九州工業大学学術機関リポジトリ Title Author(s) Issue Date URL 可視光応答性を発現するナノコンポジット光触媒の開発 に関する研究 金, 正元 2015-03-25 http://hdl.handle.net/10228/5377 Rights Kyushu Institute of Technology Academic Repository 氏 名 学 位 の種 類 学 位 記 番 号 学 位 授 与 の日 付 学 位 授 与 の条 件 学位論文題目 論文審査委員 金 正 元 (中 国 ) 博 士 (工 学 ) 工 博 甲 第 391 号 平 成 27年 3月 25日 学 位 規 則 第 4条 第 1項 該 当 可 視 光 応 答 性 を 発 現 す るナ ノコン ポ ジ ッ ト光 触 媒 の 開 発 に関 する研 究 主 査 教 授 横野 照尚 〃 柘植 顕彦 〃 清水 陽一 〃 白土 竜一 准教授 坪田 敏樹 学 位 論 文 内 容 の 要 旨 酸 化チ タ ン光 触 媒は、紫 外 光 での 触 媒性 能 は秀 で た もの が ある が 、可視 光 で は触 媒 性能 を ほと ん ど 発 現し な い。 太 陽光の 約 40 % が可 視 光 (紫外 光 は 約 3 %) で あ り、室 内 光 の多 く もそ れ であ る こ と から 、 その 有 効利用 の た めに 可 視光 応 答型光 触 媒 の研 究 が活 発 に行わ れ て いる 。 こ のよ う な観 点 から、比 較 的 安 価な 材 料で 調製 す る こと が 可能 で 安定な 可 視 光応 答 型光 触 媒で あ る 酸 化 タ ン グ ス テ ン ( WO 3 ) と グ ラ フ ァ イ ト 型 窒 化 炭 素 ( g-C 3 N 4 ) に 注 目 し 、 光 合 成 反 応 に 基 づ く Z ス キー ム 型を 指 向して ナ ノ コン ポ ジッ ト 化する こ と で 、酸化 チ タン に取 っ て 代わ る よう な 新規 の 可 視 光応 答 型光 触 媒の開 発 を 試み た 。ま た、g-C 3 N 4 は 高 比 表 面 積化 、形状 の 制 御や メ ラミ ン シア ヌ レ ー トと 複 合化 す ること で さ らな る 触媒 活 性の向 上 に つい て 検討 を 進めて い る 。酸 化タ ン グス テ ンとメラミンをナノコンポジット化することで実用化に耐えうる高い触媒活性の向上も試みてい る。 第 1 章 で は 、 高 い 酸 化 力 を 有 す る 市 販 の WO 3 と 開 発 を 進 め た g-C 3 N 4 ま た は 高 表 面 積 化 処 理 し た グ ラ フ ァ イ ト 型 窒 化 炭 素( HT-g-C 3 N 4 )の ナ ノ コ ン ポ ジ ッ ト 化 処 理 に よ る 次 世 代 型 ナ ノ コ ン ポ ジ ッ ト 可 視 光 応 答 型 光 触 媒 の 開 発 を 行 っ た 結 果 を ま と め て い る 。 g-C 3 N 4 あ る い は HT -g -C 3 N 4 は 可 視 光 照 射 下 で 高 い 還 元 力 を 持 っ て い る が 、 酸 化 力 が 低 い と い う 欠 点 を 有 し て い る 。 こ れ ら の 問 題 点 を 解 決 す る た め に 高 い 酸 化 力 を 発 現 す る 可 視 光 応 答 型 光 触 媒 で あ る WO 3 と の 複合化を検討し、高い酸化力と還元力を有したナノコンポジット光触媒を開発した。開発し た ナ ノ コ ン ポ ジ ッ ト 光 触 媒 は 可 視 光 照 射 下 で 原 料 の g-C 3 N 4 ( HT-g-C 3 N 4 ) や WO 3 よ り 非 常 に 高 い活性を示した。活性評価と紫外可視吸収スペクトルの分析から、ナノコンポジット光触媒 は Zス キ ー ム 型 電 荷 移 動 に よ っ て 反 応 が 進 行 し て い る と 結 論 づ け た 。 第 2章 で は、g-C 3 N 4 の 触 媒 活性 の 向上 の ために 、一般 的 なグ ラ ファ イト 型 窒 化炭 素 の比 表 面積 と 粒 子 形 状 に 起 因 す る 問 題 点 を 明 ら か に し 、 形 状 を 制 御 し た 高 比 表 面 積 ナ ノ チ ュ ー ブ 状 の g-C 3 N 4 を 合 成 した 。 ナノ チ ューブ は 一 般的 な g-C 3 N 4 よ り 紫 外 光照 射 下で の ローダ ミ ン B の光 触媒的分解 活 性 が 劇的 に 向上 し た 。形 状 制 御し た ナノ チ ューブ は 比 表面 積 が 3~5 倍向上 し て いた こ とか ら 、反 応 活 性 点が 多 く形 成 される こ と が触 媒 活性 向 上の原 因 の 一つ で ある こ とが示 唆 さ れた 。ま た 、形 状 を 制 御 する こ とで 酸 化・還 元 反 応が 進 行す る 反応サ イ ト が分 離 され 、逆 電子 移 動 が抑 制 され た こと が 触 媒 活性 向 上の 重 要な要 因 と 結論 づ けた 。 第 3章 で は、g-C 3 N 4 の 基 本 構造 ネ ット ワ ークで メ ラ ミン シ アヌ レ ートを 生 成 させ て 、更 なる 反 応 効 率 の向 上 の可 能 性を探 索 し た。メラ ミ ンシ アヌ レ ー トの 生 成に よ って、g-C 3 N 4 の 基 本構 造 ネッ ト ワ ー ク内 に 酸素 が 導入さ れ 、一 般 的な グ ラフ ァイ ト 型 窒化 炭 素 よ り 紫外光 照 射 下で の アセ ト アル デ ヒ ド 分 解 活 性 が 大 き く 向 上 し た 。 メ ラ ミ ン シ ア ヌ レ ー ト の 生 成 に よ り 酸 素 の 導 入 は g-C 3 N 4 の 価 電 子 帯 電 位 を 貴 な 側 に 移 動 さ せ 、 酸 化 能 力 の 向 上 や 、 酸 化 反 応 サ イ ト が g-C 3 N 4 の 窒 素 原 子 か ら メ ラ ミ ン シア ヌ レー ト の酸素 原 子 にな る こと で 、反応 サ イ トが 分 離さ れ ること に よ り効 果 的に 進 行し た と 結 論づ け た。 第 4 章 では 、高 い 触媒 活性 を 有 する 可 視光 応 答 型光 触 媒 を開 発 する た めに、WO 3 を そ れぞ れ メラ ミ ン シ アヌ レ ート 、 メラミ ン 、 シア ヌ ル酸 と 遊星ミ ル を 用い て 複合 化 を行っ た 。 その 中 で WO 3 と メ ラ ミ ン の複 合 化物 は 可視光 照 射 下で 非 常に 高 い活性 を 示 し 、アセ ト アル デヒ ド お よび 2 -プ ロ パノ ー ル を 完全 分 解す る ことが で き た 。 メ ラミ ンは WO 3 と の 複 合 化処 理 過程 で反 応 す るこ と で、 新 たな 化 合 物 が 生 成 し た 。 そ の 新 規 な 化 合 物 は 複 合 化 物 の 電 子 通 路 に な っ て 、 WO 3 の 低 い 伝 導 帯 電 位 に よ り 通 常 は 励 起 電 子 が 蓄 積 さ れ る た め に 触 媒 反 応 が 著 し く 低 下 す る 問 題 を 解 決 し 、 WO 3 が 生 成 し た 電 子 を 効 率よ く 消費 し、 電荷 の 分 離 を 促 進す る ことで WO 3 の 高 い 酸化 能 力を発 現 さ せる こ とを 明 らか にした。 本 研 究 に お い て 、g-C 3 N 4 と WO 3 と の ナ ノ コ ン ポ ジ ッ ト 型 光 触 媒 の 開 発 を 世 界 に 先 駆 け て 成 功 さ せ た 。 更 に 、 ナ ノ コ ン ポ ジ ッ ト 光 触 媒 の 光 合 成 に Zス キ ー ム に 倣 っ た 動 作 機 構 を 明 ら か に し 、 新 規 な ナ ノ コ ン ポ ジ ッ ト 光 触 媒 開 発 に お け る 設 計 指 針 も 提 案 し た 。 さ ら に 、 g-C 3 N 4 の 形 状 制 御や高比表面積化技術も開発することで、ナノコンポジット光触媒の高活性化技術の方法論 も確立した。 学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 上記の論文に対して審査を行い、本研究のナノコンポジット光触媒の電子移動過程と触媒 反 応 性 の 関 係 、 g-C 3 N 4 の 高 比 表 面 積 化 、 形 状 制 御 法 な ど の 方 法 論 に つ い て 種 々 の 質 問 が な さ れたが、いずれも適切な回答がなされた。以上により、論文調査および最終試験の結果に基 づ き 、 審 査 委 員 会 に お い て 慎 重 に 審 査 し た 結 果 、 本 論 文 が 、 博 士 (工 学 )の 学 位 に 十 分 値 す る ものであると判断した。 以上により、論文調査及び最終試験の結果に基づき、審査委員会において慎重に審査 した結果、本論文が、博士(工学)の学位に十分値するものであると判断した。
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