プラズマの応用(1)- 光、電磁波

「プラズマ工学」講義資料 2015年度版
熊本大学工学部情報電気電子工学科
勝木 淳
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12.プラズマの応用(1)
電磁波・光源
12.1 照明
12.2 レーザー
12.3 短波長光源
12.4 フラットパネルディスプレイ 12.5 電磁波現象の利用
「プラズマ工学」講義資料 2015年度版
熊本大学工学部情報電気電子工学科
勝木 淳
12.1 照明
◆ 白熱電球
・ 高融点材料をジュール加熱してその熱放射を利用。
・ 電気入力の大部分は熱として失われる。 (発光効率が低い)
◆ プラズマを利用したランプ
高輝度放電ランプ(HIDランプ)
グロー放電やアーク放電の陽光柱からの可視
光を直接利用した光源。
高圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタル
ハライド(ハロゲン)ランプ、キセノンランプ
蛍光ランプ
プラズマから放射される紫外線を蛍光物質を
介して可視光に効率よく変換する光源。
◆ 水銀の放電特性
・ 他の金属に比べて蒸気圧が低い。(10-3 Torr)
・ 電離電圧が高い。(10.44 eV)
・ 励起エネルギー 5~9 eV の準位が多く存在。
電離してイオンになってし
まうと電界ドリフトして空間
からいなくなる?
→ 条件によって紫外から可視にわたって幅広い波長の光を放射。
水銀: ランプにとって極めて大きな役割を担っている。
低気圧グロー放電
非熱平衡プラズマ (Te ≫ Tg)
発光量 小、フォトンエネルギー 大
→ 紫外領域の光 → 蛍光ランプ
高圧アーク放電
熱平衡プラズマ (Te 〜 Tg)
水銀からの可視領域の高輝度発光
→ HIDランプ
水銀放電の電子温度とガス温度
(放電電流一定)
◆ 蛍光ランプ
水銀の低気圧グロー放電:
・ 管壁での再結合による粒子損失が大。
→ 密度の低下 → 電子温度大 → 紫外線(185 nm、253.7 nm)放射
・ 原子密度の低下 → 再吸収が少ない
→ 効率よく紫外線を発生
・ 紫外線を管壁に塗布した蛍光物質に
あて可視光に変換。
蛍光ランプの構造
・ 明るさを増すには...
① 管を長くして陽光柱部分を長くする。 ② 管径を小さくして陽光柱の電界を大きくし、陽光柱に注入される電力
を大きくする。
③ 放電電流を大きくし、励起に関与する電子数を増やす。 ◆ 高輝度放電ランプ(HIDランプ)
水銀高圧アーク放電:
・ 陽光柱は熱平衡状態 温度10,000 K
・ 励起準位間の遷移による可視領域の発
光が多い。
・ 水銀の蒸気圧を高くする為、管壁を高温
(600℃)に維持。 → 石英ガラス利用
・ 赤色が不足(演色性が悪い)。
→ 蛍光物質と併用。(蛍光水銀ランプ)
→ 水銀に赤色を発する成分(Sc, Tl, Sn)
を添加するためハロゲン化金属を容器内
に封入。 メタルハライド(ハロゲン)ランプ 高圧水銀ランプの構造
ナトリウム高圧アーク放電:
・ 高い蒸気圧。低い電離エネルギー。多くの可視帯発光バンド。
・ 発光効率が良い。
・ ナトリウムD線(589.0 nm、589.6 nm、オレンジ)。霧中の透過性が良い。
12.2 レーザー
◆ レーザーの特徴
レーザー (LASER、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)
① 単一波長の光のみが発振される。(単色性)
② 時間的・空間的に位相が揃って伝搬する。(可干渉性、コヒーレント)
③ 指向性が良い。ビームがほとんど広がらない。
④ 高パワー密度ビームである。 → 収束によりパワー密度を増大可能。
◆ レーザー発振の条件
媒質中での光の減衰(吸収係数α)
I = I0 exp(−αx)
光増幅のためには α<0
鏡反射を含めて光強度が増大する条件、
すなわち、発振条件は、
R1R2 exp(−αL) ≥ 1
Bhυ
α
=
−
(
n
−
n
)
上式と (
B は遷移確率)
2
1
c
から、
c
n2 − n1 =
(1 − R1R2 )
BhυL
レーザー発振するための
反転分布の閾値
光共振器と光の増幅
E2
n2
入射電磁波
hυ 21 = E2 − E1
n1
E1
共鳴吸収
◆ He-Neレーザー
He-Neレーザー模式図
エネルギー準位図
Ne 2s、2pの寿命(ns)
He-Ne レーザーの発振波長
0.543 µm
グリーン
0.594 µm
イエロー
0.612 µm
オレンジ
0.6328 µm
赤
1.15 µm
(赤外)
1.52 µm
(赤外)
3.39 µm
(赤外)
中型He-Neレーザー 内部ミラー型レーザー管を金属円筒ケース
収容した発振器と電源とで構成されます。出
力1~12mW程度。(日本電気(株)) He-Neレーザーの光
(Wikipedia引用)
◆ レーザーの応用
・ エネルギー開発応用
レーザー同位体分離、群分離、消滅処理、レーザー核融合、レーザー誘雷、レーザー加速器
・ レーザープロセッシング
レーザーアブレーション、レーザーCVD、表面改質、レーザーアニール、除染、微細加工、
リソグラフィ、切断、溶接、分子マニピュレーション
・ レーザー計測
光検出、干渉、物質分析、センサ、距離・位置・方向の測定、流れの測定、環境計測、
宇宙計測、非破壊検査、レーザー顕微鏡、レーザー冷却
・ 光通信・情報処理
宇宙通信、光通信素子、光集積回路、光ディスク、レーザープリンタ、ホログラム、。。。
・ レーザーバイオ・医学応用
レーザーメスを用いた様々な治療、光化学治療、光CT、
・ レーザー化学
光分子作用、蛍光、光合成、感光、視覚、光機能性高分子、光触媒、マイクロ化学、
クラスター化学
電磁波(光)の放射
・ バンド間遷移放射
・ 再結合放射
プラズマからの放射
・ 制動放射
エネルギー準位[eV]
12.3 短波長光源
120
100
80
4f
5p
外殻軌道
・ シンクロトロン放射
内殻電子軌道
0
高エネルギー(短波長)フォトン放射
多価イオンのエネルギー準位
(X線,軟X線,極端紫外線など)
⇒ 原子番号の大きい原子の内殻電子
を弾き出す必要あり.(多価イオンを
生成する)
高速電子
hv
⇒ 高速電子を高密度で生成する.
⇒ 高エネルギー密度(高温・高密度)
プラズマ
Xe10+
多価イオン
◆ 高温・高密度プラズマの生成法
Jz
hυ
J×B
Bθ
高エネルギー密度プラズマ
環状低密度プラズマ
放電生成プラズマ(Z-pinch方式)
大強度パルスレーザー
Nd:YAG
CO2
発光材料液滴
高エネルギー密度
プラズマ
レーザー生成プラズマ
hυ
例1: 半導体リソグラフィーのためのEUV光源
膜形成工程を終えた
ウェーハ
レジスト塗布
重ね合わせ
高度情報通信機器
露光(リソグラフィー)
中身は…
集積回路の集合体
レジスト現像
下地エッチング
レジスト剥離
次の工程へ
集積回路の中身は..
集積回路 製造工程
◆ リソグラフィー
高輝度光
水銀ランプ(g線、i線)
エキシマレーザー(KrF、ArF)
マスク
(回路パターン)
レンズ
レジスト
ウェハー
解像度(最小加工寸法) R
k1λ
R=
NA
k1:プロセスパラメーター
λ:露光波長
NA:光学系の開口率
半導体集積回路の微細化とリソグラフィー技術の進展
岡崎信次,応用物理, 75巻, 11号, 2006
◆ EUVリソグラフィーシステム
レクチル反射率:65%
-光源波長は13.5nm
-光学系は全て反射光学系
1064nm
ミラー枚数:7枚/8枚
レーザ発振効率:
25%
EUV発光効率:1%
ミラー枚数:6枚
集光鏡反射率:60%
窓:2枚×50%
利用可能立体角:π
レジスト感度:5mJ/cm2
※光源はLPP(Laser Produced Plasma)を例とした
実露光効率:50%
例2: 生体顕微鏡
軟X線領域には、炭素のk殻吸収端(4.4nm)と酸素のk殻吸収端(2.3nm)
が位置しており、この間の波長領域では炭素の軟X線吸収が酸素の軟X
線吸収を約一桁上回っている。この「水の窓」と呼ばれる波長領域の軟X
線を用いると、水を構成している酸素によるX線吸収の影響を抑えて、生
物試料をその主な構成元素である炭素の密度分布として画像化(イメージ
ング)することができる。
例2: 生体顕微鏡
12.4 フラットパネルディスプレイ
ディスプレイ
ブラウン管(CRT,
Cathode Ray Tube)
フラットパネルディスプレイ
液晶ディスプレイ(LCD, Liquid Crystal Display)
ブラウン管
プラズマディスプレイ (PDP, Plasma Display Panel)
電界放出ディスプレイ(FED, Field Emission
Display)
表面電子放出ディスプレイ(SED, Surfaceconduction Electron-emitter Display)
有機ELディスプレイ(OELD, Organic
Electroluminescence, Display)
フラットディスプレイパネル(FDP)
◆ プラズマディスプレイ
プラズマディスプレイパネル(PDP, Plasma Display Panel)は放電による発光
を利用した平面型表示素子。
電極を形成したガラス板と、電極および蛍光体付きの微小な溝を形成したガ
ラス板とを狭い間隔で対向させて希ガスを封入し、電極間で放電させて紫外
線を発生させ、蛍光体を光らせる。
AC型プラズマディスプレイパネルの構造
AC型PDPの放電セルの発光過程
◆ その他のディスプレイ
液晶
(LCD)
バックライト等により発せられた光を、液晶と
偏光フィルタの組み合わせによって、遮ったり
透過させたりして表示する。
有機EL
(OELD)
有機ELは有機物中に注入された電子と正孔
の再結合によって生じた励起子(エキシトン)
によって発光する現象である。
電界放出
(FED)
CRTと同様に、陰極部分から電子を真空
中に放出し、蛍光体へぶつけることで、発
光を得る。
表面電子放出
(SED)
FEDとは電子放出機構が異なり、トンネ
ル効果で電子を放出させる。
12.5 電磁波現象の応用
◆ プラズマ中の電磁波伝搬
電磁波は、無磁界の場合、プラズマ周波
数ωpe より高い周波数のみ伝搬できる。
低い周波数の電磁波はプラズマ表面で
反射される。
分散関係:
ω 2 = ωpe2 + c 2 k 2
2
ω
c ck
pe
= = 1−
屈折率: µ =
vp ω
ω
分散関係
◆ 電磁波伝搬現象の利用
・ 電離層: 地球上層にある気体が太陽からの放射によって電離されて形成。
地表に近いものから D層、E層、F層。
・ 電離層による電波の反射を利用した通信 → 短波通信
電離層の種類
電波の種類
電波
周波数帯
反射層
中波
0.3~3 MHz
E層
短波
3~30 MHz
F層
VHF、UHF
など
30 MHz <
反射されない