが深く青い海の大いなる自然なパワーを感じるように、AF2 のリス
ナーは緊張したり息がつまるような感覚に襲われることなく、ただ音楽が本来の姿で提供されているという感覚を楽
しむことができる。
ほとんどあるかなきかの低いノイズフロアの上に作られた音場とパワフルなプレゼンテーションで AF2 は豊かな低音
域を持つ。豊潤な音色に彩られている。しかしそう言うとこのターンテーブルが少し重苦しく歯切れが悪い印象を与
えてしまうかもしれないが、それは全く当たらない。そうではなく低音域の土台の上に中高音域全てで素晴らしく再
生される。
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その結果、驚異的にバランスに優れ、素晴らしく多様性のあるターンテーブルとなっている。私は AF2 で、ロック、
ポップス、エレクトロニカ、オーケストラ、室内楽、ボーカル、メタル、フォーク、ブルーグラス、ジャズ、ブルー
ス、ソウル等をかけたがその全てをフローレスに再生した。ヒップホップはかけなかった。それは拷問のようなもの
だと思ったからだ。しかしそれですら、おそらくこのターンテーブルなら完璧に再生したことだろう。
最も衝撃的なのはいかに AF2 がオーガニックで加工されていない音を持つかということだ。ベテランのミュージシャ
ンでもある、ある音楽教師は聞いたとたん私に向かってこう言った、 本当にナチュラルな音だね 。これは AF2 を的
確に表現している言葉だ。AF2 はメカニカル構造の気配すら感じさせることなく音楽を再生する。
一流のデジタルシステムは一般的にあまりにも出来すぎていてナチュラルには成りきれない。一方アナログでは、
ターンテーブルが音楽を引き出すためのメカニカルな処理の感覚がどうしても拭い去れない。AF2 は何らかの方法で
これを回避している。まるでターンテーブルが存在しないようだ。その結果、私が聞いた中で抜群に最もリラックス
させてくれるソース機器だ。全てがそこにある、頂点を極めているが、それでいて高解像ソースにありがちな強引さ
のかけらもない。
AF2 のおかげでオーディオファイルが好みに合ったソースを見つけるのにもはや妥協する必要がないターンテーブル
が実現した。全てを兼ね備えているのだ。低音域も中音域も録音に忠実だ。AF2 はクリスプかつクリーンでしかも温
かみのある豊かな音を提供することができる。高音はオーガニックであくまでなめらかである。ディケイはナチュラ
ルで伸びがよい。エレガントであると同時に圧倒的な力強さもある。ワウフラッターは事実上除去されている。
Ferris Beuller(訳注:映画 フェリスはある朝突然に の主人公)の名言にある通り、
手段があるなら、やるべきだと思うよ
TechDAS Air Force Twoの販売価格は $42,000 (トーンアームを除く)
TechDASオーストラリアディストリビュータ
Pure Music Group http://puremusicgroup.com/cart/ stereonet review