平成 27 年度電気関係学会北陸支部連合大会 スペクトラム拡散を用いた非接触給電システムの 放射ノイズレベル低減法 井上 拳斗・日下 佳祐・伊東 淳一(長岡技術科学大学) 1. はじめに 近年,電気自動車向けの非接触給電システム(WPT)が 盛んに研究されている。非接触給電システムにおいて, 放射ノイズによる電磁干渉が問題として挙げられており, 抑制手法が研究されている(1)。従来法として,金属板や 磁性体によって遮蔽する方法が提案されているが,シス テムの効率低下や高コスト化の原因となる (2)。そこで, 本研究ではインバータのスイッチング周波数を許容周波 数範囲で可変させながら電力伝送を行うことで,放射ノ イズのスペクトラムを拡散する手法を提案し,実機によ る検証を行ったので報告する。 2. 提案システム 図 1 に非接触給電システムの構成例を示す。本システ ムでは,一定の周波数(85 kHz)で電力伝送した場合,ス イッチング周波数成分の磁界が強く放射される。これに より,CISPR11 の放射ノイズの規制値を超過する恐れが ある。そこで,本研究では電気自動車用 WPT システム が利用可能な周波数である 80 kHz から 90 kHz までの範 囲でインバータのスイッチング周波数を変化させながら 電力伝送を行う方法を提案する。 スイッチング周波数の変更パターンを不規則に可変す るため,M 系列を用いた 4 ビットの疑似乱数列を DSP 内で生成する。生成された乱数に対して,予め割り当て たスイッチング周波数を選択する。M 系列乱数は(1)式に て得られる。 CS1 i1 Vin CS2 k Co +C v 1 L1 Vin=100 V R=30 W k=0.37 R L2 vo L1=175.90 mH L2=179.87 mH CS1=19.6 nF CS2=19.4 nF Fig. 1. System configuration of WPT. Primary voltage v1 100 V/div 83.3 kHz 85.0 kHz 85.5 kHz 0 Primary current i1 5 A/div 0 Output voltage vo 100 V/div 0 10 ms/div (a) Constant frequency. (b) Proposed method. Fig. 2. Measurement wave forms. [dB] 0 dB=1.72 A 0 dB=1.72 A 0 57.0% X Z X Z q X Z p ................................................ (1) ここで,Xz-p 及び Xz-q は,p 及び q ステップ前の乱数で あり,今回は p = 4,q = 1 とした。本パターンに基づい てインバータのスイッチング周波数を変化させることで, 準尖頭値検波により測定される放射ノイズの抑制が可能 である。ただし,ループコイルに流れる電流によって生 じる磁界は電流値に比例するため,本論文では放射ノイ ズを評価する代わりに,伝送コイルの一次側電流高調波 の評価を行った。 3. 測定結果及び考察 図 2 に,スイッチング周波数を一定(85 kHz)とした場 合と,提案した周波数範囲で可変させた場合の動作波形 を示す。一次側電流は正弦波状となっており,同じ負荷 で同じ出力電圧が得られていることから,従来同様の電 力伝送が可能であることを実験により確認した。 図 3 に,インバータのスイッチング周波数を一定とし た動作と,提案した周波数範囲で可変させた動作におけ る一次側電流の高調波解析結果を示す。この結果から, スイッチング周波数を変化させて電力伝送を行うことで, 基本波付近で生じる最大のスペクトルを 57.0%低減でき ることを確認した。また,3 次,5 次の低次高調波につい -40 -80 -120 100 350 600 850 [kHz] 100 350 600 850 [kHz] (a) Constant frequency. (b) Proposed method. Fig. 3. Harmonic analysis result of the primary current. ても同様に低減できていることがわかる。なお,提案法 を用いることで,伝送効率は 90.3%から 89.9%に低下す るが,ノイズフィルタの損失やコストを考慮すると提案 方式は有効であるといえる。 以上の結果より,スペクトラム拡散する手法によって 放射ノイズレベルを低減可能であることを実験により確 認した。今後は,定格出力 3 kW での動作検証を実施す る予定である。 文 献 (1) 日下:電気学会全国大会,No.4-117,pp.196-197,(2015) (2) 佐藤ほか:電気学会研究会,SPC-14-016,pp.93-98,(2014)
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