卒業研究区分:論文 背景騒音としてのノイズ音が及ぼす影響 The effect of continuous background noise to physiological responses. キーワード:ホワイトノイズ、EEG、AAC、心拍変動性、タスクパフォーマンス 人間生活工学研究室 05T0178W 鈴木 広大 ■背景 ■結果 我々は常に空調機器を始めとした電化製品に囲まれており, AAC については,条件間で有意差はみられなかった.また, これらが発する連続した人工的なノイズ音にさらされている.し KSS スコアにおいても条件間の有意差はみられなかった.α かし代表的なホワイトノイズの暴露でさえ明確な効果は不明で, 波帯域率については条件間の有意差はみられなかったが, 作業効率の低下,唾液中コルチゾール濃度の上昇(Waye et 全部位でホワイトノイズありの2条件において測定時点間での al. 2002; Behne et al. 2005)や ,入眠潜時の短縮,中途覚醒 有意な主効果(p<0.01),安静時とタスク中の3点または4点と を減少させる(Forquer et al. 2005, 2007)など,多様な報告が の間に有意差(p<0.05)がみられた.心拍変動性については あるものの,それらを異なる視点から検証した例はまだない. 条件間の有意差はみられなかったが,測定時点間の分析で ■目的 はホワイトノイズなし条件の LF/HF の主効果に有意傾向が, 本研究では騒音がヒトに及ぼす影響の一つとして,連続した HF/(LF+HF)の安静時とタスク開始直後の測定値の間に有意 ホワイトノイズ暴露が作業中の被験者に及ぼす影響について 差(p<0.05)がみられた(図 2).タスクパフォーマンスについて 生理的、心理的指標を用いて検証することを目的とした. は正答率において主効果に有意傾向がみられた. ■方法 騒音 条件はホ ワ イト ノイズな し( 暗 騒音 35dB(A)以下), 45dB(A), 60dB(A)の3条件とした.実験は1日1条件とし,3条 件を異なる日の同時刻に行った.被験者は健康な男子大学 生8名で,前日から7時間以上の睡眠をとり,激しい運動とア ルコール,カフェインの摂取を控えさせた.タスクはアメフリ抹 消タスクを用い,タスク中又は前後の指標の変化を評価した. 図 2 HF/(LF+HF)平均値時間軸変化 測定項目は脳波,心電図,主観的眠気評価(KSS),タスクパフ ォ ー マ ン ス と し た . 脳 波 は 国 際 10-20 法 に 基 づ い た ■考察 Fz,Cz,Pz,O1,O2 の5点から導出し,O1,O2 部位の測定値から AAC,KSS スコアの結果から,覚醒状態レベルへのホワイトノ α 波 減 衰 係 数 (AAC : alpha attenuation coefficient) を , イズ暴露の影響は今回使用した音量ではほぼないとみられ, Fz,Cz,Pz 部位の測定値からα波帯域率を算出した.また心電 心理的指標を用いた先行研究の結果とは一致しない.脳の活 図波形より心拍変動性パワースペクトルの低周波数帯域 LF 性についてはα波帯域率の時間軸変化からホワイトノイズ暴 (0.04-0.15Hz),高周波数帯域 HF(0.15-0.40Hz)の積分値を 露の影響があるとみられ,活性を高めると考えられる.タスクパ 求め,LF/HF を心臓交感神経系活動指標,HF/(LF+HF)を心 フォーマンスへの影響は小さいながらもあるとみられるが,明 臓副交感神経系活動指標として用いた.全ての指標について 確な差はない.心拍変動性は時間軸変化が条件によって異 騒音条件を要因とした一元配置分散分析を行い,α波帯域 なり,暴露した場合自律神経系の変動を抑制すると考えられ, 率と心拍変動性については安静時とタスク中5分おきの測定 唾液中コルチゾール濃度を用いた先行研究結果におおむね 値を用いて測定時間を要因とした一元配置分散分析を行った. 一致する.今回使用したホワイトノイズの音量は先行研究で用 また同時に Holm の方法を用いて多重比較を行った.有意水 いられているレベルと同程度かやや小さいものであり,より大き 準はいずれも5%とした.実験の手順を図 1 に示す. な音量を用いれば明確な影響がみられた可能性はある. ■まとめ 実験によりホワイトノイズ暴露は作業による精神的な影響を 弱め,脳の活性を高める効果があるとみられる.本研究では 主に生理的指標を用いることで新たなホワイトノイズ暴露の影 響を明らかにした.また異なる指標を用いた先行研究の結果 に対して,一つの検証結果を示すことができた。 図 1 実験手順
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