HTLV−1抗体スクリーニングの確認法

平成2年度厚生省成人丁細胞白血病(ATL)
の母子感染防止に関する研究
HTLV−1抗体スクリーニングの確認法
(献血者の抗ATL抗体スクリーニング陽性者の検討)
松本千恵子*,Jo{mne.P.Spadgro**,光永滋樹*∼
小口 隆*,三富斉忠*,島田 徹*,渡部準之助*,
十字猛夫*,西岡久壽彌*,徳永栄一*,船本剛朗*
要約:献血された血液のHTLV一一1抗体のスクリーニングはPA法で行われているが、抗体価の
低い検体については偽陽性が疑われている。そこでHTLV・一1を対象とした2重PCR法、お
よびピオヂンラベルプライマーを用いたPCR法によリプロウイルスの検出を行ったところ、IF
法の結果と一致した・従ってHTLV−1抗体スクリーニングの確認法としてI F法が適している
と考えられた。またHTLV−I Iについてこの二法のPCRを行ったところ、全く増幅は認めら
れなっかた。
見出し語:I F法、PCR法、HTLV−I I
研究方法3<PCR法>2重PCR法はHTL
ビオチンラベルプライマーを用いたPCR法は、
V−1のpX部位を対象として単核球より抽出
ピオチンラベルプライマー(SK432/HT
したDNAをテンプレートとして30回増幅し、
LV−1特異的、SK111/HTLV−I I
さらにnested primerを用いて二段回目を30
特異的)を用いて30回増幅した(2)。増幅
回増幅した。増幅産物はポリアクリルアミドゲ
産物はプローブ(SKl l2ct5/HLTV−
ル電気泳動後エチジウムブロマイド染色で検出
1特異的、S Kl88/HTLV−I I特異的)
した。この方法はHTLV−1プロウイルス1
をコートしたマイクロタイタープレートにハイ
ゲノムを検出でき、プロウイルス量の多少に応
ブリダイズした後、アピジン・バーオキシダー
移て3、2、1本のバンドが見られる(1)。
ゼを結合させその酵素活性にて検出した。
$日本赤十字社中央血液センター (The Japahese.Red Cross Central Blood Center)
鵠飛㏄heDi砥nosticSyste皿es,Inc.
一44一
<HTLV−1抗体の検出>I F法はHTLV
参考文献
−1感染細胞としてMT−2を、非感染細胞と
1)Matsumoto,C.,etaユ.ゆetectionofHu−
してMo l t o−4を133の割合で混合した
man T・Cell Leuke皿ia Virus Type I Pro−
細胞標本を対象とした。PA法は富士レビオの
virus in an Infected Cell Line and in
セロディアーATLAを用いて行った。
Periphera1 卜lononuclear Cells of Blood
Donors by the 興ested Double Poly皿erase
結果:PA法、工F法と2重PCR法の比較は
Cbain reaction 再ethod: (}o聡parisoB wiしh
256検体について行い、3者とも陰性なもの
琵TLV−1触tibodyTests. J.Virol.64,
101、PA(+〉/IF(一)/PCR(一)
5290, 1990
98検体、PA(+)/I F(千)/PCR
2)Spadoro,,1.,et al. Detection and De−
(÷)は57検体で、PA法陰性でI F法また
fferentation of HTLV−I and II in C王i・
はPCR法で陽性の検体はなかった。またI F
nicalSpeci皿ensusingPCRandaRapid,
法鶴性とPCR法陽性の検体は全て同一検体で
non一駐adioactive 妊icrotiter Plate
あった。ビオチンラベルプライマーを用いたP
ムssay. ムbstracts of Human Reしroviro−
CR法はPA陽性の47検体について行い、こ
logy 皿eeしiag, 1991
のうちI F(一)/PCR(一)は12検体で
3)Hjeile,B.,etal.TransmissionofHT
他は全てI F(+)/PCR(+)となり完全
LV−II via Blood Transfusion。 Vox Sang
に一致した。またこの47検体は、HTLV−
59, 119, 1990
I I特異的プライマーSK l l1およびプロ}
ブSK188を屠いた系では全て陰性であった。
さらにHTLV−II5検体(SKlll/S
Kl88のPCRで陽怪)にっいて2重PCR
を行ったが、全て陰性であった。
考察3行った二種類のPCR法ともI F法の結
果と完全に一致したことより、抗体スクリーニ
ングの確認法としてI F法は現在のところ最も
適した方法と考えられる。
HTLV−I Iについては輸血による感染が
確認されており(3)、感染経路や病態の研究
においても1型とI I型を識別していくことは
重要と考えられる。
一45一
レ