細胞生物学合同講義シラバス - 東北大学大学院生命科学研究科

東北大学大学院
細胞生物学合同講義シラバス
平成27年度
平成 27 年度事務局
大学院農学研究科
高橋 英樹
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1
4月23日
片平
キャンパス
ニューロンネットワークの可塑性
八尾 寛
脳は膨大な数の神経細胞とこれらを連絡するシナプスからなるネ
(生命)
ットワークによりで構成されており、それらの形態や機能は、多
様で複雑である。この多様性は、ネットワークが可塑性を有して
おり、脳の「経験」に基づいて、形態や機能が変化した結果に他
ならない。学習・記憶などの高次機能もネットワークの可塑性に
より説明される。ネットワークは、構造的・機能的にきわめてダ
イナミックであり、日々刻々絶え間なく変化している。本講義で
は、ネットワーク可塑性とその分子メカニズムについて概説する。
4月30日
片平
キャンパス
生殖細胞系列の形成機構
熊野 岳
多くの動物では、卵や精子といった生殖細胞を作り出す生殖細胞
(生命)
系列は、発生過程の極初期に体細胞系列と分離し、前者は全能性
を維持する一方で、後者は分化するという劇的な運命の違いを辿
る。本講義では、様々な動物種で生殖細胞系列が体細胞系列と分
かれて生殖細胞系列が形成される機構について概説した後、この
ような種の存続に重要な機構が、進化の過程でどのようにして獲
得されたのかを最近の成果も踏まえて解説する。
5月 7日
片平
キャンパス
卵成熟及び受精過程のシグナル伝達機構
経塚啓一郎
有性生殖を行う動物にとって受精は新たな個体発生の出発点とし
(生命)
て生物学的に重要な現象である。雌の卵巣中で成長した卵母細胞
は一般には精子を受容し発生を開始する能力を備えておらず、卵
成熟誘起ホルモン等により卵成熟が進行して受精発生能力を獲得
する。受精可能な卵成熟段階にある卵母細胞に精子が侵入すると、
付活が起こり発生を開始する。ホルモン等により卵成熟が進行す
る時、あるいは卵母細胞が精子の刺激により休止していた減数分
裂を完了し、体細胞分裂を進行させる時に機能する卵内外のシグ
ナル伝達系について、カルシウムイオンの機能を中心に解説する。
5月14日
片平
キャンパス
体細胞分裂と減数分裂における紡錘体形成
杉本亜砂子
細胞分裂の際に、複製された染色体を均等に分配する役割を担っ
(生命)
ているのが紡錘体である。動物の体細胞分裂では、中心体から形
成される微小管によって紡錘体が構築される。一方、多くの動物
の卵細胞や植物細胞は中心体を持たないため、動物の体細胞分裂
とは異なるメカニズムによって紡錘体が構築される。本講義では、
紡錘体構築メカニズムの普遍性と多様性、および進化について概
説する。
2
5月21日
片平
キャンパス
行動制御の遺伝子機構
山元 大輔
複雑な動物の行動を生み出すのはどのような神経回路なのか。ま
(生命)
たその神経回路を組み立て、期待通りに動かすことができるのは、
どのような分子的な仕組みによるのか。単一遺伝子の突然変異に
よって行動に特異的な変化を引き起こし、その原因遺伝子を特定
して、行動と分子(遺伝子)との因果的関連を解明することがで
きる。特に、キイロショウジョウバエの雄が同性愛化する satori
変異体の研究に焦点を当てて論ずる。
5月28日
青葉山
キャンパス
神経伝達物質放出の分子機構
福田 光則
ニューロンネットワークを構成する神経細胞は、シナプスを介し
(生命)
てお互いに結びつき、神経伝達物質放出という手段により情報交
換(興奮の伝播)を行っている。神経伝達物質はプレシナプスに
存在するシナプス小胞に貯蔵されており、興奮に伴う細胞内カル
シウムイオン濃度の上昇によりシナプス小胞とプレシナプス膜が
融合し、細胞外へと放出される。本講義ではまず神経伝達物質放
出を小胞輸送という観点から捕らえ、神経伝達物質放出のメカニ
ズムを概説する。次いで、シナプス小胞輸送を制御する役者達、
特にカルシウムイオン濃度上昇を感知するセンサー分子、シナプ
トタグミンの機能を中心に最近の知見も含めて解説する。
6月 4日
青葉山
キャンパス
動物の初期発生メカニズムとその進化
美濃川拓哉
動物の個体発生の最初におこる重要なイベントの一つは、卵の一
(生命)
端に局在する母性因子が引き起こす一群の発生調節遺伝子の発現
である。その後、胚のさまざまな部分で領域特異的遺伝子発現が
おきるが、この際、細胞間相互作用が重要な役割を果たす。動物
の体づくりは発生調節遺伝子産物の働きと細胞間相互作用によっ
てコントロールされる巧妙なシステムであり、このシステムは長
い進化の過程で形作られてきた。さまざまな動物の初期発生を比
較すると、発生メカニズムのなりたちと、その機能的拘束につい
て知ることができる。本講義では個体発生メカニズムとその進化
について、棘皮動物をモデルとして解説する。
6月 11日
青葉山
キャンパス
脊椎動物の四肢再生能力
田 村 宏 治 幹細胞生物学が進歩しさまざまな細胞・組織再生が可能になって
(生命)
きた今日においても、形態と機能を有した器官再生には多くの困
難が存在するのも事実である。本講義では、四肢再生を例にして
器官再生を概説する。とくに脊椎動物において唯一、四肢再生が
可能な両生類における四肢再生過程をまとめるとともに、四肢再
生能力に関する最近の話題についても解説する。
3
6月18日
青葉山
キャンパス
植物細胞壁の構築と機能
西谷 和彦
植物細胞壁は構造多糖とタンパク質を主成分とした超分子構造体
(生命)
で、細胞の形の構築だけでなく、情報伝達や生体防御など、多岐
に亘る機能を担うダイナミックな構造体である。1990 年以降、そ
の構築や再編に係わるタンパク質や遺伝子の単離が相次ぎ、その
動態を遺伝子レベルで解析することが可能となってきた。この講
義では、筆者らが単離したエンド型キシログルカン転移酵素の働
きを中心に、植物の形態形成における細胞壁構築の役割について
考察する。
6月25日
雨宮
キャンパス
力刺激の受容系、反応系
小椋 利彦
無重力したの宇宙飛行士に見られる萎縮症状からわかるように、
(加齢研)
動物の恒常性は物理的な力刺激の影響を大きく受けている。この
現象は、運動器系に限らず、発生、循環器、代謝など、さまざま
な生理的局面で現れる。しかし、細胞、組織が力刺激をどのよう
に受容し、どのように反応するかは依然として未解明のままであ
る。本講義では、力刺激の受容系、反応系(いわゆるメカノトラ
ンスダクション)の分子メカニズムを考察し、医学への応用展開
にまで言及する。
7月 2日
雨宮
キャンパス
放射線の人体・細胞への影響:過去の事例から今後を考える
福本 学
第二次世界大戦中に傷痍軍人に用いられた血管造影剤、トロトラ
(加齢研)
ストは主にα線を放出する。投与後、肝臓に沈着し数十年して肝
悪性腫瘍を発症した。解剖症例を用いて内部被ばく発がんの機構
解明を行った。その発展として放射線耐性細胞株の樹立と解析を
行っている。4年前の福島原発事故に際して、警戒区域内外の家
畜とニホンザルの臓器アーカイブの構築と放射線の生物影響を解
析している。放射線生物学の面白さと難しさについて知ってもら
いたい。
7月 9日
雨宮
キャンパス
粘膜免疫系と粘膜感染症
野地 智法
消化器、呼吸器、生殖器、泌乳器といった粘膜組織には、粘膜免
(農学)
疫系と呼ばれる、粘膜組織特有の免疫システムが発達している。
乳房炎、下痢、肺炎は、粘膜組織に病原微生物が感染することに
よって発症する家畜の3大疾病である。本講義では、乳房炎と乳
腺での免疫システム(乳腺免疫系)に焦点を当て、乳房炎の発症
メカニズムと、乳腺免疫系に関わる免疫担当細胞の機能について
解説する。
4
10 月 1 日
雨宮
キャンパス
植物の重力応答
藤井 伸治
植物は、重力感受細胞で重力刺激を感受した後、オーキシンの輸送
(生命)
を変化させ、オーキシンの偏差分布を引き起こし、屈曲する重力屈性
を発現する。植物の重力応答に関する研究の現状を、重力感受細胞
の分化、重力感受機構、重力刺激に応答したオーキシン輸送制御の
観点から解説する。
10 月 8 日
雨宮
キャンパス
高等植物における花器官形成機構
菅野 明
高等植物の花は基本的にがく片(外花被片)、花弁(内花被片)、
(生命)
雄ずい、雌ずいの4つの器官から構成され ている。これらの器官
がどのような遺伝的メカニズムによって形成されるかについて概
説する。また植物の花の形には様々なものがある が、その多様性
がどのような遺伝的背景によって引き起こされているのかについ
て解説する。
10月15日
雨宮
キャンパス
植物の発生の遺伝的制御機構
伊藤 幸博
植物は胚発生過程で茎頂分裂組織を形成し、発芽後は茎頂分裂組
(農学)
織から葉や花等の器官を次々と形成する。従って、植物の発生の
基本は、茎頂分裂組織の形成、維持、茎頂分裂組織からの器官形
成である。この講義では、その遺伝的な仕組みについて解説する。
10月22日
雨宮
キャンパス
ウイルス感染と植物免疫機構
高橋 英樹
植物は、ウイルス感染に対して、RNA サイレンシングによりウイ
(農学)
ルス増殖を抑制する防御システムを備えている。これに対してウ
イルスは、サプレッサータンパク質を合成して、カウンター攻撃
で対処する。すると植物は、抵抗性遺伝子産物によりウイルスタ
ンパク質を認識し、シグナル伝達を介してプログラム細胞死など
を誘導することによりウイルスを抑制する。一方、ウイルスは、
細胞により認識されないようにタンパク質に変異を導入し、抵抗
性反応をすり抜ける。講義では、植物-ウイルス間で繰り広げら
れる巧みな攻防について解説する。
10月29日
雨宮
キャンパス
植物における窒素利用の分子生物学
早川 俊彦
植物の生産性と品質の決定に関わる窒素の吸収、同化、再利用、
(農学)
集積などの分子機構とその制御機構について、最新の分子生物学、
分子生理学、分子遺伝学などの研究例を紹介する。特に、遺伝子
発現の特異性、代謝にかかわる酵素の機能分担と活性制御、物質
集積機構、代謝間・器官間の情報と会話などに焦点をあて、窒素
利用における個体機能統御に関する理解を深める。
5
11月 5日
雨宮
キャンパス
イネの生産性と個葉の光合成
牧野 周
光合成の改変による作物の生産性の向上は古くからの農学の主要
(農学)
テーマであるにもかかわらず、いまだに実現していない新しいテ
ーマでもある。本講義では、光合成の炭酸固定酵素 Rubisco の機
能に注目して、光合成能の改善によるイネの生産性向上の方向性
を考察する。また、ソース能とシンク能改善からのイネの収量増
を考察できる実証例も紹介する。
11月12日
雨宮
キャンパス
植物のタンパク質分解システム
石田 宏幸
細胞内タンパク質の分解システムは、発芽、形態形成、環境スト
(農学)
レス応答、老化や細胞死、栄養素リサイクルなど、植物の高次機
能と密接に関わっている。講義では植物が持つ真核型と原核型の
タンパク質分解システムの基本メカニズム、それらの植物ならで
はの特徴や生理的役割について最近の知見を紹介する。
11月19日
雨宮
キャンパス
植物の生殖・受粉反応
北柴 大泰
被子植物の多くは両性花を持つが、その他に雌雄異花のもの、雌
(農学)
雄異株のものもある。また、両性花をもつものでも、雌雄異熟で
あったり、自家不和合性を持ったりして自殖と他殖のバランスを
とりながら進化してきた。ここでは、被子植物の受粉様式の分化
について概説すると共に、自家不和合性に関する分子生物学的研
究の最近の研究発展について講義する。
11月26日
雨宮
キャンパス
植物オルガネラの構造と機能
風間 智彦
植物オルガネラである葉緑体、ミトコンドリアは光合成、呼吸を
(農学)
つかさどるだけでなく、植物特有の様々な生命現象を支えている。
これら共生によって生じたオルガネラの機能は、宿主である核ゲ
ノムとの厳密な協調の上に成り立っている。これまで予想されて
いなかった非常に動的な植物オルガネラの構造、分裂機構、およ
びゲノム制御機構、また、オルガネラの役割について、その分子
メカニズムに焦点を当てて最近の知見を紹介したい。
12月 3日
雨宮
キャンパス
植物における栄養輸送の生理学
小島 創一
植物は土壌中のさまざまな栄養素を根から吸収して、個体全体の
(農学)
成長に役立てる。根における栄養の輸送は輸送担体(トランスポ
ーター)と呼ばれる膜タンパク質群によって行われる。栄養素の
輸送の中でもとりわけ窒素栄養の輸送について焦点を当て、分子
生物学・植物栄養生理学・構造生物学的な手法で明らかとされた、
近年の研究発展について概説する。
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