2015.11 - LCJE日本支部

ニュース
ローザンヌ・ユダヤ人伝道協議会 日本支部発行
193
2015.11
一部 ¥
2015.11.01発行
〒541-0041 大阪市中央区北浜2-3-10 VIP関西センター3F
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P1 3
イスラエルの今
石堂 ゆみ
P4
巻頭言
ミッション宣教の声
黒田 禎一郎
P5
シオンとの架け橋
イスラエル の 今
石井田 直二
P6
秋の集会報告
P7
ハティクバ・ミニストリー 高瀬 真理
P8
中東問題ジャーナリスト 石堂 ゆみ
お知らせ
事務局より
【2015.8.14 祈り会メッセージの要約】
私が初めてイスラエル入りしたのは、1987 年でした。
28 年前からのお付き合いになります。1980 年代から日
本も大きく変わりましたが、イスラエルもかなり変わりま
した。その変わりようは急激で、特に最近は加速して毎
週、全然違う様子になっているというくらいです。そう
いうわけで、28 年経過していますが、いつまでたっても
新しい発見と驚きばかりです。
イスラエルの変化の特徴は多様性です。非常に多様な
社会になっています。私は去年から念願のツアーガイド
の学校に通っています。クラスメイトは、45 人。日本人
の私と 5 人の東エルサレム在住のパレスチナ人以外、全
員イスラエル国籍のユダヤ人です。ここで全員の話す言
語を数えると 26 もありました。それにしても、イスラ
エルはパレスチナ人にもガイドの免許を与えて、反イスラ
エル的なガイドをさせても気にしていないのでしょうか。
実に不思議な国です。これはいわば、日本なら、外国人
に日本国のガイドは絶対させないと思います。そういう
意味で、イスラエルは、太っ腹です。
このガイドスクールで 2 年、いろんな経験をしていま
す。アラブ人、
中国人、ロシア人は価値観がよく似ています。
テストをするとアラブ人は微妙にズルをしています。ロシ
ア人は、そのズルを平気で見、中国人にいたっては協力
しています。アメリカ人は烈火のように怒っていました。
ちなみに私も見ていましたが、悪いと思いつつ、何も言
いませんでした。よく言われるところの国民性・キャラク
ターというのは、
本当にあっていると思いました。しかし、
それでも、この多様な人々全部がイスラエル人なのです。
イスラエルは移民の国です。建国の 1948 年。この時
点で、すでにホロコーストを知っているヨーロッパ系の悲
惨な状態のユダヤ人と、アラブ諸国からきて、ホロコース
トを知らないユダヤ人が一緒に収容所にいました。この
時からイスラエルはすでに、迷宮に入っているわけです。
さらに建国した後、まず中南米の人がきて、それからロ
シア人が 90 年代に一斉にやってきました。その数、100
万人以上ですから、今のイスラエル人口の 5 ~ 6 人に 1
人はロシア人です。そこへエチオピア系がきました。さら
に少数ではありますが、中国系が来ました。
近年では、フランスを筆頭に北米の人々が来るように
なりました。ネフェシ・ネフェシュというユダヤ人団体が、
欧米先進国のユダヤ人がイスラエルへ来やすいように、
年金の手配や、仕事の手配などを全部やってくれるので
す。これに比べて、近年、ロシアからの移住は減少傾向
だったのですが、ここ数年、ウクライナ情勢が非常に難
しくなったことを受けて、ウクライナ人の移住がまた増え
てきています。
去年の夏、ガザとの戦争の最中にフランスからきた移
住者を空港で取材しました。ここからどこへ行くのか聞
くと「アシュドド」という返事です。その当時、アシュド
ドは最もミサイル攻撃を受けていた町の一つでした。「怖
くないのですか ?」というと「全然」といいます。イスラ
エルへの移住は、もう何年も計画してきのだから、それ
ぐらいのことで計画は変えないと言っていました。貧し
い国から豊かなイスラエルへ移住することも簡単ではあ
りませんが、先進国からイスラエルへの移住には、考え
抜いた末の大決心になります。そのため、到着した時の
感動もひとしおで、ミサイルが降ろうが、戦争があろう
が全然、関係ない様子でした。
ところで、90 年代にロシアからきた移住者は、本当に
何も持たず、イスラエルに知人も一人もいないような人々
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でした。しかし、最近の移住者は、たいがい山のよう
な荷物と、ある程度のお金も持って来る人がほとんどで
す。さらに家族親族がすでにイスラエルにきている人が
多い。先進国から来る人ですから、たいがいは、高い教
育を受け、専門技術を持っている人も多い。若者も多く、
空港から軍隊へ直行する人もいます。嬉しいのは子ども
たちが大勢来ることです。
数週間前に来たアメリカからの移民の飛行機も 200
人のうち、100 人は子どもでした。赤ちゃんも来ます。
イスラエルは、戦争などで、常に危機的な状況にありま
すが、もっとも将来性がある国といってもいいかもしれ
ません。ころんでもただで起きない。イスラエルは強い
と実感します。
様化してきていることを知っていただきたいと思います。
しかし、これだけ世界中のいろんなものが混ざり合う
中、イスラエルは国内の課題もまた見本市状態です。そ
の一つが、文化人種の違いをどう受け入れるかという事
です。イスラエルの建国の辛酸をなめた古い時代からの
ユダヤ人にとって、同じユダヤ人とはいえ、あまりにも自
分と違う文化や人種の人々が簡単にイスラエルに入ってく
ることを受け入れるのは難しいようです。
最近、
問題になっ
てきたのが、エチオピア系の人々を巡る問題です。
こうした中、昨年、ネタニヤフ首相は、
「イスラエルは
ユダヤ人の国」という一文を基本法(日本では憲法にあ
たる)に盛り込もうと言い出しました。イスラエルがユダ
ヤ人の国とは、当たり前と思われると思いますが、それ
を基本法に盛り込まなければいけないくらい、多様化し
てしまっているということなのです。これを言い出したこ
とによって、イスラエルで生まれて育ったアラブ人の立場
が危うくなってしまい、大きな議論となりました。
この人たちは 90 年代に、アフリカでテント生活しか
知らない放浪生活をしていたのを、飛行機に乗せてイス
ラエルに連れて来た人々です。私はその当時、イスラエ
ルにいたので覚えていますが、まずホテルに収容し、ト
イレの使い方から教わっていました。それから 20 年以
上。ようやく大学を卒業したエチオピア系の若者たちが
社会に出始めました。
イスラエルでアラブ人というと、皆さんには怒った顔で
石を投げているイメージが強いと思うのですが、イスラエ
ルには、非常にインテリで、裕福なアラブ人も少なくあり
ません。大学教授や、弁護士、エンジニア、お医者様も
いる。ナザレには、ユダヤ人たちが支援するアラブ系IT
企業があります。ユダヤ人たちが、アラブ人エンジニアた
ちの起業を助けているのです。その中でこのネタニヤフ
首相の「ユダヤ人の国」法案が出てきたのです。
しかし、彼らは黒人で、欧米ユダヤ人からみると文化
も人種も全く違います。最近までは表面化してこなかっ
たのですが、黒人のエチオピア人は、知らないところで、
仕事、
就職などで差別を受けていたということです。最近、
アメリカで黒人と白人が暴力的な衝突が起こっています
が、それと同様の衝突がイスラエルでも起こってきまし
た。ユダヤ人どうしで、このようなことが起こってきたと
いうのが、多様性がすすんだイスラエルの現状です。
これはアラブ系イスラエル人からすると、爆弾宣言で
した。「昨日ロシアから移住してきて、ヘブライ語も何も
わからない人がイスラエル人として認められ、イスラエル
で生まれ、育った私はユダヤ人じゃないから出て行けと
言われるのか。」アイスラエルのアラブ人にとっては祖国
に拒否された経験でした。この問題は、イスラエルでは
大きな論議になり、総選挙の争点にまでなりました。
更に、イスラエルでは、アラブ人の人口が増えてきまし
た。イスラエルはユダヤ人の国ですが、全人口の 20%は
アラブ人です。イスラエル生まれ、イスラエルで育ったア
ラブ人は、イスラエルが母国です。例えばナザレで育っ
たクリスチャンのアラブ人少年にとって、イスラエルが自
分の国です。しかしユダヤ人でないばかりに、2 級市民
であるような気にならざるをえません。こうした状況に
不満をもつアラブ人系イスラエル人がどんどん増えていま
す。驚いたのは、イスラエル国歌は、ハティクバでいい
のかという議論です。
多様化してきたイスラエルの国家は、ユダヤ人だけの
国歌でなく誰でもが受け入れられるような国歌にしない
といけないのではないかというのです。それぐらい、多
しかし、問題の本質があまりにも深く、他の緊急課題
もあいまって、この法案は、今は立ち消え状態になりま
した。しかし、この法案が出た事自体で、イスラエルの
アラブ人は傷を受けたと思います。インテリ層は論議し
ますが、教育を受けられなかった若者たちは、イスラエ
ルに対する反感を深め、あちこちで暴動を起こしました。
IS へ入る若者は、これまで分かっているだけで、120 人
くらいと言われています。
社会の多様性。これは 30 年前にはなかった問題です。
こういう社会で政府を回していくには、究極の民主主義
でないとやっていけません。国際社会はイスラエルは差
別の国だとか言っていますが、イスラエルほど民主主義
が発達している国はないと私は思います。
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こうしてみると、イスラエルは、ユダヤ人の国ではあり
ますが、実は神の前にある人類の縮図、人類全体の代
表ではないかと思います。イスラエルという国は、たん
にユダヤ人という他人の国という視点ではなく、人類の
代表、すなわち、私たち自身のことという視点でみて祈
るべきではないかと思わされています。
❖イスラエル社会の 2 極化
イスラエルという国はもともと、テルアビブから、はじ
まっているということをご存知でしょうか。18 世紀後半
から 19 世紀にかけてユダヤ人移民が、パレスチナ地方に
来はじめた頃、エルサレムは旧市街だけの小さく、非常
に貧しい町でした。城壁の中は、常に水が不足していた
ため汚く、病気で多くの人が死んでいました。とにかく
臭くてしょうがない場所だったのです。
1900 年代前半に来たユダヤ人たちは、元気な世俗派
が多かったので、エルサレムを目指していたとはいえ、そ
れにこだわらず、ヤッフォ周辺に行き、そのビーチにまっ
たく一からユダヤ人の町を立ち上げました。それがテルア
ビブです。そのテルアビブに政府ができ、1948 年に独
立した後にエルサレムに政府に移動し、今はエルサレム
が主都だとイスラエルは言っています。
しかし、イスラエルは、実は世俗派たちが土台になっ
て、頑張って作り上げた国なのです。現在、イスラエルの
主な都市 2 つは、ユダヤ教中心のエルサレム、世俗派中
心のテルアビブとなっていますが、2 都市は同じ国とは
思えないぐらい、
全く違う表情を呈しています。最近では、
エルサレムはさらに宗教的で右派よりに、テルアビブは
さらに世俗的で左派よりにと二極化がすすんでいるよう
です。
右派が活発化してきたことで、困った事が起きていま
す。西岸地区にいる若者たちのムーブメントで、ヒルトッ
プ・ユースという国粋主義のグループがいます。10 代の
ユダヤ教徒の少年たちですが、パレスチナ人を排斥する
ため、西岸地区のパレスチナ人たちの畑や家に放火する
などの暴力を行っています。
最近では寝ている 4 人家族の家に放火し、パレスチナ
人一家 4 人のうち 3 人を焼き殺してしまいました。これ
がパレスチナ人の怒りに火をつけ、イスラエルの国全体
が迷惑しています。国が手を焼いているもう一つの問題
が、第三神殿に向けての右派系の動きです。神殿を再建
したいという動きは昔からあったのですが、イスラエル
社会の中で「第三神殿」ということばが、普通に出てく
るようになったのは最近のことです。
世俗派からはじまったにもかかわらず、今イスラエル
がユダヤというアイデンティティに固執する背景には、国
の多様化の影響も大きいと思います。
そうした流れによっ
て、第三神殿という預言が、現実化し始めているという
ことに、神の計画は、人間の思いを超えて、着実に進ん
でいると思わされます。
❖イスラエルから学ぶ事
今、日本は戦後 70 年を迎えて、本当に戦争は愚かだっ
たと言っています。過去の失敗を振り返る事は大事なこ
とです。しかし、同時に今、何が起こっており、何が日本
にとって課題であり危機なのか、隠さずごまかさず直視
して、ではこれからどうするかを考え、それに備えること
はもっと必要です。
私たち日本人は、危機的状況が予想されるとき、心配
して落ち込む傾向にあります。そのため、隠したりごま
かしたりして、実質的な備えをするという事に弱点があ
るように思います。
私は今、イスラエルの歴史を学んでいますが、イスラエ
ルのユダヤ人のたくましさ、危機、失敗を乗り越える力
に感動しっぱなしです。とにかく危機的状況と失敗に強
い。私たちクリスチャン界では、プラス思考が好まれま
すが、ユダヤ人は、物事のプラス面より、むしろ、ネガティ
ヴな現状を直視するのにたけています。
現状の欠点を直視して、ではどうしたらいいかと考え
るのです。あらゆる人種が混じり合う中で、一つの国を
作り上げ、数々の戦争を乗り越えて維持しています。昔
も今も、世界中の人々とともに、生き残りにかかわるよ
うな、解決不可能にみえる問題が、次々にやってきます。
イスラエル第 5 第首相ゴルダ・メイヤーは「私たちには
悲観的という贅沢は赦されていない。」と言いました。
イスラエルでは、マイナスをごまかさずまっすぐにとら
えるので、艱難が来ても晴天の霹靂ではなく、前もって
準備ができている場合が多い。予想外の艱難や失敗は
ありますが、いちいち落ち込まないで、すぐやりなおす。
立ち上がりも早い。それを見ていて、私自身も多くのこ
とを学んでいます。
プラス思考は必要ですが、これからは、現実を直視し
て、かつ落ち込まず、ではどうするかと考える強さがます
ます必要になってくるでしょう。この姿勢はイスラエルか
ら学べると思います。人類の代表、イスラエルが私たち
に教えていることはたくさんあると思います。
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欧州のイスラム化と反ユダヤ
ミッション・宣教の声主幹 —これからの欧州はどこへ—
黒田 禎一郎
2015 年 9 月、独メルケル首相はハンガリーで足止めされていたシリア難民を、ドイツ
で亡命申請させると歴史的発表をしました。ドイツ連邦移民難民局に(BAMF)は、今年
1 ~7 月までにドイツで亡命申請した外国人の数は、今年末までに約 100 万人に達する
という見方を示しました。昨年(20 万 2834 人)の約 5 倍です。
★「夢の国」へ
ドイツ国内でもっとも大きな負担を強いられているの
は、各市町村です。
「もはや対応しきれない」という声が
出ています。難民の大多数はムスリムであるだけに、急速
な難民流入に際し世論は 2 分しています。
EU指導国(独・仏・英)としては、
受け入れる方向に向かっ
ていますが、欧州土壌はキリスト教であると主張し、受け
入れを拒否する国々もあります。ハンガリーのオルバン首
相は、
「欧州はキリスト教国である。難民の多くはイスラム
教徒であるから、ハンガリーは受け入れられない。
」と発
言し難民の流入を拒否(国境の侵入経路に有刺鉄線を引
く)しています。
他の東欧諸国も、今でも経済の遅れをとっているのに、
難民によって更に職を奪われることになると言い、消極的
です。デンマークも同じように難民受け入れに消極的です。
ポーランドは、カトリック教徒のみを受け入れると発言し、
これまた差別問題となっています。ドイツはナチス時代の
反省から、難民の権利をドイツ憲法の基本的人権に関す
る章で定めています。このような情勢下で、難民間にドイ
ツの難民待遇がよいという話が伝わり、人々は雪崩を打つ
ようにドイツへと向かい始めました。彼らはドイツへ行け
ば、新しい人生を始めることができる、という「夢」を抱
いています。
★ペギーダ運動
反対派となるのは、
昨年(2014 年)から始まった「ペギー
ダ運動」
(西欧のイスラム化に反対する愛国者の意味)
です。
はじめは数千人規模のデモ行進でしたが、毎週月曜の夜
に集まる参加者は増大し、2 万人、3 万人にも拡大してき
ました。そしてその輪は、ベルリン、ケルン、フランクフルト、
ミュンヘンなどの主要都市にも飛び火しています。この「ペ
ギーダ運動」を先導してきたのは、ドイツの極右やネオナ
チという激しい闘争的グループ(反ユダヤ)です。
そして今年に入り、AfD(ドイツのための選択肢)とい
う右翼政党が地方議会にはじめて、議席を得たことも大き
な問題です。右翼や保守派を中心に、自国を守ろうと立ち
上がろうとする運動は勢いを増し、今や国を二分化する非
常に危険な状態に向かいつつあります。
★サラフィスト
もうひとつ危険なのは、
「サラフィスト」
(イスラム原理
主義者)の動きです。彼らは若者で、ドイツ大都市の歩行
者天国で道行く通行人に、コーランを無料配布し、個人
4 LCJE 日本支部発行 No.193
的に語りかけイスラム教への入信を勧誘する熱心なグルー
プです。中東の「イスラム国」と、比例するかのように、
台頭してきました。サラフィストたちは、
「シャリア」
(イス
ラム法規)厳守で、イスラム教に忠実な人たちです。した
がって、イスラム教「シャリア」に過激に反応するイスラム
原理主義者たちです。その彼らは、今急速に勢力を確実
に伸ばしています。このような動きは、フランス、イタリア、
スウエーデン、オランダ、デンマーク、オーストリアでもあ
り、彼らは次第に勢力を拡大しつあります。今後、欧州経
済が落ち込み、大政党が自滅するような事態が起きれば、
右翼は人々の不安を糧に、更に勢いを増すと考えられます。
それはユダヤ人攻撃につながっていきます。
★信仰心の低下
ところが、ここに来てドイツで「フォルクス・ワーゲン(V
W)不正事件」が発覚しました。これは国を揺るがす大
事件です。世界 1 を誇ったVW社は、デイーゼル車排ガス
試験の不正を行っていました。それは 2006 年に始まり、
2011 年の時点で、会社トップは違法性を知りながら見過
ごしていました。不正対称は、1,100 万台といいますから
大変な不祥事です。なぜ、世界のトップを走っていたVW
社は、企業倫理を失ったのでしょうか?
こ れ は「 自 死 」
(Selbstmord) と、ドイツの 週 刊 誌
Spiegel 誌は、表紙に書きました。なぜ、長年欧州を東西
に分断していた『鉄のカーテン』を、無血の革命で見事に
破ったドイツが、このような状態になったのでしょうか? それは神への信仰心が低下した結果です。
人々は教会から遠ざかり、教会から脱会し、自分を楽し
ませる快楽の道を選択してきました。教会員は減少し、維
持できなくなった会堂が売りに出されています。それを急
増するムスリムが購入する、というパターンが起こっていま
す。数千人も会員がいる大教会は、クリスマスとイースター
時しか、人々は集まりません。閑古鳥が鳴く状態です。
これが独国教会であるキリスト教の実態です。お祈りく
ださい。
十二小預言書に学ぶ(4)オバデヤ書 イスラエルの苦難と私たち
シオンとの架け橋 石井田 直二
オバデヤ書は旧約聖書中で最も短い書で、十二小預言書の中では最初期に書かれたと言われてい
ます。タルムードによると、オバデヤは列王記上 18 章に登場する人物で、迫害された預言者 100
人を、私財を投じて養ったのですが、そのために没落して借金を重ねることになったとか。列王記
下 4 章でエリシャに助けられる未亡人こそ、オバデヤの妻だとする説もあります。
■エドムについての預言
いう目にあうのだ。我々は義人だから神に罰せられる
ことはない」と、エドムは考えていたようです。
オバデヤ書は、ほぼ全体がエドムに対するメッセー
ここでわざわざオバデヤが
「エサウ」という言葉を使っ
ジです。実際にエドムの人々がこの書を読む機会は少
ているのは、現在のクリスチャンに対する警告だと私
なかったと思われるのに、これが旧約聖書に収録され
は思います。
「エサウ」はユダヤ人たちがキリスト教徒
ているのは、第一にイスラエルに励ましを与えるため。
のことを指して使う隠語です。
第二に、異邦人に対する警告であると思われます。
また、神はここでエドムがイスラエルの「兄弟」であ
ここで指摘されるエドムの罪は何でしょうか。第一に高
るから特に厳しく非難しておられますが、現代におい
い所に住み、高慢になったことです。そのために、エド
て私たちクリスチャンは、まさにイスラエルの兄弟とし
ムは滅ぼされ、知者も勇士も奪われてしまいます。高
てオバデヤ書におけるエサウの場に立たされているの
慢は異邦人にとっても、ユダヤ人にとっても大きな罪で
です。
あることは言うまでもありません。その主題は聖書全
イスラエルの政策を批判するクリスチャンは、エサウ
編にわたり繰り返されています。
の霊に注意が必要です。謙遜な気持ちで長子イスラエ
しかし、11 節以降に書かれた主題は、他の預言に
ルの悔い改めを祈るならともかく、
「高慢なユダヤ人め。
はあまり登場しません。それは「イスラエルの災いの日
奴らが爆弾テロとロケット弾で罰せられるのはいい気
に、異邦人はどのような態度を取るべきか」という問
味だ。もっと苦しめ」などと考えるようになると、とて
題です。なぜそれが重要かというと、イスラエルに対
も危険です。オバデヤの警告に私たちは耳を傾けなけ
する裁きが、諸国民の裁きに先行するからです。
(Ⅰペ
ればなりません。
テロ 4:17、アモス 3:2 など参照)
イスラエルが裁かれ、罰せられる時、異邦人に対す
■セパラデにいるエルサレムの捕われ人
る裁きはまだ始まっていません。これは、異邦人にとっ
最後に、ちょっと話題になっている預言の言葉をご
ては「刑の執行猶予」の期間であり、その間に正しく
紹介します。それは、20 節にある「セパラデにいるエ
悔い改めることを私たちは求められるのです。
ルサレムの捕われ人はネゲブの町々を獲る」という預
■非難されるエドムの態度
言です。
「ネゲブの町々」の意味は明白ですが、
「セパラデ」
イスラエルが諸国民に攻められ、滅びに直面してい
がどの場所を意味するのかは不明です。はっきり言え
るのは神の意志です。だから、ここでオバデヤはイス
ることは、この単語を現代ヘブライ語辞典で引くと「ス
ラエルを攻めている異邦人たちを非難していません。
ペイン」と書いてあることです。スペイン系のユダヤ人
むしろ、その状況を見たイスラエルの「兄弟」である
を「セファラディ」と呼ぶのは皆さんもご存知でしょう。
エドムの態度を厳しく非難しているのです。
セファラディたちは、中世にスペインで黄金時代を迎
彼の行動が 11 節に書かれています。彼は第一に離
えますが、その後は激しい迫害を受け、多くの人々が
れて立っていました。傍観者だったのです。そして、エ
強制的に「キリスト教徒」とされました。いわゆる「マ
ルサレムを分割する時に、外国人の一人のようだったの
ラーノ」と呼ばれる人々です。彼らを「ユダヤ人」と認
です。彼は直接的にイスラエル攻撃には加わらず、エ
めるべきだとの動きが最近になって水面下で進んでい
ルサレム分割にも参加しませんでしたが、それを傍観し
ます。数百万人とも言われるマラーノは「セパラデにい
ていました。その罪を神は厳しく追及しておられます。
るエルサレムの捕われ人」としてネゲブに移民するの
それだけではありません。次の 12 節によると彼は「喜
でしょうか。
んで」
「誇って」イスラエルの苦しみを眺めていたので
謎のようなオバデヤの預言の意味は、やがていつの
した。
「ざまあみろ。選民だと威張っているから、こう
日か明らかにされることでしょう。
No.193 LCJE 日本支部発行
5
LCJE 日本支部 秋の特別集会に関する報告
アルコ・イリスミニストリーズ 代表 10 月 10 日 ( 土 )、お茶の水クリスチャンセンターにて、
秋の特別集会が開催された。
冒頭、筆者が、LCJE 日本支部の成り立ち、および同
支部による祈り会に関し、簡単に説明させていただいた。
現在、大阪と東京に於いて、月に一度の祈り会が行われ
ている。大阪の祈り会は、1998 年 9 月に、東京のそれは、
1999 年 10 月にスタートした。つまり、東京祈り会 16
周年の月に、この特別集会が持たれたのであった。現在
まで、同祈り会には、多くの方々に来ていただいた。そ
して、多くの変化を見させていただいたが、イスラエル
の救いのための祈りだけは、変わることなく続けられて
いる。
さて、講師は、LCJE 日本支部長のクリンゲンスミス
師であった。同師は、
「メシアニック・ジュー運動の現在
と将来」と題し講演を行なった。それは、同師が今年の
8 月 16 日から 21 日まで参加した、第 10 回 LCJE 国際
会議の報告を兼ねるものであった。
同会議の第一日目の 8 月 16 日と言えば、日本に於い
ては、終戦記念日の翌日である。今年は、日本にとり戦
後 70 年の年であるが、ヨーロッパでも 70 年が注目さ
れた。それは、ホロコースト終了後の 70 年であり、また、
早川 衛
赤軍が東欧に入って後の 70 年などである。同 70 年は、
北欧や英国のユダヤ人宣教団体の破滅状態の 70 年で
あったとのことである。
講演に耳を傾けながら、ユダヤ人伝道の多様性を再確
認した。それは、ロシア極東のユダヤ自治州に於ける伝
道、ベルリンで急増するユダヤ人に対する伝道、結婚カ
ウンセリングと伝道とをリンクさせたミニストリー、ゲイ
パレード開催時に於ける路傍伝道、迫害に向き合う伝
道者、和解運動、IDF の中での伝道、次世代の育成など、
様々な働きに関する報告があったからである。
日本に於けるユダヤ人の数は、6,000 程度と極めて少
数であるが、我々も、彼らに対する伝道に取り組まなけ
ればなるまい。また、同様に上述した様々なミニストリー
の存在をとおし、私たちは、祈りのテーマの多様性に気
付く必要がある、と思わされた。例えば、日本にもイス
ラエル同様、ゲイパレードが存在する。私たちの祈りは、
同テーマにも向けられるべきである。つまり、私たちには、
更に祈るべき分野がある。そして、だからこそ、メシアニッ
ク・ジュー運動の将来は、多種多様な領域へと展開され
るものである、と思わされた。
2015年秋の集会報告
ハティクバミニストリー 代表 高瀬 真理
2015 年 9 月 5 日(土)LCJE国際会議に出席され
たLCJE日本支部長・クリンゲンスミス牧師より報告を
お聞きしました。帰国されて間もないホットなユダヤ人
伝道協議会の情報そして、現場の様子の数々を熱く語ら
れました。
参加された祈りの友たちは時間を忘れてその報告に耳
を傾けました。LCJE日本支部にお招きした祈りのリー
ダー達のお働きの報告に感謝しつつ、主の祝福に励まし
をいただきました。
▲集合写真
詳しくは、インターネットで是非お聴きください。
音声と映像をアップロードしています。LCJE日本支部
「検索」ですぐにご覧いただけると思います。
http://lcjejapan.com/
コ・ワーカーの皆様のお祈りと、尊い献金を心より感
謝します。紙面に限りがありますが、集会の様子の写真
をご紹介します。
6 LCJE 日本支部発行 No.193
▲LCJE会議場の様子
今こそ一致を
ハティクバ・ミニストリー代表 高瀬 真理
わたしは、わたしへの恐れをあなたの先に遣わし、あなたがそこにはいっ
て行く民のすべてをかき乱し、あなたのすべての敵があなたに背を見せ
るようにしよう。出エジプト記23:27
最近の時事ニュースで、
「いいね!」とVサインを送る
ような明るいニュースを聞くことがありません。最近では
トルコ(アンカラ)での自爆テロで多くの方々が犠牲に
なりました。自爆した「人」を含めて、すべての亡くなら
れた方々、特に残されたご家族の上に主の哀れみと、平
安がありますよう、祈らされています。
揮者にも助け手がいるのです。それは、コンサートマス
ターの存在です。練習の合間を見計らって未熟な指揮者
と相談のうえコンサートマスターが不足部分を補うので
す。しかし、交響曲は非常に複雑ですから、その助け手
にも限界があります。一致を見るというのは、至難の業
なのです。
先日のLCJE日本支部定例祈祷 会で黒田牧師より
伺った「中東」情勢からみる神様の日時計を考えるとき、
本当に一致した「祈り」の必要性を覚えるときとなりまし
た。と、同時に「恐れ」さえ覚える時となりました。
読者の皆さんの中にもクラッシックコンサートにお出
かけになり、生演奏を楽しんでおられる方々もおられる
かもしれません。コンサート会場に響く音の一つ、一つ
に一致を完成させ、商品として提供しているオーケストラ
のメンバーは指揮者に演奏家としての価値と命をかけて
演奏に臨んでいるのです。
筆者は以前オーケストラで演奏する奏者として働いて
おりました。オーケストラには必ず、必要で大切なもの
があります。それは、
「指揮者」なのです。絶えず、オー
ケストラの中心で音を聞き、弦楽器、管楽器、打楽器か
ら発するタイミングを一つに揃えて、また微妙にタイム
ラグを創り音色を変化させる。同じ曲を演奏しても、A
指揮者と、B指揮者とでは全く違う表現で強力にオーケ
ストラを自分の好みに整えていきます。
其の為には、すべての楽器を演奏する奏者とのリレー
ションシップと信頼を得なければ一致を導くことなど到
底できません。
プロのオーケストラは、ある面から見ると、非常に「意
地悪です」クラッシックの作品、特に有名な作曲家の交
響曲など指揮者なしでも演奏可能です。しかし、自力演
奏が可能でも、指揮者の指揮棒に完璧に従いますから、
その指揮者のイメージと、音色のギャップが生まれたと
き、その統率能力の限界を未熟な指揮者は嫌というほ
ど体験します。中には、思い通りに曲の構築が出来ず、
泣き出す若手指揮者もいるほどです。
一口に管楽器といっても、木管楽器(フルート・ホル
ン等)金管楽器(トランペット・トロンボーン等)音の出
るタイミングが全く違います。一例をあげますと、フルー
トとホルンでは、同時に息を吹き込んでも、0.5 秒位ホ
ルンが遅れて音がでます。ですから、指揮者がそのタイ
ムラグを制御できなければ、常にホルンは遅れて聞こえ
ることになります。もし、ホルン奏者に、交響曲中に独
奏旋律があると、統率できない指揮者の下で演奏するこ
とを拒むことができます。なぜなら、最初から遅れるこ
とが分かっているのですから、自分の演奏キャリアに傷
をつけたくないためです。しかし、そのような未熟な指
では、私を含む私たちが、どのように「肉」であるこ
の世の中で信仰の「一致」を見ることが出来るのでしょ
うか。この問題は非常に私にとっても難しい問題である
のです。音楽界においても、指揮棒を振り回したい諸兄
はたくさんいるのです。霊的な指導者の中にも、再臨や、
神の王国の話で時の「人」になろうとする諸兄姉が全世
界にいるのです。私たちはさらに聖書を良く読み、神様
のご計画を良く理解し、時の「人」なのか、主の十字架
の愛を伝え、仕える「人」なのか十分に吟味する必要が
あると思います。
グローバル化した混沌とした現代社会の中で、的を
外れて放たれた矢に惑わされ歓喜しないように霊の目を
はっきり見開かないといけないと思います。
私たちを強力に一致させる物…それは「み言葉」以外
にないのです。10 月の定例祈祷会のメッセージを聴き、
創造主なる【主】の指揮棒にあわせられる「信仰」を今
生かされている時間主にあって強めて頂きたいと思いま
した。
主は私達の「恐れを」ご存知です。感謝します。まず、
筆者である私自身が主のみ旨(指揮棒)に今こそ「一致」
してユダヤ人伝道につかわされるものとして奉仕させてい
ただきたいと祈り、願っています。
今月も一人でも多くのユダヤ人が救われますよう執り成
し、祈ろうではありませんか。
10 月の定例祈祷会メッセージはLCJE日本支部ホー
ムページでもお聴きになることが出来ます。是非お聴き
になられる事をお勧めいたします。
No.193 LCJE 日本支部発行
7
LCJE日本支部事務局レター LCJE は、ユダヤ人伝道団体の情報交換ネットワークです。加盟しているユダヤ人伝道団体それぞれの
立場・活動を尊重して、機関紙などに情報を掲載しています。しかし特定の立場・教理などを、LCJE と
して支持するものではありません。読者におかれましては、個々の見識によって提供される情報を判断し
てくださいますよう、お願いいたします。
2015/16年度祈祷会予定
11月
13日
14日
場 所
大阪(6:30より)
東京(1:30より)
12月
11日
12日
2016/1月
8日
9日
会 場
北浜スクエア(VIP関西センター8F)
御茶ノ水クリスチャンセンター 8F 811号室
【大阪祈り会にご参加される方へ】 祈り会の曜日が第二木曜日から、第二金曜日へ変更となり、会場は8Fを継続してお借りすることになりました。
【東京祈り会にご参加される方へ】ご注意ください。通常祈り会の会場は、811号室ですが、変更される場合がります。
階下の掲示板をご覧になってご参加ください。
LCJE日本支部長より……………………C. クリンゲンスミス
8 月 16 日~ 21 日、エルサレムで開かれた第 10 回LCJE国際会議に出席
させていただき無事に日本に帰れたことはLCJE日本支部の多くの皆さんの
熱い祈りと貴い捧げもののおかげです。心から感謝を申し上げます。先日 9 月
5 日大阪で、10 月 10 日東京で、いろいろな課題をちらっとしか紹介できませ
んでしたが、会議から 2 か月後を経て、私の胸に次のような祈祷課題が会議の
まとめとして浮かんで来ているところです。皆さんも今後とも日本に持ち帰っ
た課題を共に祈ってくださいませんか。
●動いている世界のユダヤ人人口 14,212,800 人への
愛と励ましがキリスト者たちの間で深まりますよう
ら始まった経済移民と中東からの難民の影響でユダ
ヤ人たちの立場が今後も安全であるとは限りません。
に。動きとは、イスラエルへ帰還すること、イスラ
エルから出ること、ホロコーストを生じたベルリン
● IDF(イスラエル軍)に従軍している若いメシアニッ
へ移民すること、安全な隠れ場を求めて、案外にオー
ク・ジューの信仰が守られますように。イスラエル
ストラリアやロシア極東をも目指すこと、さまざま
では、イエス様を信じる信仰者の家庭は 2 代 3 代ま
な理由で 21 世紀のユダヤ人たちは動いています。
で及んで来ましたが、多くの親の一番大きな心配は、
しかし、ユダヤ人たちがどこへ行っても、そこでイ
我が子が IDF に入ると不健全な霊的環境で誘惑がい
エス様を差し出せる働き人が活動できるように祈り
ろいろ多いため信仰を失ってしまうことです。
ましょう。
●世界の若いユダヤ人たちのために祈りましょう。超
●主にヨーロッパで増々広がっているユダヤ人たちへ
正統派は世界中で増えています。私たちはイエス様
の憎しみと暴力から現地のユダヤ人が守られますよ
をユダヤ人に提供したいと祈る一方で、超正統派に
うに。また、そのような危険の中で逃げずに留まり
属している人々はラビたちの決まりを若い人たちに
続けて働くユダヤ人宣教諸団体の働き人や家族、財
必死で提供しています。多くのユダヤ人は実は両方
産、生活が守られますように。ヨーロッパは今夏か
から伝道されて迷っている有り様です。
LCJE日本支部2015年9月度会計
収入・献金
支出・現金
科
目
金 額
科
献
金
115,000
事
大阪祈り会席上献金
50,000
目
金 額
費
20,400
NEWSレター製作費
50,120
郵
費
43,300
郵便振替手数料
3,500
通
費
賃 借 ・ 管 理 費
21,600
高熱費・共益費
9,122
祈
計
165,000
信
通
り
旅
会
経
合
費
7,000
費
10,800
計
180,500
高
-27,092
365,953 翌 月 へ の 繰 越
338,861
差
前月よりの繰越
送
6,250
交
合
務
8 LCJE 日本支部発行 No.193
引
残
事務局よりのお知らせ
LCJE 日本支部では、皆様からの声、そして証や、記
事の投稿をお待ちしています。LCJE 日本支部までお知
らせください。よろしくお願いいたします。
E メール▶ [email protected]
編集後記
虫の音に、心癒される季節となりました。コ・ワーカ
の皆様の尊い献金とお祈りに心より感謝します。中津情
勢の時々刻々と激動する中、エルサレムの平和を執り成
し祈る信仰を主より与えられている特権を心から感謝し
ます。2015 年も残すところ 2 ヶ月となりましたが、今月
も力強いみ言葉に励まされ、執り成し祈る者としていた
だきましょう。今月も一人でも多くのユダヤ人が救われま
すように。 LCJE 事務局長 高瀬真理