2016年3月25日 大津地方裁判所「高浜原子力発電所3号機・4号機運転停止仮処分」を受けて 東京都生活協同組合連合会 会長理事 伊野瀬 十三 当会は、東京都内で285万人の組合員が加入する77の会員生協の出資により活動を する生活協同組合連合会です。東日本大震災の甚大なる被害を教訓とし、2011年に「東 京都生協連の目指すエネルギー政策」を定め、原子力発電の依存率を可能な限り引き下げ、 再生可能エネルギーの普及・拡大などエネルギー政策の転換をすすめていくための諸活動 をすすめています。 さて、3月9日(水)大津地方裁判所により、滋賀県住民の主張を認め、高浜原子力発 電所3号機・4号機の運転停止仮処分が、関西電力株式会社に申し渡されました。原子力 規制委員会が策定した新規性基準に基づく高浜原子力発電所3号機・4号機への安全対策、 重大事故時の避難計画に対し、 「直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざ るえない」とした司法判断は、国民の多くが原子力発電所への不安と不信感抱えている実 情を踏まえた画期的なものであると考えます。 当会では以下の理由から、原子力発電所再稼働を安易にすすめるべきではないと考えま す。目先の経済性ではなく真の持続可能な社会の実現に向けた国民的論議をすすめるべき です。 関西電力は、今回の判決を不服として3月14日に大津地方裁判所に対し不服申立てを 行いましたが、こうした行為は国民の意識と乖離した対応であり速やかに判決にしたがい、 必要な措置を講じることこそが求められています。 記 1.国民の半数以上が原子力発電所の再稼働に対して反対しています 新聞・マスコミ各社が行っている世論調査では、いずれも過半数以上の国民が原発 の再稼働に反対しています。このことは、東京電力福島第一原子力発電所の事故原因 が未だに究明されておらず、未だ多くの福島県民が過酷な避難生活を余儀なくされて いることや、核廃棄物の再処理問題も先送りしたままの原子力政策のあり方そのもの について国民的な理解が得られていないことを指しています。 再稼働停止を判断し、国民が安心できるよう十分な情報開示と対話による合意形成 をすすめるべきです。 2.原子力発電による電源確保の必要性が見当たりません 夏場の電力需要がひっ迫し、電力の安定需給が行えないという理由により、201 2年7月に大飯原子力発電所3、4号機の再稼働が認められました。しかしながら、 2013年9月に新基準施行による大飯原子力発電所が停止した時にも供給が不安と なる状況は起きませんでした。国民による省エネルギー行動がすすみ、省エネ製品の 開発や再生可能エネルギーの普及、そして電力会社間の電力融通等によって、電力需 要をまかなう電力の確保が十分可能な環境が整備されてきています。 また、原発の再稼働の理由としてエネルギー安全保障やコストの観点から課題があ るとしていますが、海外に資源を頼っているという面では、調達リスクは化石燃料と 変わりありません。コスト面においても核燃料の最終処分や原子力発電所廃炉や事故 時の除染技術の目処がたたない中、国による試算や計画は再三見直しがされています。 将来的に莫大な費用がかかるのは目に見えています。 3.地域住民の避難経路の確保など万一の重大事故発生時のリスク対策が不十分です 今回の大津地方裁判所のみならず、2015年4月の福井地方裁判所においても「高 浜原子力発電所3、4号機の再稼働差し止め」仮処分決定でも明らかになった通り、 司法においても「新基準では安全性は確保されず、住民の人格権が脅かされる可能性 がある」と指摘されています。 また、原子力災害対策指針では、原子力発電所から概ね30km圏内を緊急時防護 措置を準備する区域と定めており、該当する自治体の議会・首長の合意や住民の生命 保全を大前提とした計画策定とそれに伴うインフラ等整備が必要となりますが、今回 の仮処分において明らかになった通り、十分な計画の有効性の検証や事前準備がされ ていません。目先の経済合理性が優先され、もっとも重視されるべき国民の生命や安 全の問題がないがしろにされているとしか思えません。 4.国のエネルギー政策を根本から見直すことが必要です 安倍政権は2014年4月、原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置付け たエネルギー基本計画を閣議決定しました。しかしながら、万一の過酷事故が発生し た場合の責任の所在について、いまだ国や電力会社、原子力規制委員会など曖昧にし たままであり、国民不在のもとで再稼働がすすめられています。私たちは東京電力福 島第一原発の悲惨な原発事故を二度と起こさないために、原子力発電に依存した社会 から一日も早く脱却し、省エネと再生可能エネルギーの普及・拡大を抜本的に強める 方向でエネルギー政策を推進すべきであると考えます。将来にわたって持続可能な日 本のエネルギー政策について、再度、国民的な議論を踏まえて確立することが必要だ と考えます。 以上
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