シティグループ証券寄附講座「グローバル金融制度論」 世界の会計制度改革 2015年7月9日 シティグループ証券株式会社 取締役副会長 藤田 勉, Ph.D シティグループ証券株式会社 東京都千代田区丸の内1丁目5番1号 新丸の内ビルディング 本資料はシティグループ証券が情報提供を目的として作成したものであり、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘を意図したものではありません。 0709 G20による世界的な規制強化 2009年4月のロンドンG20は、リーマン・ショックの反省に立ち、財務レバ レッジ抑制と時価会計化を推進。 FSBを創設。金融監督、コーポレートガバナンス規制、報酬などの情報開 示強化。 G20の基本戦略 1. 世界的に、金融商品の時価会計(公正価値)化を進め、IFRSの基準を簡 素化。 2. 金融商品の時価会計が進めば、景気悪化時には景気循環増幅効果(プ ロシクリカリティ)が発生し、金融機関の経営を不安定にする。 3. 大規模な金融機関は、通常の自己資本規制よりも厳しい数値を設定( バーゼルⅢ、G-SIBs)。 4. 景気悪化時に、金融商品の価格下落によって金融機関の自己資本が 毀損しても、最低限必要な自己資本は維持可能。 5. 会計基準改訂、金融規制、自己資本規制はセット。 2 IFRSの基本哲学 1. 会計主体論は、①資本主理論(所有主理論)、②企業主体理論(エンティ ティ理論) 。IFRSは後者。 2. IFRSの基本哲学は、資本提供者のための会計制度。財務報告の目的は 「株主と債権者が、資本提供者としての立場で、意思決定を行う上で有用 な財務情報の提供」。 3. 有価証券報告書作成の法的根拠は、金融商品取引法24条1項。 会計制度の概念 フランコ・ジャーマン型(大陸欧州、日本) 間接金融、確定決算主義、取得原価、実現基準、親会社説。債権者保護を重視。ユ ニバーサルバンクによる間接金融中心。 アングロ・アメリカン型(英米) 直接金融、税務申告主義、公正価値、発生基準、経済的一体説。株式や債券の投 資家など、不特定多数への情報開示が主目的。 3 米英の法体系 1. 英国は、自主規制主体。ソフトローが発達。裁判が少なく、事実上、自主的 に監視監督。プリンシプル・ベース。 2. サッチャーのビッグバン。SIB(証券投資委員会)など自主規制団体設立。 1997年、金融サービス機構(FSA)発足。実態的にはソフトロー主体。 3. 米国は、世界でも最も複雑な法体系(州法と連邦法)。多様な市場参加者。 独自性が高い(おとり捜査、証拠強制開示、懲罰的罰則、クラスアクション 訴訟、100万人以上の弁護士数)。 4. 授権法モデル。大枠を法律で決め、詳細は、①司法による法の創造、② ルール・ベース。 5. 会計制度の基本哲学が異なる。 米国 アングロアメリカン型の体系、ルール・ベース 英国 アングロアメリカン型の体系、プリンシプル・ベース 日本 フランコジャーマン型の体系、ルール・ベース 4 包括利益の重要性 1. 当期純利益+「株式・外貨建資産・年金資産などの期間の時価変動」→包 括利益。包括利益導入は、米国1997年、IFRS2009年、日本2011年。 2. 円高、株安時に、包括利益が当期純利益を大きく下回る傾向がある。 3. 当期純利益は、固定資産売却などを含むため、フローの利益(収益費用 アプローチ)ではない。 4. 当期純利益でも、包括損失が続くと、経営破綻リスクが高まる。例:A社、 当期利益1,000億円、包括損失1,000億円→最終的には債務超過。B社、 当期損失1,000億円、包括利益1,000億円。 利益の概念 収益・費用アプローチ フローの利益 実現収益と発生費用の差額が期間損益。 資産・負債アプローチ 包括利益 資産・負債を公正価値で評価。期初と期末の純資産の差額が期間損益。 5 本日のまとめ 1. 株高、円安は永遠に続かない。株安や円高(バブル崩壊、プラザ合意、 リーマン・ショック)は、急激に起こる。 2. 日本企業は、経済危機時のリスク耐性が低い。特に、円高対応が重要(経 常黒字再拡大、2018年日銀黒田総裁任期満了) 。円高は株安要因。 結論:円安・株高は、資産と負債の通貨のマッチング、株式売却、年金制度 変更の好機。 バブル崩壊後のTOPIXと円ドル相場の推移 包括利益対純利益倍率上位10社(2013年度) (百万円) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 電通 オリンパス 東芝 豊田自動織機 京セラ 武田薬品 サントリBF 東レ 豊田通商 パナソニック B/A(倍) 当期利益 (A) 包括利益 (B) OCI 4.94 4.77 3.91 3.41 3.17 3.14 3.09 2.74 2.70 2.53 41,430 13,627 69,618 94,198 95,014 109,558 36,377 65,561 98,738 121,645 204,694 64,996 272,208 321,206 301,582 343,666 112,536 179,328 266,387 307,330 163,263 51,369 202,590 227,007 206,568 234,107 76,158 113,767 167,649 185,685 為替換算 対OCI 調整勘定 158,056 44,622 130,110 33,588 45,845 230,774 74,513 94,354 116,273 136,633 (円/$) 160 3,000 0.97 0.87 0.64 0.15 0.22 0.99 0.98 0.83 0.69 0.74 注:2013年度。2014年末時価総額上位100社対象、金融除く。当期純利益は、少数株主損 益調整前当期純利益。出所:Astra Manager、シティグループ証券 TOPIX (左軸) 150 円ドル相場(右軸) 2,500 140 130 2,000 120 110 1,500 100 90 1,000 80 500 70 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 出所:ブルームバーグ、シティグループ証券 2006 2008 2010 2012 6 2014 本資料はシティグループ証券(当社)が作成したものであり、他の第三者に過去に提供された他の資料の抜粋を含む可能性があります。本資料は、 当社又はその関係会社が作成配布したリサーチレポートに言及している可能性がありますが、本資料は調査部門が作成したものでなく、本資料に 記載された情報は、適用される規制当局により定義された「アナリストレポート」及び「リサーチレポート」に該当することを意図しているものではあり ません。本資料に記載された情報は、一般的に入手可能な情報であり、信頼に足ると思われる情報源から入手したものですが、正確性及び完全性 を保証するものではありません。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の利用者の投資目的、財務状況、資力を考慮しておりません。本資 料は、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘ではありません。先物、オプション、高利回り証券を含む特定の取引又は取引戦略は、相当の リスクを内包しており全ての投資家に適したものではありません。直接、間接、派生的を問わず、本資料に記載された情報の使用により又は本資料 に起因する損失に対して、当社は一切の責任を負いません。当社は、税務及び法律の助言を行うものではありません。お客様におかれましては、ご 自身の税務及び法務アドバイザーより助言を受けた上で、ご自身の目的、経験、資力に基づく投資判断をなさるようお願いいたします。本資料に含 まれる資料、記述、情報は当社に帰属するものであり、著作権その他の知的財産に関する法律によって保護されます。いかなる目的においても他 者への転送、再配布を行うことはできません。 Copyright © Citigroup Global Markets Japan Inc. 2015. All Rights Reserved. シティ(Citi)及びシティと弧のマーク(Citi with Arc Design)は、シティグループ・インク及びその関係会社の商号及びサービス・マークであり、世界中で 使用及び登録されています。 7 この資料は、お客様に対してマーケット情報等を提供する目的で作成されたものであり、当社が行う金融商品取引業の内 容をご案内する目的で作成されたものでありませんが、金融商品取引業における販売資料として一般投資家のお客様に 交付させていただく場合、当社が行う広告等に該当しますので、広告等に関する以下の表示事項にご留意ください。 金融商品取引法第 37 条(広告等の規制)にかかる留意事項 上場有価証券の売買取引にあたっては、売買代金の他に売買代金にお客様と当社であらかじめ合意した料率を乗じ た売買手数料をいただきます。売買手数料の料率は、お客様と当社の間の合意により、都度又は定期的に決定され ますので、本書面上その料率等をあらかじめ記載することはできません。 上場有価証券を募集等により、または当社との相対取引により売買する場合は、原則売買対価のみを授受いただき ます。 上場有価証券は、発行者の信用状況の悪化等に伴う株価の変動により、損失が生じるおそれがあります。外国株式 は、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 お取引にあたっては、契約締結前交付書面や目論見書またはお客様向け資料をよくお読み下さいますようお願いい たします。 商号等/シティグループ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 130 号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 8
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