【いばらき代協配信ニュース 16号】 2015.10.26(月)9:15 配信 <今週の

【いばらき代協配信ニュース 16号】 2015.10.26(月)9:15 配信
<今週の名言>
一旦やろうと思い立ったことは気乗りがしないとか、気晴らしがしたいなどという口実で
延期するな。直ちに、たとえ見せかけなりとも、とりかかるべし。
トルストイ
(ロシアの詩人・小説家・劇作家)
<業界関連ニュース>
自賠責保険は、約 60 年で保険金額 100 倍になった!
それでも任意保険が必要な理由とは?
自動車、バイクを問わず、車両を所有すれば「自賠責保険」へ強制加入となる。所有者
が交通事故を起こしたときに、被害者に対して必ず保険金が支払われるようにするためだ。
現在の保険金額は、1956 年の発足当初と比べると、死亡時で 100 倍、傷害で 12 倍。社会全
体の収入や物価の上昇に合わせ、きちんと引き上げられている。では、なぜ「任意保険」
が存在するのか? その必要性を考えてみた。
子どもの自転車事故に使える!? 意外と知らない「自動車保険」の活用法
■自賠責保険の成り立ち
まずは自賠責保険の成り立ちから見ていこう。現在の自賠責保険は、1955 年に施行された
「自賠責損害保険法」が元となっている。この法律が交付された翌年の 1956 年より、自賠
責保険への強制加入が義務付けられた。その背景には、増える自動車の数と、それに伴う
交通事故の増加があった。
自賠責保険は、
「交通事故の被害者を救う」という弱者救済を目的に発足した。1956 年当
初は、
「死亡時 30 万円」
「傷害 10 万円」という保険金額であった。
■保険金額の改定と補償範囲の拡大
自賠責保険制度の発足後、高度経済成長期を迎え、社会全体が収入増、物価上昇となる。
それと足並みをそろえるように、幾度となく保険金額の改定が行われてきた。また、補償
範囲も拡大しており、1964 年からは後遺障害についても補償されることになった。
2015 年時点での自賠責保険の補償範囲と保険金額は、
「死亡時 3000 万円(最大)」
「傷害 120
万円(同)
」
「後遺障害 4000 万円(同)」となっている。
では、ここで、死亡事故を起こし、被害者がサラリーマンだった場合を想定してみよう。
サラリーマンの平均生涯賃金が 2 億円~3 億円と言われる昨今、被害者が稼ぐはずだった額
が算出されれば、死亡保険金 3000 万円では到底及ばないことになる。
■自賠責保険では補償されない損害もある
事故で発生する損害は、身体、生命に限らない。だが、自賠責保険の保険金は、被害者の
身体、生命に損害を与えた場合のみ支払われる。自分が加害者となり、死亡した場合に保
険金は一切支払われない。
また、相手の車、家屋、持ち物のほか、自分の財産も補償されることはない。このあたり
でも、
「人身傷害補償保険」
「対物賠償保険」
「車両保険」といった任意保険の必要性がわか
る。
昨今の事故では、賠償金の合計が 1 億円を超えるケースは決して珍しくない。つまり、自賠
責保険で支払われる金額を上回る備えを準備する必要があるということだ。相手と自分の
損害をきちんとカバーするため、任意保険は不可欠といえる。
(産経新聞 他紙引用)
○今週は、自動車保険の契約者から「健康保険が使用出来ない」と、病院から言われて困
っている旨の相談を受ける代理店の苦悩、
「交通事故に伴う健康保険」を考察します○
自動車保険を売上高の主として代理店を営んできた我々にとっては、交通事故の処理や対
応の良し悪しが自動車保険の売り上げに直結するという何とも複雑な仕事です。
今回のテーマは、役に立つと自画自賛するも、なかなか整理してみると大変な作業となり
ました。
さて、交通事故で負傷した時など、どんな保険に守られているのか、そして、その保険
がどのように対応してくれるのか?基本中の基本ですが考えてみたことはありますか?
我々は、一般的には交通事故で負傷した場合に、次のようにいくつもの保険に守られてい
ます。
1.
医療保険(国民健康保険・健康保険組合・協会けんぽ・各共済組合・後期高齢者医
療など)
2.
労動災害保険
3.
相手側の自賠責保険
4.
相手側の自動車保険
5.
自分や家族の人身傷害補償保険
6.
政府保障事業(加害者が自賠責に入っていない場合)国土交通省
7.
生命保険
8.
傷害保険(損保)
以上のような保険などに守られています。
もちろん誰でもが、これら全ての保険に守られているということではありませんが、多く
の人はかなりたくさんの保険で守られています。それゆえかえってその分複雑になってし
まっています。
交通事故について
ところで、相手がいる場合の交通事故において、一筋縄にいかないのが「交通事故の損害
賠償請求問題」です。
なぜ一筋縄にいかないのか・・・。
被害者側は、納得できるまで治療や十分な損害賠償を要求したいと考えます。一方の加害
者や相手側保険会社など保険金を支払う側は、なるべく過失割合を減らし支払いを少なく
したいと考えます。
そして治療をする病院や診療所は、交通事故治療は保険診療よりも自由診療で治療をする
のが正当であるという考えるところもあり、三者三様の考え方や利害関係が出てくるため
厄介な問題になりがちです。
交通事故は軽い傷害程度なら大半はトラブル無く、示談成立になる確率は高くなりますが、
見た目は治っていても痛みが継続する場合や後遺障害が残る場合、また過失割合などで、
被害者側と加害者側との隔たりもあり、すんなりと示談にならないケースも出てくるとい
う点だけは承知しておくべきです。
まずは、交通事故と健康保険の関係から見ていくことにします。
交通事故で健康保険を使う
「交通事故では健康保険は使えない」ということをよく耳にしますが、なんら問題なく健
康保険を使用して治療を受けることはできます。
ただし病院や整骨院や接骨院などの治療院によっては「使えません」「自由診療で」と受
付窓口で、拒否する所も有ります。またホームページにもハッキリと書いて断りをしてい
るところもあります。
少々、理不尽に思いますが、でもこれは法に違反しているわけではありません。
交通事故で健康保険を使う場合は、必ず保険者(国保・協会けんぽ・健康保険組合など)
へ届けをなるべく速やかに提出しなくてはいけません。これを第三者行為による届出とい
います。
第三者による行為によって傷害を受けたのですから医療保険者は、治療費を加害者側に請
求をします。この届出によって相手が特定でき請求することができるのです。
ではなぜ、病院によっては「健康保険は使えない」と伝えるのでしょうか?
病院・治療院側の理由
病院や診療所で健康保険は使えないという理由について、主に3つを取り上げてみました。
健康保険が使えないという理由の1
病院や診療所側の経営的視点から、自由診療にしている。
健康保険での診療報酬は1点につき10円と決まっていますが、自由診療の場合は1点あ
たり15円や20円というように値段は自由に決められます。
ただし、交通事故の治療においては日本医師会・日本損害保険協会・自動車保険料率算定
会の三者協議により、
「自賠責保険診療費算定基準」が取りかわされたので、保険診療に比
べ大幅な報酬設定にはしていません。この取り決めは、平成24年6月1日現在、全国4
6都道府県で導入され(ただし民間医療機関すべてがこの基準を導入しているわけではあ
りません)次のような内容になっています。
「自動車保険の診療費については、現行労災保険診療費算定基準に準拠し、薬剤等「モノ」
についてはその単価を12円とし、その他の技術料についてはこれに20%を加算した額
を上限とする」となっています。つまりは、保険治療よりも2割から約4割高ほどで設定
されているということです。
ここでいう「モノ」というのは、注射や投薬、麻酔の薬剤料、画像診断の薬剤料・フィル
ム代等になります。その他の技術料においては、初診料や入院基本料、手術料、入院時食
事療養費などが技術料になります。
ですので、繰り返しになりますが現状では保険診療に比べて2割から約4割高ほどで設定
されているということです。
健康保険が使えないという理由の2
症状が極めて軽い場合は保険治療でも問題ないが、そうでない場合には、保険治療では
限界があるいう理由からです。きちんと治してあげたいという心意気でやっている治療院
や質の高い治療提供を心がけている診療所では、おのずと自由診療が選択肢になるという
理由からです。
使えないという理由の3
本来の健康保険は、加入者から保険料を集めて病気やケガをしたときに、なるべく負担
なく治療が安心して受けられるための相互扶助を基本としているので、交通事故など第三
者が絡んだことでの傷病は、加害者に負担させるべきものである。そのため、事業所での
労働災害には労災保険が、加害者のある交通事故には自賠責保険が設定されているのです。
そうであるから自由診療が妥当である。ただし、交通事故で被害者の過失が100%、或
いはそれに近い場合や加害者が不詳、支払い能力がない場合には被害者救済のため、厚生
労働省は健康保険を使用してもよいと認めているが、こういうケースを拡大解釈してなん
でも健康保険を使うということは誤りである。というのが医療機関側の主な理由3つです。
「交通事故と健康保険使用問題」は様々なホームページ上で「健康保険が使えない、使わ
せないところは儲け主義の病院」という内容で書かれているものが多いのですが、中には、
儲け主義ということではなく、シッカリと治してあげたいということを重視しているとこ
ろもありますから、短絡的にそのように考えるのは誤りともいえます。
いずれにしても患者側として困るのは、「保険会社からは健康保険を使ってください」と
言われても、治療院からは断られるということで板挟みになるということです。
この場合は、
「第三者行為による傷病届を出したので健康保険でお願いします」と窓口で交
渉してみる、それでもだめなら別の病院や治療院に替えるしかありません。
では、
「健康保険を使うことにこだわる必要があるのかどうか」を考えてみましょう。
健康保険を使わなくても問題ないケース
使わなくても問題ないケースとは。
自分の過失が0で、相手が任意の自動車保険に加入している場合には、問題ありません。
過失がなければ、過失相殺(かしつそうさい)といって引かれるものがなく、すべて相手
側負担になります。自由診療でもまったく問題ありません。もちろん支払基準があります
から何でもかんでも補償してくれるというものではありません。ただし相手が自賠責保険
しか加入していない場合は健康保険を利用してください。
過失相殺とは
被害者側にも事故を発生させた原因(過失)がある場合、加害者だけに損害額を負担させ
ることは公平感・納得性に欠けるものということで、被害者の過失に相応する分を減額し
て支払うというのが過失相殺になります。
例えば加害者の過失が 70%程度、被害者の過失が 30%程度である場合は、過失割合 7:3とな
ります。被害者に生じた損害額が 1000 万円だとすれば、加害者はこの場合 700 万円の賠償
を行えばいいということになります。
健康保険を使用したほうがいいケース
「人身傷害補償保険に入ってない、もしくは使えない」
「相手側が自賠責保険だけしか入っていない」
「過失割合でもめている」
「自分の過失のほうが大きい」
「治療・入院が長引きそうなとき」
という場合には健康保険を使うべきでしょう。
その理由とは、被害者側にも一定のメリットがあるからです。
自賠責保険では、傷害による損害の限度額は120万円と決まっています。だからといっ
て120万円を超えて治療をしては、いけないということではありませんが、金額が高い
自由診療だと、ケガの程度によりますが治療費だけでこの金額の大部分になってしまうこ
とがあります。
そうなると、相手側が自賠責保険だけしか加入していない場合には、他に請求したい休業
損害や慰謝料などは自賠責保険から受け取ることができないということになってしまいま
す。
その場合は直接相手に請求するしかありませんが、いくら交渉しても相手がなかなか支払
ってくれないとなるとケガで痛い思いをしたうえに、精神的苦痛を受けたのではたまりま
せん。
従って、このよう場合には健康保険を使って治療費の節約をしておけば自賠責保険の有効
活用ができるということになります。
※
自賠責保険は重過失がある70%以上の場合に減額対象になりますが、それ以下では
減額対象になりません。
自賠責保険の補償は対象となるもので120万円を超えた場合に、任意一括払いならば任
意保険の査定になり、過失がある場合は、自賠責部分を含めた損害賠償の元から対象にな
ってきます。しかしながら、その場合において、過失が7割未満であれば120万円を下
回る場合においては120万円が支払われます。
例えば、過失割合において相手 60%で自分が 40%という場合において、治療費が40万円・
入通院慰謝料52万円・休業損害68万円などの損害認定額合計が160万円だとします。
このケースで賠償額の計算は、過失相殺もありますから、160万円×(1-0.4)=
96万円になります。
しかしながら、自賠責保険では被害者の過失が 7 割以上ある場合でないと減額はされません
から、損害保険料率算出機構の調査で問題がなければ120万円の支払いになります。
人身傷害補償保険に加入していたら
自身が、人身傷害補償保険に入っていたなら、どうなるでしょう?
この場合には、自身の加入している保険会社の人身傷害補償保険から先にあなたの過失分
も含めて契約保険金の範囲内で損害額を全額受け取ることが可能となります。
相手保険会社との示談が済んでいなくても関係ありませんし、相手保険会社とやり取りす
るのは、任意保険加入保険会社になりますから、あなた自身は相手と交渉する必要があり
ません。
上記の例で人身傷害補償保険に加入している場合には、160万円全額受け取れることに
なります。加入していない場合には、120万円になります。
つまりは、人身傷害補償保険に加入していなければ自分の過失分を受取ることはできませ
んが、人身傷害補償保険に加入していれば過失分も含めて受取ることができるということ
です。
保険会社があなたに支払った分は、後から相手自賠責保険の保険会社と相手側が加入して
いる任意の自動車保険会社へ相手過失分を請求するという流れになります。
ということは、人身傷害補償保険に加入している場合には自分の過失分も含めて受取れる
から「健康保険を使わなくても問題ないということか?」
NO です。
保険会社によっては、
「人身傷害補償保険を使用する場合には健康保険を利用してください」
とハッキリとうたっているところがありますから、この場合には健康保険を使用すること
になります。
以上になりますが、このように交通事故は色々な保険や業種の違う立場の人が関わるので
非常に複雑になり、治療以外精神的にもストレスがたまりますので、交通事故には気をつ
けたことに越したことは有りません。
交通事故と健康保険
自賠責や人身傷害補償のまとめ
交通事故でも健康保険が使えないということはありません。ただし第三者行為ということ
で保険者に届出をしなくてはいけません。特に自分の過失が多い場合や相手が自賠責保険
しか加入していない場合、過失割合でもめているときなどは積極的に使うべきです。
自分で人身傷害補償保険に加入していてそれが使えるのなら相手との示談交渉も不要です
し、過失割合に関係なく治療にかかった分等は実損填補で受け取れるので、ベストな選択
肢になります。
以上、知っておきたい交通事故と健康保険、自賠責や人身傷害補償の関係についての考察
でした。