瀬崎先生講演資料 - 大分県地質調査業協会

平成27年11月6日
一般社団法人 大分県地質調査業協会
技術講習会
話 題:
九州地盤情報データベースを用いた
大分県の地盤特性について
(1)
(2)
(3)
(4)
九州地盤情報DBについて
都市地盤の標準ボーリング
鍵層となるアカホヤ火山灰層
事例研究:
大分市の都市地盤の土層構成
の特徴
宮崎大学 工学部 社会環境システム工学科
准教授 瀬﨑 満弘
1
2
(1)九州地盤情報共有データベースのバージョンアップ
データベース登録データ数
ver. 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 総計
1
9051
3668
3020
5685
2776
2690
3732
30622
2
3953
1948
7473
5088
1791
9056
3413
32722
4567 11746
7145
63344
計
13004
5616 10493 10773
3
調査の密度比較:福岡市
4
調査の密度比較:宮崎市
図中○印位置がボーリングデータのある箇所,●はボーリングデータのみで
土質試験結果の箇所,●はボーリングデータ,土質試験結果のある箇所
図中○印位置がボーリングデータのある箇所,●はボーリングデータのみで
土質試験結果の箇所,●はボーリングデータ,土質試験結果のある箇所
5
6
1
九州沖縄の9都市
発刊 : 2012.1.30
編集委員長 : 安田 進
北九州市
横矢・藤白
福岡市
佐賀市
長崎市
熊本市
大分市
宮崎市
鹿児島市
那覇市
矢ヶ部・柿原・橋村
日野
棚橋・松本
田尻・梅崎・大見
工藤・千田
瀬崎・澤山
高田・北村・田中
渡嘉敷・原
(2)都市地盤の標準ボーリング
標準ボーリングの必要性
◎簡易柱状図で土層断面を検討する場合、
地層が水平方向に繋がらないことが多い。
土層の対比・・・鍵層(火山灰層など)の明確化
↓
用語や土層名の統一
◎基盤岩類の柱状図のコンテンツの不全
風化度区分や岩盤分類等の不統一
◎できれば各都市で標準ボーリング・コアの採取と
保存(佐賀市・鹿児島市は既に有り)
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佐賀平野の標準ボーリング位置図
標準ボーリングとその対比
9
嘉瀬コア(佐賀平野標準ボーリング)
10
嘉瀬コア(佐賀平野標準ボーリング)
11
12
2
鹿児島市
標準ボーリング
KU-1
鹿児島市の標準ボーリング KU-1
鹿児島中央駅
甲突川
KU-1
13
15
14
鹿児島大学理学部井村研究室で保管
福岡大学石原方式 遠賀川下流域の標準ボーリングの例
16
(3)地層対比の鍵層となるテフラ層
主なテフラ層を構成する
火山ガラスの例
Aso-4
Aso-3
由布川テフラ(Yfg)
17
18
3
AT層
指標広域テフラ
Aso-4
入戸火砕流堆積物
(狭義のしらす層)


8.5~9.0万年前
2.6~2.9万年前

19
20
(4)事例研究その1. 大分市
K-Ah層
アカホヤ火山灰層
大分市都市地盤への地盤情報DBの応用例

7300年前
完新統

縄文早期と前期の境界

検討課題:
◎大分川と大野川が形成した沖積地盤の差異
-標準ボーリングの抽出と設定ー
◎鍵層としてのアカホヤ火山灰層
◎海岸埋立地盤の基礎地盤について
◎市内を横断する活断層(府内断層ほか)
◎大分平野の基盤岩層(碩南層群と大分層群)
◎大分平野の地下水位
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22
大分川沿いN-S断面図
(大分大学 千田)
Bor.
大分川 流路長:
No.300531
51km 流域面積:636km2
大野川 流路長:105.5km 流域面積1476km2
23
24
4
大野川沿いN-S断面図
(大分大学 千田)
27.0~27.2mに
K-Ah層を挟む
千田先生の分類
大野川流域の方が中
部泥層に砂の混入が
目立ち水平方向への
土層の連続性が悪い
25
大分川流域 標準ボーリング
26

大野川流域の
土層対比

標準ボーリング
大野川流域の土層対比
27
28
6号埋立地の
基礎地盤
孔口標高=-1.2m
層厚25m
中部泥層に明瞭なK-Ahは
観察されていない。中部泥
層は、上流部ほどN値が
低く軟弱である。礫障害部
を除くと、N値は3~5。
層厚40m
N値=8~14
下部砂層は欠層
総掘進長=82m
大野川の海への
延伸部の標準
ボーリング
中部泥層のN値
は10以上と自然
の圧密作用で強
度増加している?
層厚12m
大野川流域の標準ボーリング
29
30
5
大分市内でのアカホヤ火山灰層の産状
大分市内のアカホヤ火山灰層
千田論文:
○厚さ1m程度の灰白色のガラス質火山灰
○平行葉理・生痕(巣穴)化石の密集
○最下部0.2~0.3mが純層部
シルト質粘土、細砂層、細礫サイズの軽石
が細互層
アカホヤ火山灰層
府内城址における群列ボーリング(活断層調査)
from 大分大学 千田昇
31
地盤情報DBからのK-Ah層の特徴
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アカホヤ層の事例 (1)
◎大分市付近のこの層は、中部泥層の中間部に平均1m程度の層厚で挟
まっており、ガラス質の白色~暗灰色火山灰層である。
◎土質柱状図の記載の場合、均質な微砂~細砂~シルト質砂、火山灰質
砂、シラスなどと記載されている。
◎このテフラ本体(純層部)の厚みは、初生的には、20~30cmの厚みであり、
一度侵食され二次的に堆積して厚みを増している箇所が多いと判断さ
れる。特に、1m以上の厚みで火山灰質砂との記載については、その分
布下限深度(標高)を、このテフラ層の堆積面と考えた方が良い。
大分市下判田
孔口標高=14.46m
掘進長 =16m
◎中間泥層に挟まれる場合、上下のシルト層のN値が5以下であるのに比
べ、この層のN値は、10以上と高いことが多い。そのため、記載がない
場合でもN値が10以上と高い部分は、火山灰層の混入が多い部分と考
え観察を丁寧に行なう必要がある。
◎この層は分布の連続性の良い所では、中部泥層の圧密を促進する役割
をもつものと考えられ、重要な鍵層となるので慎重な調査・観察が望ま
れる。
33
34
アカホヤ層の事例 (2)
アカホヤ層の事例 (3)
大分市顕徳町
孔口標高=不明
掘進長 =13m
大分市鶴崎
乙津川右岸
孔口標高=5.64m
掘進長 =12.45m
基盤岩直上に分布する、分析によっては
Aso-4の可能性もある
火山灰混じり細砂
砂質火山灰 トータル=3.35m
35
36
6
津波とアカホヤ火山灰
第四紀研究,Vol.49,No.1,pp.23~33,2010
「大分市横尾貝塚に見られるアカホヤ噴火に伴う津波堆積物」
藤原治・町田洋・塩地潤一
B写真
37
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横尾貝塚ピット
アカホヤ火山灰の
模式柱状図
アカホヤ火山灰層中の堆積構造
アカホヤ火山灰層
鬼界カルデラの噴火
(3段階のプリニアン型噴火)
↓
巨大地震と津波
Ⅱ下面:東への流れを示す堆積構造(陸から海へ)
Ⅰ~Ⅴユニット:イベント堆積物
○薩摩・大隅半島南岸および
種子島・屋久島沿岸での調査
・2回の巨大地震による
多数の噴砂・噴礫の発見
・津波波高 20m程度
(成尾・小林)
ⅣとⅤ境界:西への流れ(海から陸へ)
39
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宮崎市南方町富永
福岡市の丘陵地のAso-4の異常堆積構造
(福岡市南区若久 昭和50年当時撮影)
砂丘堆積物
K-Ah
後背湿地堆積物
カルデラ起源のテフラが堆積する時には、巨大な噴火に伴う地震や津波が
あったと考えておく必要があるのでは?
41
宮崎層群の基盤岩類
42
7
宮崎駅周辺の土層構成
宮崎市浮田
*細流土主体の地盤構成
砂丘形成位置から離れる
後背湿地が長く続いた。
K-Ah層
大淀川の氾濫原堆積物
更新統
下部層L
*K-Ah層は周りに比べてN
値が高い。
上部層U
*3~4回の堆積輪廻を
繰り返している。
*砂丘堆積物が無いために
完新統のシルト層の圧密が
進んでおらず、N値が0ないし
3と低い。
K-Ah
中部層M
基底層
基盤岩:宮崎層群 深度GL-31.2m
深度GL-58.2m
43
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宮崎層群泥岩
清武町木原
宮崎市加江田
*分布している標高が高い
N値が10~30と大きい
入戸火砕流堆積物
非溶結部
AT
*K-Ah層は表層のローム層
中に潜在する?
K-Ah
宮崎層群
45
日南市油津港
北浦町熊野江
K-Ah層
K-Ah層
*K-Ah層が堆積した後
大きく環境が変化した
場所としなかった場所
完新統の堆積場の違い
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地盤情報DBの利活用
都市地盤の三次元表示
(福岡市・宮崎市・熊本市で完成)
↓
地盤の液状化マップの高精度化
活断層位置の明確化
地震動基面の性状
基盤岩類の風化状況
斜面都市の地盤
丘陵や山地部の情報を増す・・・砂防・地すべり
調査ボーリング
*例 福岡市の後背地の背振山系には30mも風化したまさの地山がある。
福岡市内への土砂供給量の多さにつながるが研究が無い。
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8
今後の課題:調査ボーリングコアの観察の重要性
◎ 地盤情報データベースは、すべてボーリング・
ご静聴ありがとうございました。
オペレーターとコア観察者の力量に依っている。
◎ 今後は、標準ボーリングをしっかり頭に入れて、
コア観察を行ってもらいたい。
◎ 特に完新統中の泥層中のアカホヤ火山灰層を見逃さな
いこと。
粒径均等な微細砂~シルト質砂
細かい軽石を混入することがある
ガラス質 → 指で潰すと“ざらざら感”がある
◎ 基盤岩の観察も怠りなく。風化の程度や色調、硬軟
できれば岩盤分類や風化度区分などを修得する。
→ 岩盤分類や風化度区分など基本的なコア観察に対する
研修と経験
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50
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